「がああああああああああああああああああアアアアアアアアアアaaaaaaaaaaaaああああああっ!」
血を飲んだ猗窩座の口から、そんな悲鳴が漏れる。
いや、その言葉は悲鳴と呼んでもいいのかすら分からないような、そんな絶叫だった。
俺の血の持つ魔力が、猗窩座に大きな影響を与えているのは間違いないだろう。
しかし、それが具体的にどのような影響を与えているのかは分からない。
そもそも今まで俺の血を飲んで無事だったのは、グリと刈り取る者だけだ。
……あ、いや、召喚の契約という訳ではないが、一応エヴァも俺の血を飲んではいたが。
もっとも魔力が強すぎるとして、あのエヴァでさえ苦しみ悶えていたのだが。
そう考えると、実はエヴァを倒す際の最善の攻撃方法って、もしかしたら俺の血を飲ませる事だったりしないか?
まぁ、エヴァの性格を考えれば、それで戦闘不能になるといったような事はないように思えるが。
それに……俺の血は魔力が濃縮している。
その濃縮によって一気に魔力を飲むからエヴァでさえも苦しみ悶える訳だが、俺の血によって魔力を回復するのも事実。
それは俺の血を薄めて飲むことによって魔力を回復しているのを見れば、明らかだろう。
つまり、一時的に悶え苦しむといったような状況になったとしても、最終的にはエヴァは俺の血によって魔力を回復し……もし俺の血を飲ませたような奴がいれば、壮絶なお仕置きといったような事になるだろう。
と、そんな風にエヴァについて考えていたところだったが、絶叫していた猗窩座に異変が生じ始めた。
勿論今もまた絶叫しているのだが、首から伸びた血が先程の戦いで俺に胴体を吹き飛ばされ、その結果として地面に転がっていた手足に向かい……それに触れると、首の方に引っ張ってきたのだ。
とはいえ、手足と頭部があっても胴体はないのだが……そんな風に思っていると、血が固まって急速に胴体を作っていき……その動きが一瞬止まると、不意に胴体から大量の血が地面に向かって吐き出された。
それは、先程のように手足を引っ張るといったような真似をするのではなく、身体の中にあるいらないゴミを捨てるかのような……ああ、何となく分かった。
多分、今捨てられたのは猗窩座の身体の中にあった、鬼舞辻無惨の血だ。
俺が猗窩座と戦って、勝利した時には鬼舞辻無惨の血を賭けの対象として貰っていた。
そんな中で猗窩座のどこに鬼舞辻無惨の血を有しているのか……それは猗窩座の身体の中だ。
そうである以上、俺の血を飲んで身体が急速に再生している現状であっても、その身体の中には鬼舞辻無惨の血があったという事を意味している。
そんな中で、俺の血に……そして俺の血によって作り替えられている猗窩座の身体は、鬼舞辻無惨の血をゴミだと、あるいは猗窩座の身体に悪影響を与えるものだと判断し、鬼舞辻無惨の血を排出したのだろう。
そうして猗窩座の身体から血が排出されると、再び猗窩座の身体は再生されていく。
鬼舞辻無惨の血が体内にあった時とは、明らかに身体が再生する速度が違う。
……とはいえ、猗窩座の身体にある鬼舞辻無惨の血は排出されたが、その身体は鬼舞辻無惨の血によって鬼とされている。
今こうしている限り、俺の血が猗窩座の身体を作り替えているのは間違いなかった。
骨が出来て、内臓が生み出され、筋肉が生成され、皮膚はその上に貼られていく。
そして眼球もまた新しくなり、上弦、参という文字が消えている。
ただ……ある意味で予想はしていたものの、俺の血を飲んだ事によって猗窩座の身体には先程まで存在しなかった部位も存在している。
背中からは、ドラゴンのような翼が……そして額からは30cmくらいの細長い角が生成されていたのだ。
予想はしていたものの、やはり俺の血によって召喚の契約を結んだ影響が出たか。
角と翼。どちらも俺を象徴……とまではいかないが、俺を構成する要素であるのは間違いない。
しまったな。猗窩座にはその辺について話してなかった。
翼も角も、どちらもかなりの大きさである以上、隠すのは難しい。
それはつまり、猗窩座が俺の召喚獣という扱いになっても人前に出るのは難しくなったという事でもある。
勿論、全くどこにも出られないという訳ではない。
例えばホワイトスターなら、そんな外見を全く隠さずに出歩ける。
あるいはネギま世界でも……麻帆良際の最中なら、コスプレと思われるだろう。
あ、いや。麻帆良のノリを考えると、普通の時でもそこまで大袈裟に思わないか?
