狛治の口から出た情報は、耀哉にとって……鬼殺隊にとって非常に大きなものだった。
特に鬼の本拠地が無限城と呼ばれる、異空間に存在する場所であると確定したのは、鬼殺隊にとって大きかっただろう。
狛治に取り付けた発信器の反応が消えていたのを考えると、恐らくそうだろうと予想はしていたのだが。
その予想が間違っていなかったと確認出来たのは、非常に大きい。
他にも驚いたのは、上弦の壱についてだろう。
何しろ鬼が呼吸を使うのだ。
それは、鬼殺隊の剣士が血鬼術を使うのと同じような感じだと思ってもいい。
上弦の壱は、他の鬼……それこそ上弦の弐の童磨や上弦の参だった狛治からしても、勝ち目がないと思える程に圧倒的な強さを持っていたらしい。
また、上弦の弐の童磨は万世極楽教という宗教の教祖をやっているというのは、鬼殺隊にとって非常に大きな情報だったのは間違いないだろう。
また童磨の能力……氷についての血鬼術を得意としているというのを聞いた時、しのぶが微妙に反応していたのがちょっと気になった。
もしかしたら、しのぶの姉を殺したという鬼は童磨なのかもしれないな。
そうして数時間……日が昇る頃まで、ずっと話をしていたところで、ようやく事情聴取が終わる。
「ありがとう、助かったよ。……今回得られた情報は、鬼を倒す為の大きな力となるだろう。それは感謝する。しかし……こんな事をアクセルに言うのはどうかと思うけど、狛治は禰豆子や珠世さんとは違う。ここに置くのは難しい」
「だろうな」
耀哉の申し訳なさそうな様子に、俺は特に怒ったりするような事はなく同意する。
禰豆子は鬼となってから人を食べていない。それどころか、炭治郎の妹として鬼殺隊に積極的に協力している。
珠世は鬼舞辻無惨と敵対している鬼だし、何よりも血が少しあれば問題なく、人を食わなくてもいいという事で、それなりに受け入れられている。
……珠世が受け入れられているのは、実はその辺とは関係なく、珠世の美貌も関係しているのは間違いない。
愈史郎がどう思っているのかは、微妙だが。
珠世にとって愈史郎は子供のような存在という風に認識されているものの、愈史郎は珠世を女として意識している。
それだけに、愈史郎にとって珠世に言い寄ろうとする相手については、気が気ではないだろう。
だが、俺と遭遇した時の一件もあって、無意味に喧嘩を売るといったような真似はしなくなっているのだが。
ともあれ、そんな訳で珠世達も鬼殺隊の剣士達に受け入れられているのは間違いないが、そんな者達と狛治では色々と違いすぎる。
今となっては俺の召喚獣になった狛治だが、つい数時間前までは上弦の参だったのだ。
鬼舞辻無惨の部下……それも十二鬼月の中でも上弦の参という、かなりの幹部。
そんな相手が味方になったというのを聞いても、素直に納得出来る者がそう多くないのは当然だった。
「その辺については俺も考えていた。……まぁ、上弦の参云々を抜きにしても、今の狛治がここにいるのは、混乱を招くだろうし」
俺の血を飲んで召喚獣となったことで、狛治の背中には竜の翼が生えて、額からは長い角が一本伸びている。
それだけではなく、鬼であった頃と同じように身体中に入れ墨に似た模様が残ったままだ。
そんなあからさまに人間外の存在が鬼殺隊の隠れ里にいるとなれば……間違いなく騒動になるのは間違いない。
いやまぁ、ある意味で狛治以上に人外の存在である者達の集まりであるシャドウミラーの面々が来ている時点で、その辺を気にするのはどうかと思わないでもなかったが。
「分かって貰えたようで何よりだよ」
「ああ。狛治はホワイトスターに連れていく。幸い、狛治は召喚獣だ。俺と一緒に行動していなくても、俺が召喚魔法を使えばいつでも召喚出来るのは間違いない」
そういう意味では、狛治の存在はありがたいんだよな。
具体的には、俺が未知の世界に行って何らかの理由でゲートを設置出来ない時とか、味方としていつでも召喚出来るのだから。
それこそダンバイン世界にいた時、特にマーベルと2人だけでドレイクと協力関係にあったあの時、狛治がいればかなり助かっただろう。
……もっとも、翼と角が生えており、身体全体に入れ墨があるのを考えると、迂闊に人前に出せるような存在ではないのだが。
「そうか。そうしてくれると助かるよ。……正直な話、私も彼には少し思うところがあるのは間違いないんだ」
耀哉は少し前まで、鬼舞辻無惨という存在のせいで呪われていた。
そんな耀哉にしてみれば、鬼という存在……それも十二鬼月で上弦の参だった狛治に思うところがあるのは当然だろう。
「じゃあ……」
「少し待って下さい。ちょっと気になることがあるのですが、いいですか?」
そろそろホワイトスターに戻ると言おうとした俺に待ったを掛けたのは、しのぶ。
童磨について聞きたいのか?
