サン・アンジェロ市において、近付いて来たオクト・エイプを盗賊のMS乗りの襲撃と考え、出撃してきたMS部隊。
そんなMS部隊は実際には1つの組織という訳ではなく、幾つものバルチャーやMS乗りの集団だった。
だからこそ、俺が通信で話していると、その中の1機のMSが持っていたマシンガンを撃ってきた。
「ちぃっ!」
このオクト・エイプはMSとしてはそれなりに使いやすい。
あるいは俺がMSに対してそれなりに乗り慣れているというのもあるのだろうが。
そんな訳で、マシンガンを撃った瞬間に俺はスラスターを使ってその場から移動し、他にいたMSが動揺しているのを感じつつ、盾にするようにマシンガンを撃ってきたMS……ジェニスとの間合いを詰め、ビームサーベルを引き抜くとコックピットにその切っ先を突きつける。
「そこまでだ。話している途中で俺を油断させれば、倒せるとでも思ったのか? それは甘いな」
『待て! そいつと俺の行動は関係ない!』
先程まで俺と話していた男が、慌ててそう言う。
見た感じでは嘘を言ってるようには思えない。思えないが……この連中がMS隊として出て来た以上、その部隊を率いている奴は当然ながら俺の敵であるのは間違いない。
「へぇ? 人にマシンガンを撃っておいて、そういう風に言うのか?」
俺と交渉をしていた男には悪いが、少しこっちが有利になるように使わせて貰おう。
「俺の機体は、見れば分かるが宇宙革命軍のMSの中でも高性能機として有名なオクト・エイプだ。そして俺が1人で、お前達は複数。しかも俺は昼ではなく夜にサン・アンジェロ市までやって来た。……お前達にしてみれば、これで俺を攻撃しないのは嘘だよな。とはいえ、俺もMS乗りとしてそれなりの腕は持ってる。このくらいの人数なら、倒すくらいは十分に出来るぞ?」
それは脅しでも何でもなく、事実だ。
実際、俺はこの状況からここにいるMS隊全てを相手にしても、勝つ事は出来るだろう。
……最悪オクト・エイプが破壊されても、混沌精霊の俺にダメージを与える事は出来ないし。
この世界では、そういう意味だと俺にとって安全なんだよな。
『待て』
映像モニタに表示されている男は、慌てたようにそう言ってくる。
今の一連の動きと俺の言葉から、本気で俺がこの場にいるMS全てを相手にしても勝てると……少なくても俺自身はそう思っていると理解したのだろう。
「待ってどうする?」
『……ここで騒ぎを起こせば、お前はもうサン・アンジェロ市に入る事は出来なくなるぞ? それでもいいのか?』
「まぁ、いいか悪いかと言われたら決してよくないな。けど、そうなったら別にここに拘らないで、どこか別の街に行けばいいだけだし」
実際、サン・アンジェロ市がこの辺りで一番大きい街だというのは間違いないが、他に街がない訳でもない。
であれば、最悪はそちらに行けばそれでいいのだ。
向こうの男もそれは理解しているのだろう。
じっと俺を見ていたが、やがて大きく息を吐く。
『そいつはフリーのMS乗りだ。別に俺の部下って訳じゃねえ。そいつをどうしようが、俺は構わない。だが、話はそれで終わりだ。いいな?』
この場合のいいな? というのは、俺に対して言ったというのもあるが、それだけではなくこの通信を聞いてるだろう他のMS乗り達にも言ったのだろう。
そして……武器を構えようとしていた他のMSは、その武器を下ろす。
『お……おい、ちょっと待てよ! 俺を見捨てるつもりか!?』
不意に聞こえてきたその声が一体誰の声なのかは、考えるまでもない。
コックピットにビームサーベルの切っ先を突きつけられている、ジェニスのパイロットだ。
表示された映像モニタには、20代……いや30代くらいか? そのくらいの髭面の男が映されている。
『見捨てるも何も、特に攻撃をする様子もなかったこの男を相手にいきなり攻撃をしたのはお前だろう? 意味もなく敵を増やすような真似をする相手を、何故庇う必要がある?』
俺と交渉していた男のその言葉に、ジェニスのパイロットは何も言えなくなる。
フリーのMS乗りで他に仲間がいないというのは、こういう時に厳しいよな。
「さて、それじゃあ見事に切り捨てられたところで、俺とお前の話をしようか。俺の要求は簡単だ。そのジェニスを寄越せ」
『な……ふざけるな!』
「別にふざけてないが? お前は俺を殺そうとしたんだ。それを命だけは助けてやるつもりで、こうして言ったんだが。MSを大人しく渡さないのなら、コックピットをビームサーベルで貫くだけだ。個人的には出来れば完品でジェニスが欲しいんだが……まぁ、ジェニスなら数も多い。他のジェニスのコックピットを入れ替えれば、普通に使えるだろ」
