戦いが始まって数分……しかし、その数分だけでも十分なくらいに周囲の林には被害が出ていた。
善逸と伊之助VS堕姫。
こちらはほぼ互角といった状況だった。
堕姫の振るう帯は、広範囲攻撃という意味ではかなりの強さを持つものの、周囲にある木を切断する場合、どうしても速度は落ちてしまう。
ゆかりが見たという帯、そして俺が見た堕姫の身体に吸収された帯。
それによって、今の堕姫は炭治郎と戦っていた時よりも間違いなく強くなっている。
しかし、そんな風にパワーアップされた堕姫であっても、帯が木々を切断する時は一瞬……本当に一瞬ではあるが、帯の速度が落ちる。
これが遊郭の中なら、切断されるのは建物で……林に生えている木々よりも随分と細い建物が多い。
しかし、林に生えている木はかなり太いのもあり、それを切断するにはどうしても相応の力が必要となる。
とはいえ……
「それでも堕姫を倒すのは難しいか」
「そうね。上手い具合にあの2人は協力してるんだけど、純粋にまだ力が足りないわ」
エヴァとの訓練を重ねて、善逸も伊之助も相応の実力を手に入れている。
しかし、それでもまだ上弦の陸に対抗出来るだけの実力じゃない、か。
……しかも堕姫は天元から上弦の鬼としては弱すぎると言われるくらいの実力だし。
そう考えると、あの2人の実力はまだまだといったところか。
「エヴァに鍛えて貰ってるんだから、実力は相応に上がってるだろうけどな。……それでもまだ実力が足りないらしい。これをエヴァが知ったら、不甲斐ないとして訓練はより厳しく……」
厳しくなるだろう。
そう言おうとしたのだが、俺が最後まで言い終えるよりも前に善逸の動きが一段と鋭くなる。
「あら、いきなり動きが鋭くなったわね」
ゆかりが善逸を見て、そんな風に呟く。
何故だ? と思ったが、考えてみれば善逸はかなり聴覚が鋭い。
そうである以上、善逸は俺の言葉を聞いてエヴァとの訓練が厳しくなるのは嫌だと、今まで以上の実力を発揮したのだろう。
そんな善逸によって、堕姫との戦いは若干ながら善逸達が盛り返していた。
「天元と炭治郎の方は……」
堕姫との戦いから、天元と炭治郎の方に視線を向ける。
そちらの戦いにおいては、天元と炭治郎がかなり押されていた。
これは天元も強いのだが、堕姫の兄がそれ以上の速度を持っているというのがある。
堕姫の兄は鎌を武器にして戦っている。
いわゆる死神が持っているような大鎌ではなく、草刈りとかに使うようなそんな小さな――もしくは普通の――鎌。
炭治郎は必死になって日の呼吸を使って攻撃しているものの、どうしても堕姫の兄と天元の戦いにはついていけない。
棲息速度域とでも呼ぶべきものが、堕姫の兄と天元と比べて炭治郎は劣るのだ。
「ゆかり、天元と炭治郎の方をよくみておいてくれ。あの様子だと、一撃でダメージを受けそうだ」
「ええ。分かったわ。けど……あら?」
何かを言おうとしたゆかりだったが、不意に何かに気が付いたように上を見る。
その視線の先にいたのは、ドロ。
「あれは……また、随分と思い切った真似をしたな」
鬼殺隊に貸し出されているドロは、基本的に移動用として使われる事が多い。
それも当然ながら、日中に街中近くで見られると面倒な事になりかねないので、基本的に夜の移動で……それも街には近付かないようにして使われていた。
そんなドロが、こんな場所にやって来るというのは……当然ながら、天元か隠といった者達が鎹鴉で状況を知らせたのだろう。
そして耀哉は、今の状況では危険だと判断してドロに乗せて援軍を送った。
「善逸、伊之助、回避しろ!」
ドロの触手……触手? フレイボムの発射口が下に向けられたのを確認すると、素早くその発射口の先にいる善逸と伊之助に指示を出す。
善逸は俺を先生と慕っているので、そういう意味では指示に従うのは特に問題なかったのだろうが、伊之助が素直に俺の指示に従ったのは意外だった。
もしかしたら野生の勘で危険を察知したのかもしれないが。
ドロから放たれたフレイボムは、真っ直ぐ堕姫に向かったのだが……
「こんなのがアタシに効くとでも思ってるの!」
フレイボムに対し、帯の一撃を放つ。
空中でぶつかる、フレイボムと帯。
すると……その結果は、帯の勝利だった。
空中で帯によって真っ二つに切断されたフレイボムは、そのまま左右に分断された状態で飛んでいき、林の外にぶつかって炎を上げる。
フレイボムというのは、一種のナパームに近い武器だ。
命中すれば周辺を炎に撒き散らかすといったような武器だが、そんな武器であっても堕姫の帯を燃やすといった真似は出来なかったらしい。
あの帯、堕姫の血鬼術で強化されてるんだと思うが、見た感じではかなり強靱だよな。
