俺とエヴァの戦いは、気が付けば数時間にも及んでいた。
お互いにそれなりに全力――隠れ里の外から見つかりかねないような攻撃は暗黙の了解で使わずにいたが――での戦いだったが、俺とエヴァが戦っていれば当然ながらそれはかなり……もしくはそれ以上ない程に目立つ。
気が付けば、周辺には多くの者が集まってきていた。
……ただし、柱も含めて俺とエヴァの戦いにちょっかいを出すような真似が出来る者はいなかったのか、それとも俺とエヴァの戦いはあくまでも模擬戦であると理解していたからか、介入してくるような相手はいなかったが。
「取りあえずこの辺で終わりだな」
エヴァの放ってきた氷の塊を白炎で一瞬にして溶かした事で、模擬戦の終了を告げる。
エヴァはそんな俺の言葉に若干不満そうな様子を見せていたものの、それでもこれ以上本気で戦えば周辺が壊滅的な被害を受けるというのは理解しているのか、大人しく戦いを止める。
「お疲れ様でした、マスター、アクセルさん」
模擬戦が終了したと判断したのだろう。茶々丸が俺とエヴァにそれぞれ紅茶を渡す。
その紅茶は普通の紅茶のように暖かい紅茶ではなく、冷たい紅茶だ。
基本的に紅茶というのは暖かいものなのだが……俺の場合は缶紅茶やペットボトルの紅茶も慣れているので、冷たい紅茶も嫌いではない。
ましてや、茶々丸の淹れた紅茶だけに、当然ながらそういう紅茶よりも明らかに美味い。
冷たくてもしっかりと紅茶の味を楽しめるのは、それを淹れたのか茶々丸だからだろう。
「うむ。……なかなかだな」
「俺はかなり美味いと思うけどな」
エヴァとそんな会話を交わしていると、やがて誰かが近付いてくるのが分かった。
今の戦闘を見て、一体誰が? と思って視線を向けると、そこにいたのは狛治。
ドラゴンの翼を背中から、一本の角を額から生やしているその姿は、エヴァにとっても珍しいものだったのか、興味深そうな視線を向けている。
あれ? 狛治とエヴァが会うのはこれが初めてだったか?
けど、会うのが初めてでも、狛治という俺の召喚獣がホワイトスターで生活する事になったというのは、情報としてシャドウミラーの面々に流れていた筈だが。
そう思って茶々丸を見ると、微妙に申し訳なさそうな表情を浮かべ、頭を下げる。
あ、茶々丸の態度を見て理解した。
多分エヴァはその連絡を面倒臭がって見ていなかったのだろう。
江戸時代に生きた狛治と、日本の文化……それも古き良きというのが付くような文化を好むエヴァとでは、相性は悪くないと思うんだが。
「アクセル、今のがお前の本気の戦いか?」
エヴァからの視線を感じてはいるのだろうが、まずはそれを聞きたいのか狛治が問い掛けてくる。
そう言えば、俺が狛治と……正確にはまだ猗窩座だった時の戦いは基本的に近接戦闘をメインにしていたな。
鬼眼を使ったりしたこともあったので、完全にその手のスキルを使わなかった訳ではないが。
「そうだな。本気かどうかと言えば……俺もエヴァもまだ本気という訳じゃない。あくまでもこの場所で使っても問題のないような攻撃だけしか使ってないし」
「あれでもまだ本気ではないと……そういう意味では俺と戦っていた時は大分手加減をしていたというのか」
はぁ、と。
ショックを受けたように息を吐く狛治。
その気持ちは分からないでもないが……そこまで落ち込むような事でもないだろうに。
「俺が全力ではなかったのは間違いないが、それでも狛治は最後の戦いで俺に傷を付けただろう? それは誇っていいと思うぞ」
「ほう、アクセルに傷を? この男はそこまで強いのか」
感心した様子を見せるエヴァに、少しだけ悪戯心が湧いて口を開く。
「ああ、強い。ちなみに……この狛治は、ある意味でエヴァの後輩のようなものだぞ」
「……何? それは一体どういう意味だ?」
後輩という言葉に、何をもってそんな風に言ったのかが理解出来ない様子のエヴァ。
そんなエヴァと同様に狛治の方もあまり理解出来ないといった様子を見せていた。
「忘れたのか? 俺が召喚の契約を結ぶ時は、相手に血を1滴飲ませる。狛治は俺の血を飲んだという意味で、エヴァの後輩だ。……もっとも、狛治が飲んだのは薄めたりしていない俺の血だけどな」
「本気か!?」
俺の言葉に、エヴァは信じられないといった視線を狛治に向ける。
