「ここが……鬼殺隊の隠れ里……」
珠世が鬼殺隊の隠れ里を見て、そんな風に呟く。
結局珠世は、俺の言葉……正確には耀哉からの要求を受け入れた。
珠世にしてみれば、鬼舞辻無惨を殺せるだけの実力を俺達が持っている以上、自分だけで鬼舞辻無惨を殺すといったような真似は出来ないと考えたのだろう。
あるいは青い彼岸花の一件も大きな衝撃を与えたのかもしれないが。
正直なところ、青い彼岸花に関しては恐らく鬼が探している……それも貿易商に直接指示が出来るという事から、恐らくは鬼の中でも上層部の仕業だと考えてはいたし、そうなると鬼舞辻無惨の可能性が高いとも思っていた。
しかし、結局のところ鬼舞辻無惨であるという決定的な証拠の類はなかったのだが……それが珠世のおかげで、鬼舞辻無惨が青い彼岸花を探しているというのを知れたのは大きい。
しかも青い彼岸花には人を鬼にする効果があるかもしれないというのを知れたのも大きいだろう。
そういう意味でも、俺が珠世に会いに行った甲斐はあった。
ちなみに珠世の住んでいた家からここまでは、俺の影のゲートでの移動となった。
何しろ珠世は……後ついでに愈史郎は鬼だ。
そうである以上、歩いて移動するとなると無駄に時間が掛かる。
まぁ、珠世も愈史郎も、影のゲートについては驚いていたが。
「ああ。鬼滅隊の隠れ里だ。……珠世にとっては、まさかここに来るような事があるとは思ってもいなかっただろう?」
「そうですね。私は鬼舞辻無惨と敵対しているとはいえ、それでも鬼です。そんな私が、まさか鬼殺隊の隠れ里に来るなど……正直なところ、まだ実感が湧きません」
「その辺は耀哉……鬼殺隊を率いている人物と会えば、多少は実感が湧くかもしれないな」
そんな風に言いながら、俺とマリュー、炭治郎、禰豆子、珠世、愈史郎は鬼殺隊の隠れ里を歩く。
ちなみに珠世達が普通に外を出ているのを見れば分かるように、今の時間は夜で空にあるのは太陽ではなく月だ。
この辺は鬼なんだからしょうがないよな。
「鬼殺隊を率いる人物ですか。……私が会ってもいいのでしょうか?」
「会ってもいいかどうかと言われれば、会ってもいいだろ。そもそも耀哉の方から珠世を招待したんだから」
珠世にしてみれば、耀哉に対して色々と思うところがあるのだろう。
「そう、ですか。……では、これからすぐに行くのでしょうか?」
「この隠れ里を見て回ってからだな。鬼殺隊の隠れ里がどんな場所なのか、しっかり見て貰おうと思ってるんだと思うぞ」
そう言いながら、マリューの方を見る。
「どうしたの?」
「いや、マリューはどうするのかと思ってな。俺達と一緒に鬼殺隊の隠れ里を見て回るか、それとも別行動を取るか」
「アクセルと一緒に行動するわ。そっちの方が面白いでしょうし」
「……別に面白いとか、そんな風にはならないと思うんだがな、いやまぁ、マリューがそれでいいのなら構わないけど。なら、そうだな。まずは蝶屋敷に向かうか。耀哉との話が決まれば珠世はそこで働くようになると思う」
しのぶがいるので、そこでも研究を行っているのは間違いない。
それはつまり、珠世が鬼殺隊と合流する際にも蝶屋敷で働く事になるのを意味している。
それ以外にも、しのぶは鬼に対して友好的に思っている者の1人だ。
……実際には姉から受け継いだ思想といった感じなので、本当に心の底からどうかと思うのかと言われれば、正直微妙なところだが。
ただし、蝶屋敷で働く上で問題があるのも事実。
具体的にはやっぱり愈史郎だろうな。
俺と会った時のように喧嘩腰であった場合、珠世が鬼殺隊に合流してもその居心地は決していいものではない筈だ。
愈史郎の存在によって、珠世が鬼殺隊でどうなるのかといった事が変わるのは……まぁ、その辺は俺がどうこう言うような事じゃない。
愈史郎が珠世を大事に思っていれば、言動に注意するだろう。
それでも全く関係なく今まで通りのやり取りをするとなれば……その時はその時で鬼殺隊としても相応の態度を取る。
場合によっては、小芭内や実弥といった鬼に対するタカ派の連中が出て来るかもしれないが、そうなっても自業自得だろう。
「ちなみに蝶屋敷は炭治郎が拠点としてる場所でもある。そういう意味でも、珠世にとってはいい場所かもしれないな。禰豆子を人間に戻す薬を作るにも、禰豆子の協力は必要だろうし」
