超包子での食事をすませた俺と狛治は、政治班が仕事をしている建物に向かっていた。
そんな中で、ふと狛治が口を開く。
「あの店の料理……俺がアクセルから貰った食べ物と比べても美味かった。もしかして、あれが普通の味なのか?」
「いや、そうでもない。四葉……あの超包子で料理人をしてる奴の名前だが。そいつの技量が単純に高いというのが最大の理由だな」
俺が狛治に食べさせた、スーパーやコンビニの料理。
それらも外国人にしてみれば、十分に美味いと言われているのだが……それでも、本職の料理人である四葉が作る料理と比べれば劣る。
それも多少劣るといった程度ではなく、圧倒的なまでに劣るというのが正しい。
だからといって、ホワイトスターで食べる料理が四葉の料理並みかと言われれば、その答えは当然のように否なのだが。
四葉の料理を基本にするというのが、そもそも間違いではある。
「ふむ、そうか。……だが、こうして見ると食事が出来る店はそれなりに多いようだな。ホワイトスターに住むということは、このような店も利用出来るという事か」
「そうなるな。ただ、ホワイトスターで暮らすには、色々と覚える必要があるが」
大正時代に住んでいた……いや、狛治は進んで街中に出るような性格はしてないので、恐らくは鬼になった江戸時代で知識は止まっている可能性が高い。
そんな江戸時代の住人を最先端の技術の街並みが広がっているホワイトスターにつれてくればどうなるか。
それこそ、TVを見ればその中に小人が入っているといったように思って驚いたりしてもおかしくはない。
そんな狛治を、取りあえず俺がいなくてもホワイトスターで生活出来るようにする必要があった。
一応コバッタを補助として付ける予定なので、何かあっても大丈夫だとは思うが。
「あら、アクセル君? こんな場所でどうしたの? うちに何か用?」
政治班の使っている建物に向かっていると、不意にそんな風に声を掛けられる。
一瞬誰だ? と思ったのだが、それが誰なのかというのは声を聞いてすぐに思い出す。
……というか、声を聞いた時点で思い出す事が出来なかったら、恋人としてそれはどうだ? と思わないでもない。
「千鶴、ちょうどいいところに来たな。お前の仕事場に向かうところだったんだ」
「そう。なら一緒に行きましょうか。……それで、私達のところに来るということは、そっちの人が理由?」
千鶴は狛治を見て、笑みを浮かべる。
そんな千鶴に戸惑った様子を見せる狛治。
狛治にしてみれば、自分にこのように笑みを向けてくる相手がいるというのは予想外だったのだろう。
まぁ、千鶴は器という意味では大きいからな。
それこそ年齢不相応な程に。
「……アクセル君?」
オホホホホという、数秒前まで狛治に向けていたのとは全く違う種類の笑みを浮かべた千鶴が俺に向かってそんな風に聞いてくるものの、俺は即座に何でもないと首を横に振る。
相変わらず千鶴の女の勘は鋭い。
「何でもない。気にするな。それより、こいつが狛治だ」
「ああ、以前に言っていた……そう、貴方が」
「俺を……知ってるのか?」
まさか自分の名前を知られているとは思っていなかったのか、狛治は戸惑ったように千鶴に尋ねる。
自分の名前を知っていて、それでいながら笑みを浮かべたままだというのが、信じられなかったのだろう。
先程の明日菜のように、警戒の視線を向けてくるといったような真似をしても、おかしくはないのに。
「ええ、アクセル君から聞いてるわ。私は那波千鶴。アクセル君の恋人の1人で、これから行く場所で働いているわ。政治班の1人ね」
「女が……働く……」
江戸時代の価値観を持つ狛治にしてみれば、女が働くというのが余程意外だったのだろう。
