スライム、と。俺がそう告げると同時に空間倉庫から銀色のスライムが姿を現す。
延々と、延々と、延々と。
無限城の時と同じようなその光景だったが、2度目であるにも関わらず、狛治はただひたすら驚いた視線を向けるだけだ。
「無限城の中でも思ったが、これは……凄いな」
「だろうな。俺の持つ能力の中でも、かなり強い方の能力だし」
このスライムは、俺の転生特典の1つだ。
そういう意味で、他の能力よりも圧倒的に強いのは間違いない。
ましてや、スキル欄が空いている時にしか使えないものの、スライムを使ってスキルを習得出来るという能力も持ってるし。
「それにこのスライムは吸収した分だけ、その質量を増やす。……そういう意味では、無限城ではかなりスライムの量が増えたのは間違いない」
無限城にあったのは、襖とか廊下とか部屋とか……建物と呼ぶべき存在がメインだった。
普通ならそれをスライムで吸収しても、そこまでスライムは増えない。
だが、無限城は実際に無限に広がっている訳でもないようだったので名前負けをしているのは間違いないが、それでもかなり広大な空間だった。
だからこそ、そこにある多くの襖とかは、それだけなら少しであっても、無限城全体として見た場合はかなりの量があり、その大半がスライムによって吸収された。
……出来れば鬼も吸収したかったのだが、そうなると鬼殺隊や神鳴流、あるいはシャドウミラーの面々を吸収するといったような事になっていた可能性も高い。
それを避ける為には、やはり建築物だけを吸収するようにする必要があった。
空間倉庫から出たスライムは、周辺の……屋敷のある、もしくはあった場所全体に広がると、やがてそこから地下に向かって降りていく。
スライムが半ば液体の状態だからこそ、どこか小さな隙間があればそこから下に向かう事が出来た。
もし鳴女がこの建物の地下に鬼舞辻無惨を転移させていなければ……あるいは転移させていても、そこは完全な空洞で地上に向かっていない場所であったりした場合は、スライムを使っても見つける事は出来ないだろう。
だが、もしそのような事になった場合、鬼舞辻無惨にとっては文字通りで地獄だ。
普通の人間なら、酸欠や空腹、渇きによって死んでもおかしくはない。
だが、鬼舞辻無惨は鬼だ。
それもただの鬼ではなく、鬼の祖とでも呼ぶべき存在。
そのような相手だからこそ、地中深くの空間に転移させられるといったような真似をされた場合、死ぬことが出来ず延々と苦しむしかない。
……いやまぁ、実際にそんな風になるのかどうかは、俺にも分からないが。
もしかしたら鬼の祖であっても、人を食わないと死ぬかもしれないし。
そんな風に屋敷の全体が……それこそまだかろうじて無事だった場所も含めて、邪魔な存在はスライムに吸収されていく。
そんな光景は、当然ながら周囲からも目立つ。
何があったのかと、俺の近くにまでやって来る者も多い。
まだ雑魚鬼はそれなりにいるので、そちらと戦っている者もいるのだが。
それでも多くの者が俺の近くまで集まってきた。
炭治郎を始めとして、俺も顔を知ってる者達も多い。
「アクセルさん、一体これは……何をしてるんですか?」
「鬼舞辻無惨がどこにいるのか分からない以上、一番怪しいのはこの屋敷だ。鳴女……転移の血鬼術を使う鬼が鬼舞辻無惨を転移させた場所として、思い当たるのはここしかない。そんな訳で、現在スライムを使って探している訳だ。半ば液体の状態だから、少しでも隙間があればそこから中に入って探索が出来る」
俺と炭治郎のその会話に、スライムを見て複雑な表情を浮かべる者も多い。
ここにいるのは、その大半が無限城でスライムに呑み込まれた経験のある奴なんだから、それは当然だろう。
ドロに乗っていた者の中でここに降りてきたような者がいれば、話は別だったかもしれないが。
「それで、アクセルさん。鬼舞辻無惨は……いるのですか?」
俺と炭治郎の会話に割り込むように、しのぶが入ってくる。
いつものように笑みを浮かべているものの、微妙に額に血管が浮かんでいるように見えるのは、俺の気のせいではないと思う。
しのぶにしてみれば、スライムに呑み込まれたのには色々と思うところがあったんだろう。
そんなしのぶの前で再びスライムを出しているのだから、こういう反応になってもおかしくはないと思う。
「まだ分からない。ただ、この屋敷には地下室があったみたいで、そっちは無事だ。そう考えると、多分そう遠くないうちにはっきりすると思う」
