鏡あきらさん、ありがとうございました。
3187話
「……え?」
そう声を発したのは、銃を構えていた男……ではなく、銃口を向けられている男だった。
いやまぁ、銃を持ってる男の後ろに突然俺が姿を現したのだから、それに驚くなという方が無理だろうが。
正確には姿を現した訳ではなく、気配遮断の効果を切っただけだ。
とはいえ、何か音を出した訳ではないので、銃を持っている男は俺の姿に気が付かない。
周辺に何もない荒野で、自分達以外はこの場所にいないという先入観もあったのだろう。
いやまぁ、実際に俺がここにいるのは色々な偶然の結果なので、そういう意味ではその考えそのものはそこまで間違っている訳ではないのだが。
また、この世界がMSがあるような文明だというのも影響している。
これがペルソナ世界やネギま世界といったような世界なら、突然現れた俺の気配を感じるような真似も出来たかもしないが。
このような世界において、気配を感じるといった真似は……全員が出来ない訳ではないが、出来る者は多くはない。
そしてこの銃を持ったモヒカンの男は、そんな能力はなかった。
とはいえ、自分が銃口を向けている相手……それも何発か撃ち込んでおり、重傷を負っているのだろう男が見せたその様子に違和感を抱いたのだろう。
こちらを振り向こうとし……その首筋に手刀を入れる。
「が……」
そのまま倒れ込む男。
……握っていた銃の引き金が引かれなかったのは、ある意味で運がよかったのだろう。
それが一体誰にとって運がいいのかどうか、俺には分からないが。
ただ、俺は混沌精霊で普通の銃弾が命中しても意味はない。
そういう意味では、銃を握っていた奴か、あるいは撃たれていた奴か。
そのどちらかが問題なのだろう。
「お……お前は……?」
「通りすがりの混沌精霊だ」
「……は?」
間の抜けた声を発したのは、こんな場所を通りすがったというのが理由か、それとも混沌精霊が理由か。
いやまぁ、この世界において混沌精霊と言われても意味が分からないのだろうが。
「取りあえず……怪我はどうだ? 色々と事情を聞きたいんだが」
この場合の事情というのは、あくまでもこの世界についての事情だ。
とはいえ、この状況で事情を聞きたいと言われれば、それは現在の自分達の状況と判断するんだろう。
実際、どっちに聞こえてもいいように言ったのだが。
「は……ははは……本当にお前は一体何なんだよ……」
「さてな。取りあえず命が助かったんだ。俺に感謝して、この辺りの情報について教えてくれれば助かるんだけどな。……それよりも、治療が先か。撃たれてるんだろ?」
「まぁ、撃たれてるのは間違いないが、別にそこまですぐに治療が必要ってくらいの傷じゃねえよ。そいつはMS乗りの腕はそれなりだが、生身での戦いは決して得意じゃなかったからな」
服に血が滲んでいるものの、そう告げる男の様子はそれなりにしっかりとしたものだ。
とはいえ、当然ながらそれは痩せ我慢をしてるのだろうが。
「分かった。なら……まずは、そうだな。俺がこれから聞くのは、色々と常識的な事が多い。だが、それでも答えてくれ。命の恩人なんだし、それくらいはいいだろ?」
「構わねえよ、言ってみろ」
「まず……ここはどこだ?」
「はぁ? どこだって言ってもな。……荒野ってのは聞きたい事じゃないんだろ? 戦前は北米と言われていた場所だよ」
なるほど、北米ね。
この言葉で、取りあえずここが地球だというのははっきりとした。
幸いにも……もしくは興味本位からなのか、あるいは俺が命の恩人だからなのか、とにかく男は俺が尋ねる質問に答えていく。
まず、今はアフターウォー……A.W.15年。
このアフターウォーというのは、戦後という意味らしい。
そしてこの場合の戦争というのは、宇宙にあるコロニーが独立を求めて地球と戦争したという……まぁ、UC世界しかり、SEED世界しかり、W世界しかりといった話だ。
とはいえ、実際にはそれらの世界は色々と細かいところは違うのだが。
ともあれ、この世界では宇宙革命軍と地球連邦軍の戦いがあり、それが終わってから15年らしい。
ちなみにこの戦後というのも明確に終戦協定を結んだ訳ではなく、宇宙革命軍が多数のコロニーを地球に落とす……UC世界でも行われたコロニー落としによっての事らしい。
UC世界では1度のコロニー落としだけでオーストラリアを含めて大きな被害があったんだが、この世界ではかなりの数……10や20程度ではない数のコロニーが落とされ、それによって双方共に戦争が困難になってなし崩し的に戦争は終わったらしい。
それだけの戦争となると当然被害も大きく、地球の人口は99%が死んだとか何とか。
とはいえ、これはあくまでもそう伝えられているだけで、本当にそうなのかは分からないらしい。
