「ぬおっ!」
鬼舞辻無惨の口から驚きの声が上がる。
当然だろう。まさか青い彼岸花が動き、それでいてどこからともなく触手を出して自分の身体に突き刺してくるとは思っていなかったのだから。
ましてや……この青い彼岸花はレモンの作品だが、その青い彼岸花の製作にはしのぶと珠世も協力している。
とはいえ、それはあくまでもしのぶと珠世が開発した毒……それも詳しい話は聞いてないが、10種類以上の様々な毒が使われ、今こうして青い彼岸花の触手によって鬼舞辻無惨の身体に注入されているのだ。
本来なら珠世もホワイトスターに呼んで毒や薬について研究をするといった可能性もあったのだが……愈史郎の一件で、珠世にはまだホワイトスターについての詳しい情報は開示されていない。
結果として、珠世はしのぶと共に毒は製造したものの、それが具体的にどう使われるのかは聞かされていなかったとかなんとか。
珠世にはその辺を教えてもいいと思わないでもなかったのだが、愈史郎の一件で珠世の信頼度は大きく下がっている。
その信頼度を考えると、作戦の詳細や具体的にどうやってその毒を鬼舞辻無惨に注入するのかといったような事は教えられなかった。
「俺からのプレゼントは気に入って貰えたようだな」
1本だけではなく、青い彼岸花からは何本もの触手が伸びて鬼舞辻無惨の身体に突き刺さっていた。
普通なら鬼舞辻無惨もそう簡単に触手を突き立てられるといったような事はなかったのだろうが、鬼舞辻無惨は咄嗟の事で自分から青い彼岸花に近付いていた。
また、この青い彼岸花を作ったのがレモンだとすれば、そこから伸びる触手が鬼舞辻無惨の身体に突き刺さるのを防ぐような真似は出来なかった。
「貴様……アクセル・アルマーっ!」
俺の姿を見た鬼舞辻無惨は、今回の騒動について全て理解したのだろう。
怒りから叫びつつ、その怒りの力によって青い彼岸花から伸びていた触手を引き千切り、その青い彼岸花を床に叩き付ける。
「おいおい、いいのか? その青い彼岸花はお前が長年探していたものだろう? なぁ、狛治」
「ああ、そうだな。俺が鬼だった時、鬼舞辻無惨は何が何でも青い彼岸花を探すようにと命令していた」
「貴様……猗窩座ぁっ」
俺の言葉で鬼舞辻無惨も狛治の存在に気が付いたのだろう。
怒りのあまり叫び、その手を大きく振るう。
「させないっ!」
鬼舞辻無惨の身体から伸びた触手……触手か? ともあれそんな一撃を上空のドロから降りてきた炭治郎が日輪刀を振るって切断する。
「貴様……その耳飾り……浅草の時の奴か。この異常者どもめ!」
炭治郎を見て、何故か急に異常者と叫ぶ鬼舞辻無惨。
一体何故そんな結論になったのかは分からないが、今は出来ればもう少し時間を稼ぎたい。
俺が鬼舞辻無惨と話していたのも、時間稼ぎの理由だった。
俺と狛治は建物を破壊しながら真っ直ぐに突っ込んで来たのだが、ドロに乗っている面々はそんな真似は出来ない。
……やろうと思えば突っ込んでもいいと思うし、そもそもこの建物は今回の戦いで破壊されるのが前提とされている。
「一体何を言っている?」
炭治郎の後を追うように部屋に突入してきた善逸、伊之助、獪岳のうち、獪岳が何故いきなり異常者呼ばわりされたのかは分からず、尋ねる。
鬼舞辻無惨を前にしても、まだ余裕のある態度を取れる辺り、獪岳の成長はかなりのものだな。
ともあれ炭治郎達を皮切りに、ドロからやってきた柱の面々や神鳴流の剣士、他にも腕利きの鬼殺隊の剣士達が姿を現す。
それだけではなく、エヴァの影のゲートが開かれ、他にも多くの者が姿を現し……そして人数が増えたところで鬼舞辻無惨と交渉していた人物を連れて影のゲートで撤退する。
……その際、エヴァは鬼舞辻無惨を見て見下すように鼻で笑う。
「貴様等……鳴女!」
エヴァの態度が最後の一線を越えたのだろう。鬼舞辻無惨は不意に叫ぶ。
ちっ、やっぱり予想通りになったか。
当初の予想では、何かあったらすぐに鬼舞辻無惨が撤退する可能性は考えられていた。
だが……
「逃げるのか? 鬼を率いるともあろう者がみっともないな」
ジャジャン、と。
俺の言葉と同時にそんな音が周囲に響く。
その音を聞いた瞬間、俺はそれが転移の血鬼術であると本能的に察知した。
それに抵抗しようと思えば出来ただろう。
ダンバイン世界においても、ジャコバの能力で地上に転移するのを俺は防ごうと思えば防げた。
