結局俺が手助けをすることもないまま、狛治は雑魚鬼の群れを倒した。
しかし、そんな鬼を倒したところで狛治は不思議そうな様子で塵となって消えていく鬼を見ている。
「どうした?」
もしかしたら少し前まで自分と同じく鬼だった相手を倒した感傷かと思ったのだが、狛治の様子を見る限りではそんな感じではないらしい。
「いや、俺が戦ったこの鬼……雑魚だとばかり思っていたのだが、戦ってみた感触としては下弦の鬼に近い力を持つ」
「下弦の?」
十二鬼月の中ではここ100年倒されたことがなかった上弦の鬼――今はもう上弦の壱しか残っていないが――と違い、下弦の鬼はそれなりに倒されている。
だが、当然ながら下弦の鬼を倒すというのもそう簡単な話ではない。
下弦の鬼を倒せば即座に柱になるというのが、下弦の鬼を倒すのがどれだけ大変なのかを示していた。
当然ながら、その辺の雑魚鬼が下弦と同じだけの力を持つというのは少し疑問だ。
考えられる可能性としては、鬼舞辻無惨の奥の手として下弦の鬼となるだけの実力を持つ者達を隠し持っていたとか?
だが、それなら少し前まで上弦の参だった狛治がそれに気が付かない筈がない。
狛治は鬼舞辻無惨のお気に入りだったのだから。
……だからこそ、俺との戦いで何度も負けていたのに、鬼舞辻無惨によって殺されるといった事はなかった。
下弦の鬼の大半は鬼舞辻無惨の気紛れによって殺されているにも関わらず。
であれば、やはり今回の一件はもっと別の要素……
「鬼舞辻無惨によって、強引に力を上げられている、とか?」
「そうだな。そんな感じだ。戦ってみたところ、自分の身体が持つ実力を万全の状態で発揮出来てはいないように思えた」
俺に分かりやすく言えば、操縦技術がないのに高性能な人型機動兵器に乗っているとか、そんな感じか?
パイロット……身体を動かす者がその性能に振り回されて、実力を発揮出来ない。
身体そのものは、確かに下弦並の能力を持っているのだろう。
だが、その能力を活かす事が出来ない以上、呆気なく相手にやられてしまう。
「話は分かった。だが……鬼舞辻無惨にとって、鬼を強くするのなら何故最初からそんな真似をしなかったんだ?」
「恐らくだが、身体にかなり無理があるのだろう。鬼となったことで得た高い能力も、高すぎる事で自滅しては意味がない。それに……」
「それに?」
「これは確証がある訳ではないのだが、本来の実力以上に能力を引き上げられているのを考えると、恐らくそう長く生きられないだろう」
つまり、これだけの実力を発揮してるのは蝋燭が燃える前に激しく燃え上がっている状態な訳か。
普通ならそんな真似をするのか? と思うのだが、鬼舞辻無惨は下弦の鬼ですらあっさりと殺すような性格をしている。
そうである以上、十二鬼月でもない雑魚鬼の命をわざわざ心配する必要はないのだろう。
まさに使い捨ての駒である以上は、寿命がどうとかその辺は全く気にしていないといったところか。
「そうなると、ちょっと危険だな。……偶然ではあるんだろうが、鬼舞辻無惨もいい手を打つ」
ここに転移してきたのは、建物にいた者達全員だろう。
であれば、当然ながらその中にはそこまで強くない者もいる。
いや、柱稽古によって多くの者は十分に強くなったのは間違いないのだが、それでも全員が下弦の鬼を倒せるかと言われれば微妙だろう。
勿論、複数人で1匹を倒すのなら問題ないのかもしれないが。
しかし、狛治と戦った雑魚鬼が集団でやって来たのを考えれば、雑魚鬼は集団で行動している可能性が高い。
であれば、やはりここは出来るだけ早く鬼舞辻無惨をどうにかした方がいい。
取りあえず鬼舞辻無惨を倒してしまえば、鬼は全てが死ぬらしいのだから。
この辺は狛治からの情報でも知られているし、鬼殺隊が長年戦いながら得てきた情報や、レモンやマリューが鬼を研究しての話なので、まず間違いないと思う。
まぁ、実際には鬼舞辻無惨が鬼として覚醒してその辺をどうにかする……といった可能性もない訳ではないのだが。
「どうする?」
「どうすると言われてもな。取りあえず俺達は鬼舞辻無惨を倒すのを優先として、無限城を移動中に雑魚鬼と戦っている連中がいたら即座に助けるという感じだな」
「分かった。だが、雑魚鬼を倒すのは俺にやらせて欲しい。黒死牟と遭遇するまでに、出来るだけ強くなっておきたいのでな」