無理もないか。エヴァは俺の血を魔力回復薬として使っているが、かなり薄めて飲んでいるのだから。
以前俺の血をそのまま飲んだエヴァは、ある意味で中毒症状を起こしたかのようになっていた。
ましてや、それは俺がネギま世界に行っていた時の話で、あの時と比べると現在の俺の魔力はかなり高くなっている。
そんな俺の魔力が濃縮された血を飲めば、どうなるか。
それを知ってるからこそ、エヴァが狛治に向ける視線は驚きの色が強いのだろう。
「俺の召喚獣になったということは、つまりそういう事だ」
「信じられん。よく生き残る事が出来たな」
本当に心の底から理解出来ないといった様子で狛治にそう声を掛ける。
そんな視線を向けられた狛治は、俺の血を飲んだ時の事を思い出したのか、しみじみといった様子で頷く。
「そうだな。正直もう絶対に飲みたくはない」
心の底からといった様子で告げる狛治。
そこまで俺の血は不味いのか。
というか、これから俺が召喚獣としての契約を結べる相手が、それだけ少なくなってしまうということなんだよな。
とはいえ、魔力というのは混沌精霊の俺にとってかなり大きな意味を持つ。
だからこそ、その魔力を強化するのをやめるつもりはない。
……というか、ステータスのスキル欄は既に完全に埋まっている。
レベルが10上がればスキル欄が1つ増えるのだが、俺のレベルはかなり上がりにくくなっている。
43から44に上がるのに掛かった時間を考えると、レベルが50になるのは一体いつになる事やら。
それにスキル欄が増えてもPPで入手出来るスキルの中で有望そうなのは既に入手している。
どうせならスライムで吸収して入手したスキルの方が、俺にとってはありがたい。
そんな訳で。PPの使い道としてはステータスを上げる事になるんだが、俺のステータスはどれもかなり高い数値を示している、
UC世界やダンバイン世界において、そのステータスのおかげで圧倒的な戦果を叩き出したのを見れば、それは明らかだろう。
つまり、ステータスで重要なのは格闘とかの数値ではなく、魔力となるSPな訳だ。
だからこそPPを使うとSPが上がっていき、結果として召喚獣の契約を結ぶのが難しくなる。
何しろ召喚の契約を結ぼうとしても、俺の魔力に耐えられなければ頭がパァンッとなってしまうのだから。
「えっと、その……お話中のところを申し訳ありませんが、少しよろしいでしょうか?」
笑みを浮かべながら、しのぶがそんな風に声を掛けてくる。
ただし、しのぶの表情は笑みだが、その額には血管が浮き上がっていた。
これは明らかに怒りを堪えている奴だ。
「あ、そうだ。そう言えば俺はやる事があるのを忘れていた。今は……」
「おい、こら。逃がすと思うのか?」
今のしのぶには、千鶴に通じる何かがある。
そう判断した俺が素早くこの場から逃げ出そうとしたものの、そんな俺の手を掴んで逃亡を防いだのはエヴァ。
「エヴァ、お前……何をしてるんだ?」
「うるさい、馬鹿者。この場を私だけに押し付けて逃げるなどといった真似は許さん。貴様もしっかりと後始末をしていけ」
「いや、後始末って言ってもな。残ってるのはエヴァの氷くらいだろ? なら、それはエヴァが……」
「お黙りなさい」
俺とエヴァの会話を遮るように、しのぶがそう言う。
「2人が訓練を行うのは構いません。私達も訓練を受けるのですから。ですが訓練をする場合は周囲の被害も考えてからやってくれませんか? ……ほら、見て下さい。周囲の様子を。あの氷の塊はどうするつもりですか?」
「あ、やっぱりエヴァか。ほらな。俺は特に周囲の迷惑になるような真似はしてないから……」
「アクセルさんの炎で焦げてる場所が多数あるのですが?」
しのぶの言葉を聞き、エヴァは俺に勝ち誇った視線を向けてくる。
「私の氷は溶かせばそれで問題ないが、アクセルの炎で燃えた場所はどうしようもない。それはつまり、アクセルの方が周囲の被害は大きいという事だ。はっはっは」
「2人共……反省して下さいね?」
勝ち誇っていたエヴァも、改めてしのぶにそのように言われてしまうと何も反論は出来ないらしい。
とはいえ、ここで俺が勝ち誇った様子を見せれば、それはそれで色々と不味い事になるのは明らかだ。
その後、10分程度だがしのぶに注意という名の説教をされ……取りあえず今回の話はそれで収まることになるのだった。