あるいはこれが先程の四葉や明日菜のような仕事ならともかく、千鶴が働いているのは政治班、つまり……そう、狛治に分かりやすく言うのなら、役人だ。
狛治にしてみれば、女が役人というのはかなり珍しいのだろう。
とはいえ、千鶴はそんな狛治の様子を見ても特に驚いたりといった様子はない。
狛治の事情を理解しているので、驚くのも当然だという認識なのだろう。
怒るどころか、笑みを浮かべて言葉を続ける。
「あら、私を見た程度で驚くのはどうかと思うわよ? 私は確かに政治班で働いているけど、政治班を率いている人も女の人なんだから。……というか、まだホワイトスターに来たばかりであまり実感はないのかもしれないけど、シャドウミラーには女の人が多いのよ? アクセル君が女好きだから」
「いや、その評価はどうなんだ? 技術班の面々にムウ、イザーク……それ以外にも男は結構いるだろ。女好きだというのは否定しないけど」
恋人が10人以上いる俺が女好きではないと否定したところで、そこに説得力は皆無だ。
客観的に見た場合、俺が女好きであるのは間違いない。
そんな風に話しながら進み、やがて俺達は千鶴の職場である政治班の使っている建物に到着する。
幾つもの世界と繋がっており、非常に有利な状況のシャドウミラーだが、そのシャドウミラーを実質的に動かしている建物は、決して大きくはない。
それこそ周辺にあるビルよりは若干大きい……といった程度の建物。
これは政治班で実質的に働いているのが数人だからというのが大きい。
魔法球があるからこそ、出来る事だ。
また、簡単な調整とかなら量産型Wとかでも出来るようになっている。
……それでも、政治班の人数はもっと多くてもいいと思うんだがな。
その辺は、エルフの中から協力している奴もいるらしいし、時間が解決してくれると信じたいところだ。
「さ、入って頂戴。詳しい話は中で聞かせて貰うから」
千鶴に促され、俺と狛治は建物の中に入る。
当然の話だったが、超包子とはまた違った建物に狛治は若干緊張した様子を見せていたものの、俺が中に入ったというのも影響してるのか、そこまで不安そうな様子はない。
「これが……」
周囲の様子を興味深そうに眺める狛治。
「千鶴、戻ったのならマクロス世界の件の交渉の書類を……あら、アクセル?」
戻ってきた千鶴に声を掛けたエザリアだったが、俺の姿を見て驚く。
俺だけではなく、隣にいる狛治を見て驚いたという可能性も否定は出来ないが。
「ちょっといいか、エザリア。こっちは狛治、鬼滅世界で俺の召喚獣になった元鬼だ。元鬼だから、鬼滅世界にいるような真似は出来ない。そんな訳でホワイトスターに住む事になったんだが、その登録とかホワイトスターでの生活の仕方とか、補助用のコバッタを用意するとか、そういうのを頼んでもいいか?」
「なるほど。構わないわよ。ただ、色々と話を聞かせて貰う必要があるけど、構わないわよね?」
エザリアは特に動揺した様子もなく、あっさりとそう言ってくる。
突発的な出来事に対しての対処は、エザリアにとってそう珍しいものではないのだろう。
話が早いのは助かる。
何をするにも手続きに手間が掛かるといったようなことがシャドウミラーで必要ないのは、いい事だった。
いや、勿論相応の手続きはあるが、お役所仕事という訳ではないので素早く手続きは終わる。
「構わん。アクセルの召喚獣になった以上、ここ……ホワイトスターで暮らすのは望むところだ。料理も美味いしな」
鬼だった時には人間しか食えないようにされていたので、狛治も食に飢えているのだろう。
それでも俺が渡した料理である程度は食べられたものの、ホワイトスターで売ってる料理はその多くが美味い。……中にはゴーヤクレープとかもあるが。
いや、狛治の場合は料理に飢えているので、もしかしたらゴーヤクレープを食べても美味いと感じるのか?
