柱稽古が始まった。
多くの者が必死になって訓練を行っている中……
「え? 本気か? 俺は別に血鬼術とか使えないんだぞ? そんな俺と模擬戦をしても、意味はないと思うんだが」
「いえ、アクセルさんと訓練を行いたいんです。よろしくお願いします!」
そう、炭治郎が頭を下げてくる。
炭治郎にしてみれば、俺と模擬戦をやるような必要は一体どこにあるのか分からない。
分からないものの、こうして本人が模擬戦をやりたいと言ってる以上、俺としてもそれを受け入れるのに否はない。
何しろ炭治郎はこの世界の主人公だ。
柱稽古を行い、その上でまだ俺と模擬戦をやりたいと言ってくるのならそれを受け入れた方がいいのは間違いなかった。
この世界の歴史は、俺の介入によって大きく変わっている。
そうである以上、これからどのような事が起こるのかは俺にも分からない。
いやまぁ、歴史が変わった云々もそうだが、俺はそもそもこの世界の原作を理解出来ていない以上、その辺はあまり意味がないんだが。
ただ、それでも俺が関わった影響で炭治郎の戦闘経験が少なくなってしまったのは、多分間違いない。
「そう言えば、今更こうして聞くのもなんだが……禰豆子が人間に戻ったのに、炭治郎はまだ鬼殺隊として行動してるんだな」
「そうですね。正直なところ最初は迷いました。俺が鬼殺隊として活動していた最大の理由は、禰豆子を人間に戻す事だったんですから。けど、禰豆子は人に戻りましたが、このままだと他にも多くの人達が俺と同じように悲しい目に遭ってしまうと思うんです。そうならないようにする為には、やはりこの鬼の一件を終わらせてしまう必要があると、そう思ったんです」
真剣な表情でそう言ってくる炭治郎。
炭治郎らしい理由だと言われれば、素直にその通りだと頷いてしまう。
炭治郎の場合、これが表向きの理由というだけではなく本気で言ってる辺りが凄いんだよな。
「なるほど、話は分かった。……そういう事なら、俺もお前の訓練に付き合ってもいい。柱稽古をした上で、まだこうして俺と一緒に訓練をやる気があるというのは、少し驚きだったが」
「あはは。今までやって来た訓練に比べれば……いえ、柱稽古も厳しくない訳ではないのですが、それでも今の状況を考えるとそれなりに余裕があるのは間違いないですから」
空間倉庫から日輪刀を取り出しながらそう言うと、炭治郎もまた日輪刀を構えながらそんな風に言う。
炭治郎の持つ日輪刀は、刀鍛冶の里で人形から見つかった奴だ。
鋼鐵塚の手によって研がれたその刃は、まさに逸品と呼ぶに相応しいだけの姿をしている。
炭治郎の技量も、これまでの修行や強敵との戦いで柱……とまではいかずとも、相応に強くなっているのは間違いなかった。
「なら……やるか」
そう言い、俺と炭治郎は模擬戦を行うのだった。
「じゃあ、疲れが取れたらまた修行を頑張れよ」
地面に横になり、ぜえぜえと激しい呼吸をしている炭治郎をその場に残して俺は目的の場所に向かう。
炭治郎よりも少しだけ上の速度、力を使って模擬戦をやっていたのだが、予想外に炭治郎は俺の攻撃についてきた。
普通ならとっくに限界を超えているだろうと思うくらいの時間動き続けても、炭治郎は動くのを止めなかった。
何か『長男だから』とかそんな風に言ってたけど、ああいう風に移動するのが長男とかに関係あるのか?
