俺に降ってきた氷柱は、白炎によってあっさりと消滅する。
狛治の相手をしながら俺の様子を確認していた童磨の表情は、微かに驚いたように見えた。
童磨にしてみれば、今の巨大な氷柱を落とす血鬼術は奥の手……とまでいかないまでも、それなりに自信のある攻撃方法だったのだろう。
だが、当然ながらその程度の攻撃で俺をどうにか出来る筈もない。
……ああやって上空から巨大な質量の物質を落とすというのは、血鬼術だけではなく魔法でも普通に存在する。
フェイトなんかはそういうのを得意としてる。
それ以外にもエヴァなんかは氷の魔法を得意としているので、純粋に氷を使う相手としては童磨よりもエヴァの方が上に思える。
……ただ、それはあくまでも今の状況での話だが。
こうして見ている限り、童磨は狛治との戦いではそれなりに本気のようではあるが、それはあくまでもそれなりでしかない。
本当の意味で実力を発揮するといったような真似は、全くしていないように思える。
何を考えてそのような真似をしてるのかは、俺にも分からない。
そこまで実力を出さなくても狛治には勝てると思っているのか、あるは狛治の実力を読もうとしてるのか、はたまた様子を見ている俺に自分の本気を見られたくないのか。
ともあれ、童磨との戦いは基本的に狛治に任せている以上、ここで俺がこれ以上ちょっかいを出す必要はないか。
狛治と童磨との間には、何らかの因縁があるのは間違いない。
だからといって、俺がそれに対して何かちょっかいを出したりするのは、止めておいた方がいい。
さっきの氷柱のように、童磨の方から俺にちょっかいを掛けてきた場合は話が別だが。
「ん? ……やっぱり結構な騒動が起きてるみたいだな」
狛治と童磨の戦いもそれなりに派手だが、それ以外にも刀鍛冶の里では現在結構な騒動が起きてるのは間違いなかった。
幾つもの戦いが起きているのを感じられる。
とはいえ、現在刀鍛冶の里には結構な数の戦力がいる。
俺が連れて来た面々は、十分に敵とやり合えるだけの力を持っている筈だった。
蜜璃がもう帰ってしまったのは残念だったが。
もし蜜璃がここにいた場合、柱の1人として大きな戦力になってくれたのは間違いないのだから。
「アクセル、童磨は俺に任せて、他の場所に行ってもいいぞ」
翼を羽ばたかせながら一旦童磨と距離を取った狛治が、俺に向かってそう言ってくる。
だが、俺はその言葉に首を横に振る。
「無茶を言うなよ。今のお前を放っておいて他の場所に行った場合、何も知らない奴がこの場に来たらどうするんだ?」
狛治は純粋な外見という点では猗窩座だった時とそう違いはない。
そして炭治郎を含めて現在刀鍛冶の里にいる者の中には汽車の一件で猗窩座と遭遇した時にもいた。
そうである以上、もしこの場に炭治郎達が来た場合、最悪狛治を攻撃するといったような事にもなりかねない。
ましてや、童磨は見るからに口が上手い様子だ。
もしかしたら口車に乗せられてしまう可能性は否定出来なかった。
だからこそ、この場に俺がいる必要があった。
「だが……いいのか?」
狛治が心配しているのは、上弦の鬼を含めて多数の鬼が侵入している事なのは間違いない。
そうである以上、ここで俺という最大戦力がじっとしていてもいいのか。
そんな風に狛治は考えているのだろう。
「心配するな。現在ここには結構な戦力が集まっている。それこそ柱もいる以上、大抵の敵はどうにかなる筈だ」
それに……と、童磨もいるのでそれ以上は言わなかったが、鎹鴉からの連絡が耀哉に届けば、遊郭の件の時のようにドロを使って追加の戦力を送り込んでくる筈だ。
現在の鬼殺隊の隠れ里には、鬼殺隊の戦力以外にも神鳴流やシャドウミラーから派遣された戦力もいる。
……場合によっては、ドロで移動するよりもエヴァの影のゲートを使って直接戦力を送り込んでくるといった可能性すらあった
まぁ、エヴァがその気になるのかどうかは、正直なところ分からないが。
「ちぇ、残念だったな。もしここで狛治殿だけになれば、色々と面白い事になっていたのに」
俺と狛治の会話を黙って聞いていた童磨が、つまらなさそうに言ってくる。
その言葉通り、もし俺がいなくなってここに誰かが来たら、狛治を敵という風に認識させるつもりだったのだろう。
何しろ童磨は一見する限りでは普通の人間にしか見えない。
そんな童磨と比べると、角と翼を持つ狛治は明らかに人間以外の存在だ。
あるいはこれで翼が鳥の翼なら、天使と見間違えられるといった可能性もあったかもしれないが、残念ながら狛治の背中から生えているのはドラゴンの翼だ。
それを見て……ましてや身体中に入れ墨のある今の狛治を見れば、明らかに人外の存在といったように認識されてもおかしくはなかった。
とはいえ、鬼殺隊の面々は気配とかそういうので相手を鬼だと認識するので、童磨を鬼だと、狛治を鬼でない何らかの別の生物だと認識されてもおかしくはなかったが。
「面白いか。……それは狛治に勝ってから言った方がいいと思うけどな」
「狛治殿は強いよ。それは認めよう。これで女だったら、言う事はなかったんだけど」
……女だったら?
