俺がサン・アンジェロ市に到着した翌日……メンテ親父は、早速オクト・エイプの整備をしていた。
ちなみに昨日は結局メンテ親父の事務所に泊まらせて貰った。
正直なところ、ホワイトスターから起きて数時間でX世界に転移してきたので、そういう意味ではあまり眠気はなかったんだが。
それでも今日からの事を考えると、体調を万全にしておくに越した事はない。
「おう、兄ちゃん。起きたのか。にしても、オクト・エイプってのは……随分と珍しいMSに乗ってるな」
メンテ親父も仕事上、MSには詳しいのだろう。
そんな中でオクト・エイプという、宇宙革命軍の中では最強の量産型MSは知っていて当然だった。
とはいえ、実際にはオクト・エイプは量産型MSとしては最高峰の性能を持つMSだが、それはあくまでも量産型MSとしてはの話だ。
連邦軍のガンダムであったり、宇宙革命軍にもニュータイプ用MSだったり、腕利きのエースパイロット用に製造された高性能機の類があってもおかしくはない。
このX世界の技術を考えると、やっぱりそういう高性能機を入手したいんだが。
とはいえ、正直なところこの世界のMSはそこまで特殊な技術が使われている訳ではない。
そういう意味では未知の技術の入手というシャドウミラーの国是から見ると、価値は低いんだよな。
とはいえ、ガンダムとかには特殊な技術や素材が使われているかもしれないから、無理もないんだが。
「フリーのMS乗りとしてやっていく以上、MSの性能は高い方がいいしな。それに……」
そこで言葉を切り、オクト・エイプから少し離れた場所にあるジェニスに視線を向ける。
「ああいう珍しくて、しかも高性能のMSに乗っていれば、それを欲しがって襲ってくる連中もいる。そういう連中を倒せば、MSを入手出来る」
MSを揃えたいからといって、その辺のMS乗りやバルチャーに攻撃を仕掛けて、それでMSを奪うといった真似をすれば、それは俺が悪い事になる。
だが、相手が俺のオクト・エイプを奪おうとしてやって来たのなら、それを撃退してその連中が持っていたMS……いや、MS以外にも色々な物を奪うといった事なら、外聞は悪くない。
「お前さん……また、随分と無茶な事を考えてるな」
俺の話を聞いたメンテ親父は、呆れたように言う。
それでいながら少し心配そうな様子なのは、お人好しなんだろう。
あるいはお得意さんとなるだろう俺に死んで欲しくないという思いもあるのかもしれないが。
オクト・エイプとジェニスの補給や整備、MSを置かせて貰う料金として、宝石を数個渡している。
メンテ親父にしてみれば、予想外の報酬だろう。
そんな上客の俺を逃したくないと思うのは、当然の話だった。
「それが出来るだけの実力があるという自負はあるしな」
「そうかい。まぁ、兄ちゃんがそこまで言うのなら、俺からは他に何も言わねえよ。それで、今日はどうするんだ?」
「俺はこのサン・アンジェロ市には初めて来るし、まずは色々と見て回ろうと思っている。中には興味深い何かがあったりするかもしれないからな」
このサン・アンジェロがこの辺りでは大きな街だとは聞いているものの、実際にどのくらいの発展具合なのかというのは分からない。
あるいはMS用の部品とかそういうのがあったら買っておく……いや、そういうのはメンテ親父に頼めばいいのか?