いやまぁ、それで炭治郎の強さが上がるのなら、それはそれで問題がないのだが。
そんな炭治郎も、結局最後には限界となってしまい、もう動ける状態ではなくなった。
今回の模擬戦で一体どのくらい炭治郎が成長したのかは、生憎と俺にも分からない。
それでも炭治郎の動きは限界を超えていたのだから、それを思えば最終的に炭治郎の糧となったのは間違いないだろう。
そんな風に考えつつ、俺は鬼殺隊の隠れ里の中を歩く。
ここから行こうと思っている場所は幾つかある。
そんな中で特に気になっているのが、狛治とエヴァだ。
鬼から俺の召喚獣となった狛治だが、まだその力を完全に使いなせている訳ではない。
とはいえ、元々狛治は鍛錬によって強くなるのを好む。
1人でも色々と訓練を行い、翼と角を使いこなせるように……そして鬼だった時よりも高まった身体能力を使いこなせるように、鍛錬を重ねていた。
そのような状況だけに、鬼殺隊で行われる柱稽古は絶好の鍛錬場所と考えたのだろう。
鬼殺隊の中でも地位の高い……つまり、それだけ自分の実力に自信のある者とだけ、模擬戦を行う事になっていた。
とはいえ、狛治が鬼であるというだけで嫌っている者が多いのも事実。
不幸中の幸いなのは、狛治が鬼だった時に人は最低限しか食っていなかった事か。
鍛錬によって強くなった狛治だけに、それが功を奏した形だ。
……とはいえ、それでも鬼だったというのは大きなマイナスとなる。
それでも柱稽古の中に入るのが認められたのは、耀哉がそれだけこの柱稽古で鬼殺隊の面々に強くなって欲しいと思っているからだろう。
後は、俺がしっかりと狛治を扱えているというのも大きいと思う。
とはいえ、耀哉もまた当然ながら完全に狛治に気を許したという訳ではないのだが。
もし狛治が人を喰い殺すといったような真似をした場合、間違いなくすぐに複数の柱が狛治を殺そうとするだろう。
とはいえ、狛治も当然ながら自分がそのような状況であるのを理解した上で柱稽古に付き合ってるのだろうが。
「狛治の方も気になるけど……やっぱり見に行くとすればエヴァだな」
そう判断すると、俺はそちらに向かって進む。
エヴァもまた、狛治程ではないにしろ認められていない者は多い。
だが、エヴァの実力を考えれば、当然ながら気にくわないからといって攻撃をしてくるような相手がいても、それを防いだり排除したりするのは難しい話ではない。
そんな風に思ってエヴァの任されている場所に行ったのだが……
「何をしてるんだ?」
エヴァが任されていた光景を見て、思わずそんな風に突っ込む。
当然だろう。何しろエヴァが柱……特に実弥や小芭内といった連中に攻撃されてるのではないかと期待……もとい心配になってここにやって来たのに、そこにあったのはお茶をしているエヴァという光景だったのだから。
ちなみにお茶ではあるが、西洋風のお茶会ではなく和風のお茶会だ。
苦いお茶……抹茶だったか? を飲んで、大変結構なお手前でとか、そんな風に言う奴。いわゆる茶道って奴だな。
どこから持ってきたのか、きちんとレジャーシート……それもその辺で売ってる安物ではなく、結構な金額がする奴を敷いて、傘っぽい……何なんだろうな。それも設置されており、エヴァと茶々丸は着物を着ている。
「何をしている? それは見れば分かるだろう?」
お茶を一口飲んで、小さく息を吐いた後でエヴァがそんな風に言ってくる。
エヴァにしてみれば、至極当然といった様子で言ってるのだろう。
しかし、柱に訓練をつける筈が、何故お茶を楽しんでいるのかといった風に疑問を持つのは当然だった。
ちなみに俺は紅茶派ではあるし、自販機とかで売っている緑茶とかなら普通に飲めるし、寧ろ好きな方だが、こうしたお茶会で出る抹茶はあまり好きじゃない。
飲めない訳ではないのだが、好んで飲む訳ではないといったところか。
「俺が聞いた……というかエヴァに頼んだのは、お茶会をやるじゃなくて柱に稽古を付けるってものだったと思うんだが」
「だからこうして待っている。だが、柱が来る様子はないがな。……そもそも、柱達は現在鬼殺隊の剣士達に訓練をつけているのだろう? なら、柱がここに来るのはそれが終わった後だ。であれば、それまで暇な時間を私がどう使っても自由だろう」
「……あ」
エヴァの言葉に、思わず納得する。
そうなんだよな。これが柱稽古である以上、当然だが柱は鬼殺隊の剣士達に訓練をしている。
その訓練が終わってから、柱達はここでエヴァの訓練を受けるのだ。
俺の顔を見て、勘違いしていたのを理解したのか呆れの表情を浮かべるエヴァ。
茶々丸は特に何か言う様子はないが、何だかんだと感情が豊かなので内心では何かを考えているのは間違いないと思う。
