林の中で行われている戦いは、大きく幾つかに分かれていた。
堕姫と善逸、伊之助、獪岳の戦い。
妓夫太郎と天元、小芭内、炭治郎の戦い。
神鳴流の剣士やそれ以外も援軍としてやって来た鬼殺隊の剣士やムラタと、多数の鬼との戦い。
俺と猗窩座との戦い。
……ムラタは最初妓夫太郎との戦いに参加していたのだが、何故か今は多数の鬼との戦いに参加している。
あるいはこの辺は俺がムラタに対して炭治郎達に実戦経験を積ませたいと言ったのも影響してるのかもしれないが。
とはいえ、十二鬼月でも何でもないただの雑魚鬼とムラタの戦いでは一体どうなるのかは考えるまでもない。
恐らくそう遠くないうちに雑魚鬼は全滅するだろう。
なお、ゆかりは基本的にどこの戦いにも参加するような真似はせず、大きなダメージを受けた相手にイシスを使って回復するといったような事をしていた。
「はははは、やはりアクセルとの戦いは楽しいな!」
そう叫びつつ、猗窩座の口には獰猛な笑みが浮かぶ。
本来なら堕姫や妓夫太郎の援軍としてやって来た筈なのだが、今の猗窩座はそんなことを覚えているのかどうかは分からないが、そんなのは既に完全に忘れたかのように、俺に向かって攻撃をしている。
そんな猗窩座の攻撃を捌きながら、どうするべきかを考える。
いっそまた鬼眼を使うか?
そう思ったが、鬼眼を使うというのは俺にとってもある意味で運の要素が強い。
前回のように盲目にするといったような内容ならともかく、即死させるようなことになったら洒落にならない。
俺は猗窩座を殺したいのではなく、猗窩座の心を折って召喚獣としての契約を結びたいのだ。
そうである以上、ここで猗窩座を殺すといったような真似をする訳にはいかない。
「随分と嬉しそうだけど、お前は堕姫達の援護に来たんじゃなかったのか? 俺だけに夢中になっていてもいいとは思えないけどな」
頭部を目掛けて放たれる蹴りを、後ろに下がって回避しつつ、その足に触れて蹴りの威力を殺し、相手の勢いを利用するように投げを放ちながら、そう告げる。
猗窩座は空中で身体を回転させつつ投げの威力を消し、地面に着地すると俺の動きを警戒するようにしながら口を開く。
「そうでもないだろう。この場で最強の敵はアクセル、お前だ。そのお前をここで押さえておくという事は、非常に大きな意味を持つ」
ああ、なるほど。
猗窩座の言葉を聞いて、納得の表情を浮かべる。
猗窩座にしてみれば、ここにいる俺が最強の戦力であると認識してるのだろう。
実際、それは間違っていない。
この場にいる中で俺が最強だというのは、ほぼ確実だろう。
だが……猗窩座の知らない事もある。
俺は今回、基本的には積極的に戦うような真似はせず、炭治郎、善逸、伊之助に実戦経験を積ませるつもりだった。
炭治郎達がピンチになった場合は、即座に介入するつもりではあったが、言ってみればそれだけだ。
そういう意味では。俺は将棋でいう浮き駒に近い存在だった。
……いやまぁ、いざという時は介入するつもりだったのを考えると、正確には浮き駒という表現は正しくないのかもしれないが。
ともあれ、そんな状況だったのは間違いなく、猗窩座が俺に攻撃をしてこなければ、俺が戦う必要はなかった。
まぁ、これはあくまでも俺がそう考えていたという話で、猗窩座にしてみれば俺という戦力をそのままにするといったような真似は出来なかったのだろう。
とはいえ、わざわざ俺がそれを猗窩座に教えるつもりもなかったが。
それに援軍としてやって来た他の雑魚鬼はともかく、猗窩座を自由にさせるというのも不味い。
鬼殺隊の面々にしてみれば、上弦の参の猗窩座はとてもではないが勝ち目のない存在だろう。
ムラタ辺りなら、それこそ嬉々として猗窩座との戦いを楽しんでもおかしくはないが。
戦いによって至高の領域を目指すという猗窩座と、強さを求めるムラタの相性は決して悪くはないだろう。
問題なのは、ムラタと戦った場合は最終的に猗窩座が死んでしまいかねないという事だ。
「次はこっちから行くぞ。……俺も日輪刀を入手したからな。折角だしこれを使わせて貰おうか」
「好きにしろ」
俺が日輪刀を構えると、猗窩座はそんな風に呟く。
てっきり猗窩座の事だから格闘ではないと納得出来ないのかと思っていたのだが、これは俺にとってもちょっと意外だった。
