結局人形から出て来た日輪刀は、鋼鐵塚の一族に伝わるという研磨術で研がれることになった。
なんでもその研磨術はかなり集中して行われるものらしく、下手に見に行ったりとかするのは駄目らしい。
刀鍛冶の里に来てそれなりに時間が経ったが、その研磨術とやらはかなり面白そうな気がしただけに、見物出来ないというのは少し残念だった。
そんな訳で、翌日以降も色々と見て回っていたのだが……
「お?」
視線の先に見えた光景に、思わず声を出す。
その視線の先では、五飛と獪岳が模擬戦を行っていたのだ。
とはいえ、これそのものはそこまで珍しいことではない。
今の状況を思えば、五飛も獪岳も少しでも強くなる為に、連日のように模擬戦を行っているのだが。
それでも俺がそんな声を発したのは、模擬戦が行われているものの、その模擬戦は正確には今まで見てきた模擬戦とは違っていた為だ。
具体的には、五飛と獪岳が模擬戦をやっているのは間違いないが、それは2人が戦っているのではなく……そんな2人が無一郎と戦っていた、というのが正確なところだ。
とはいえ、さすが柱。それもたった2ヶ月で柱になった天才剣士だけの事はある。
五飛と獪岳という、現状において鬼殺隊の中でも上から数えた方が早いだろう実力を持つ2人――正確には五飛は鬼殺隊の剣士ではないのだが――を相手に、互角以上の戦いを繰り広げていた。
獪岳はムラタに鍛えられ、かなり実力が上がっている。
五飛もまた、気による身体強化があるので、かなりの強さを持つのだが……ああ、でも五飛が使っているのは炎の呼吸であって、気による身体強化は使ってないな。
こう言ってはなんだが、だからこそ五飛と獪岳を相手に無一郎は有利な状態で戦いを行えているのだろう。
とはいえ、五飛は別に手を抜いている訳ではない。
元々五飛が鬼滅世界に来たのは、呼吸という新しい技術を身に着ける為だ。
だからこそ、五飛はその実力を最大限発揮するような真似をするのではなく、あくまでも呼吸を使って無一郎と戦っていたのだろう。
にしても……五飛の呼吸は炎の呼吸か。
五飛の性格を思えば、水の呼吸の方がらしいと思うんだが。
あ、でも五飛がW世界で乗っていたガンダム……改修前のガンダムは、火炎放射器を使っていた。
そう思えば、もしかしたら炎の呼吸を使ってもそこまでおかしくはない……のか?
いやまぁ、それでも五飛に炎の呼吸が合うかどうかと言われれば、俺としては微妙と答えると思うが。
そんな風に考えている間にも模擬戦は続き……最終的に、無一郎の勝利で終わる。
「うん、なかなかいい戦いだったよ。また機会があったらお願いするね」
「ぐ……ありがとうございました……」
「シェイシェイ」
そんな様子を眺めていると、無一郎が俺のいる方に向かって歩いてくる。
「どうしたの、こんなところで。見ていて面白かった?」
無一郎のその問いに頷く。
「そうだな。見ていてそれなりに面白かった。無一郎もあの2人を相手にしての模擬戦はかなり手強かったんじゃないか?」
「そうでもないよ。ただまぁ……あの人形よりは十分な訓練が出来たかな」
その人形については、教えた方がいいのか?
あの人形の中にあった日輪刀とか……いや、無一郎の性格を考えれば、そこまで気にするような事じゃないか。
あるいは、あの日輪刀について教えた結果、それを自分の物にするとか……いや、ないか。
無一郎は基本的に物欲はそんなに高くない。
もし日輪刀を見ても、それを欲しいとは言わない……と思う。
ただ、聞いた話によると、あの人形の腕を1本破壊した時、その腕が持っていた日輪刀を自分が使うと言っていたらしい。
そう考えれば、実は物欲もあったりするのか?