それにこの街で使える金も必要だしな。
宝石はまだ大量にあるが、それを使って取引をするのは悪目立ちする。
なら、宝石をある程度金に換えておいた方がいい。
「そうか? まぁ、MS乗りなら問題ないと思うけど……一応気を付けろよ。この街には結構物騒な連中もいるし」
「それこそ、MS乗りの俺に言う言葉か?」
「はっはっは。違いねえ」
現在のこのX世界において、一番危険なのはバルチャーやMS乗りだ。
勿論、連邦軍の基地から電子部品とか使えるパーツを持ち帰ってそれを売る、真っ当なバルチャーやMS乗りではなく、街や村を襲ったりする連中。
この世界の状況を考えると、それも仕方がないが。
それこそ、どこかの勢力がその辺りをちゃんと治めるといったような真似をすれば、もう少しマシかもしれないが。
ただ、そうして1つの勢力がそこを治めると、そこに人が集まる。
人が集まれば物資やら食料やら金やら……そういうのも集まり、盗賊に狙われやすくなるんだよな。
そうなると、そういう連中をどうにかするので力が必要になったり……うん、何だかんだとこのX世界が平和になるのはかなり難しいな。
「俺にジェニスを奪われたMS乗りなら襲ってくるかもしれないが、出来れば昨日の今日では襲ってきて欲しくないな。また何らかのMSを入手してから襲ってきて欲しい」
「……それは、また……」
あの男がまたMSを入手して俺を襲ってくれば、俺はそれを撃退してそのMSを奪う。
するとまたその男が俺を恨み、MSを入手して……そんな風に上手くいけば、結構な儲けになるのは間違いない。
とはいえ、さすがにあの男も何度もMSを奪われるといったような真似をされれば、途中で諦めたりするかもしれないが。
「そんな訳で、取りあえず俺は街中を歩いてくる。こっちについてはよろしくな」
そう言い、俺はメンテ親父の工場を出るのだった。
「いらっしゃい、いらっしゃい。新鮮な野菜だよ!」
「ジェニスの電子部品、いいのが揃ってるよ!」
「兄ちゃん、兄ちゃん、どうだい? 美人や可愛い子がいるよ」
サン・アンジェロの中を歩いていると、そんな風な声が聞こえてくる。
闇市……といった表現が、この場合は相応しいのだろう。
こういう場所は俺にとって珍しい。
いやまぁ、他の世界でこういう場所に来た事はあるが……それでも食料とMSの部品と飲み屋――キャバクラという方が正解か――の客引きといったようなのが纏まっているのは、それなりに珍しかった。
そんな中を歩いていると……
「ぎゃあっ!」
俺の横を通りすぎた男が、不意に悲鳴を上げる。
その理由は、指の骨を潰されたから。
勿論、それをやったのは俺だ。
財布を盗もうと、俺の懐に手を入れてきたスリ。
殺さなかっただけ感謝して欲しい。
俺がその気になれば、それこそあの男は死んでいてもおかしくはなかったのだから。
とはいえ、当然ながら不意にそんな声が出ると周囲にいる他の通行人達が視線を向けてくる。
手を押さえて騒いでいる男をその場に放っておいて、街中を進む。
そうして進みながら、バルチャーに対してのギルドとかそういうのがあれば分かりやすいんだが。
しかしオクト・エイプを譲ってくれた男やメンテ親父から聞いた話によれば、ギルドとかそういうのはない。
そういうのがあれば、バルチャーやMS乗りも仕事を探しやすいと思うんだが。
ギルドとかないから、結局バルチャーやMS乗りは仕事を探す時は自分達で全てやる事になっているのだろう。
まぁ、バルチャーやMS乗りの仕事は基本的に連邦軍の基地でMSや電子部品を必要とした様々な物を入手する。
そうなると、当然ながら基本的には自分達だけで行動する事になる。
あるいは自分の知り合いと一緒に行動するといったような感じか。
もしギルドがあっても、命懸けの仕事をするのに詳しく知らない相手と一緒にといった真似は……難しいだろうな。
となると、俺がMS乗りとして活動するとなると、どうやって他のバルチャーと一緒に行動するか。
俺がサン・アンジェロにやって来た時に話した、あのパイロットと接触出来れば何とかなるかもしれないな。
そんな風に思いながら街中を歩いていると、1人の男が俺のいる方に近付いてくるのが分かった。
勿論、俺が歩いているのは街中だ。
当然ながら俺と反対側から歩いてくる相手もいるので、俺に近付いてくるというだけなら他にも何人もいる。
だが……明確に俺に意識を向けて、近付いているという奴は当然ながら俺に何かの用件があるのは間違いない。
「すまない。あんたがアクセルか?」
その人物は俺の側で足を止めると、そう尋ねてくる。
敵意や殺意といったものはない、と。
X世界のようなMSを始めとした人型機動兵器とかがある世界では、どうしても生身の戦闘は軽視される。
ある程度の軍隊格闘技とかはあるだろうが、それも結局ある程度だ。
こういう世界で生身の戦闘が得意な奴でも、ネギま世界にいる本物と比べれば数段落ちる。
いや、数段どころではない。数十……場合によっては数百段落ちると言ってもいい。
そんな世界での戦いを潜り抜けてきただけに、もし俺に接触してきた相手が敵意や殺意を抱いていれば、どんなに巧妙に隠そうとしていても隠し通せる筈もない。
世の中にはその時代に合わない天才とかもいるから、そう考えると確実に大丈夫という訳でもないのだが。
それでも俺に声を掛けてきた相手は、そういう敵意や殺意がないように思えた。
ぱっと見、20代の今の俺よりも若干年上……20代半ばから後半といったところか?