俺が日輪刀を構えた瞬間、不意に少し離れた場所で爆発があり、周囲に炎を撒き散らかす。
上空にいるドロからのフレイボムだ。
そのフレイボムの一撃が、雑魚鬼の集まっていた場所に向かって放たれたのだろう。
危ない真似をするな。
今の状況を見て、素直にそう思う。
現在地上では、鬼殺隊の剣士や神鳴流の者達も戦いを行っている。
そんな場所にフレイボムを撃ち込んだのだから、これは少しやりすぎなのは間違いないだろう。
とはいえ、勿論ドロに乗っている者達も狙った場所には鬼しかいないのを確認してから、今の一撃を放ったのだろうが。
ただし、フレイボムの一撃はあくまでもナパームだ。
鬼に対して一時的にダメージを与える事は出来るが、日輪刀のように致命的な一撃といった訳ではない。
足止めとしては十分かもしれないが。
「どこを見ている、アクセル! 破壊殺、鬼芯八重芯!」
一瞬にして俺の側まで近づいてきた猗窩座が、左右それぞれで素早く4発、合計8発の一撃を放つ。
その一撃を回避した俺は、赫刀とはまた違う赤く染まった刀身で猗窩座の左腕を切断する。
「ぐお……ぐ……があああああああああっ!」
その一撃を受けた猗窩座は、驚きと共に後方に跳躍すると、痛みに悲鳴を上げる。
何だ? 今まで猗窩座にダメージを与えた事は多かったが、それでもここまで痛がるといったような事はなかったんだが。
だとすれば、これは一体どういう事だ?
そんな疑問を抱くも、考えてみればそう難しい話ではない。
俺の日輪刀は、猩々緋鉱石のように地球上にある金属ではなく、より直接的に太陽に近い場所から入手した金属で出来ている。
鬼の苦手な太陽の光を、より間近で浴びていた代物だ。
そうである以上、普通に日輪刀で斬られるよりも強烈な痛みを覚えてもおかしくはない。
赫刀ですら、普通の日輪刀よりも強烈な痛みを鬼に与え、更には鬼の治りを遅くするという効果を持つ。
そんな赫刀の上位互換である俺の日輪刀だけに、猗窩座がこのようになるのはある意味で当然だった。
そして切断された腕を押さえて猗窩座は、痛みに歪んだ顔で俺を睨み付けてくる。
「アクセル……お前のその日輪刀……一体なんだ? 普通の日輪刀とは違うな?」
「そうだな。普通の日輪刀と同じという訳じゃない。だが……だからといって、具体的にこれが何なのかを教えるとも思ってはいないだろう?」
「……」
俺の言葉に無言の猗窩座。
自分で言っても、まさか俺が素直に日輪刀の秘密を言うとは思っていなかったのだろう。
実際には、この日輪刀……いや、太陽の側で入手した岩塊に入っていた猩々緋鉱石については、実はまだ分かっていない事も多いんだよな。
そういう意味では、これを説明しろと言われても実は俺もあまり分からなかったりする。
「さて、もう少し戦いを続けるか。俺にとっては……」
そう言おうとした瞬間、不意に歓声が聞こえてくる。
堕姫と妓夫太郎、2匹の鬼の首がそれぞれ切断されたのだ。
……なるほど。堕姫の首を切断しても死ななかったが、堕姫と妓夫太郎は2匹で1匹の鬼だったのか。
つまり、どちらか片方の首を切断しただけでは意味がなく、双方の首を切断してそれでようやく倒す事が出来る、と。
ちなみに見た感じだと、堕姫の首を切断したのは獪岳で、妓夫太郎の首を切断したのは炭治郎だった。
伊之助は獲物を取られたと認識した為か、獪岳に食って掛かっているが……その獪岳は、伊之助を全く相手にしていない。
獪岳の気持ちも分からないではない。
獪岳は十二鬼月や鬼舞辻無惨を殺すといった約束があるのだから。
だというのに、今まで獪岳は鬼舞辻無惨は勿論、十二鬼月を殺す事も出来なかった。
それが今回ようやく十二鬼月を殺す事が出来たのだから、獪岳にとって思うところがあるのは当然だろう。
それも今まで何度も倒されている下弦の鬼ではなく、上弦の中では一番下とはいえ上弦の陸を殺したのだ。
……もっとも、正確には獪岳が殺したのは上弦の陸の半分だったりするのだが。
これで妓夫太郎の首も獪岳が切断していれば、文句なしだったろうに。
そう思うも、今はそれよりも猗窩座だな。
「で、どうする? お前が助けに来た堕姫と妓夫太郎は死んだ。それでもまだ戦うのなら、俺もこの日輪刀の力をもう少し確認したいから構わないが」
俺の言葉を聞いた猗窩座は、1歩前に出て……だが、そのまま後方に跳躍して間合いを取る。
