万世極楽教の襲撃。
その話を耀哉がしてから数日……たったそれだけで、その万世極楽教への襲撃は行われることになった。
それも夜ではなく、日中に。
いや、これは当然の話だろう。鬼は太陽の光に弱い。だとすれば、日中に攻撃をすれば逃がす心配はなかった。
……転移の血鬼術を持つ奴がいるから、絶対に逃げられないとは言い切れないものの、それでも逃がす前に倒してしまえばそれでいい。
まぁ、万世極楽教の本拠地である建物は結構な広さがあるので、童磨も十分に戦闘は出来るのだろうが。
とはいえ、今回の万世極楽教への襲撃については、色々と縛りがある。
具体的には、童磨は殺しても構わない――というかそれが目的だ――が、宗教施設にいる普通の人間は殺さないで生け捕りにするようにと。
勿論鬼殺隊は鬼に対する復讐心が強い者はいるが、人を殺すという事に抵抗感のある者は多い。
それだけに、人を殺すという真似は基本的に進んでやらないのだが……それでも、今回そのように限定されているのは、どうやら耀哉が交渉した政府からの要望らしい。
政府と言っても、具体的にどのくらいの地位にいる人物なのかは俺には分からない。
しかし、元々鬼殺隊は政府とそれなりに繋がりがあったのは事実だ。
でなければ、汽車の一件であったり、遊郭の一件であったり……それ以外に俺が関わっていないにしろ、色々と騒動が起きた時にそれを完全に隠すといった真似は不可能だろうし。
とはいえ、それでも例えば政府……というか軍人とかに呼吸を教えたりといったような事は、基本的に行っていない。
これは耀哉を始めとして鬼殺隊を率いてきた人物がそれだけ交渉上手だったのか、それとも政府の方で鬼殺隊には下手に深く関わらない方がいいと思ったのか。
その辺は俺には分からないが、ともあれ政府と鬼殺隊が繋がっているのは間違いない。
そんな政府から、万世極楽教に入信している普通の人間は殺さないで確保するようにと、耀哉に条件がつけられたらしい。
そして耀哉はこれを受けた。
耀哉にしても、今回の一件はそれだけ早くどうにかする必要があったのだろう。
そんな耀哉の気持ちも分からないではない。
現在、鬼殺隊はレモンの作った青い彼岸花を使って鬼舞辻無惨が裏で糸を引いていると思われる貿易商と取引をしようとしている。
その時の取引で鬼舞辻無惨を殺せればそれが最善なのだが、それが失敗した場合、鬼舞辻無惨と本格的な戦いになる可能性があった。
そうなれば、当然だが残っている十二鬼月……上弦の壱と上弦の弐とも戦う必要が出て来るだろう。
狛治の話だと、上弦の壱は基本的に鬼舞辻無惨の本拠地である無限城にいるらしいし、外に出るにしてもふらりと外に出るらしい。
ましてや、上弦の壱は顔に目が合計で6つもあるので、人間の生活に紛れ込むといった真似は出来ない。
だが、上弦の弐の童磨は外見上は普通の人間だ。
髪の色が多少特殊だが、目が6つもあるという上弦の壱と比べれば明らかに普通の人だろう。
髪の色が特殊なのも、宗教団体の教祖となると、それが一種のカリスマ性ともなる。
そんな訳で、上弦の壱がどこにいるのかは分からないが、上弦の弐の童磨はどこにいるのかが分かる。
だからこそ、鬼舞辻無惨に罠を仕掛けるよりも前に少しでも鬼の戦力を削っておきたい。
耀哉が多少無理をしてでも万世極楽教の襲撃を決めたのは、それが理由だろう。
「では、アクセル。お願いするよ」
耀哉の言葉に頷く。
万世極楽教があるのは、山奥だ。
鬼である童磨が自分の正体が知られないようにする為……というのが大きいのだろう。
それでも当然ながら見知らぬ誰かが万世極楽教の敷地内に入ってくれば、目立ってしまうだろう。
ましてや、鬼殺隊は日輪刀を持ってるのだ。
そんな鬼殺隊の剣士を見て、警戒するなという方が無理だ。
最初はドロで運ぶという意見もあった。
山奥なのでドロが他の者達に見られないという点でかなり有力な意見だったのは間違いないが、この場合問題なのはドロが一度に運べる人数は限りがあるという事だ。
それに対して、俺の影のゲートでは人数は問題ない。
……正確には運ぶ人数の多さや転移先の距離によって消費する魔力が多くなるのだが。
しかし、それに関しては俺の魔力量……SPの数値からして、何の問題もなかった。