そうすると俺だけバイストン・ウェルに残される事になるので、結果としてジャコバの力に逆らうような真似はしなかったが。
今もまた、転移の血鬼術に逆らおうと思えば逆らえる。
それは本能的な確信だった。
しかし……そんな確信がありながらも、転移の血鬼術に逆らうような真似はしない。
最初は鬼舞辻無惨がこの場から逃げ出す為だけに鳴女に呼び掛けたのかと思っていた。
しかし、こうしてこの場にいる俺達に対しても転移させるという事は……それはつまり、鬼舞辻無惨だけではなく俺達も含めて転移させようと考えているのだろうと予想出来る。
もしかしたら、鬼舞辻無惨だけを無限城に転移させ、俺達は無限城とは違う……それこそ日本のどこか、もしくは海の上に転移させるといったような真似をしてもおかしくはないのだが。
そうなったらそうなったで、ある意味では構わないのは事実。
何しろ鬼舞辻無惨の身体には青い彼岸花によって10種類以上の毒が注入されたのだ。
しかもしのぶや珠世が開発した毒に加えて、レモンを含めた技術班が開発した毒もある。
……まぁ、技術班の多くはオーラバトラーやオーラバトルシップを含めたオーラマシンの解析に熱中してるから、実際に毒を作るのに協力した技術者はそう多くはないのだろうが。
とはいえ、協力した者は少なくてもシャドウミラーの技術班だ。
そうである以上、鬼舞辻無惨の身体に注入された毒はかなりの猛毒になっている筈だ。
そんな風に考えていると、やがて周囲の景色が一瞬にして変わる。
変わったのだが……空中に放り出された俺は、そのまま下に向かって落ちていく。
「っと」
落ちていると判断した瞬間、俺は一瞬にして空を飛ぶ。
「アクセル」
そんな俺の隣に、翼を羽ばたかせながら狛治がやって来た。
他の面々は? と思って周囲を見回すが、ここにいるのは俺と狛治だけらしい。
「ここが無限城か?」
空を飛びながら、隣の狛治に尋ねる。
すると狛治は、特に躊躇する様子もなく頷く。
「ああ、無限城だ。……どうやら、鳴女の力によってあの場にいた全員がここに連れてこられたようだな」
「で、問題は俺達のいる場所はどこなのかという事か。鬼舞辻無惨がどこにいるのか分かるか?」
「いや、分からないな。無限城は同じような景色が広がっている。鳴女ならその辺を理解しているのかもしれないが」
「……鳴女か」
鳴女の転移の血鬼術を実際に体験した俺が言うのもなんだが、実は鳴女という鬼は鬼の中で最強に近いんじゃないか?
狛治に聞いた話によると、鳴女は上弦の鬼にすら全く気が付かれずに転移させる事が出来るらしい。
それはつまり、もし鳴女が本気になれば日本から遠く離れた場所に転移させるといった真似や、それどころか日中に無理矢理日の光の下に転移させるといったような真似すらも出来るのだ。
そういう意味では、鳴女は鬼舞辻無惨にすら勝てるんじゃないか?
まぁ、鬼舞辻無惨によって鬼にされた以上、鬼舞辻無惨に逆らうといった真似は出来ないと思うのだが。
「それで、アクセル。これからどうする? 鬼舞辻無惨のいる場所に向かうか?」
「行けるのなら行きたいが、問題なのは鬼舞辻無惨の場所が分からないって事だよな。狛治から聞いてはいたが……また、かなり面倒な作りの城だ」
無限城という名前の城だが、まさにその名前に相応しい城なのは間違いない。
それこそ、襖や障子が無数に存在するのではないかと思えるくらい周囲には浮かんでいた。
このような状況を見れば、一体どこに鬼舞辻無惨がいるのか分からない。
とはいえ、鬼舞辻無惨はすぐに動くのは難しい筈だ。
何しろしのぶと珠世が作った毒、それにレモンやマリュー、それ以外にも技術班の面々が協力して作った毒を合計10種類以上その身体に打ち込んだのだ。
……こうして考えて見ると、あの青い彼岸花は完全に生物兵器と呼んでもいいよな。
ともあれ、大量に毒を体内に注入された鬼舞辻無惨は、あの場で死ななかったのが不思議なくらいだ。
この辺は、さすが鬼を率いる存在であると思ってもいいのかもしれない。
そんな訳で、現在の鬼舞辻無惨は間違いなく解毒作業の真っ最中の筈。
問題なのは、その解毒作業にどのくらいの時間が掛かるかだが……さすがに10種類以上の毒ともなれば、そう簡単に解毒するのは無理だろう。
