しのぶの治療が始まったのを確認すると、俺は別の場所に移動する。
しのぶが治療をしている姿……薄着でバルシェム生成チャンバーの中で液体に浸かっているのを見られたくはないだろうと判断した為だ。
ただでさえレモンの忠告――という表現が正しいのかどうか分からないが――によって、しのぶは俺に対して警戒心を抱いていた。
ちなみにその警戒心は、当然ながら敵……鬼に対するようなものではない。
女の敵という意味では敵という表現でもおかしくはないのかもしれないが。
とにかく、俺が治療をしている場所にいるのはしのぶにとっても面白くないだろうと判断し、鬼滅世界に戻ってきたのだが……
「これは、一体何がどうなってこんな風になってるんだ?」
そう呟いた俺の視線の先には、天元の姿があった。
いや、これが純粋に天元がそこにいるだけなら、そこまでおかしな話ではない。
だが、天元はアオイ、きよ、すみ、なほといった4人を担いでいたのだ。
女ではあっても、4人を担いでいるというのは天元の高い身体能力を示している。
いやまぁ、もしかしたら単純に呼吸を使っているだけなのかもしれないが。
そして天元の前には、炭治郎、善逸、伊之助といったいつもの3人の姿。
いや、3人以外にカナヲもいるな。……ただ、炭治郎達とは違って何もせずに見ているだけ……いや、ちょっと動揺しているように見えるのか?
見るからに険悪そう……いやまぁ、炭治郎達にしてみれば、自分が世話になっている蝶屋敷の住人が連れ去られそうになってるのだから、当然かもしれないが。
「ん? おお。妙な場所で会うな」
天元が俺の存在に気が付いたのか、そんな風に声を掛けてくる。
妙な場所って言ってもな。
蝶屋敷は俺もそれなりに来ているんだし、天元も鬼殺隊の柱である以上は蝶屋敷にいてもおかしくはないと思うんだが。
「それはともかく、今のお前は色々な意味で危ない奴にしか見えないぞ」
「危ない奴? ……派手に勘違いをしているようだな! 俺にそんなつもりはない!」
「お前がそう思っても、傍から見れば誘拐犯にしか見えないぞ」
「そうだ! アクセルさんの言う通りだ! アオイさん達を離せよ!」
炭治郎が俺の言葉を聞いて、そう叫ぶ。
かなり頭に血が上っているのは、間違いない。
とはいえ、それも無理はないか。
元々炭治郎は真っ直ぐな性格をしている。
それだけに、自分が世話になったアオイ達がこうして理不尽な目に遭ってるのは許せないのだろう。
……とはいえ、平の隊員でしかない炭治郎達が、柱の天元に逆らうのは色々と不味いと思うんだが。
いや、天元に食ってかかっているのは炭治郎だけではない。
善逸や伊之助もまた炭治郎と同様に天元に反抗していた。
……善逸は女好きなだけに、アオイ達が酷い目に遭っているのを許せないのだろう。
伊之助は……何だろうな。単純に天元が偉そうなのが気にくわないのか。あるいは、アオイ達には世話になっているという自覚があるからか。
「うるせえな。女の隊員が必要だからこいつらを連れていくんだよ。俺は柱だから、継子以外には命令出来る権限があるんだ」
「俺はお前を柱とはみとめない!」
「お前が認めないからって、俺が柱なのは変わんねえんだっつーの!」
そうして2人は……いや、善逸や伊之助もだから4人はぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。
さて、この状況は一体どうしたものか。
天元がここにいるという事は、多分遊郭の一件に関係してるんだと思うが。
実際、アオイ達を連れていこうとしているのを見れば、その辺が大きく関係しているのも間違いはない。
確か遊郭では天元の妻達が情報収集をしているとか何とかだったような気がするが、その辺はどうしたんだろうな。
「双方、その辺にしろ」
若干の魔力を発し、威圧感として騒いでいる者達に向けて発する。
『っ!?』
その威圧感を受けた者達……天元、炭治郎、善逸、伊之助は瞬時に黙り込む。
取りあえず黙り込んだのを確認してから、俺は改めて口を開く。
「天元、取りあえずアオイ達を下ろせ。お前がそういう真似をするのは、何らかの理由があるのは間違いないと思う。だが、その理由を説明しないで強引に連れていくなんて真似をされて納得出来る奴ばかりじゃないぞ。実際、お前の説明不足で現在こんな状況になってるんだし」