「ふん、ようやく理解したか。私がここにいる必要は特にない。それでも一応こうしてここで待っているのは、アクセルの顔を立ててのものだぞ」
そう言ってくるエヴァだったが、実際には職人の移住の件が最大の理由なのは間違いない。
勿論、俺の顔を立てるというのもあるのは間違いないのだろうが……それでも結局のところはそこまで頑張っているのは自分の為というのが大きいのだろう。
まぁ、それでも何かがあって柱が早くここに来た時を想定してエヴァがここにいるのはありがたいのだが。
「そう言えば、ここに来る前に炭治郎と模擬戦をやってきたぞ」
「ほう、そうか。どうだった?」
それなりに興味深いのか、エヴァはそう尋ねてくる。
まぁ、エヴァにとって炭治郎は弟子だ。
それもネギ程ではないにしろ、才能がある弟子なのは間違いない。
だからこそ、俺との模擬戦の結果が気になったのだろう。
「そうだな。かなり強くなってるのは間違いない。それに強さとかよりも……そうだな。根性とかそういうのはかなり凄いと思ったな。炭治郎よりも少しだけ上の実力を出して戦っていたんだが、かなり長い時間俺と戦い続けていた」
「ふむ、アクセルを相手にそのくらい出来るのなら、それなりに期待出来るな。……他の3人とは戦わないのか?」
この場合、他の3人というのは善逸、伊之助、カナヲの事だろう。
本来ならカナヲはエヴァの鍛える面子の中に入ってはいなかったのだが、蝶屋敷で訓練をやっている関係上……いや、それ以外にも炭治郎とカナヲの関係もあるのだろうが、とにかくいつの間にか訓練に混ざるようになったのだろう。
それでもエヴァが不満を言わなかったのは、3人が4人になってもそう変わらないと思ったのか、それともカナヲはエヴァをして認められるだけの才能を持っていたのか。
実際、炭治郎に以前聞いた話によると鬼殺隊になる為の試験を行った時に、一番強いのはカナヲだったらしい。
その当時は分からなかったみたいだが。
……考えて見れば、当然の話ではある。
炭治郎と善逸は育手の下にいて訓練を受けていたし、伊之助は我流だ。
そんな3人と比べて、カナヲは小さい頃からしのぶやしのぶの姉と訓練をしてきたのだ。
ましてや、試験の時はしのぶは既に柱で、カナヲは正式にはまだ鬼殺隊の剣士ではなかったが、実質的に継子的な存在だった。
あ、そう言えば炭治郎の同期には玄弥もいたな。
玄弥がどういう状態だったのかは、付き合いが殆どないので正確には分からないんだよな。
「そうだな。戦ってもいいとは思うが……善逸達は善逸達で、修行で忙しいだろ」
善逸達の能力は十分に理解しているものの、それでもまだ柱程の強さはない。
この世界の主人公である炭治郎の仲間とヒロイン候補である以上、才能という点では間違いなくかなりのものがあるだろう。
もっと時間があれば、それこそ柱になれるだけの才能は持っている。
とはいえ、それはあくまでも将来的な話だ。
今必要なのは、現時点での強さ。
将来的にどれだけ強くなろうとも、今の時点で強くなければ意味はない。
何しろ鬼舞辻無惨を引っ張り出す罠を仕掛けるのは、そう遠くない未来なのだから。
将来性とかではなく、即戦力が必要なのは間違いなかった。
とはいえ、今の状況を思えば本人達がどんな風に思うのかは俺にも分からなかったが。
「ふむ。だが私と戦っているだけではなく、アクセルと戦うのも十分に意味があると思うのだが。毎日決まった相手と戦っているだけというのは、マンネリになりかねん」
「エヴァを相手にしての戦いでも、マンネリになるのか?」
「む」
若干挑発するような言い方だったからだろう。
エヴァが不服そうに小さく呟く。
エヴァにしてみれば、自分の戦い方がマンネリだとは認めたくないのだろう。
また、実際にエヴァは600年以上生きている事もあって、戦闘経験は豊富だ。
こと生身での戦闘経験という事になれば、俺も及ばない。
それどころか、エヴァの倍近く生きている鬼舞辻無惨であってもエヴァの戦闘経験には及ばないだろう。
エヴァは襲ってくる敵はその多くを倒してきた。
勿論最初は逃げたりしただろうが。
そんなエヴァと比べて、鬼舞辻無惨は戦うのではなく逃げ隠れる事を重視している。
そうである以上、エヴァの倍近く生きていても戦闘経験で劣るのは当然だろう。
「ふむ。では私を相手の戦いがマンネリになるかどうか……試してみるか?」
抹茶の入っていた茶碗を下に置くとエヴァは好戦的な笑みを浮かべてこちらに視線を向けてくる。
その身体からは圧力を持つ程の魔力が吹き上がっており……それを見れば、エヴァが本気で俺と戦ってみようと思っているのは間違いない。
「そうだな。なら、久しぶりに試してみるか」
そう言い、俺も好戦的な笑みを浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731