幸いな事に、俺の空間倉庫の中にはオクト・エイプと一緒に貰ったジェニスがある。
電子部品の問題で動きがおかしくなっているという話だったが、男を殺して足りない電子部品を使って空間倉庫の中のジェニスを修理してもいいし、あるいは空間倉庫に入っているジェニスのコックピットをビームサーベルでコックピットを貫いたこっちのジェニスに移植してもいい。
どっちにしろ、俺は完品のジェニスを1機手に入れ、部品取り用として1機のジェニスは入手出来るという事になる。
「で? どうする? これが最後の質問だ。俺にジェニスを渡すのが嫌でコックピット諸共死ぬか、それとも大人しくMSを渡して生き残るか……どっちを選ぶ?」
『てめえ……俺にこんな真似をして、ただですむと思ってるのか?』
映像モニタに映された男は憎々しげに俺を見ながらそう言ってくるが、向こうがそういう態度なら、こっちも相応の態度を取らせて貰うだけだ。
「そうか、死ぬか。なら遠慮なく」
そう言い、オクト・エイプの握っているビームサーベルの切っ先がジェニスのコックピットを貫こうとした瞬間……
『ま、待て! 分かった! MSはやるよ! だから殺さないでくれ!』
ここまできて、それでようやく俺が本気だと理解したのだろう。
男は必死の形相でそう叫ぶ。
それを見てビームサーベルの動きを止め、改めて口を開く。
「つまり、このジェニスは俺に渡すという事でいいんだな?」
『あ、ああ。それでいい。このジェニスはお前に渡すよ!』
半ば自棄になったように男が叫ぶ。
自分の命が助かる為には、MSを渡すのもやむなしといったところなのだろう。
「なら、コックピットから降りろ。そして消えろ」
そう言うと、パイロットは怒りを見せながらもコックピットから降りていく。
それを確認すると、俺は改めて先程まで通信していた男と再び通信を向ける。
「で、話を戻すとするか。これからどうする?」
『どうすると言われてもな。お前はサン・アンジェロ市を襲いにきた訳ではないんだろう? なら、特に何かするつもりはない。だが……今のような真似をしていれば、敵を増やすだけだぞ?』
「命を狙ってきた相手を殺さずにすませたんだ。なのに敵が増えるのか? まぁ、敵が増えて俺の命を狙ってくる奴がいたら、相応の対処をするだけだしな。これでもMSの操縦には自信があるし」
『だろうな。さっきの動きはちょっと見た事がないくらいのものだった。そうである以上、お前を一時的に雇いたいという奴は多い筈だ』
一時的にか。
長期的に雇うといったような事になった場合、トラブルに巻き込まれるといったように思うのか?
俺にしてみれば、それはそれで構わない。
どこかいい場所を見つけたらゲートを設置してホワイトスターと繋げるんだし。
「なら、何か儲け話があったら俺に連絡してくれ。腕のいいMS乗りは必要だろう?」
『覚えておくよ。……今更だが名前を教えてくれ』
その言葉に、そう言えばまだ自己紹介をしていなかったと思い直す。
自己紹介云々よりも、俺がサン・アンジェロ市に近付くとこうして迎撃の為にMS部隊が出て来たのだから、自己紹介をしている暇はなかったのだが。
自己紹介と言われ、やっぱりここはいつも通りにエンデュミオンの鷹、ムウ・ラ・フラガと名乗るべきか?
いつもの癖で一瞬そう考えてしまったが、すぐにそれを否定する。
この世界においては、別に無理に名前を隠す必要はないのだから。
「アクセル・アルマーだ」
『そうか。じゃあ……そうだな、メンテ親父の場所にでも行ってみたらいい。MSを置く場所は必要だろう?』
「……メンテ親父? 何だそれは?」
『サン・アンジェロ市でMSの整備や補給をやってるメカニックだよ。多少ミーハーなところはあるが、腕はそれなりだ。名前は誰も知らないから、メンテ親父と呼ばれてる』
メンテ親父ね。
まぁ、戦後の復興期である今この時は、当然ながら色々と訳ありの奴は多い。
自分の名前を口にしたくないという奴もいるだろうし、そういう意味でメンテ親父というのは分かりやすい。
「分かった。そこに寄らせて貰うよ」
何でこの男がメンテ親父を紹介したのかは分からない。
分からないが、それでも今の状況を思えば何か裏があるとは思えなかった。
いや、あるいは俺がジェニスを入手したからというのもあるのか?