「そうですね。禰豆子さんの協力が得られれば、薬の完成も早くなると思います。以前と比べると、そちらの薬はかなり進んでいたのですが」
薬の開発が進んだのは、当然のように鬼舞辻無惨の血を入手した事だろう。
炭治郎から聞いた話によると、鬼舞辻無惨の血が濃く、あるいは大量に貰っているという意味で十二鬼月の血を手に入れる必要があると言っていた。
だが、そこで俺が猗窩座との戦いによって勝利し、結果として十二鬼月ではなく鬼舞辻無惨の血そのものを入手する事が出来るようになった。
そのおかげで、珠世の研究も無事に進んだのだろう。
「むー?」
自分の名前が呼ばれたのに気が付いたのか、周囲の様子を見て回っていた禰豆子が興味深そうに近付いてきてそう声を掛けてくる。
「何でもないよ、禰豆子。だからもう少し遊んでおいで」
「むー!」
炭治郎の言葉を聞き、禰豆子は再び俺達の前から走り去る。
こうして興味深そうに歩き回っているのを見れば、鬼だとはとても思えないんだけどな。
もっとも、だからこそ禰豆子は他の鬼と違うのだろうが。
「とにかく、いつまでもこうしてここにいても仕方がない。蝶屋敷に向かうぞ」
そう言い、俺は蝶屋敷に向かうのだった。
「うん、まぁ……こうなる事は予想して然るべきだったかもしれないな」
蝶屋敷の庭で、善逸と愈史郎が睨み合っている。
事の経緯は、蝶屋敷にやって来た俺達を見て、善逸がいつものように血の涙を流しながら見てきたのが始まりだった。
マリューの一件でまたか? と思ったが、今回善逸の視線を受けていたのは、マリューではなく……珠世。
善逸にしてみれば、珠世はかなり年上――実年齢はともかく、外見からでも――であるのだが、それでも好みだったのだろう。
そして珠世に心酔している愈史郎がそんな善逸の態度を許容出来る筈もない。
愈史郎の行動によって珠世の評価も落ちるという話をしてはいたのだが、その時は俺や炭治郎は珠世に対してそんな視線を向けるような事はなかった。
だからこそ問題はなかったのだろうが、善逸の存在は愈史郎にとって許容出来なかったのだろう。
結果として、蝶屋敷の庭……いつもエヴァと訓練をしている場所で善逸と愈史郎は睨み合う事になったのだ。
「あの……アクセルさん。これはいいのでしょうか?」
珠世が少し心配そうに尋ねてくる。
俺との一件の事を気にしてるのだろう。
「まぁ、今回の件はな。……それに善逸は俺の弟子……いや、生徒か? そんな感じだから、取りあえず気にする必要はない」
善逸は俺を先生と呼ぶので、そういう意味では生徒と呼ぶ方がいい。
エヴァの場合は、善逸を弟子と呼ぶのが相応しいだろうが。
「そうですか。ありがとうございます」
「別に礼を言う必要はないと思うけどな。……善逸にしてみれば、珠世にちょっかいを出したいと思っていたところで、それを愈史郎が邪魔をしたという感じか」
「ちょっかい……ですか? やはり鬼だからでしょうか?」
珠世から出たその言葉に、勘違いしているのを理解する。
それを指摘しようとしたところで、俺よりも前にマリューが口を開く。
「勘違いしてるみたいだけど、この場合のちょっかいというのは絡んでくるという意味のちょっかいじゃなくて、口説くという意味のちょっかいよ?」
「……え? 私を、ですか?」
マリューの言葉は珠世にとっても完全に予想外だったのだろう。
きょとんとした表情を浮かべて、そう言う。
「そうね。珠代さんは美人だもの。あの善逸という年齢の男の子にしてみれば、綺麗な年上のお姉さんよ?」
「えっと……その……」
戸惑った様子の珠世。
珠世にしてみれば、自分を女として見ている相手がいるというのは信じられないだろう。
とはいえ、珠世が美人なのは間違いない。
鬼として滅多に表に出るような事はなくても、何らかの用事で家から出る事はあるだろうし、そうなればナンパ……いや、大正時代だともっと別の表現か? ともあれ、口説かれるといったような事があってもおかしくはない。
「私は一応結婚していたのですが……」
そう言い、一瞬だけ珠世の表情に辛そうな色があった。
多分……本当に多分だけど、珠世が鬼になった時に鬼舞辻無惨に殺されたんだろうな。
炭治郎の家も、禰豆子以外は鬼舞辻無惨によって他の家族を殺されていたらしいし。
珠世が鬼舞辻無惨を恨むのは、そのような理由もあっての事だろう。