マクロス世界ならどこかの宇宙人といったように思われる可能性もあるか。
……そう考えると、そこまで大変ではないのか?
いや、それでも普通に街中を出歩けなくなるというのは……
そんな風に考えていると、やがて猗窩座の身体の生成が終わり……その口からも、ようやく絶叫が発せられなくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
絶叫の代わりに猗窩座の口から出たのは、激しい呼吸。
俺の血によって身体が作り替えられたのだから、そんな状況になってもおかしくはないが。
にしても……予想通り俺の血に耐えられたな。
勿論、猗窩座なら俺の血に耐えられると判断したからこそ、召喚の契約を持ち掛けたのは間違いないが、それでも絶対という訳ではない。
もし猗窩座が俺の血に耐えられなかった場合、その身体は水風船が割れるかのように、弾け飛んでいただろう。
そういう意味では、猗窩座を褒めるべきか、それとも俺の見る目を褒めるべきか。
「で、どうだ? 俺の血によって生まれ変わった気持ちは」
空間倉庫の中から適当に服を取り出すと、猗窩座に投げてやる。
猗窩座は身体が作り替えられたので、当然のように全裸だ。
まさかそんな状態のままにしておく訳にもいかないだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ……不思議な……本当に不思議な気分だ……今まで忘れていたことを全て思い出せた……恋雪……」
恋雪? 人の名前っぽいが、何だ?
唐突に猗窩座の口から出た名前に疑問を抱く。
とはいえ、猗窩座の中でもまだ色々と整理はついていないようなのだが。
「ほら、取りあえずこれでも飲め」
そう言い、空間倉庫から取り出したペットボトル……ミネラルウォーターが入ったそれを渡す。
以前にも猗窩座はペットボトルを使った事があるので、猗窩座は受け取ったミネラルウォーターを貪るように飲む。
そして完全に飲み干すと、猗窩座は俺に向かって口を開く。
「悪いな。……それにしても、アクセルの血というのはとんでもない。無惨の血は……いや、俺の身体に中にあった鬼の部分も綺麗さっぱりと侵食し、呑み込んでしまった」
「そうか? なら……いや、ちょっと待て。猗窩座、お前は今、鬼舞辻無惨の名前を……」
「言いたい事は分かるが、その前に。猗窩座というのは俺の鬼の名前だ。もう鬼ではなくなった俺は……狛治と呼んでくれ。それが俺の人としての名前だ」
猗窩座……いや、狛治の名前に頷く。
「分かった、狛治だな。……にしても、鬼になると名前が変わるのか」
「……人であった時の記憶がない場合はそうなるな」
苦々しげに、そう告げる。
狛治にとって、さっき口にした恋雪というのは決して忘れてはならない名前だったのだろう。
だが、鬼になった事によって忘れてしまったのが、今の狛治の態度の原因なのだろう。
「今の狛治にとって、鬼舞辻無惨というのはどういう存在だ?」
「恩はある。だが……その恩は今までの働きで十分に果たした。今の俺はアクセル、お前の部下だ」
「正確には部下じゃなくて召喚獣だな」
「召喚獣……そう言えばそんな風に言っていたな。今、この身になって改めて考えると、その召喚獣という言葉はすんなりと納得出来る」
「召喚の契約は無事に結ばれている、か。だとすれば、鬼についての情報を俺に話すといった事も出来るか?」
「ああ。今の俺にとっては無惨という存在はそこまで気にするような相手ではない。それに……こう言うのもなんだが、アクセルに負けた事で毎回厳しい処罰を受けていたからな」
よし、この様子だと鬼舞辻無惨に対して、色々と情報を入手出来そうだな。
特に鬼舞辻無惨が現在どこを拠点としているのかというのは、俺にとって非常に大きな意味を持つ。
……ただ、予想ではあるが異世界とか世界の狭間とか、そんな場所なんだよな。
そうなると影のゲートでも転移するのは難しい。
また、青い彼岸花の件についても、既に珠世から話を聞いてそれを探す理由についても理解出来ている。
そうなると、他に聞きたいのは鬼舞辻無惨の能力であったり、他の上弦の鬼の持つ能力であったり、そういうのになると思う。
他にも色々と聞くべき内容はあるのかもしれないが、それは後回しでいいだろう。
「あー……それで、だ。今の狛治の姿に思うところはないか?」
そう言われ、狛治は不思議そうな表情を浮かべる。
額から伸びている角はともかく、背中の翼については気が付いてもいいと思うんだが。
ちなみに、鬼ではなくなった筈であるにも関わらず、その外見は鬼であった時と基本的に変わらない。
猗窩座であった時の外見そのままに、角と翼が追加されたような形だ。
これは……うーん、どうなんだ?