「そうか。なら、ここに来た甲斐はあったのか?」
「うーん、どうだろうね。色々と気になったのはあったけど。……俺と戦う?」
何故急にそんな話になったのかは、俺にも分からない。
だが、無一郎にしてみれば、俺と戦ってみたいと思ったのだろう。
……まぁ、その気持ちは分からないではない。
鬼殺隊の中でも柱が数人集まって、ようやく上弦の鬼と互角に戦えるのだが、俺はそんな上弦の鬼の中でも上位に位置する上弦の参である猗窩座に勝ち越している。
少しでも強くなりたい無一郎にしてみれば、俺と戦いたいと思うのは自然な事だろう。
「そうだな。なら、少しやるか。俺も少し日輪刀を使いこせるようになりたいと思っていたしな」
そう告げると、俺空間倉庫の中から日輪刀を取り出す。
武器を使って戦う時、俺は基本的にゲイ・ボルクを使う。
実際、鬼を殺す事も可能である以上、本来なら鬼と戦う時はゲイ・ボルクを使えば問題はない。
だが……折角鬼滅世界に来たのだから、この世界特有の武器である日輪刀を使いこなせるようにしてもいい。
純粋に日輪刀……というか刀を使いこなすというだけなら、綾子から習っても……いや、駄目だな。
綾子が使っているのは物干し竿であって、普通の日輪刀よりも刀身が圧倒的に長い。
とはいえ、行冥の使っている鉄球も日輪刀という分類なのは間違いない。
鉄球で刀というの、どうなんだと思わないでもなかったが。
ともあれ、綾子は武芸百般で剣道や薙刀といった武術にも通じてる。……ただし、綾子の場合の武芸百般というのは人間の使う武道というか……そんな感じだ。
もっとも、綾子は半サーヴァントになった事で凛と一緒に時計塔に行き、そこでも色々な騒動に巻き込まれていると聞く。
つまり、基礎は剣道や薙刀とかで習得し、実戦経験はそういうトラブルで積んできた。
そういう意味では綾子から教えて貰うというのはいいのかもしれないが……無一郎に限らず、柱の面々も基礎は育手によって習得し、その後に鬼との戦いで十分に実戦経験を積んできている。
「ふーん、それが太陽の側から持ってきたっていう猩々緋鉱石を使って作った日輪刀?」
「ああ、俺専用の日輪刀だ。……もっとも、完全に使いこなすといった訳にはいかないがな」
そう言う俺の言葉を聞いても、無一郎は特に気にした様子もなく俺に向かって日輪刀を構えて視線を向けてくる。
そして次の瞬間、無一郎は一気に地面を蹴って俺との間合いを詰めてくる。
瞬時に放たれたその一撃は、しかし俺が横に移動することによって回避される。
同時に日輪刀によって横薙ぎの一撃を放つも、無一郎は俺の一撃を受け止め……だが、そのまま後ろに吹き飛ぶ。
いや、違うな。これは吹き飛ぶのではなく、俺の力を使って後ろに跳んだという方が正しいな。
そうして俺と間合いを取った無一郎は、鋭い視線を俺に向けている。
今の一合で俺の能力は十分に理解出来たのだろう。
……なお、そんな俺と無一郎の模擬戦の様子を、五飛と獪岳は興味深そうに見ている。
見取り稽古という言葉もあるように、俺と無一郎の戦いは見ているだけで十分に訓練になるのだろう。
「行くぞ」
そう呟き、瞬動を使って無一郎との間合いを詰める。
その動きに一瞬遅れて反応し、日輪刀を構え……無一郎の日輪刀の白い刀身と俺の持つ日輪刀の赤い刀身がぶつかる。
だが、無一郎は腕利きの剣士ではあるが、まだ子供だ。
ある程度は呼吸の力で補えるかもしれないが、それでも俺の一撃を正面から受けるといった真似をすれば……
「っ!?」
まさかこの状況で自分が吹き飛ばされるとは思っていなかったのか、無一郎の表情は驚愕に歪んでいた。
だが、それでもさすがに柱。
空中で体勢を整えると、木の幹に上手い具合に着地し……同時にその勢いを使って俺との間合いを詰めてくる。
「空中で攻撃をするのは、普通の人間にとってはマイナスだぞ!」
鋭く放たれた一撃を回避し、そう告げる。
例えば俺のように空を飛べる者……もしくは、せめて虚空瞬動を使って空中で移動出来るのならまだしも、呼吸で空中を飛んだり足場に出来たりといった事は出来ない。
いや、あるいはもしかしたらそんな真似が出来る呼吸の技もあるのかもしれないが、生憎と俺は知らない。
そして実際、無一郎もそんな技は知らなかったらしく、俺が攻撃を回避した事でそのまま地面に向かっていき、再び空中で身を捻って地面に着地する。
「ふぅ、やるね」
どうやら模擬戦はこれで終わりらしく、無一郎は日輪刀の構えを解きながらそんな風に言ってくる。
「そっちもな。さすがに柱と言うべきか」
「ふん、何を言ってるのさ。本気じゃなかった癖に」
