鬼柱について怒るのは納得出来たが、それと同様……いや、それ以上に疑問に思ったのは、異常者と呼ばれた事だ。
そう言えば屋敷で青い彼岸花で罠を仕掛けられた時も異常者とか言っていたが。
今の状況を思えば、一体何を考えて鬼舞辻無惨には異常者扱いされないといけないんだ?
「前も言っていたな。一体何が異常者なんだ?」
「……お前達は異常者だ。私は災害と呼ぶべき存在だ」
あれ? ブチ切れた状態で一気に攻撃をしてくるのかと思っていたんだが、予想外の事に驚く。
とはいえ、すぐにその理由は想像出来た。
今の鬼舞辻無惨は、青い彼岸花によって注入された10種類以上の毒によってまだ苦しんでいる。
つまり、まだ解毒は完了していない筈だ。
鬼舞辻無残の様子を見る限りでは、そこまで弱っている様子には思えないが。
それでも10種類以上の毒の効果が発揮していない訳ではないだろう。
そんな状況で、鬼舞辻無惨は自分の身体に残っている毒を解毒する為に時間を稼ぎたいといったところか。
いっそ話を遮って攻撃してしまおうかと思わないでもなかったが、鬼舞辻無惨がこの状況で何を言うのか。そして何よりも異常者という表現が気になった。
「災害? お前程度で? ……まぁ、いい。お前の必死の時間稼ぎに付き合ってやるよ。何が異常者なんだ?」
「貴様ぁっ!」
「おわっ!」
突然放たれた肉の鞭に驚きの声を発する。
鬼舞辻無惨は解毒の為に時間稼ぎをするつもりじゃなかったのか?
なのに、そんな時間稼ぎは知った事かと鬼舞辻無惨は攻撃してきたのだ。
「そっちがその気なら、こっちも相応の態度を取らせて貰おうか!」
日輪刀を手に、鬼舞辻無惨との間合いを詰める。
肉の鞭による攻撃を放ってくる鬼舞辻無惨だったが、その動きはしっかりと俺の目で見て、追えている。
俺に向かって伸びてきた一撃を、赫刀とはまた違った種類の赤になった刀身を持つ日輪刀で切断する。
「人如きが、私に何をする!」
まさか肉の鞭が切断されるとは思っていなかったのか、鬼舞辻無惨の口から苛立ちの言葉が叫ばれる。
人……人か。
まぁ、今の俺は20代の男といった外見だけに、鬼舞辻無惨が俺を人だと言ってもおかしくはない。
実は混沌精霊であると……それこそ、鬼舞辻無惨が言ったような災害とでも呼ぶべき力を持っているというのは、知らないらしい。
「黙れ、雑魚が!」
その言葉と共に鬼眼を発動する。
「……」
鬼眼の発動と同時に、鬼舞辻無惨の口は開くものの、その声が聞こえてくるような事はない。
ちっ、この様子だと今回の鬼眼の効果は相手を沈黙させるといったものだったらしい。
もし鬼舞辻無惨が魔法使いであったりすれば、今回の沈黙の効果はかなり有効なものだっただろう。
しかし、当然だが鬼舞辻無惨は魔法を使うといった真似はしない。
いやまぁ、ネギま世界の魔法は上級者になれば無詠唱で魔法を使ったりする者もいるので、そういう相手には効果が薄いのだが。
鬼舞辻無惨の場合は、何も喋れなくなったというだけだ。
何故俺達を異常者扱いしたのか、その理由を聞きたかったんだが、今となっては何も喋る事が出来なくなったので、それを聞く事も出来なくなった。
「残念だったな、鬼柱。出来ればお前の弁明、言い訳、泣き言……そういうのを聞いてみたいと思ったんだが。まぁ、これもお前が自分で選んだ選択だ!」
そう言いつつ、日輪刀を使って鬼舞辻無惨の右腕を斬り裂く。
咄嗟に腕を動かしたので切断まではいかなかったものの、その傷は深い。
「っっっっっっっっっ!」
言葉には出せない様子だったが、何かを叫ぶ鬼舞辻無惨。
痛みに呻いての叫びだったのか、それとも自分が傷を負った怒りなのか。
その辺りについては鬼舞辻無惨が沈黙しているのでどうしようもなかったが、鬼舞辻無惨は怒りと殺気に満ちた視線を俺に向けてくる。
鬼眼や今の日輪刀の一撃によるものもあったのか、完全に俺が鬼舞辻無惨の狙うべき相手になったらしい。
「鬼柱……いや、鬼舞辻無惨の狙いは俺に固定されたようだ! 隙を見つけたら攻撃しろ!」
こうして叫べば、当然ながらそれは鬼舞辻無惨にも聞こえるだろう。
鬼柱という単語に、今まで以上に怒り狂ってるのが分かる。
ただ、すぐに鬼舞辻無惨と言い換えたのは、周囲にいる面々に鬼柱と言っても通じないと思った為だ。
怒り狂っている今の鬼舞辻無惨は、そんな俺の言葉を聞いても全く関係ないといった様子で、延々とこっちに攻撃を仕掛けてくる。