グリや刈り取る者は、俺との召喚の契約でかなり外見が変わったんだが。
一体何がどうなってこうなったのやら。
「そうだな。動きにくいということはない。この翼も角も、以前はなかった筈なのだが、今は普通にそこにあるというのを認識出来て、自由に扱える」
そう言うと、狛治は翼を翼ばたかせて少しだけ空中に浮かび上がる。
明らかに翼は新たに生えた器官であるというのに、十分に使いこなせている。
それこそ、手で物を掴むといったような行為をするつもりで、狛治は翼を動かして空を飛ぶことに成功した。
うん、本人の言う通り完全に使いこなしているな。
角は……うーん、どう使うんだ?
俺が混沌精霊の姿になれば、俺の頭からも角は生えている。
だが、その時の角も特に何らかの特殊な能力がある訳じゃないんだよな。
だとすれば、狛治の角もただ生えているだけか?
まぁ、あれだけ鋭い角だ。
頭突きをする際には武器の1つとして十分に使えるのは間違いないだろう。
「破壊殺、羅針」
不意に狛治がそう呟くと……しかし、当然ながら俺が何度も見てきたような魔法陣のような物は存在しない。
「やはり無理か」
「いや、それは当然だろ」
少しだけ残念そうな様子で呟く狛治に、そう突っ込む。
そもそも破壊殺というのは、狛治の……いや、猗窩座の血鬼術だ。
そして血鬼術というのは、鬼舞辻無惨の血を受けた鬼だからこそ出来た事。
俺の血を飲んで身体に残っていた鬼舞辻無惨の血を排除し、身体を構成していた鬼の要素を俺の血によって上書きされた。
そんな今の狛治にとって、鬼でなければ使えない血鬼術など使える筈もない。
……その割には、外見は基本的に鬼であった猗窩座のままなんだよな。
「血鬼術が使えない割には、外見は鬼の時とそう変わらない。何でだと思う?」
「それを俺に聞かれても、答えられる訳がないだろう。ただ……予想するのなら、この姿で長い時間を生きてきた。そうである以上、俺の心にこの外見が刻み込まれているのだろう」
「長い時間というけど、具体的にはいつ生まれたんだ?」
「人で言う、江戸時代だな」
「それは、また……」
江戸時代も結構長いので、それによっても多少は年齢が違ってくるだろう。
だが、それでも結構な長生きなのは間違いない事実だ。
「鬼としての能力はなくなったが……純粋な身体能力という点では、恐らく鬼だった時を上回っている。ただ……鬼の力がなくなったということは、再生能力もなくなったと考えた方がいいだろうな」
狛治の戦い方は、基本的に敵の攻撃は回避するか受け止めるか、あるいは受け流すかといったような戦い方で行われる。
それでも鬼であった時は、その攻撃を受けて骨を折ったり、斬られたり、砕かれたり……といったようなことを平気でしていた。
何しろ鬼であった時は、指先から肘の辺りまでを斬られても一瞬で再生することが出来る能力を持っていたのだから。
しかし、今はその能力はない。
そうである以上、鬼だった時と同じような感覚で戦うといった真似は出来ない。
……あるいは、俺の召喚獣になった事により、鬼であった時以上の再生能力を持っている可能性も否定は出来なかったが。
とはいえ、狛治は鬼であった時も地道に鍛錬を重ねてきた。
これが血鬼術頼りの戦い方であった場合は、戦力が大幅ダウンしていたのは間違いない。
そういう意味では、狛治の努力の成果は決して意味のないものではない……それどころか、鬼ではなくなった後も狛治の実力の根源となってるので、大きな意味があったのは間違いない。
問題なのは、角はともかく翼が生えた状態で今まで通りに身体を動かせるかという事だろう。
狛治は普通に動かせると言ってるし、実際に空も飛んでみた。
しかし、狛治が得意としてる近接戦闘において、翼が邪魔になる可能性は十分にあるのは間違いなかった。
そんな風に考えていると、不意にこちらに誰かが近付いてくる気配を察知する。
視線の先で、やがて初めて見る相手が姿を現す。
「おやおや、猗窩座殿。少し見ない間に、随分と見違えるようになったね。俺もびっくりだよ」
その男は、狛治を見ながらそんな軽い調子で告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730