「その辺は善逸にも分からないんだろ。それに……結婚してはいたが、それは昔の話で、今は独身なんだろう? いや、もしかして愈史郎とそういう関係とか?」
「愈史郎は私の息子のようなものです」
きっぱりと珠世がそう告げると、善逸と何やら言い争いをしていた愈史郎が地面に膝を突く。
あー……精神的なダメージを与えてしまったらしいな。
珠世は愈史郎を息子のように思っているのは間違いないが、俺が見た感じでは愈史郎は珠世を1人の女として愛している。
そんな相手に息子のようなものと言われれば、愈史郎がショックを受けるのも当然だろう。
そして……善逸にも今の声が聞こえていたのか、愈史郎に追撃の言葉を投げると思いきや、何故か愈史郎を慰めていた。
今の一連のやり取りは、善逸の目から見ても愈史郎を哀れに思ったのだろう。
結果として、一触即発の状態が解消されたのだからいいのかもしれないが。
「これは……一体何の騒ぎですか?」
と、そんな場所に不意に姿を現したのは、アオイ。
その隣にはいつものように猪の被り物をした伊之助の姿もある。
アオイと伊之助か。また珍しい組み合わせだな。
遊郭の一件が終わった後で、アオイが伊之助の治療をしていたのは見ている。
あの件で仲良くなったのか?
とはいえ、生真面目な委員長気質のアオイと、野生児の伊之助というのは相性的にかなり悪そうな気もするが。
あるいは仲良く喧嘩をするようなタイプか。
ともあれ、あの2人が一緒に現れたのは俺にとっても予想外で、伊之助を初めて見る珠世と愈史郎は、唖然とした表情を浮かべている。
マリューも……うん、マリューもまた驚いてるな。
一体何故? と思ったが、炭治郎と合流する為に蝶屋敷に来た時、顔を出したのは善逸だけで伊之助はいなかった。
だとすれば、マリューも伊之助は初めて見るのか。
「ちょっとしたお遊びだよ」
「アクセルさん……いえ、分かりました。ですが、あまり大きな騒動は起こさないで下さいね」
アオイは結局特に怒るような真似はせず、そう告げてくる。
アオイにしてみれば、俺はしのぶを治療している恩人だ。
それだけに、責めるような真似は出来なかったのだろう。
勿論、それにも限度がある。
善逸と愈史郎がもっと激しく争っていれば、それこそ俺が恩人であってもすぐに叱りつけてきただろう。
そういう意味では、善逸と愈史郎が何故か分かり合うといったような状況になっていたのは、ある意味で幸運だったのかもしれないな。
「分かった。それと、しのぶがいない今、この蝶屋敷の責任者はアオイだよな? 耀哉の方から連絡が来てると思うが、こっちの女が珠世、そっちの男が愈史郎だ」
「はい。蝶屋敷に住むことになるとか。……お話は伺っています」
そう言いながらも、アオイが忌避感を表さないのは、やはり禰豆子の件があるからか。
生真面目な性格をしているアオイだが、それだけに無邪気に自分に懐いてくる禰豆子を可愛がっているらしい。
実際、以前柱合会議で禰豆子がいつも入っている箱を壊された時も、それを直したのはアオイだったらしいし。
勿論、アオイが許容する鬼はあくまでも禰豆子であり、同時に人に危害を加えない鬼に限る。
そういう意味では、珠世と愈史郎はアオイが受け入れるべき相手として十分だったのだろう。……いや、愈史郎の誰彼構わず喧嘩を売る性格を考えれば、アオイが受け入れるかどうかは微妙だが。
ただ、俺との一件で無意味に相手に喧嘩を売るような真似をすれば、それが珠世の評価を落とすという事を知った以上、今後は性格を直すと思うが。
善逸ともそれなりに分かり合っている様子だったし。
伊之助と愈史郎の相性は悪いと思うが、その辺は今の様子を見る限り、アオイがどうにかしてくれるだろう。
「よろしくお願いします、アオイさん。私は珠世。そちらにいるのは私の身内で愈史郎といいます」
珠世がアオイに向かって挨拶をすると、アオイもその表情を微かに緩め、笑みを浮かべて口を開く。
「ようこそ、珠世さん。しのぶ様が戻ってくるまでの短い間ですが、できるだけ不便を掛けないようにしますので、よろしくお願いします」
こうして、何だかんだと珠世と愈史郎は蝶屋敷の面々とそれなりに友好的な関係を築く事に成功するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730