ここにあった屋敷は、かなり金の掛かった洋館だった。
それだけに、地下室の類もきちんとあったのだろう。
ワインセラーとかそういうのがあったのか、それとも何か別に理由で使っていたのか……その辺りは分からないが。
にしても、この屋敷の地下室に鬼舞辻無惨が転移されていた場合、鳴女はこの地下室の存在をどうやって知ったんだろうな。
転移能力の血鬼術を持っていたと考えると、何らかの方法でこの地下室の存在を察知したのかもしれないが。
そんな風に考えながら地下の存在を探っていると……
「いた……か?」
ふとスライムを通して違和感のようなものがあった。
そんな俺の言葉を聞いた瞬間、周囲にいた者が……そして俺の近くにいたしのぶもまた、真剣な表情を浮かべる。
「ちょっと待て。いや……これは……どうなんだ?」
スライムが触れているのは、とてもではないが人の形はしていない。
鬼舞辻無惨が解毒をしようとしているのなら、人の姿をしていると思う。
だが、見つけたのは……そう、この表現が正しいのかどうかは分からないが、繭に近いような、そんな存在。
とはいえ、この屋敷の地下に繭が……それも虫の繭といったようなそんな大きさではなく、それこそ人間大の大きさの繭。
「どうしたのですか、アクセルさん」
真剣な表情で尋ねてくるしのぶに、事情について説明する。
「鬼舞辻無惨……かどうかは分からないが、繭っぽいのを見つけた。虫の繭といった感じじゃなくて、人間大の大きさの繭。……この屋敷に前々からそういうのがあったのなら、話は別だけど」
「そんな訳はないでしょう」
即座にしのぶが言い、それに同意するように他の者達も頷く。
まぁ、普通に考えれば耀哉がこの屋敷を買うよりも前に、屋敷の中を調べるだろう。
そして繭があれば、当然ながら前もって耀哉もそれを知ってるのは間違いない。
当然ながら、そのような存在を知っていればそのままにしておくとは思わないだろう。
鬼舞辻無惨を誘き寄せる為の場所なのだから、不確定要素は排除しておくに越した事はない。
……そのような状況を思えば、しのぶが即座に否定したのも納得出来た。
「その繭らしき存在を取り出してみたらどうだろう!」
杏寿郎のその言葉に、なるほどと納得する。
結局のところ、それが何なのか分からない以上、実際に取り出してみなければ分からないのだ。
もし鬼舞辻無惨が何らかの手段でその繭を作って中にいるのなら、大当たり。
鬼舞辻無惨ではなく、もっと別の何かなら……それはそれで、一体何なのか確認してみる必要があった。
「分かった。なら……ここまで繭を移動させるから、場所を空けてくれ。それと凛、綾子、ムラタ……それと、荒垣と五飛もこっちに来てくれ」
シャドウミラーの面々を呼び寄せる。
凛と綾子、ムラタの3人は、戦力的に期待出来る。
荒垣と五飛は、鬼殺隊の剣士よりも強いのは間違いないが、それでも前の3人よりは若干劣ってしまう。
他にも杏寿郎を始めとした柱の面々や、神鳴流の中でも腕利きの連中を集め……そして繭を移動させる準備を整える。
そうして他の面々の準備が揃ったところで、スライムを引き戻そうとし……
「お?」
思わず声を出す。
「アクセルさん?」
そんな俺の声を疑問に思ったのだろう。しのぶが不思議そうに尋ねてきた。
「いや、繭を地上に出そうとしたんだが、思った以上に周囲の建物に思い切りへばりついてる」
繭がどこか一ヶ所にくっついているのではなく、繭から四方八方に糸……いや、糸と表現してもいいのかどうかは分からないが、多分糸だと思うのが伸びていて、繭を頑丈にその場にくっついていた。
「それは……どうするんです?」
「問題ない。この状況で繭そのものを無理矢理地上に持ってくるような真似をすれば、もしかしたら繭に悪い影響を与えるかもしれないけど、この状況なら繭が周囲にくっつけている糸じゃなくて、それがくっついている場所を切断してしまえばいい」
繭の中にいるのは、ほぼ鬼舞辻無惨で確定なのだが、それでも今の状況ではまだ本当にそう決まった訳ではない。
そうである以上、多少は繭を丁寧に扱う必要があった。
俺の言葉を聞いていた者の中には、鬼舞辻無惨かもしれない繭をそこまで丁寧に扱う必要はないといった表情を浮かべている者もいたが。
俺もそう思わないでもないが、繭の中身が実は鬼舞辻無惨じゃなかった……といったことになったりした場合、取り返しがつかなくなる。