鬼殺隊の剣士が着ている服に使われている布もかなり頑丈なのだが、ある意味でその上位互換的な布だ。
勿論鬼殺隊の制服で使われている布は量産する事が出来るが、堕姫の帯はあくまでも堕姫しか使えないのだろうが。
そういう意味では、やはり堕姫の帯を欲しがっても意味はないか。
……ある意味、女の下着を欲しがっているようにも思えるし。
いや、帯は下着というか、ベルトとかそんな感じに分類されてもおかしくないような。
とはいえ、それはあくまでも俺の感覚だ。
この世界の者達にしてみれば、そんな俺の考えなど意味はないだろう。
「あ、ほら。アクセル。ドロから誰か出て来たわよ」
ゆかりの声にドロに視線を向けると、ドロの上の部分から飛び降りてきた2人の人影を見て……それが誰なのかを知ると、やっぱりといったように思う。
何しろそれはムラタと獪岳の2人だったのだから。
ムラタにしてみれば、十二鬼月……それも上弦の鬼と戦う好機を逃すといったような真似をする筈もない。
獪岳にいたっては、行冥との約束で十二鬼月を倒す必要がある。
そんな2人が援軍としてここにやって来るのは、ある意味で当然の事だろう。
「あの2人なら問題ない。寧ろ問題なのは、獪岳はともかくムラタは強すぎるという事だろうな」
ムラタはエヴァとの訓練を熱心に行っているし、刹那から神鳴流を習ってもいる。
実際に生身での戦いという事に限れば、シャドウミラーの中でも上位に位置するだろう。
それを示すように、行冥が義眼の移植手術やリハビリをしている間、ムラタはかなり頻繁に行冥の担当している場所で鬼と戦っていた。
その戦いにおいて、ムラタは鬼を鎧袖一触といった感じで鬼を倒している。
そんなムラタだけに、上弦の陸との戦いでも圧倒してもおかしくはない。
「どうするの? あの子達に実戦経験を積ませるつもりだったんでしょう? このままだと、こっちが一気に勝ってしまいかねないわよ?」
「そうなんだよな。とはいえ、他にも多数の者達が援軍に来ているし」
ムラタと獪岳の他にも、神鳴流の剣士が数人ドロから飛び降りている。
虚空瞬動を使って空中を蹴ったり、中には気で身体強化をしてそのまま地面に着地している者も多い。
うん、ここまで戦力が揃ってしまうと、もうどうしようもないな。
俺が炭治郎達に戦闘経験を積ませたいと思っても、こうなってしまうと……
「アクセル、お前もいたのか。そっちはゆかりだったな。……何故戦闘に参加していない?」
日輪刀を手にしたムラタが、離れた場所で様子を見ていた俺とゆかりの姿に気が付き、そう聞いてくる。
「炭治郎達に実戦経験を積ませようと思って……けど、この様子を見る限りでは、もうそれは無理そうだな」
そんな俺の視線の先では、堕姫と戦っている善逸と伊之助に対し、獪岳が乱入していた。
それもただ乱入しているだけではなく、善逸と言い争いをしながら堕姫と戦っている。
獪岳が堕姫に向かったのは、堕姫の兄は強いと判断したからだろう。
この辺りの判断力は獪岳らしい抜け目のなさだ。
獪岳は行冥との約束で多くの鬼を……特に十二鬼月を倒す必要がある。
しかし、堕姫と堕姫の兄では堕姫の方が同じ十二鬼月でも明らかに弱い。
だからこそ、獪岳は堕姫を狙ったのだろう。
……それで嫌っている善逸と共同戦線となったのは皮肉な話だが。
「ふむ……そうだろうな。俺も鬼との戦い、それも十二鬼月の上弦の鬼との戦いを譲る気はない」
戦意に満ちた様子で呟くムラタは、その視線を堕姫の兄に向ける。
獪岳は確実に手柄が欲しいので弱い堕姫に向かったが、ムラタは強敵との戦いを求めている以上、当然のように強者である堕姫の兄を狙うつもりらしい。
とはいえ、堕姫の兄とは天元と炭治郎以外にも神鳴流の剣士が攻撃している。
「血鬼術、円斬旋回・飛び血鎌!」
自分に向かってきた複数の敵を相手に、堕姫の兄はそんな血鬼術を使う。
それは両腕に血を集め、旋回と血鬼術の名前に入っていたように、渦を巻くかのような血を動かしていた。
その一撃を微かに受けた神鳴流の剣士は、腕の皮膚が裂ける。
どうやらあの両手にある血の渦に触れると、そこが裂けるらしい。
神鳴流の剣士だからこそ、皮膚が裂ける程度のダメージだったのだろう。
もしこれがその辺の鬼殺隊の剣士であれば、それこそ手足が切断していてもおかしくはなかった。
とはいえ、広範囲に攻撃をする血鬼術であっても神鳴流の剣士達は即座に離れる。
神鳴流の剣士達にしてみれば、妖怪と戦うことは珍しくない。
そして妖怪の中には広範囲攻撃をしてくるような奴も多いのだろう。
天元も柱だけあって、即座にその場から回避し……だが、炭治郎だけが1歩……いや、5歩くらい遅れてしまい、天元に引っ張られて移動する。
あの中では、明らかに炭治郎だけが動きが悪い。
これは純粋な実力の差……ん?