普通に考えた場合、MSを1機入手しても置いておく場所に困る。
これがフリーのMS乗りではなくバルチャーなら、拠点としている地上戦艦に収納場所があるんだろうが。
俺に空間倉庫があるのを知らなければ、そんな態度になってもおかしくはなかった。
『じゃあ、またな』
そう言い、男は去っていく。
他のMS乗り達もその場から去り……最終的にこの場に残されたのは、俺だけだ。
あ、しまった。今の男の名前は聞いてないな。
まぁ、向こうの名前はまた会った時に聞けばいい。
今はこのジェニスをどうするかだな。
ここまで大きな騒動になった以上、当然ながら俺の行動は他の奴に観察されていると思った方がいい。
実際、幾つもの視線を感じるのは間違いないし。
であればわざわざそんな中で空間倉庫を使ったりといったような真似はしない方がいい。
「仕方がない、か」
面倒臭いが、結局このままオクト・エイプでジェニスを運ぶという選択しかなかった。
メンテ親父の工場がどこにあるのかは、サン・アンジェロ市で聞けばすぐに分かった。
当然ながらMSのメンテや修理、補給といったような事をするとなると敷地は大きくなる。
その結果として、メンテ親父の工場はサン・アンジェロ市の中でも端の方に出来る事になったらしい。
うん、俺としてもジェニスを持ったオクト・エイプで街中を移動するといったような真似はしなくてもよくなったので、悪い話ではなかったが。
もし街中だったら、一度俺がジェニスに乗って移動する必要があった。
そうすると、オクト・エイプが誰かに盗まれる可能性もある訳で……そうなった場合は、誰かに見張りを頼むとかする必要があるが、この場合はその見張りにMSを奪われる可能性もある。
何だかんだと、国がない以上はどうしても治安は悪くなる。
だからこそ、バルチャーやMS乗りの中にも盗賊行為を働く奴もいるんだろうし。
そしてこのサン・アンジェロ市もまた、そういう奴に狙われたからこそ、さっきみたいに俺みたいな怪しい存在が来ればMS部隊が出てくるのだろう。
あのMS部隊が、サン・アンジェロ市と契約をしているのか、それとも自警団的な存在なのか。
その辺りについては、俺も分からない。
だが、多分だがサン・アンジェロ市と契約をしてるんだろうなとは思う。
……そう考えると、俺がジェニスを奪ったのはサン・アンジェロ市的には戦力が減ったという事で面白くなかったのかもしれないな。
とはいえ、こういう時は最初にしっかりと俺がどういうスタンスの存在なのかを知らせておかないと、下手をすると侮られて延々と攻撃され続けるといったような事になってもおかしくはない。
今回の一件で、俺は腕の立つMS乗り……MSパイロットの方が言い慣れているんだが……まぁ、郷に入っては郷に従えって言うしな。
とにかく俺がそういう存在であると知れば、次からはMSを狙ってた馬鹿に襲撃されるといったような事もなくなる。
俺の力を知って、それでも攻撃をしてくる奴がいるのなら……まぁ、そういう連中はそういう連中で、こっちも相応の態度を取ればいいだけだ。
そういう連中は基本的にそれなりの規模なので、上手くいけばMSだけではなく陸上戦艦も入手出来るようになるかもしれないな。
とはいえ、今はそれよりも他の事を考えておいた方がいいだろうが。
具体的にはメンテ親父との交渉とか。
目的の工場に近付くと、やがて工場から1人の男が姿を現す。
40代……くらいか? そのくらいの年齢の男は、ジェニスを持ったオクト・エイプの姿に驚きの表情を浮かべる。
『おわぁっ、ちょ……お前さん、何だよ!?』
聞こえてきたその声に、MSを止めてコックピットから出る。
「あんたがメンテ親父か? 少しMSを置かせて欲しい。それと補給とメンテも頼む。報酬は……これでどうだ?」
そう言い、宝石を数個取り出すと、メンテ親父は驚いたように俺を見て……やがて頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1830
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1734