鬼関係ではあっても、実は鬼舞辻無惨ではなく、鬼の宝が眠っているといった可能性も否定は出来ないのだから。
ともあれ、今のところこの繭を地上に出せるのは俺しかいない以上、俺がやるしかないのも事実。
「行くぞ」
そう告げ、スライムを操作して繭から出ている糸が張り付いている場所を切断した。
そして、繭を地上にまで運んできて……姿を現す。
ざわり、と。
スライムの中から姿を現した人よりも大きい繭を見てざわめきが起きる。
だが、この場にいる多くの者は戦いの専門家とも呼ぶべき者達だ。
すぐに武器を構え、繭を警戒する。
しかし、こうして繭を警戒しつつも、その繭から誰かが出て来る様子はない。
「アクセル、繭を斬ってみたらいいんじゃないの?」
綾子のその言葉を聞き、他の者達の意見を求めるべく視線を向ける。
「やって貰えるのであれば、お願いします」
しのぶが代表するようにそう言ってくる。
杏寿郎を始めとして他の柱もいるのだが。
柱の中ではしのぶが俺と一番親しいという判断からなのだろう。
実際、俺としのぶは月にデートに行った間柄でもあるしな。
「アクセルさん? どうかしましたか?」
目力という表現が相応しいような様子で、しのぶは俺にそう聞いてくる。
しのぶが一体俺の様子から何を感じたのかは分からないが、何でもないと首を横に振って誤魔化しておく。
「よし、繭を斬るぞ」
そう言い、空間倉庫から日輪刀を取り出す。
黒死牟との戦いや、鳴女を殺す時はゲイ・ボルクを使っていたのだが、今回は繭を斬り裂くのが目的だ。
なら、槍のゲイ・ボルクではなく、日輪刀の方が向いているだろう。
それに……繭の中にいるのは、ほぼ確実に鬼舞辻無惨だ。
であれば、ここは日輪刀を使うのが最善の筈だった。
繭に近付き、日輪刀を振り上げたところで不意に繭から殺気を感じ、後ろに跳ぶ。
すると一瞬前まで俺の身体があった場所を何かが通りすぎていった。
……ただし、その何か……肉の鞭とでも呼ぶべきものの姿をしっかりと確認出来た者は多くはないだろう。
「貴様……」
繭の中から……正確には今の肉の鞭とでも呼ぶべき存在が放たれた結果裂けた繭から、そんな声が聞こえている。
そして当然ながら、それはその声の主が一体誰なのかを理解していた。
「やっぱりこの繭の中にいたのはお前か、鬼舞辻無惨」
俺の口から出て来た鬼舞辻無惨の名前に、周囲にいた者達の多くは真剣な表情となる。
目の前に、鬼の祖……この鬼滅世界に存在した数々の悲劇の元凶がいるのだから、それを見て真剣になるなという方がおかしいだろう。
特に鬼殺隊の面々にしてみれば、自分達の家族を、恋人を、友人を殺した相手だ。
そのような存在を相手にして、その恨みを晴らしたいと思うのは当然だろう。
そう考えながら、繭の中から出て来た鬼舞辻無惨を見て……少しだけ驚く。
繭から出て来たのだから、服を着ていないのは理解出来る。
その代わりといったように、下半身は黒く染まっていた。
他にも腕も黒く染まっている部分が多く、そんな腕や足には幾つもの牙の生えた口が存在していた。
鬼舞辻無惨の最終形態?
一瞬そんな風に思ったが、繭から出て来たのを見れば……そして何となく、本当に何となくだが、今の鬼舞辻無惨はとてもではないが本調子ではないように思える。
だとすれば、考えられるのは1つ。
「お前……その繭の中で解毒をしようとしていたが、結局解毒が完了しないままでこっちに出て来たな? 繭を強制的に移動させられた事で危険を察知したんだろうが、それでもまだ解毒が完了していない状況で俺の……俺達の前に姿を現したのは失敗だったな」
その言葉に、周囲にいた他の者達……特に鬼殺隊の面々はやる気に満ちた表情を浮かべる。
「黙れ異常者共が!」
図星だったのか、鬼舞辻無惨は俺に向かってそう叫ぶ。
「異常者? いやいや、鬼柱のお前にそんなことを言われるとは、少し意外だったよ」
「鬼柱……だと? 一体何を言っている?」
「ああ、お前だお前。お前は下弦の鬼の多くを殺したんだろう? 狛治から聞いた。だから、鬼殺隊の方で称号を用意してやったんだよ。それが鬼柱。お前のお陰で鬼殺隊は随分と楽になった。感謝しているぞ、鬼柱」
「貴様……貴様ぁっ!」
鬼舞辻無惨は先程よりも大きな声で叫ぶのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1825
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1733