狛治は童磨とも因縁があったみたいだが、黒死牟とも因縁があるらしい。
とはいえ、今の言葉を口にした雰囲気からすると、因縁は因縁でも童磨とは全く違う因縁らしいが。
狛治が童磨の名前を口に出す時、もの凄く嫌そうな様子を見せていた。
それこそ、その様子を見れば狛治は童磨を嫌っているんだなと納得出来るくらいには。
そんな童磨の時と比べると、黒死牟の名前を口にした時はそこまで嫌そうではない。
だからこそ、狛治と黒死牟の関係が気になる。
狛治の性格からして、黒死牟を助ける為に俺を裏切るといった真似をするとは思えない。
だが、有り得ない事は有り得ないというのはよく聞く話だし、実際にそれが間違っていないのは俺が今まで行動してきた事によって一番理解している。
「狛治、お前にとって黒死牟というのはどういう存在だ?」
「どういう存在……そうだな。ある意味で尊敬しているのは間違いない。だが、それ以上に越えるべき壁だな」
そう告げる狛治の目には、闘争心が満ちていた。
狛治の様子を見る限り、黒死牟を助ける為に俺を裏切るといったような事は考えなくてもいいな。
「分かった。なら、俺は鬼舞辻無惨を倒す為に力を温存しておくよ」
俺の魔力はSP回復の効果もあって、回復速度はかなり早い。
それこそ黒死牟と戦った後に鬼舞辻無惨と戦うといったような真似をするにしても、全く問題はないだろう。
しかし、狛治がここまでやる気を見せている以上、黒死牟の相手は狛治に任せた方がいいのは間違いない。
俺にとっても、召喚獣である狛治が強くなるのは大歓迎だし。
「すまない。助かる」
そう言い、頭を下げる狛治。
微妙に角が邪魔そうだな。
……全く関係ないんだが、そう言えば狛治は寝る時にどうやって寝てるんだ?
うつ伏せで寝ようとすれば角が邪魔になるし、仰向けで寝ようとすれば翼が邪魔になる。
だとすれば、横になってか?
まぁ、その辺については俺が考える必要もないか。
狛治がこうして何も言ってこないという事は、問題ないと思ってもいいんだろうけど。
「さて、いつまでもここにいる訳にもいかないし……そろそろ行動に移るか。さっき話した通り、もし雑魚鬼が姿を現したら狛治に任せる。だが、鬼舞辻無惨が姿を現したら俺が倒すぞ。……毒の影響でろくに動いたりは出来ないと思うが。それと、鳴女は……」
正直なところ、鳴女の能力はもの凄く魅力的だ。
それこそ鬼舞辻無惨と鳴女のどちらを手に入れたいかと言われれば、俺は迷った末に鳴女を選ぶだろう。
それだけ鳴女の持つ血鬼術は魅力的だった。
何しろ自分がいなくても自由に相手を好きな場所に転移させられるのだから。
今はまだこの鬼滅世界しか知らないので、この世界の間だけでしか転移出来ないのかもしれない。
だが、もし鳴女が成長したら……それこそ、ホワイトスターにいながら別の世界にも自由に相手を転移させる事が出来るかもしれない。
ネギま世界からペルソナ世界のように。
そして何より、ダンバイン世界に転移するといった真似が出来る可能性も十分にあった。
マーベルとシーラと再会するのに、鳴女は役に立つかもしれない。
勿論、レモンもまた俺が持ってきたオーラマシンや恐獣の素材を解析して、何とかダンバイン世界と繋げようと頑張ってはいる。
だが、世界というのは無数にあるのだ。
レモンであっても、そう簡単に目的の世界を見つけるといった真似は出来ない。
だからこそ、より多くの手段を使って異世界を見る手段というのは多い方がいい。
マーベルとシーラの件を抜きにしても、例えばダンバイン世界のようにゲートを設置出来ないような時、鳴女ならその血鬼術で俺のいる世界を見つけ、ホワイトスター側からゲートを使って俺のいる場所に移動するといった真似も出来るかもしれない。
……もっとも、俺が転移した世界とホワイトスターはゲートで繋がない限りは時差が存在したりするのだが、鳴女の能力で俺を見つけた場合にどうなるのかは分からないが。
とはいえ、これらは全て鳴女を確保した場合の話だ。
それもただ確保するのではなく、確保した上で生き残らせる必要がある。
鬼は基本的に鬼舞辻無惨が死ねば、全て死ぬ。
正確には鬼舞辻無惨と繋がっている鬼は、だ。
つまり、既に鬼舞辻無惨と繋がっていない珠世や愈史郎、そして鬼ではなくなった禰豆子の場合は、鬼舞辻無惨が死んでも死なない。