「……分かったよ」
天元は完全に納得したといった様子を見せないまでも、担いでいた4人を下ろす。
その4人はすぐに炭治郎の後ろに隠れた。
何で炭治郎だけに? と思わないでもなかったが、真っ先に天元に文句を言っていたのは炭治郎のようだったし、それを考えれば炭治郎を頼りにするのは当然なのだろう。
炭治郎から少し離れた場所では、善逸がちょっと残念そうにしていたが。
善逸にしてみれば、自分も頑張ったのだから自分の方にも来て欲しかったといったところか。
伊之助は……猪の被り物をしてるので、分からないが。
「で? お前は遊郭を調べていた筈だろう? なのに、何で急にこんな真似をしたんだ? もしかして遊郭とは関係のない別の理由からか?」
「いや、違う。遊郭の件だ」
遊郭という言葉に善逸が興味深そうな様子を見せる。
……アオイはそんな善逸に冷たい視線を向けていたが。
他の面々は、遊郭というのがどういう場所なのか分からないらしく、ただ何となく天元の言葉を聞いている様子だったが。
「なら、お前の妻達で遊郭を調べていた筈だろう? なのに、何でアオイ達を連れていこうとするんだ?」
「……3人全員から連絡が途切れたからだよ」
「3人!?」
「黙ってろ、善逸」
妻が3人という天元の様子に善逸が嫉妬の籠もった叫びを上げる。
まぁ、善逸にしてみれば、妻が3人もいる天元には色々と思うところがあるのだろう。
これが俺なら、先生と呼んで慕ってはいるものの、結局のところ別世界の人間という認識だろう。
だが、天元は正真正銘この鬼滅世界の人間だ。
そんな天元が3人も妻を持っているというのは、善逸にとって色々と……本当に色々と思うところがあるのだろう。
「すいません」
善逸は俺の言葉にそう謝ると黙り込む。
それを見てから、俺は改めて天元の方を見る。
「それで3人全員の連絡が途切れたって話だったが、それでアオイ達を連れて行こうとしたのか」
「ああ。胡蝶がいればそっちに任せたんだがな」
「しのぶは現在ホワイトスターだな。……まぁ、この中では年齢的に見て、しのぶが一番相応しいだろうが」
きよ、すみ、なほの3人はまだ子供だし、アオイは……年齢的には問題ないのかもしれないが、それでもしのぶの方が相応しいのは間違いない。
顔立ちが整っているし、十分に女らしい身体つきをしている。
それこそしのぶが遊郭で働くような事になれば、間違いなく人気になるだろう。
とはいえ、遊郭で働くとなると当然ながら男に抱かれるといったような事にもなりかねない。
しのぶがそれを受け入れるとは……まぁ、レモンの話を聞いた時の俺を見る目を見る限り、そんな心配はしなくてもいいと思うんだが。
「だろう? けど、胡蝶がいない以上、その代わりの人材が必要だ。で、ここには女がいる。なら、俺が派手にこの連中を連れていこうとするのも理解は出来るだろう?」
「話は分かる。けど、そっちの子供3人は蝶屋敷で働いてはいるものの、鬼殺隊の隊員という訳でもないぞ」
この場合の鬼殺隊の隊員というのは、あくまでも実際に鬼と戦う者達だ。
大きな目で見れば、蝶屋敷で働いている者達も鬼殺隊の一員という事にはなるんだろうが……
「ん? そうなのか? ……なら、そっちの1人で……」
「待て! アオイさんの代わりに俺達が行く!」
「あ? ……あー……」
炭治郎の言葉は、天元にとっても予想外だったのだろう。
戸惑ったように炭治郎、善逸、伊之助と順番に見て、最後にアオイに視線を向ける。
先程の一件があったからだろう。アオイは天元の視線を向けられると、怯えた様子を見せたが……そんなアオイの様子に、天元は少し考え、やがて頷く。
「よし、分かった。じゃあお前達でいい」
「え? そんな簡単に!?」
アオイの代わりに自分が行くと言った炭治郎も、まさか天元がそんなに簡単に頷くとは思っていなかったのだろう。
驚いた様子で叫ぶ。
……なお、善逸は自分も遊郭に行く事になりそうなのを、喜んでいいのか悲しんでいいのか、非常に複雑そうな表情を浮かべていた。
伊之助は猪の被り物をしているので、表情は分からなかったが。
とはいえ、俺は何故天元がそのような判断をしたのかは、ある程度理解出来た。
アオイは確かに鬼殺隊の隊員だし、一人前の剣士と認められる為の試験もクリアしている。