とはいえ、俺の影のゲートでも何の問題もない訳ではない。
「以前にも言ったと思うが、俺の影のゲートは人によってはかなり気持ち悪くなって……それこそ、転移先でろくに動けなくなるような奴もいる。それは理解してるんだよな?」
「ああ、勿論。だからこそ、こうして結構な戦力を集めたんだしね」
耀哉の視線が向けられたのは、俺の背後にいる者達。
凛や綾子、荒垣、ムラタといったシャドウミラーからの先遣隊に参加している者や、五飛も当然のように混ざっていた。
他にも神鳴流の剣士も結構な人数が集まっている。
そして俺の側には狛治の姿もあった。
……多くの者は狛治の正体を知らず、俺の召喚獣という言葉で納得しているものの、狛治の正体を知っている者の多くは複雑な視線を向けている。
それでも敵意でないのは、せめてもの救いだろう。
そして鬼殺隊からは、しのぶ、杏寿郎、行冥、無一郎、蜜璃といった柱の面々。
相手は上弦の弐だけに、これだけの柱が作戦に参加する事になったのだろう。
それと、炭治郎を始めとした主人公一行。
本来なら、炭治郎は禰豆子の側にいた方がいいんだが……鬼殺隊の剣士として参加する事にしたらしい。
ちなみに禰豆子だが、当然ながら既に目が覚めている。
ただし鬼だった時の反動か記憶は朧気になっており、身体もかなり弱っているらしい。
とはいえ、記憶はともかく身体はゆっくりと休んでリハビリをすれば問題なくなるらしいが。
今回の一件に参加する戦力は大体こんな感じ。
後は隠が結構な数で参加する事になっていた。
何故一般の隊員達は参加しないのか……その理由は、当然ながら相手が上弦の弐だからというのが大きい。
これで雑魚の鬼が大量にいるのなら、普通の剣士を連れていってもいいのだろうが。
狛治が童磨から聞いた話では、万世極楽教にいる鬼は童磨だけらしい。
何でそんな事まで童磨が教えるんだ? と思ったら、狛治にしてみれば童磨は馴れ馴れしいらしく、会うと色々と自分の状況について話しているらしい。
狛治にとってはそんな童磨は鬱陶しい存在だったのだが、それがこんな場所で役立つとは思っていなかったのだろう。
「分かった。なら……そろそろ行くけど、構わないか?」
「ああ、頼むよ。……いい報告を待っているから、頑張って欲しい」
そう言い、俺から距離を取る耀哉。
当然ながら、耀哉が俺の側にいると影のゲートに巻き込まれる可能性がある。
耀哉も万世極楽教に行くのならともかく、ここに残る以上そんな真似が出来る筈もない。
耀哉の義眼の能力を思えば、童磨はともかく人を相手にした場合、負けるといった事はまずないだろうが。
何しろ相手の動きを先読み出来るし、奥の手としてレーザーもあるのだから。
うん。ぶっちゃけ普通の人間で耀哉に勝てるようなのは……いない事もないだろうが、それでもかなり少ないのは間違いない。
元々耀哉は頭が切れる。
以前は頭が切れても呪いの影響で身体が弱っていたが、今の耀哉はその呪いも解呪され、リハビリもしっかりと終わらせて身体的にも健康だ。
そんな耀哉だけに、普通に戦えばかなり強いのは間違いない。
あくまでも一般人の範囲内でという限定だが。
そんな風に思いながら、俺は周囲にいる者達に向かって口を開く。
「じゃあ、影のゲートを使う。人によっては影のゲートを使った時に気持ち悪くなったりする奴もいるらしいから、その辺は気を付けるようにしてくれ。いやまぁ、気を付けても気持ち悪くなったら休んでいるしか出来ないと思うが。……行くぞ」
そう言い、俺は影のゲートを使うのだった。
影のゲートから出た先は、万世極楽教の持つ土地の敷地内だ。
今回の一件は政府の方にもしっかりと話を通してあるので、例えば警察とかに連絡が入ってもここに止めに来たりとかはしない。
……警察が止めに来る云々よりも前に、万世極楽教の本拠地は山奥にある。
もし何らかの手段で警察に連絡されたとして、ここまで来るのに一体どれだけの時間が掛かるのやら。
そういう意味で、警察とかの心配はないが……それはつまり、万世極楽教の信者達は自分達の手で野生の獣であったり、泥棒であったり、そういう相手から自分達を守る必要がある。
おまけに山奥で警察の目が届かないとなると、しっかりと武装をしている可能性は否定出来ない。