そう思ったが、しのぶの口から出たのはそんな俺の予想とは全く違う言葉だった。
「狛治さんでしたか。その人が鬼からアクセルさんの召喚獣になったのは理解しました。しかし、その……こう言っては何ですが、鬼から召喚獣になった事で、太陽の光は克服したのでしょうか?」
「っ!?」
しのぶの口から出たその指摘は、狛治に息を呑ませるには十分なもの。
俺の召喚獣になったのは、夜。
それから今までは、まだ朝になっていなかった事もあってか、特に問題らしい問題はなかった。
しかし、召喚獣になった事で本当に太陽の光を克服したのかと言われると……それはまだ試していないので、何とも言えない。
俺の血で鬼から召喚獣になった。
つまり、狛治の身体から鬼の要素は全てが消え去ったのだから、太陽は平気になったと勝手に思っていた。
しかし、それはあくまでも俺の思い込みでしかない。
……そもそも、本当に狛治の身体から鬼の要素が完全に消えたのだとしたら、その身体の残っている入れ墨のような模様は一体何なのか。
鬼になった時から変わらないという事は、もしかしたら実はまだ鬼の要素が残っているのでは? と、そんな風に思ってもおかしくはない。
「……どうだ?」
しのぶの言葉を聞き、改めて狛治に尋ねる。
そんな俺の問いに、狛治は少し考え……口を開く。
「分からない。実際にやってみないと何とも言えない。ただし、自分の状況を考えた限りでは、問題ないように思う」
問題ないように思うと言ってる狛治だったが、実際にそれを確認してみないと何とも言えない。
しかし、鬼が太陽に当たればどうなるのかを知ってる狛治にしてみれば、慎重になるのも当然だろう。
「どうする? 太陽の光に触れてみるか? 勿論、無理にとは言わないが」
「やってみよう」
狛治は俺の言葉に、一瞬の躊躇もなくそう告げる。
狛治にとって、太陽に挑戦するのは必要なことだという認識なのだろう。
そんな狛治の様子に、耀哉を含めた他の鬼殺隊の者達も驚いた様子を見せる。
まさか太陽が苦手な鬼だった狛治が、自分からこうも躊躇なく太陽に身を晒すといった真似をするとは思わなかったらしい。
あるいは、これこそが狛治が鬼から俺の召喚獣になったという何よりの証拠なのかもしれないが。
とにかく、朝日が昇っている今の時間……本当に狛治が太陽にその身体を晒すというのなら、これ以上ない状況ではある。
狛治のそんな態度に、俺も含めてその場にいる皆が反対するようなことはない。
「アクセル、太陽の当たる場所に案内して貰えるか? 太陽があるのならどこでもいいんだが、今の状況を考えるとアクセルに案内して貰った方がいい」
「分かった。なら……そうだな。耀哉やしのぶ、行冥がいるんだし、柱合会議をやった場所でどうだ?」
「アクセルがそれでいいのなら、私は構わないよ」
耀哉のその言葉で、話は決まるのだった。
「おお……」
以前柱合会議が開かれた場所。
そこで、狛治は朝日を浴びながら空を見ていた。
その視線の先にあるのは、太陽。
鬼であれば、即座に死んでもおかしくはないそんな状況で、狛治はただひたすらに太陽を眺めていた。
やがて狛治の目から、すうっと一筋の涙が零れ落ちる。
狛治にしてみれば、太陽を見るのは鬼になる前の話だ。
それだけに、朝日には余計に感動しているのだろう。
涙を流す狛治を見て、驚いているのは他の面々だ。
狛治が俺の召喚獣になったとはいえ、それでもやはり数時間前までは鬼であった以上、もしかしたら太陽の光によって滅ぼされるのではないかと、そんな風に思ったのだろう。
鬼殺隊の面々にしてみれば、そんな風になってもよかったという思いがあるのだろう。
それは鬼に対して色々な思いを抱いている鬼殺隊の者にしてみれば、ある意味で当然の話だった。
「見ての通り、狛治は太陽の光に当たっても何の問題もない。これで狛治が鬼ではなくて、俺の召喚獣になったというのには納得して貰えたか?」
「ああ、認めよう。ただ……それがはっきりとした今でも、やはりこの隠れ里に置く事が出来ないというのは変わらないが。……すまないね」