まぁ、それだけ大きな戦争があったのなら、当然だが社会インフラとかも壊滅していて、現在地球に具体的にどのくらいが生き残っているのかというのは分からないだろうし。
そう考えると、99%が死んだというのは大袈裟な話である可能性もあり、あるいはそれでも過小評価されている可能性もあった。
ある意味、UC世界の別の可能性といったところか。
そんな訳で、当然連邦政府とかも壊滅しており、現在この世界においては復興期といった感じらしい。
小さな街や都市が幾つも存在しており、海の向こう……ユーラシア大陸には国もあるという噂があるが、取りあえず北米大陸においては国という規模はないらしい。
うーん……何とも壊滅的な世界に来てしまったな。
ちなみに、この世界の名前だが……男から話を聞いたところ、世界がこうなった原因は連邦軍の秘密兵器であるGX-9900という機体が引き起こしたという話なので、取りあえず以後この世界はX世界と呼ぶ事にする。
最初はGX世界と呼ぼうかと思ったのだが、何となくX世界の方がフィーリングに合ったんだよな。
ともあれ、このX世界においてはそんな復興期な訳で……そんな中で、連邦軍の基地から貴重な部品とかを持ち帰ったり、それを修理して売るのがバルチャーという連中らしい。
一応俺が遭遇したこの2人も、規模は小さいが個人でやっているバルチャーだって話だ。
正確にはMS乗り……MSパイロットで、他の大きなバルチャーに雇われたりする事も多いらしいが。
ただ、男の話によるとバルチャーやMS乗りというのはこの世界においては街の流通の要として非常に重要な存在らしい。
だが、バルチャーやMS乗りの中には盗賊行為をしている者も多く、必要悪といったように認識されているとか何とか。
そうして話を聞く事、1時間程。
大体のこの世界についての情報を聞き終える。
……なお、話の途中で何度かさっき気絶させた男が目を覚ましそうになっていたので、何度か気絶させている。
「なるほど。で、バルチャーとかがMSを入手して売り捌いている訳か。ああ、勿論MSだけじゃなくて、各種電子部品とかそういうのもらしいけど」
「そうだ。……もっとも、俺のオクト・エイプはその辺の奴とは違うけどな」
少しだけ自慢げにそう言う男。
そう言えばさっき気配遮断を使っている時に、オクト・エイプ……ザクっぽくないMSの方は宇宙革命軍の中でも最高の性能を持つMSだって話だったな。
「具体的にどう違うんだ?」
「このオクト・エイプは、宇宙革命軍のMSの中でも終戦近くになって完成したMSだ。当然その性能は量産型MSとしては最高峰の性能を持つ。それこそ、パイロットの腕によってはガンダムとだって渡り合える程にな」
ガンダム……やっぱりこの世界はMSがあるだけあって、ガンダムも存在するんだな。
さっき聞いた、GXもガンダムだって話だし。
「けど、そんな貴重なMSだけに、ジェニスと違って交換パーツの類は少ない。俺が知ってる限りでも何人かバルチャーで使ってる奴がいるが、大抵は部品の問題から当時の性能そのままって訳にはいかず、地上用になるように改造している」
あー……なるほど。
その説明を聞いて、何となく理解出来た。
オクト・エイプというのは、UC世界のゲルググ的な性能のMSなのか。
1年戦争において、ジオン軍が開発したゲルググ。
ジオニック、ツィマッド、MIPというジオン公国の3大兵器メーカーが開発した機体だ。
その性能はガンダム以上だったのだが、それが開発されたのが戦争も終盤だった。
当然ながら量産にも問題はあるし、何よりもジオン軍はこれまでの戦いで多くのパイロットを失っていた。
……それだけではなく、ルナ・ジオンが結成され、そちらに合流してきたパイロットも多い。
また、開発が遅れた理由にはルナ・ジオンがジオニック、ツィマッド、MIPから技術者の引き抜きに熱心だったというのがあるだろう。
UC世界の原作ではどうだったのかは分からないが、とにかくゲルググというのは性能は高いものの、その性能を最大限に発揮出来る機会がなかったという、悲運の機体なのだ。
男の話を聞いた限りだと、オクト・エイプもまたそんなゲルググと似たような印象を受ける。
「だからその男はお前のオクト・エイプを奪おうとしたのか?」
「そうだな。ジェニスも悪い機体ではないんだが、そいつの腕はMS乗りとしては平均的だ。結果として、俺と一緒に受けた依頼でジェニスはそれなりに被害を受けた」
「……そうなのか? 見た感じ、少し焦げてるようには見えるけど、機体その物にそこまで被害があるようには思えないが」
ジェニスを見ると、月明かりの中でも俺には焦げている場所を何ヶ所か確認出来る。
普通に四肢や頭部はあり、武器も持っている。
ビームライフルか実弾兵器かはちょっと分からないが……いや、あの形からすると実弾兵器か?