「うーん……こうなると、俺やエヴァが本気で訓練出来る場所となると、それこそ誰もいないような場所じゃないと難しいな」
「そこまでして訓練をする必要はないだろう?」
そんな風に会話をしながら、俺とエヴァはクッキーを食べつつ紅茶を楽しむ。
この紅茶は、先程茶々丸に渡して貰った冷たい紅茶ではなく、きちんと暖かい紅茶だ。
騒動が終わり、ここに残っているのは俺とエヴァ。そして……
「取りあえず、蝶屋敷での訓練は止めて下さいね」
「俺が以前アクセルと戦っていたような場所はどうだ?」
しのぶと狛治の2人も、何故かここにいた。
いやまぁ、狛治はともかくしのぶはお目付役という事らしいので仕方がないのだが。
柱稽古の方はいいのかと聞いてもみたが、量産型Wに任せてきたので問題はないらしい。
量産型Wか。……訓練を受けている連中、折れないといいけど。
量産型Wは疑似経験や疑似記憶によって多くの量産型Wの経験を反映出来る。
ましてや、量産型Wの身体はレモンの日々の研究によって非常に性能が高いものになっており、かなり万能な存在だ。
そんな量産型Wとどんな訓練をするのかは、生憎と俺には分からない。
しかし今の状況を思えば、少しでも厳しい訓練をした方が生き残れるという意味で、大きな意味を持つのは間違いない。
「あそこか。……あの辺も自然が何だかんだと結構な被害を受けてるからな」
俺が何度も狛治と戦った場所は、当然だがその攻撃の余波によって周囲の自然も結構なダメージを受けていた。
大正時代の今は自然破壊とかは特に気にする必要がないが、これが昭和や平成といった時代になれば、色々と問題になってもおかしくはない。
「一体、どんな戦いをしていたんでしょうね」
俺と狛治の言葉に呆れた様子で言ってくるしのぶ。
ちなみにしのぶと狛治は、それなりに相性はいい。
狛治が鬼から人になったというのもあるが、それよりもやはり姉の仇である童磨を殺せたというのが、しのぶの心に余裕をもたらしているのだろう。
「そこまで派手な戦いじゃなかったぞ。エヴァとの戦いよりは大人しかった」
「……そこで私を出されるのはどうかと思うのだが」
「ですが、この光景を見ると……あら? このクッキー、美味しいですね。甘過ぎないのが私には嬉しいです」
「そうだろう。そのクッキーは他の世界でも美味いと有名な店で購入してきたものでな。……こう言ってはなんだが、この鬼滅世界は文化的には大きな意味を持っているものの、食べ物という点ではやはり他の世界よりも劣ってしまうな」
「その辺は仕方がない。他の世界ではそれだけこの大正時代から時間が経ってるんだ。その間に色々と料理を改良したりといったようなことをするだけの余裕があったんだから」
勿論、この世界にも特有の美味い料理とかはあるのかもしれないが。
「しのぶも今度、他の世界に行ってみるか? そうだな、UC世界はどうだ? 輝利哉もまた月に連れていくって約束してたんだけど、耀哉が万全の状態で戻ってきて、しかも鬼舞辻無惨を罠に掛ける為の準備で忙しいらしくて、そんな余裕がなくなっていたんだよな」
「え? 他の世界に?」
「ああ。しのぶにとっても悪い話じゃないと思うぞ。UC世界の俺達の拠点は月にある。俺としのぶで一緒に行った、あの月にな」
「月に……」
月に行った時の記憶を思い出してるのか、しのぶの口からはそんな声が漏れた。
しのぶにとっても、月に行ったというのは思い出深いものなのだろう。
そう思って貰えれば、俺も月に連れていった甲斐があったというものだ。
「まぁ、すぐにとは言わないから考えておいてくれ。それに……正式に鬼殺隊との間に契約が結ばれれば、鬼殺隊の面々もホワイトスターに来る事になってそこで色々な世界の者達と接する事が出来るぞ。いやまぁ、もうネギま世界の神鳴流の剣士達とは触れあってるけど」
狛治は……どうだろうな。
性格的にはそこまで問題ないと思うが、やはり背中から生えている翼と角が目立つので……ネギま世界の麻帆良祭とか、そういう時ならともかく、普通の状況で向かうのは難しいと思う。
ネギま世界以外の世界でも、基本的にそのまま行動するのは難しい。
エヴァ辺りに幻影の魔法でも使って貰えば、何とかなるのかもしれないが。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731