そんな風に考えている間に、エザリアの指示を受けて千鶴が狛治を連れて奥の部屋に向かう。
狛治が視線で尋ねてくるが、問題ないと返しておく。
実際、千鶴が狛治に危害を加えるような真似は……まぁ、千鶴の機嫌を損ねなければ大丈夫だろうし、狛治が千鶴に危害を加える可能性も、基本的には存在しない。
そんな訳で、あの2人にはそのままでも大丈夫だろうと判断して見送り、近くにある椅子に座る。
「アクセルの様子を見る限りでは問題ないようだけど、一応聞くわね。本当に大丈夫なのよね?」
千鶴と狛治がいなくなった後で、エザリアがそう尋ねてくる。
政治班は交渉の為に何度も鬼滅世界に足を運んでいる。
それだけに、鬼滅世界における鬼の危険さというのは十分に理解しているのだろう。
「ああ、狛治なら問題ない。鬼だった頃も、元々人を食うのは最低限にしていたようだしな」
他の鬼は、基本的に人を食う事によって強くなっていく。
そんな中で、狛治は人を最低限しか食わず、鍛錬によって強くなっていった。
あるいは鬼舞辻無惨のお気に入りだったのは、その辺も影響してるのかもしれないが。
あー……でも、上弦の壱はまだ会ったことがないから狛治の情報でしか知らないが、上弦の弐の童磨がああいう、普通に会話するだけで煽ってくるような奴だったと考えると、鬼舞辻無惨が狛治をお気に入りだったのも納得出来るな。
「そう。ならその言葉を信じるわ。……まぁ、アクセルの血を飲んで召喚の契約を結んだという話だし、そういう意味ではそこまで心配してなかったけど」
そんな言葉を言ってくるエザリア。
これは信頼されているのを喜べばいいのかどうか、微妙だな。
いやまぁ、エザリアの様子を見る限りは褒めてるんだろうと思った方がいいのかもしれないが。
「それで、鬼滅世界との諸々の交渉はどんな具合なんだ? こう言っては何だけど、こっちの持ち出しが多くなってるんじゃないか?」
他の世界と交渉する時に、シャドウミラー側からの持ち出しが多くなるというのは、珍しい話ではない。
UC世界のように、今までにない程の持ち出しとなると話は別だが。
それ以外の世界では、最初こそは損をしたものの、その後の貿易で黒字となるようになっていた。
あるいは、その世界特有の素材とかを入手するとか、そんな感じで。
それでも他の世界の場合は、相応に発展してる世界が殆どだ。
マクロス世界なんか、銀河中に人が進出してるような世界だし。
それと比べると、鬼滅世界は大正時代だ。
どうしても貿易という点ではこっちにあまり利益はないように思えた。
いや、勿論鬼滅世界特有の猩々緋鉱石とか猩々緋砂鉄とか、日輪刀とか、鬼殺隊の制服に使われている布とか……あるいは呼吸とか、魅力的なのはある。
だが、魅力的なのは間違いないものの、シャドウミラーの持ち出しを考えると……
「そうね。総合的に見て、今のところは少し黒字といったところかしら」
「……あれ? 黒字なのか? 俺はてっきり、赤字だとばかり思っていたけど」
「黒字よ。鬼滅世界に派遣している戦力の多くは、ネギま世界の神鳴流だもの。勿論こちらから派遣している先遣隊もいるけど、人数はそう多くはないでしょう? まぁ、腕利きを送っているから、そういう意味では痛いけど。でも、先遣隊は腕利きだから、まず死ぬといったような事はないでしょうし。……心配なのは、ムラタ辺りが暴走しないかだけど」
「そっちは普段とは違う方向に向かったから、心配はいらないと思うけどな」
いつものムラタなら、獪岳の一件を聞いたらすぐに切り捨てていてもおかしくはなかった。……それこそ比喩的な意味ではなく、物理的に。
しかし行冥を止め、獪岳に十二鬼月や鬼舞辻無惨を殺すといったような約束をさせて、それが出来るように鍛えている。
実際、獪岳は実力を上げて上弦の陸の片割れである堕姫を殺した。
とはいえ、獪岳だけで殺した訳ではなく、何人も攻撃して結果的に獪岳が堕姫の首を切断するといったようなことになったのだが。
それ以外にも、刀鍛冶の里では上弦の伍である玉壺との戦いに参加し、活躍している。
最終的に玉壺を殺したのは無一郎だったが、獪岳の果たした役割も大きかったのは間違いない。
そんな風に思えば、やはり獪岳を育てたムラタの手柄は大きいのは間違いない。
「一応報告は聞いていたけど……直接見ているアクセルから説明を受けると、驚くわね」
しみじみとエザリアが呟く。
普段のムラタを知っているからこそ、何故急にそのような事をしたのか分からなかったのだろう。
実際、俺も何故そのような真似をしたのかは分からなかった。
それでも結果として、シャドウミラー的には大きなプラスになっているので、問題はないのだろうが。
そんな風に話していると、大体の説明が終わったのか千鶴と狛治がこちらに戻ってくる。
「予想していたよりも早かったな。もう終わったのか?」
「ええ、彼、頭はいいみたいだからそんなに問題はないと思うわ。それに……」
そこで言葉を止めた千鶴は、そっと視線を狛治に向ける。
そんな千鶴の視線を受けた狛治は、一瞬の躊躇もなく口を開く。
「ホワイトスターにいる者達に迷惑を掛けないようにするというのは、誓おう」
狛治の表情が微妙に引き攣っていたようだったが……まぁ、千鶴だしなという事で納得するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731