もっとも、肉の鞭を使っても、俺はそれをあっさりと回避するような真似をして……
「お?」
地面に着地した瞬間、不意に何かに引っ張られるようにして、鬼舞辻無惨のいる方に向かって移動する。
そんな俺を見て、してやったりといいった表情を浮かべる鬼舞辻無惨が、肉の鞭を振るいつつ、掌に存在する口で俺の身体に触れようとするが……
「甘い」
その一撃を見た瞬間、瞬動を使って一気に鬼舞辻無惨との間合いを詰めて日輪刀を振るう。
まさかこの状況で俺が自分から更に間合いを詰めてくるとは思っていなかったのか、鬼舞辻無惨は驚きの表情を浮かべ……それでも半ば反射的に右腕でこちらの攻撃を防ごうとして、切断される。
「貰い!」
空中に飛んだ鬼舞辻無惨の右腕に触れ、空間倉庫に収納する。
そうしながら間合いを開け……
「うおおおおおおっ!」
行冥の振るう鉄球が、鬼舞辻無惨の身体に叩き付けられた。
その一撃によって、大きく吹き飛ぶ鬼舞辻無惨。
この状況で俺と鬼舞辻無惨の距離が離れるのは不味い。
鬼舞辻無惨は、その能力はともかく性格はかなり問題がある。
思えば、先程話している途中でいきなり攻撃を仕掛けてきたのも、その前に口にした俺の言葉が影響していたのだろう。
いわゆる、煽り耐性が低いという奴だな。
……まぁ、無理もない。
鬼の祖として平安時代から生きてきた鬼舞辻無惨だ。
鬼に対しては絶対的なまでの影響力があり、本人もこうして戦っている限りではかなりの強さを持つ。
それも、10種類以上の毒を注入されながらの戦いなのだから、本気ならもっと強いだろう。
……勿論、珠世や禰豆子のように、鬼であっても鬼舞辻無惨の影響下にない鬼もいるので、鬼舞辻無惨も完璧という訳ではない。
ないのだが、それでも今の状況でこれだけ頑張れているのは凄い。
吹き飛ばされた鬼舞辻無惨は、俺に向かう……よりも前に、綾子がその前に立ち塞がる。
綾子に向かって肉の鞭による一撃を放とうとするが、そこにガンドが連続して飛んできて鬼舞辻無惨を吹き飛ばす。
凛のガンドは、それこそマシンガン並の威力を持つ。
鬼舞辻無惨を相手にした場合は、そんな物理的な攻撃力は意味がない。
意味がないが……ガンドを食らった鬼舞辻無惨の動きは、多少ではあったが明らかに鈍くなる。
凛が使っているから、ガンドは魔力を使って放つマシンガン的な攻撃になっているが、本来なら相手の体調を崩させるという能力を持つ。
つまり、ガンドの物理的な攻撃力に対してはどうにか対処出来ても、ガンド本来の体調を崩す力そのものは防げない。
とはいえ、それでもさすが鬼舞辻無惨と言うべきか、体調は崩れたものの、それは少しだけだ。
凛のガンドの威力――物理的な方ではなく、魔術的な方――を考えれば、その場で体調を崩して倒れてもおかしくはないと思うんだが。
しかし、こうして見た限りでは多少身体の調子が悪いといった程度でしかない。
ないのだが……しかし、綾子の前でそうして動きを止めたのは致命的なミスだった。
綾子用に特別に打って貰った物干し竿と同じくらいの刀身の長さを持つ日輪刀。
それもただの猩々緋鉱石を使ったのではなく、俺が太陽の側から持ってきたのを使って生み出されたそれは、赫刀となって容易に鬼舞辻無惨の身体に迫り……鬼舞辻無惨は、それを左手で防ごうとする。
右腕は先程俺が切断したので、そうするしかなかったのだろう。
鬼であれば再生してもおかしくはないのだが……その辺は俺の持つ日輪刀に太陽の光の力がこれでもかと含まれている為なのだろう。
そして左手もまた当然のように切断されれば、そう簡単に再生は出来ない。
あるいは、切断された手が残っていれば、傷口を密着させる事によってどうにか出来たかもしれないが。
人間だった頃……学生だった頃から、様々な武芸に通じていた綾子だ。
聖杯戦争に関わって半サーヴァントとなり、その身体能力は爆発的に上がり、聖杯戦争が終わって俺がいなくなった後、Fate世界で凛と一緒に時計塔に行き、様々な騒動に関わってきた。
そうして何だかんだと凛と共に世界を越えて俺に会いに来て、シャドウミラーに所属した後はエヴァによって鍛えられ続けてきた……そんな綾子の一撃だ。
当然のように、その一撃は鋭い。
切れ味の鋭い包丁で大根を切って、その切断面をくっつけると持ち上げても落ちてこない。
綾子が今振るった一撃は、そんな包丁よりも圧倒的な鋭さを持つ。
だからこそ切断面を付着させればどうにかなったかもしれないが……