だが、鳴女はがっつりと鬼舞辻無惨と繋がりがあるのだ。
そうである以上、鬼舞辻無惨を殺してしまえば当然ながら鳴女も死ぬ。
その辺をどうにかするには、それこそ鳴女も俺の召喚獣にするのが手っ取り早いのだが……
「狛治、鳴女は俺と召喚獣としての契約を結ぶと思うか?」
「どうだろうな。琵琶女……いや、鳴女か。鳴女とそこまで付き合いはないしな。だが……もし召喚獣の契約を結ぶにしても、鳴女がアクセルの血に耐えられるとは思えん」
狛治がこう言う以上、それは大袈裟なものでも何でもなく、本気でそう言ってるのだろう。
俺にもそれは分かる。分かるが……そうなると、鳴女を助ける手段がない。
他の可能性を考えるとすれば、それこそ鬼舞辻無惨をこの場で殺すのではなく捕虜にしてしまうとか。
ホワイトスターの利益だけを考えれば、何気にこれはそう悪い選択肢ではない。
レモンを始めとした技術班の面々にとっても、鬼舞辻無惨は結構興味深い研究対象だろうし。
だがそのようなことをした場合、鬼殺隊の面々はどう思うか。
少なくても、鬼殺隊とシャドウミラーの関係は悪くなるのは確実だった。
鬼舞辻無惨という研究対象と鳴女の転移の血鬼術を鬼殺隊を比較した場合……うん、正直なところどうなるのかがちょっと分からないな。
呼吸と日輪刀、特殊な隊服。後は鬼殺隊が解散した後で耀哉が作る会社。……それと耀哉を始めとして、親しい者達。
その辺と比較すると……うん、やっぱり鬼舞辻無惨はいらないな。
ただ、鬼舞辻無惨を殺すと鳴女も死ぬ。
そして鳴女を生き残らせるには召喚獣の契約を結ぶくらいしか思いつくのはなく、一度その契約を経験している狛治にしてみれば、鳴女が俺の血に耐えられない、と。
なら……そうだな。鳴女をホワイトスターに連れていくのはどうだ?
ホワイトスターにおいては、鬼舞辻無惨の名前を口にしても問題はなかった筈だ。
だとすれば、鬼舞辻無惨が死んでもホワイトスターにいれば、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、死なない可能性はある。
そう思うも、多分駄目だろうなという気はするが。
それでも一応試してみる価値はあるか。
「よし、狛治。予定変更だ。まずは鳴女を見つけて気絶させてホワイトスターに連れていくぞ」
「……どうやってだ?」
俺の言葉に、狛治は不思議そうにそう尋ねてくる。
最初その言葉の意味は分からなかったが、すぐに納得する。
この無限城があるのは、異次元とでも呼ぶべき場所だ。
ここから俺が影のゲートを使っても、無限城から出る事は出来ない。
俺の影のゲートは、あくまでも同じ世界にある場所にしか行けないのだから。
例えば、ホワイトスターで影のゲートを使った場合、ホワイトスター以外の世界には行けない。
他の世界に行くには、一度転移区画まで移動してゲートを使って他の世界に転移する必要がある。
とはいえ、俺にはこういう時に使える奥の手があるのも事実。
その奥の手の名前は、ニーズヘッグ。
ニーズヘッグに内蔵されているアギュイエウスを使えば、ホワイトスターに転移する事も出来る。
……問題なのは、そうなった場合に俺がもうこの無限城に戻ってこられないという事か。
それどころか、現在この無限城にいる者達全員がここから出られなくなるという事になってしまうような。
その辺は実際に試してみないとどうしようもないが、試してみて実は駄目でしたという事になると、積む。
鳴女の協力があればどうにかなるかもしれないが、鬼舞辻無惨に従っている鳴女が俺に協力するかと言われれば……うん、正直微妙だろう。
そうなると、結局鳴女については諦める必要があるんだな。
「はぁ、そうだな。鳴女を確保するのは諦めた方がよさそうだ」
そんな俺の言葉に、狛治は素直に頷く。
「そうした方がいいだろうな。俺が言うのも何だが、鬼を仲間にするのは危険だ。鬼舞辻無惨の一件を抜きにしてもな。ただ……黒死牟なら、場合によっては仲間になる……いや、難しいか」
複雑そうな様子で狛治は呟くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1815
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1731