「損傷は電子部品の方だ。……見つけた連邦軍の軍事基地にトラップが仕掛けられていてな。電撃を流された」
「ああ。そういう……」
俺のニーズヘッグの尾には電撃を流す機能がある。
電撃はパイロットにもダメージを与える事が出来るし、それ以外もMSの電子部品を破壊したりも出来る。
モヒカンの男は特に怪我をした様子がなかったから、トラップに使われた電撃はそこまで威力が高くなかったのだろう。
あるいは戦後15年も放っておかれた基地という事を考えると、単純にトラップに強力な電撃を放つエネルギーがなかったりしたのか。
「そんな訳で、俺達だけではどうにもならないと撤退してきたんだ。で、夜を明かす為にここで野営をする事になったんだが……」
「ごらんのありさま、か」
「ああ。……正直、今回の一件でもうやる気を失った。なぁ、あんた。結局あんたがどういう奴なのかは分からないが、あそこまで詳しい話を聞いたって事は、MSとかにも興味はあるんだろ? 俺のオクト・エイプと……そいつのジェニスをやるよ」
「……いいのか?」
勿論、俺も出来ればこの世界のMSはどうにかして欲しいとは思っていた。
ただ、今の話からすると、このX世界においてMSというのは非常に大きな……それこそSEED世界、W世界、UC世界よりも貴重な存在なのは間違いない。
そんなMSを簡単に俺に渡すというのは、そう素直に納得出来る訳がなかった。
美味い話には裏がある。
よく言われるが、それは真理だからこそだ。
「ああ。今も言ったが今回の件でやる気を失った。……こいつとも、それなりに長い付き合いなんだがな。それに、以前俺の知り合いの女が賭けに負けて自分の持っていたガンダムを若い男にくれてやったって話を聞いた事がある。それを思えば、あんたは命の恩人だ。そんなあんたにガンダム程の高性能機とは言えないが、宇宙革命軍のMSの中では最高性能と言われていたオクト・エイプを渡すのも……まぁ、そんなに悪い話ではないだろ」
賭けでガンダムを渡したのか?
それはまた……ただでさえMSはこの世界では貴重な存在なのに、連邦軍の秘密兵器だったガンダムを……うん、出来れば俺もそっちに遭遇したかったな。
「そうだな、話は分かった。それであんたはこれからどうするんだ?」
「この馬鹿を連れて、のんびりと暮らすよ」
そう言って男は、自分を撃った男を指さす。
「本気か? この男はお前を殺そうとしたんだぞ?」
「こっちにも色々とあるんだよ。……で、どうだ?」
「俺に反対するつもりはない」
実際、この取引は俺にとって悪い話はどこにもないのだ。
そして相手もこの取引に積極的な以上、これを受けない理由はない。
あるいは罠か? とも思ったが、そもそも俺が来なければ間違いなくこの男は死んでいた。
そう考えると、やはりそれも考えられない。
つまり、この取引は本気なのだ。
そう判断し……ポケットから取り出したように誤魔化しながら、宝石を幾つか男に渡す。
「代金だ。色々と情報も聞かせて貰ったしな。……ああ、そうそう。ここから近い街ってどこにある?」
その問いに、男は驚きつつも宝石を受け取り……
「サン・アンジェロ市だな」
そう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1830
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1734