「構わない。ただ、この隠れ里に住むといったような事はないだろうが、それでも俺と一緒に行動するとなると、この隠れ里にやって来たりもする必要がある。それは許可してくれ」
そんな俺の言葉に、耀哉は頷くのだった。
「さて、これからホワイトスター……俺の拠点に行くんだが、一応念の為に聞いておく。もう鬼舞辻無惨との繋がりはないんだよな?」
ゲートの前で狛治にそう尋ねる。
狛治が太陽にその身を晒してから、10分程が経過して耀哉達と別れた俺は、狛治をゲートの前まで連れてきた。
鬼舞辻無惨との繋がりがまだ狛治の中にあった場合、このゲートは当然だが、ホワイトスターについての情報を知らせてしまう事になる。
もし鬼舞辻無惨がホワイトスターについて知ったら、どうなるか。
恐らく……本当に恐らくだが、自分が太陽を克服する為の何かを探してホワイトスターに行こうとするだろう。
そして最悪なことに、ホワイトスターには鬼舞辻無惨が太陽を克服する為の手段となりそうなものが、ゴロゴロしている。
……同時に、鬼舞辻無惨を殺せるだけの実力を持っている者も、ゴロゴロしているのだが。
それこそメギロートのサークルレーザーとか食らったら、幾ら鬼舞辻無惨が鬼の祖であっても、結構なダメージを受けるのは間違いないと思う。
ビームライフルとか重力波砲とか食らったら……
もしくは、そういうのを抜きにしても生身でも鬼舞辻無惨を殺すだけの実力を持っている奴は多い。
そういう意味では安心も出来るのだが……問題なのは、戦闘技術を持っていない、他の世界からやって来た一般人もそれなりの数がいるという事だろう。
勿論、ネギま世界からやって来た者達のように、生身でも相応の戦闘力を持っている者はいるのだが、そのような相手が鬼舞辻無惨を相手にどうにか出来るか? と言われれば、微妙なところだろう。
だからこそ、鬼舞辻無惨にホワイトスターの情報を知られる訳にはいかなかった。
「問題ない。アクセルの血は、鬼の血とは……そうだな、文字通りの意味で格が違う。あの1滴だけで、俺の中にあった鬼の血は完全に消えたよ」
「……そこまで言われると、俺の血ってなんなんだろうなという思いがあるんだが」
俺の血には濃密な魔力が込められているというのは、知っている。
知っているのだが、それでもやはり今の狛治の言葉に、色々と思うところがあるのは事実だった。
「それだけ強力な血なのだから、問題はないと思うが?」
狛治にしてみれば、別に血の件で俺を責めるといったようなつもりは全くないのだろう。
とはいえ、今の状況でそんなことを言われると……うん。まぁ、気にしない方がいいのは間違いないけど。
「そうだな。俺の血が鬼舞辻無惨の血よりも強いのは間違いない。そう思えば、この結果はそんなに悪いものではないと思う」
いっそ鬼舞辻無惨に俺の血を飲ませてみたらどうなるのか、ちょっと気になるな。
とはいえ、話を聞く限りでは鬼舞辻無惨はとてもではないが俺と性格が合いそうにないし、召喚獣として鬼舞辻無惨が欲しいのかと言われれば、その答えは当然のように否なのだが。
「ああ。それは俺がこの身で証明しよう。今の俺は、鬼だった時よりも間違いなく強いのだから」
そう断言する狛治。
空を自由に飛べるようになり、角からは雷を放てる。
それでいて、純粋な身体能力という点では鬼だった時よりも上だ。
ただ……代わりに、鬼の時にはあった圧倒的な再生能力と、鬼だからこそ使えた血鬼術が使えなくなったのは痛い。いやまぁ、太陽を克服したのはそれ以上に大きな意味を持つのかもしれないが。
総合的に見て、俺の印象では現時点で鬼だった時よりも若干上……といったくらいの認識となる。
勿論、俺の血によって強化された今の身体をまだ完全に使いこなしていない以上、最終的には今の身体の方が伸びしろはあると思うのだが。
そんな風に考えつつ、俺は狛治と共にホワイトスターに向かうのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731