だが、それで心が折れてしまい、蝶屋敷で働く事になった。
つまり、女であるという点で評価は出来るものの、いざ戦いとなれば……言葉は悪いが、役立たずとなる。
そんなアオイと比べると、炭治郎は短期間で急激に実力を伸ばしており、原初の呼吸、全ての呼吸の源と言われる日の呼吸を不完全ながらも使いこなす。
さすがこの世界の主人公と言うべきか。
ともあれそんな炭治郎だけに、純粋な戦力として考えれば間違いなく一級品だ。
柱には及ばずとも、柱に近い実力を持っているのは間違いない。
そして、天元の様子を見る限りでは、炭治郎以外に善逸や伊之助も連れていくつもりなのだから、戦力としては十分だろう。
後、日中は動けないが禰豆子もいるし。
「お前達の方が戦力としては役に立ちそうだしな。……ただし、遊郭に潜入する以上、男では駄目だ」
「え?」
天元の言葉の意味が理解出来なかったのか、炭治郎は不思議そうな声を出す。
「分からねえか? お前達には女の格好をして貰う」
やっぱり。
さっきの天元の言葉から、何となくその言葉を予想は出来ていた。
遊郭では、客ならともかく働いている者で男となると、どうしても目立つ。
勿論、遊郭にもしっかりと働いている男はいるのだろう。
それでも全体で見た場合、女の方が圧倒的に多いのは間違いなかった。
「女の格好って……嘘でしょ!?」
女装に対し、一番拒絶反応が強かったのは善逸だった。
とはいえ、善逸はかなり顔立ちが整っているので、女装してもそれなりに問題はないと思う。
額に痣がある炭治郎や、常に上半身裸の伊之助とかは……正直、どうなんだろうな。
「ああ? お前達が行くって言ったんだろうが。どこに行くのか分かってるのか? 遊郭だぞ、遊郭。そんな場所に男がそう簡単に入り込める訳がねえだろうが」
「そ、その……客! 客として入り込むのはどうでしょう!?」
「ふざけるな。客が遊郭の中を調べたり情報を集めたりといったような真似が出来る時間は限られている。その辺りの詳しい話を調べる為には、直接中で働く必要があるんだよ」
だからこそ、天元も自分の妻達を遊郭に送り込んだのだろう。
俺は天元の妻を見た事はないのだが、遊郭で働くとなると当然のように男の相手をする必要があるんだが。
もしかして、これがNTR……寝取られって奴なのか?
ああ、いや。でも忍者なら変装とかも出来るだろうし、男受けしないような顔に変装していれば、その辺を心配しなくてもいいのかもしれないな。
これで小さい子供達なら、下働きといった感じで遊郭の中で働くけど男の相手をしなくてもいいんだが。
「ぐ……で、でも……さすがに女装は無理があります! 見て下さい、伊之助はこんなんですよ! 炭治郎も額に痣があるから、遊郭で働くのは難しいです! ……え? あれ? そうなると、もしかして女装するのは俺だけ!?」
天元に抗議をしていた善逸が、最悪自分だけが女装するといったことになるかもしれないと知り、ショックを受けている。
「大丈夫だ。人の趣味はそれぞれだからな」
天元のその言葉に、善逸はこちらに視線を向けてくる。
「じゃ、じゃあ先生も遊郭に行きましょう」
「それは無理だな」
善逸の言葉を、一瞬の躊躇もなくそう切り捨てる。
「な、何でですか! 俺の事が心配じゃないんですか!?」
「実力という点なら、そこまで心配はしていないな。それに……俺が遊郭に行けば、最悪遊郭が……いや、浅草も含めた周辺一帯が滅びる可能性がある」
「……え?」
一体俺が何を言ってるのか理解出来ないといった様子の善逸。
いや、それは善逸だけではなく、話を聞いていた他の者達も同様だった。
何故俺が酔っ払った程度でそんなことになるのか……そう疑問に思うのは当然だろう。
しかし、実際に俺は酔っ払った結果として別の……未知の世界に転移した実績がある。
いやまぁ、それを実績と表現してもいいのかどうかは、正直微妙なところなのだが。
ともあれそんな訳で、俺が酒を飲むのは色々と不味い。
そんな俺が遊郭に行くのは調査をする上で不都合なのは間違いなかった。
「俺が出来るとなると……遊郭の外で待っていて、それで実際に鬼との戦闘が始まったらそこに突入するくらいだな」
恐らくそれが一番無難だろうと、俺はそう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730