「よし、到着だ。身体の具合の悪い奴は……何人かいるみたいだが、戦闘が出来ないくらいに厳しいか? それなら向こうに一度戻すけど」
影のゲートのいいところは、転移魔法だからここから鬼殺隊の隠れ里まで一瞬で戻れるところなんだよな。
これがドロなら、空を飛んでるので移動速度は速いが、ここから鬼殺隊の隠れ里まで移動するには普通に空を飛んで移動する必要がある。
とはいえ……身体の調子が悪い奴も戦闘に問題はないらしく、向こうに戻る必要はなかったらしい。
「じゃあ、そんな訳で……始めるか。向こうもどうやら気が付いたみたいだし」
その言葉を聞き、今回の作戦に参加している者達がそれぞれ行動を開始する。
こっちに向かって来たのは、万世極楽教の信者達。
当然だが、これだけの人数がいきなり自分達の敷地内に現れたとなれば、それに気が付かない筈もない。
……いや、あるいはもっとこっそりと移動していれば、気が付かれなかったかもしれないが、俺はそういうのは関係なく堂々と転移してきたし。
何しろ万世極楽教の信者達は可能な限り生け捕りにする必要がある。
であれば、とっとと向こうから現れてくれた方がこっちとしては色々とやりやすい。
事実、真っ先に神鳴流の剣士達が瞬動を使ってこっちにやって来ていた信者達と間合いを詰め、一瞬にして気絶させている。
「さて、じゃあ俺も行くか。狛治、お前はどうする? 俺と一緒に行くか?」
「俺が一緒では、この外見でアクセルに迷惑を掛けてしまうだろう。俺は翼があるので、これを使って空を移動する」
そう言うと、狛治はドラゴンの翼を羽ばたかせながら空に昇っていく。
「凛と綾子はどうする?」
「うーん、そうね。どうせだしアクセルと一緒に行動するわ。綾子はどうする?」
「私もアクセルと一緒でいいよ」
こうして、凛と綾子は俺と一緒に行動する事になる。
……善逸が血の涙を流して俺を見ていたが、取りあえずそれはスルーしておく。
というか、善逸は禰豆子の見舞いにも頻繁に行ってるので、そういう意味ではフラグが立ってるような気がしないでもない。
本人にそれを言えば、有頂天になって浮かれてしまいそうだから言わないけど。
他の面々もそれぞれ自分で好き勝手に動くことを決めて、万世極楽教の建物に進む。
途中で何人かの信者と遭遇するが、その全員は即座に気絶させられていた。
俺と綾子は相手の首の後を叩いて気絶させているが、凛の場合は……
「ガンドはちょっと厳しくないか?」
「大丈夫よ、威力は弱めてあるから。気絶から目覚めても、ちょっと風邪を引くくらいよ」
そう言う凛だったが、実際手加減をしているという言葉は真実なのだろう。
もし凛が本気なら、それこそガンドは銃弾並の……いや、シャドウミラーで鍛えている今の凛なら、それ以上の威力を出すのも難しい話ではないのだから。
しかし、凛のガンドで気絶している信者達は、外見上の傷はない。
これが凛が手加減をしている何よりの証だった。
……手加減をされても、凛が言ってるように気絶から目覚めれば風邪を引いた状態になっているのだろうが。
「別にガンドじゃなくて、私達みたいに物理的に気絶させればいいんじゃないか?」
綾子の言葉に、俺も確かにと納得する。
魔術師として知られている凛だが、当然ながら近接戦闘も普通に出来る。
元々八極拳の達人である凛が、魔力で更に身体強化を行えるのだ。
そんな凛の攻撃力は、それこそ柱であっても容易にどうにか出来るものではない。
そのような攻撃を一般人の信者が食らえば、当然のようにあっさりと気絶する。
「奥の手というのは、そう簡単に使わないから奥の手なのよ。それに……アクセルも綾子も前衛なんだから、後衛が1人くらいはいた方がいいでしょ? アクセルは本来なら後衛も出来るのに、好んで前衛をやってるんだし」
そう言われると、俺としても反対は出来ない。
実際に俺と綾子が前衛で戦っており、凛が後衛からガンドを使って援護をしているという形で上手く回っている以上、それを無理に変える必要もないだろうと思えたからだ。
「ほら、話が決まったらさっさと行くわよ。早く童磨という相手を見つける必要があるんでしょ?」
凛のその言葉に、俺と綾子は揃って頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731