何だ、この鬼。俺が言うのも何だが女好きなのか?
とはいえ、俺が童磨と接したのはまだそんなに長くはないものの、一々人を煽るようなことを言ってくるような相手だけに、性格が合うとは思えない。
最初に童磨を見た時にも思ったんだが、猗窩座……いや、猗窩座と狛治の使い分けは面倒だから、もう狛治で統一した方がいい。
ともあれ狛治よりも上の上弦の鬼なのだから、狛治と同じような性格であってもよかったと思うんだが。
狛治よりも後で鬼になり、そして狛治よりも上の階級にいる。
それはつまり、戦い方の相性とかそういうのもあるんだろうが、それ以上に童磨が戦いの天才だったのは間違いないと思う。
格闘の才能はあったにしろ、狛治の場合は天才というよりは秀才といった感じだ。
その天才に劣る才能を鍛錬する事によって伸ばし……だが、それでも童磨には負けてしまった。
狛治が童磨に拘っているのは、その辺も関係してるのかもしれないな。
そうなると、童磨よりも上の……上弦の壱というのは、一体どういう奴なのやら。
鬼だった時は当然ながら鬼側の情報を流すような真似は一切しなかった。
しかし、俺の召喚獣となって鬼舞辻無惨の呪縛から解き放たれ、鬼ではなくなった今の狛治なら向こう側の情報も話してくれるだろう。
青い彼岸花の件は珠世から聞いたが、珠世が鬼舞辻無惨から離れたのはずっと昔だ。
それ以後の鬼の情報については、どうしても疎くなっている筈だった。
「行くぞ」
俺の言葉を証明するかのように、再び狛治は童磨との間合いを詰めていく。
その一撃は、実際に先程より明らかに素早く、そして鋭くなっていた。
そんな狛治の様子に童磨は少しだけ戸惑った様子を見せるものの、それでも扇を使って狛治の攻撃を捌いていく。
「凄いな。狛治殿、この短時間でどんどん強くなっているよ」
感心したように告げる童磨。
それでいながら、狛治の攻撃を食らう様子はない。
狛治はそんな童磨の様子に眉を顰めながらも跳躍し、後ろ回し蹴りを放つ。
この後ろ回し蹴りという攻撃方法は、非常に派手な攻撃で命中したら威力も大きい。
だが、それでも跳躍しているという事や、何よりも一瞬ではあっても敵に背中を見せるという点で、非常に大きな隙を見せる。
だが……それはあくまでも普通の人間であればの話だ。
一瞬背中を向けた狛治だったが、翼を使って蹴りを放つ速度は増した。
「うぐ……」
まさか翼を使って回転速度を上げるというのは、童磨にとっても予想外だったのだろう。
翼を動かして回転速度を増すなどというのは、かなり器用な真似をする。
そんな一撃だけに、童磨もその攻撃を完全には回避出来ずに肩の辺りに微かに攻撃が命中する。
微かにではあるが、その一撃を放ったのは単純な身体能力では鬼を上回っている狛治だ。
微かに命中しただけでも、童磨を吹き飛ばすには十分な威力があった。
当然ながら、狛治は今の一撃が命中しただけで満足するような真似はしない。
続けての一撃を放とうとし……
「血鬼術、散り蓮華」
童磨は近付いて来る狛治に対し、扇を振るう。
するとその扇によって無数の氷の花びらが生み出され、周囲一帯に放たれた。
これはまた、攻撃範囲が予想した以上に広いな。
狛治と童磨は俺からそれなりに離れた場所で戦っているのに、放たれた氷の花びらは俺の方まで飛んできた。
先程の氷柱とは違い、今は別に俺を狙っての一撃という訳ではない。
あくまでも偶然俺の方まで攻撃が届いたといった感じだ。
勿論、こっちにやって来た攻撃は俺が白炎によって消滅させたが。
狛治は……と思って視線を向けると、そこには一気に10m近い高さまで上空に移動していた。
鬼よりも高い身体能力で一瞬にして跳躍し、翼を羽ばたかせてその場に留まっているのだろう。
散り蓮華とやらは、広範囲に攻撃を出来る血鬼術らしいが、それでも限度がある。
今の狛治がいる場所までは、攻撃が届くことはないのだろう。
もっとも、血鬼術による戦いを得意としている童磨の攻撃が届かない場所まで移動したのだから、当然ながら狛治による攻撃も童磨には届かない。
今の狛治は遠距離攻撃の手段はない……そう思っていると、不意に狛治の額から伸びている角が光り……
「ぎゃっ!」
角から一瞬にして放たれた雷が、童磨の身体を貫く。
……って、雷? 何で雷?