血鬼術で怪我をさせられた神鳴流の剣士が真剣な顔で自分の傷口に口を付け、そこから血を吸って吐き出していた。
あの様子からすると、毒か。
なるほど、広範囲攻撃をすると同時に、毒も与える訳か。
そういう意味では、効率的だな。
「ムラタ、どうする? 相手は毒を使うらしいぞ?」
「構わん。見たところ、敵の攻撃に当たらなければいいのだろう。であれば、それに対処するのは難しい話ではない」
そう言うと、ムラタは日輪刀を構えて堕姫の兄に向かって突っ込んでいく。
「ゆかり、あの毒を受けた奴の回復を頼む」
「分かったわ。……イシス!」
ペルソナを召喚したゆかりをそのままにし……
「へぇ。もしかしたら援軍がくるかもしれないと思っていたが、お前が来たのか」
後ろに視線を向けると、そこには猗窩座の姿があった。
いや、猗窩座だけではない。他にも20匹近い鬼の姿がある。
「まさかここでアクセルと遭遇するとは思わなかったがな。……だが、堕姫と妓夫太郎を殺させる訳にはいかん」
猗窩座の口から出た妓夫太郎というのが、最初は誰の事か分からずに戸惑う。
しかし、この場で堕姫と一緒に名前が出るという事は、妓夫太郎というのが堕姫の兄の事だと想像するのは難しい話ではない。
「まぁ、何だかんだと下弦の壱も殺されたからな。下弦に続いて上弦を殺されるのは……ん? どうした?」
俺の言葉に、猗窩座は不思議そうな何かを見るような視線を向けてくるものの、そう尋ねると何も言わない。
あれ? 今、何か変な事を言ったか?
そんな疑問を抱いたのだが、俺が猗窩座にそれを聞くよりも前に猗窩座が口を開く。
「行け」
短い一言の命令。
だが、その一言で今まで黙っていた鬼達は一斉に戦いの場に乱入する。
普段、鬼というのは命令されるのを嫌うのだが……それでも従うのは、やはり猗窩座が上弦の参だからというのが大きいのだろう。
そして当然のように神鳴流の剣士達が……あれ? 何か鬼と戦っている者の中に小芭内がいるようにも思えるんだが……一体何でだ?
いつ来た?
いやまぁ、いつ来たのかというのは、恐らくドロに乗って他の面々と一緒に来たというのが正しいのだろうが。
結果として、小芭内、天元、炭治郎、ムラタが妓夫太郎と戦っており、善逸と伊之助と神鳴流の剣士数人が堕姫と戦っている。
……堕姫と戦っている神鳴流の剣士は伊之助の知り合いらしく、激しく口喧嘩をしながら戦っていた。
ああ、そう言えば以前伊之助は神鳴流の剣士と組んで仕事に行った事があったな。
その時に組んだ相手か?
予想通り、神鳴流の剣士と伊之助の相性は悪そうだが。
そう思うと……ん? ちょっと見ない間に、何故か炭治郎が柱と同じくらいとまでは言わないが、それに準ずる動きをしているのに気が付く。
何で急にあんな動きが出来るようになったんだ?
そんな疑問を抱くも、今はそれよりも前にやるべき事があるのは間違いなかった。
「アクセル、俺を前に余所見をするとは、随分と余裕だな?」
「いや、そうでもない。それにしても、援軍に来たのが猗窩座と雑魚だけというのは……どういう訳だ? どうせなら他の十二鬼月を出してもいいと思うんだが」
そう尋ねるが、猗窩座は特に何も言うではなく構え……
「破壊殺、羅針」
既に見慣れた血鬼術を展開するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730