「ここは退こう」
そう言うと、そのまま猗窩座は走り去る。
一瞬追うか? とも思ったが、今回ここで猗窩座と遭遇したのはイレギュラーだ。
それに猗窩座の心を折るという意味では、俺の持つ日輪刀が十分以上にその効果を発揮した。
腕を折られようが、全く痛みを感じない様子で再生する猗窩座。
そんな猗窩座が、腕を切断された瞬間に身も蓋もない悲鳴を上げたのだ。
……ちなみに切断された猗窩座の左腕は、撤退する前に猗窩座が確保していった。
猗窩座は鬼なんだし、恐らくあの腕も繋げる事が出来るんだろうな。
ただ、赫刀とはまた違う意味で普通ではない俺の日輪刀で切断されたのだ。
痛みの件はともかく、それを再生するといった真似は容易に出来るのかといった疑問はある。
ともあれ、猗窩座の件はこれでいいとして……
「雑魚鬼も全滅か」
神鳴流の剣士や鬼殺隊の剣士、ムラタによって首を切断された大量の鬼を見ながら、そんな風に思う。
猗窩座と戦っている時も何度か確認したが、実は鬼を殺した数ではムラタが一番多かったりする。
「人数が多かったせいか、怪我人はそれなりに出たけど、死人はいないわ。怪我人も私が回復魔法で治療しておいたし」
ゆかりがそう言いながら、俺の側にやって来る。
ゆかりにしてみれば……というか、鬼殺隊側にしてみれば、今回の戦いは戦力過多だったのは間違いない。
何しろ最終的には柱が2人に、神鳴流の剣士達、ムラタ……そして何より俺とゆかりがいた。
炭治郎達は純粋な戦力としてはそこまででもなかったが、炭治郎は何故か戦闘の途中で一気に強くなった。
最初は天元の足を引っ張っていた面があったのに、気が付けば普通に天元と同じくらいの実力を発揮していたのだから。
この辺り、さすがに主人公といったところか。
一体どういう理由で一足飛びに強くなったのかは、俺には分からなかったが。
「そうか、助かる。特に毒の件を考えると、ゆかりを連れて来てよかったと心底思うよ」
妓夫太郎の攻撃は、相手に毒を与えるという点で非常に厄介だったのは間違いない。
もしゆかりがいなければ、毒をどう対処していたものか。
……あるいはこの世界の原作においては、天元はこの戦いで死んでいたのかもしれないな。
この戦いに参加していたのは、炭治郎達と天元。
だが、主役の炭治郎と、その仲間の善逸と伊之助はそう簡単に死ぬといったような事は考えられない。
だとすれば、炭治郎達とは絡みの少なかった天元が死んでいた可能性がある。
いや、それとも小芭内が死んでたのか?
その辺はちょっと分からないが、どのみちこの歴史では誰も死なずにすんだのは間違いない。
もっとも、堕姫は遊郭で派手に暴れた。
その口止めであったり、補償であったりで耀哉はかなり忙しい事になりそうだが。
「ともあれ……ああ、そうだ」
何故か言い争いをしている堕姫と妓夫太郎の首。
そんな首はそのまま残し、俺はまだ残っている身体に近付いていく。
さて、堕姫と妓夫太郎が死ぬ……消滅するよりも前に、身体を確保しておきたいところだが、どうだ?
そう考えて堕姫と妓夫太郎の身体に触れると……よし! 空間倉庫に無事収納された。
本来なら、生き物を空間倉庫に収納するような真似は出来ない。
しかし、鬼の場合は恐らく頭部の方が本体という認識なのだろう。
あるいは、日輪刀によって首を切断された場合に限るのかもしれないが。
詳しい理由までは分からないが、十二鬼月の上弦の鬼の身体を確保出来たというのは大きい。
周囲で俺の空間倉庫について知らない者達が驚愕の視線を向けているが、それはスルーしておく。
とはいえ……堕姫と妓夫太郎が死んだ場合、その胴体もそう遅くないうちに砕けると思うが。
十二鬼月、それも上弦の死体であることを考えると、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、何とかなる可能性も否定は出来ないし、それに頼っているのだが。
「さて、ともあれ……俺達は上弦の鬼に勝ったんだ。それにここは街の外で、周囲に人家もない。少しくらい喜びの声を上げてもいいんじゃないか?」
そう告げる俺の声に、鬼殺隊の面々は一瞬黙り……次の瞬間、勝利の雄叫びを上げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730