「アクセル!」
日輪刀の柄で鬼舞辻無惨の左腕を殴り、俺の方に飛ばす。
その左腕に手を伸ばすと……
「ちっ、またか!」
俺の方に向かって飛んできた左腕が、不意にその進行方向を変える。
それも鬼舞辻無惨の方に。
またかと口にしたように、何が起きたのかは俺にも十分に理解出来た。
先程俺にもあった、あの現象だろう。
とはいえ、最初こそ意表を突かれたものの、そういうのがあると知っていればそれに対処するのは難しい話ではない。
鬼舞辻無惨の方に向かって飛ぶ左腕に、瞬動を使って追い付く。
「っ!」
そんな俺の姿を見た鬼舞辻無惨は、太股にある口をこちらに向け……
「何をやろうとしてるのかは分からないが、そんな見え見えの攻撃が命中すると思ってるのか!」
顔の口を開いて何かを言っている鬼舞辻無惨にそう叫び、空中にあった左腕を掴むと同時に再び瞬動を使って進む方向を変える。
次の瞬間、俺の身体があった場所を何か……見えない何かが通りすぎていくのが分かった。
それを理解しながらも、鬼舞辻無惨が何らかの攻撃をしてきたのだろうとだけ判断し、俺は左腕を空間倉庫に収納する。
何も見えなかったのを思えば、不可視の攻撃……普通に考えれば空気を使った一撃とか?
左腕が消えたのを見て、鬼舞辻無惨が再び何かを叫ぶ。
叫ぶのだが、俺の鬼眼の効果によって全くその声は聞こえない。
こちらに向かって肉の鞭を放つも、俺はそれを回避しながら距離を取り……次の瞬間、いつの間にかこちらに合流したのか、獪岳が鬼舞辻無惨の首に日輪刀を叩き込み……
「おう?」
その光景に、驚く。
今、確かに獪岳の日輪刀は鬼舞辻無惨の首を切断したと思った。
しかし、首を切断しようと通りすぎた次の瞬間には、その部位が付着していたのだ。
「何ぃっ!?」
獪岳が自分の見た光景に驚愕の声を発し……それでいながら、即座に距離を取る。
この辺りの判断の早さはムラタに鍛えられたおかげだろう。
しかし、そんな獪岳の存在を厄介だと思ったのか、肉の鞭が1本放たれ……
「え?」
その肉の鞭を防いだのは、鉄球。
そしてこの場で鉄球を使う者は1人しかいない。
鉄球の持ち主……行冥は、肉の鞭を叩き落とした鉄球を手元まで戻すと、すぐにまた鬼舞辻無惨へと攻撃する。
獪岳に対して何かを言ったりはしない。
だが、それでも獪岳に思うところのある行冥が獪岳を助けたというのは、間違いなく何らかの意味があった。
それが具体的に何を意味しているのは、俺にも何となく分かる。
分かるが、今はそれよりも鬼舞辻無惨を倒す方に集中する必要があった。
「これは、また……」
鬼舞辻無惨の両腕がなくなったのが、絶好のチャンスと思ったのだろう。
多くの者が、自分の使える限りの攻撃方法を使って鬼舞辻無惨に攻撃をしていた。
恐らく本来の鬼舞辻無惨であれば、これだけの攻撃を受けても対処出来るのだろう。
だが、両腕がなく……何より、その身体には未だに解毒されていない10種類以上の毒がある。
そのような状況では、とてもではないが鬼舞辻無惨もこれだけの攻撃に対処する事は出来ない。
それでも先程の獪岳の一件を見れば分かるように、鬼舞辻無惨の持っている再生能力は凄まじい。
綾子の赫刀や俺の日輪刀なら鬼舞辻無惨の再生能力もそこまで素早く発揮されないのだが……生憎と、ここにいる中で赫刀を発現出来た者は決して多くはない。
しかし……
「神鳴流奥義、雷鳴剣!」
「神鳴流奥義、斬空閃!」
そんな風に聞こえてくるように、放たれる攻撃の中には神鳴流の剣士の攻撃も混ざっている。
ましてや、神鳴流の剣士ではないが神鳴流の技を使う者もいる。
「ははははは!」
普段の寡黙な様子からは想像出来ないような哄笑を上げながら、ムラタは日輪刀を振るう。
赫刀となったそれは、鬼舞辻無惨の身体に間違いなくダメージを与えていき……そして多くの者の絶え間ない連続攻撃によって、やがて鬼舞辻無惨の再生能力も限界に達しつつあり……その時、不意に誰かが叫ぶ。
「太陽だ! 朝日が昇ってきたぞ! もう少しだ、もう少しで鬼舞辻無惨を殺せる!」
その叫び声に、鬼舞辻無惨と戦っていた者達の士気は天井知らずに高まるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1825
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1733