いやまぁ、角が生えている以上はもしかしたら何らかの特殊能力があるのかもしれないとは思っていた。
俺の血を飲んだにしては、外見に翼と角が増えただけというのはちょっとおかしい……物足りない……? とにかく、そんな感じだったのは間違いない。
そういう意味では角に特殊能力があったのは納得出来るものの、それでも何で雷?
これが、あるいは炎であったり、闇であったりすれば、まだ俺の能力的にも納得出来ただろう。
ネギま世界において多数の精霊を吸収し、混沌精霊となった俺だが、それでも俺の使える魔法は炎、闇、召喚の3つだ。
召喚は色々と特殊なので狛治が使えないのはいいとして、炎か闇なら俺にも納得は出来ただろう。
だが……何故雷?
俺のどこに雷の要素がある?
無理矢理探すとすれば、混沌精霊になる際に吸収した精霊の中に雷の精霊がいたとか、あるいは雷の呼吸を使う善逸が俺を先生と慕っているとか……そんな感じか?
けど、それで狛治の角から雷が放たれるのは、納得出来ない。
いやまぁ、狛治に遠距離攻撃の手段があるのは、召喚の契約を結んでいる者として、決して悪い事ではないのだが。
そんな風に考えていると、狛治の角から、何度も連続して雷が放たれる。
……あれ、本当に一体どういうことなんだろうな。
童磨はその雷を全く回避する事もなく、連続して受けていた。
見た感じだと、どうやら最初の1発目で身体が痺れてしまって動けなくなっているらしい。
そして動けなくなった以上、当然ながら得意としている血鬼術を使うような真似も出来ず……このままなら、狛治の勝利だな。
そう思った瞬間、シャラランと音がしたかと思うと、童磨の姿は消えていた。
「何があった?」
改めて先程まで童磨のいた場所を確認するが、そこには誰の姿もない。
「恐らく、鳴女の仕業だろう」
「鳴女? 誰だそれは。十二鬼月か?」
俺の疑問に、狛治は翼を羽ばたかせながら地上に降りてきつつ首を横に振る。
「十二鬼月ではない。無限城の移動や出入りを司っている鬼だ」
「……なるほど、転移か」
そう言えば鬼の中には転移の血鬼術を持っている奴がいた筈だ。狛治の話を聞く限り、その鳴女とかいう奴がそうなのだろう。
珠世がいるから、狛治からは鬼についての情報は殆ど入手出来ないと思っていたのだが、この様子だと珠世が知らない事を結構知っていそうだな。
「俺の召喚獣になった以上、鬼舞辻無惨や鬼に関する諸々の情報を教えて貰う事になるが、構わないな?」
「構わん。俺達は別に仲間意識がある訳ではないからな。……童磨の奴はともかく」
最後の言葉は小さく、そして苦々しげに言っていたのが聞こえてきたが、その様子から何となく理解出来たので、それ以上は突っ込まない。
童磨は狛治に馴れ馴れしく話し掛けていた。
それを思えば、恐らく童磨は他の鬼に対しても同じように馴れ馴れしく話し掛けてきたのだろう。
そして、他の鬼を仲間だと思っていた。
人づきあいが得意なのはいいのかもしれないが、あの無意識に人を煽ってくる性格がな。
取りあえずちょっと話した限りだと、俺との相性は悪そうだ。
狛治もそんな感じで、童磨とは合わないのだろう。
「取りあえず童磨はどうにかしたし、他の場所に行くか。狛治は俺と一緒に行動して貰うぞ。お前がいきなり姿を現すと、鬼と思って攻撃してくる奴もいるだろうし」
「異存はない」
頷く狛治を見ながら、俺はしみじみと呟く。
「にしても、何で角から雷なんだろうな。俺の能力に雷とかそういうのはないんだが」
「便利ではあるな」
そんな風に会話を交わしながら、戦場へと向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730