俺が全力で戦っていないというのは、無一郎にも分かったらしい。
そもそも俺にとって必要なのは、あくまでも日輪刀の扱いに慣れる事だ。
そうである以上、身体能力を全開にしたり、スキルの類を使ったりするよりも、きちんと日輪刀でやり合った方がいい。
それに……俺が本気でなかったのは事実だが、それは無一郎も同様だった。
「それを言うなら、無一郎も霞の呼吸は使ってなかっただろう?」
「うん。これは訓練だしね。それに、お館様があそこまで言うあんたがどのくらいの力があるのか、見てみたかったし」
そう言うと、それ以上は俺の言葉を聞いたりはしないままでその場を立ち去る。
短時間ではあったが、それでも今の模擬戦にはそれなりに満足したのか、無一郎の口元には少しだけ笑みが浮かんでいるように思えた。
ともあれ、無一郎が去っていくと五飛と獪岳が近付いてくる。
「で、どうだった? 俺と無一郎の模擬戦は、それなりに見るべきものはあったか?」
「……ふん」
五飛は鼻を鳴らして不満そうな様子を見せるが、それでも明確に否定しなかったということは、何らかの収穫はあったのだろう。
獪岳の方は、難しい表情を浮かべて俺の方を見ている。
何かを言おうとしているものの、結局それは声に出ない。
結局その場はそれで解散し……俺は刀鍛冶の里の子供達と一緒に山に遊びに行くのだった。
「アクセルさん、この魚美味しいですね!」
子供達が嬉しそうに俺が獲った魚を食べる。
木の枝によって刺された魚は、新鮮なだけに塩を振って焼いただけで十分に美味い。
本来ならヌメリをとったり、内臓を取ったりといったような下処理をした方がいいんだろうが……釣りたての魚を食う時には豪快にいった方がいい。
そして実際に焼き魚は美味いのだから、それに誰も文句を言うような者はいない。
「ああ。とはいえ、獲りすぎると川から魚がいなくなるから、その辺は注意する必要があるけどな」
とはいえ、個人で食べる分を獲るくらいなら何も問題はないと思う。
商売にしようとして、投網とかで手当たり次第に獲るといったような事をすれば、その場合は話が別だが。
「この川にいる魚を全部……一体どのくらいの数になるのかな!?」
魚を一心不乱に食べていた子供の1人が、今の会話を聞いて興味津々といった様子で叫ぶ。
実際、この川はそれなりに大きな川だし、かなりの長さを持つというのを考えると、かなりの魚が棲息していると思われる。
「そういう考えはやめておけ。一度に食べきれないくらいに魚を獲って腐らせるよりも、必要な時に必要なだけ魚を獲ればいいだろう?」
「えー……だって腹一杯食べたいもん」
ひょっとこのお面の、口の部分だけをずらして魚を食べていた子供が不満そうにそう告げる。
子供だけに、食べられるだけ食べたいと思っているのだろう。
その気持ちは分からないでもなかったが、だからといって……いやまぁ、それでも今回魚を獲れたのは俺が協力したからだ。
もし俺がいなければ、そう簡単に大量の魚を獲ったりは出来ないと思う。
「魚をどうするのかは、鉄珍とかに聞いてみるといいかもしれないな」
この刀鍛冶の里の長でもある鉄珍だけに、当然川魚を一気に全部獲るといったような事を子供達がやりたいと言っても、それを止めさせるだろう。
あるいは飢餓状態にあるのなら、また話は別かもしれないが。
そうして魚を食べていると、別の子供が俺に向かって話し掛けてくる。
「ねぇ、アクセル兄ちゃんって日輪刀を持ってるんでしょ? ちょっと見せてよ」
「え!? 日輪刀を持ってるの!? 私も見たい!」
そう言い、殆どの子供達が興味深そうな視線を向けてくる。
刀鍛冶の里の子供達だけあって、やはり日輪刀には興味津々なのだろう。
この子供達に日輪刀を見せてもいいのか?
少しだけそう思ったが、刀鍛冶の里の子供達なんだから別にいいかと思い直す。
「ほら、これが俺の日輪刀だ。言うまでもないだろうが、扱いには気を付けろよ」
普通の子供なら、日輪刀を手にした場合はそれを持ってはしゃぎ、誤って自分……あるいは周囲の者達に怪我をさせてもおかしくはない。
だが、さすが刀鍛冶の里の子供達。
刀を取り扱う手つきは慎重で、他の者達も日輪刀を見てはしゃぐといったような真似はせず、真剣に見ている。
ひょっとのこお面を被ってるので、その表情は分からない。
しかし、雰囲気で真剣に見ているというのは、明らかだ。
そうして、俺は暫く子供達が日輪刀を見るのを眺めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730