だからこそ、俺達は鬼舞辻無惨が解毒作業を終えるよりも前に鬼舞辻無惨を見つけ、倒せばいい。
「まず狙うのは鳴女だな」
転移の血鬼術を使う鳴女は、非常に危険だ。
俺やエヴァの使う影のゲートとは違い、自分がその場にいなくても相手を転移させることが出来るというのが大きい。
つまり、俺や狛治が鬼舞辻無惨のいる場所に到着しても、その瞬間にまた無限城のどこかに……あるいは無限城の外に転移させられる可能性が高いのだ。
だからこそ、今は少しでも早く鳴女を倒してしまう必要がある。
「俺もアクセルの意見に賛成だ。賛成だが……黒死牟の存在も忘れてはいけない」
黒死牟。
それは上弦の壱の名前だ。
鬼として長い年月を生きてて、いわば鬼舞辻無惨の側近中の側近とでも呼ぶべき存在。
それだけではなく、鬼であるにも関わらず月の呼吸を使うらしい。
まさに最強の鬼と言っても間違いではないだろう。
せめてもの救いは、黒死牟以外の十二鬼月は、上弦も下弦も全て死んでいるという事か。
……その中で一番十二鬼月を殺したのは、実は鬼柱の鬼舞辻無惨だったりするのだが。
あ、しまったな。さっき鬼柱について言っておけばよかった。
そうすれば、鬼舞辻無惨はより怒り狂って鳴女に指示を出すよりも前に半ば暴走というか、癇癪を起こしていたかもしれないのに。
いやまぁ、今更か。
「狛治の話を聞く限りでは、黒死牟はかなりの強さらしい。……エヴァがいれば、任せてもよかったんだけどな」
そのエヴァは、他の場所にいた戦力を影のゲートで連れて来て、鬼舞辻無惨と交渉をしていた人物を連れ出すとそのまま影のゲートで戻っていった。
エヴァの性格を考えれば、寧ろそこまで協力してくれたのが驚くべきことだろう。
本人がそれを望んでやったのか、渋々やったのかは別の話だが。
「そうだな。取りあえず……うん?」
何かを言おうとし狛治だったが、訝しげな視線をとある方向に向ける。
そちらから何かが近付いて来ているのは、当然ながら俺も理解していた。
そう……鬼だ。
それもただの鬼ではなく、鬼の群れとも言うべき多数の鬼。
てっきりこの無限城には鬼舞辻無惨と鳴女と黒死牟だけしかいないと思っていたが……いや、あるいは時間稼ぎの為に鳴女が鬼を呼んだのか?
鳴女にしてみれば、少しでもこちらの戦力を削りたいと思うのは当然か。
だが鳴女にとって最大の計算違いは、無限城に取り込んだのが俺や狛治を始めとした強者だけだったことだろう。
雑魚鬼のような存在は、それこそ時間稼ぎ程度にしか使えない。
俺達を無限城の外に追い出すといった選択をするよりも前に、出来るだけ早く鳴女を倒しておきたいところだ。
「いたぞ、あの2人だ! 殺せば十二鬼月だ! 俺が殺してやる!」
ばしん、と音を立てながら空いた障子の向こうから、20匹近い鬼の姿を見つける。
鬼というのは、基本的に同族同士であってもそこまで友好的な関係ではない。
場合によっては……いや、寧ろ鬼同士で殺し合うといったような事の方が多い。
しかし、この鬼達は仲間同士で争うといったような事をする様子はない。
……それは別に鬼としての同族愛に目覚めたとかそういうのではなく、鬼同士で戦っていれば誰かに出し抜かれてしまうと、そう思っているからなのだろう。
「狛治、援護はいるか?」
「いらん。あの程度の雑魚共……俺だけで十分だ」
そう言い、狛治は翼を羽ばたかせて雑魚鬼に向かって突っ込んでいく。
そんな狛治に、雑魚鬼達は自分の手柄がやって来たといったように笑みを浮かべ……だが、その先頭にいた数匹の鬼は、狛治の角から放たれた雷によってあっさりと消滅する。
本来なら、鬼は首を日輪刀で切断するか、太陽の光を浴びせるか、あるいはしのぶの作った毒でなければ殺せない。
だが、狛治の放った雷の一撃は当然ながらただの雷ではなく、魔力の籠もった一撃だ。
その雷によって頭部を砕かれた鬼は、その全てが再生出来ずに死ぬ。
それを見た鬼の群れは当然ながら驚き、動きが止まり……そんな中に狛治は突入していく。
とはいえ、狛治の攻撃で魔力を纏っている攻撃は今のところ角から放たれる雷だけだ。
この先、修行の結果によってはもっと違うことになるかもしれないが……今は雷だけ。
そんな状況であっても、狛治は鬼の群れを相手に蹂躙するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731