外見上は粗野な印象を受けるものの、年下の俺に対して丁寧な言葉遣いをしてくるという事は……まぁ、人口の99%が死んだ世界だ。年功序列とかそういうのよりも、実力こそが全てといったようになってもおかしくはない。
ましてや、俺の名前を知っているという事は、メンテ親父から流れたのではない限り……昨日俺がサン・アンジェロ市に近付いた時に出て来たMS乗りで俺と通信をした相手から知ったという可能性が高い。
つまり、俺を攻撃してきたジェニスをあっさりと撃退したのを見た……つまり俺がMS乗りとして腕利きであるというのは十分に理解しているのだろう。
「ああ、俺がアクセルだ。で、俺に何か用か?」
「あんたに会いたいという人がいる。あんたはフリーのMS乗りだろう? なら、あんたにとっても悪い話じゃない筈だ」
「……つまり、バルチャーか」
一応という意味を込めてそう尋ねるが、男は特に隠す様子もなく頷く。
「そうだ。それもただのバルチャーじゃない。バルチャーの中でも一目置かれてる人だ」
「そんな人物が俺に何の用件だ? いやまぁ、確かに俺にとっては悪い話じゃないと思うけど」
現在の俺は腕の立つMS乗りではあるが、このX世界の常識についてはまだ完全という訳ではない。
また、転移してきたから当然だが、この世界に伝手の類もない。
……無理矢理伝手と言うとすれば、それはメンテ親父くらいか?
昨夜会ったばかりで、伝手というのはどうかと思うが。
そんな状況なので、バルチャーの中でも一目置かれているという人物が俺に会ってくれるのなら、MS乗りとして活動する上で大きなメリットになるだろう。
だが……それは俺にとってのメリットであって、俺に会いたいと言っている人物のメリットではない。
「豪快な人だからな。気になった相手には会ってみたいと思うんだよ。それに……今、うちは少し戦力が足りない。あんたの腕がよければ、雇ってくれるかもしれないぞ」
俺を雇うか。
ちょっとタイミングがよすぎるような感じがするが、気にしすぎか?
それにバルチャーやMS乗りとなると、決まった給料がある訳でもないから、常に連邦軍の基地のある場所だったり、倉庫だったり……そういう場所を探しているんだろうし。
一種のトレジャーハンターみたいなものでもあるのか。
それだけに、腕の悪いバルチャーやMS乗りは自分でそういうのを見つける事が出来ないから、盗賊となって村や街を襲う事になるんだろうな。
「どうする? 俺としては会った方がいいと思うけど」
「そうだな、会おう」
結局のところ、現在の俺の状況を考えると俺に会いたいと言ってるバルチャーに会うのが最善の選択肢なのは間違いない。
ここで俺が会わないといったような風に言えば、色々と入手出来るだろう情報も入手出来なくなるだろうし。
そういう意味で、やはり俺はバルチャーに会った方がいいのだろう。
男も、俺が自分の提案を俺が断るとは思っていなかったのか、俺が会うと言っても特に驚いたりする様子を見せず、それが当然といった様子すら見せていた。
「では、こちらに」
そう言い、男は俺を案内する。
そうして一緒に街中を歩いて分かったが、街中にいる多くの者……特にバルチャーやMS乗りと思しき者達は、その男を見ると反応する。
小さな反応ではあるが、多くの者が反応しているのだ。
別にこの男が俺に会いたいという男ではないにも関わらず。
それはつまり、この男の言っていた通り俺に会いたいと言っている男は相応の大物であることを意味していた。
街中を歩き続け、やがて一件の宿に到着する。
一応この街にはホテルっぽいのもあるんだが、それでもこういう普通の宿に泊まってるって事は、そういう趣味なのだろう。
宿の中に入ると、そこにはバルチャーと思しき者達がいて……俺を案内してきた男は、その中でも一際奥にあるソファまで案内する。
「おう、お前がアクセルか。俺はロッソ・アラマントだ」
そう言い、髪と髭ともみあげが繋がっている男が男臭い笑みを浮かべながらそう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1830
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1734