セインズアイランド。それはサン・アンジェロ市から一番近い場所にある都市だ。
いや、都市というよりは小国と表現した方がいいか。
海にある商業都市で、当然ながらサン・アンジェロ市から移動する際には船に乗って移動する。
今回の場合は俺を雇ったバルチャーの陸上戦艦がホバー移動出来るので、そういう意味では移動するのに全く問題はないが。
というか、オクト・エイプの場合は普通に空を飛べるので、その気になれば移動出来る。
だが、このセインズアイランドでは基本的に武器は使用出来ないようになっている。
島に近付く勢力の武器には封印が張られ、それを破ると莫大な罰金を支払う事になる。
勿論、セインズアイランドに雇われているMS乗りとかは普通にMSとかを使えるんだが。
また、戦いによってエネルギープラントが被害を受けなかったという事もあり、商業都市といった形ではあるが、結構な影響力を持っている。
「では、これで武器の封印は破らないようにお願いします」
そう言ってきたのは、この船の内部を確認してきたセインズアイランド側の役人。
眼鏡を掛けたその姿は、実直そうではあるものの……同時に融通が利かなさそうな感じもしている。
お坊ちゃんといった印象が強い。
実際にこの男……マイルズ・グッドマンという男はセインズアイランドの中でも相応の地位にある人物の息子だと、俺を雇ったバルチャーは言っていた。
その男は船長との握手を終えると不意にこちらに視線を向けてくる。
「そちらの方は、初めて見る方ですよね?」
「ああ、こいつは臨時のMS乗りだ。腕がいいって噂でな。実際に……おいおい、そんなに嫌そうな顔をするなよ」
俺がMS乗りだと聞いた瞬間、マイルズの表情は一瞬だが嫌悪に歪む。
どうやらマイルズはMS乗りが嫌いらしい。
いやまぁ、その気持ちも分からないではないんだが。
セインズアイランドは商業都市で、多くの財が集まってくる。
そうなれば当然のようにその財を狙う者も多くなる訳で……このX世界において、そのような存在となれば当然だがバルチャーやフリーのMS乗りだろう。
そのような相手に対抗する為に、セインズアイランド側でもMS乗りとかを雇ってはいるんだろうが。
あるいはそれもマイルズにとっては気にくわないのかもしれない。
とはいえ、MS乗りやバルチャーが気にくわないからといって、それら全てを排除するような真似は出来ない。
このX世界において、バルチャーは物資の運搬にも大きな力を持っているのだから。
今回俺が雇われてセインズアイランドに来たのも、物資の運搬が理由なのだから。
「分かってますよ。ただ……アクセルでしたか、君はセインズアイランドが初めてだから言っておきますが、セインズアイランドで武力を使うような事は認められていません。MSを使った戦闘などもっての他です」
「分かってるよ。俺もオクト・エイプを使って戦おうとは思わないし」
オクト・エイプでは、な。
オクト・エイプは使えないようにされているが、逆に言えばオクト・エイプ以外のMS……空間倉庫の中に入っている他のMSは普通に使える。
メンテ親父には色々と苦労をさせたが、そのおかげもあって現在俺の空間倉庫にはジェニス、セプテム、ドートレスといったMSが入っている。
それは封印されていないので、使おうと思えば問題なく使えるんだよな。
いやまぁ、封印というのも別に魔法的な封印とかそういう意味ではなく、動かせば分かるようなテープが貼られているとか、そんな感じだ。
使おうと思えば使える。
とはいえ、俺がセインズアイランドに来たのは暴れる為ではない。
シーバルチャーと接触する為というのが一番大きな理由だった。
シーバルチャー……それは海で活動するバルチャー達だ。
ちなみにロッソのようなバルチャーは普通にバルチャーと呼ばれているが、敢えて区別すると陸バルチャーと言うらしい。
何でシーバルチャーと陸バルチャーなのか若干疑問だが、そういう風になっているのなら郷に入っては郷に従えってあるし、それに習っておく。
ともあれ、俺の目的としてはこのX世界のMSを出来るだけ多く入手する事だ。
今までの行動で、宇宙革命軍と連邦軍のMSはそれなりに入手した。
勿論、全てのMSを入手した訳ではない。
ガンダムとか宇宙革命軍のニュータイプ用MSとか……そういうのは、そう簡単に入手出来るものではないのだから。
そんな中で水中用MS、あるいは水陸両用MSを入手するには、やはりシーバルチャーに接触するのが一番いい。
とはいえ、シーバルチャーの中には完全に海賊と化したオルクと呼ばれる者達もいる。
そういう意味では、接触出来る相手が重要になる。
そんな中、俺が集めた情報によるとセインズアイランド……正確にはセインズアイランドの周囲で活動しているシーバルチャーに腕のいい奴がいるという話を聞き、それが俺がこうしてセインズアイランドに来た理由でもあった。
「分かってくれればいいんですけどね。では、これで失礼します」
俺の様子を見て納得したのか、あるいはこれ以上言っても仕方がないと思ったのか。
それは分からなかったが、マイルズはそう言ってブリッジから出ていく。
「さて、取りあえず今日の仕事は終わりだ。俺達は飲みに行くが、アクセルはどうするんだ?」
船長のその言葉に、俺は首を横に振る。
「ここにいられる時間もそう長くはないんだろ? なら、出来るだけ早くシーバルチャーの……ルマークだったか? あんたに教えて貰ったそいつに接触したい」
「そうか。まぁ、あいつは……少し変わっているが、シーバルチャーとしての腕は間違いなくいい。何しろ海中から見つけた部品とかを組み合わせて、ハンドメイドのMSやMAを作れるだけの技量を持ってるしな」
普通に考えれば、見つけた部品を組み合わせてハンドメイド……オリジナルのMSやMAを作るというのは、かなりの知識や経験が必要となる。
この船長から聞いたルマークというシーバルチャーは、それを行えるだけの技量を持っているのだ。
そういう意味では、絶対に接触したい相手だった。
「分かっている。出来れば俺が欲しいと思えるようなのがあればいいんだけどな」
「まぁ、その辺は好きにしてくれ。ああ、そうそう。このセインズアイランドでは独自の貨幣を使ってるから注意しろよ」
「独自の貨幣? ……へぇ、それは興味深いな」
独自の貨幣を用意し、それが破綻せずに使われ続けているという事はセインズアイランドがそれだけの経済力を持っているという事を意味している。
俺が思ったよりもセインズアイランドの力はあるのかもしれないな。
ともあれ俺は船長達と別れて両替し、シーバルチャー達が集まるという店に向かう。
ちなみにセインズアイランドでは独自通貨を使っているという話だったが、何と紙幣が使われていた。
これもまた俺を驚かせるのに十分だった。
とはいえ、紙幣の出来そのものはそこまで精緻という訳ではない。
場合によっては偽札とか出て来そうな気がする。
まぁ、戦後復興期であるこのX世界でそう簡単に偽札を作るといった真似は出来ないのかもしれないが。
ともあれ、そうしてセインズアイランドで使える金にすると、目的の場所に向かう。
少し遠いので、タクシーで移動する。
影のゲートを使って転移してもよかったんだが……だからといってそんな真似をすれば、俺の足取りがおかしいと思われてしまうかもしれない。
それに……セインズアイランドがどういう場所なのか自分の目でしっかりと見てみたいという思いもあったしな。
そうして見た限りでは、確かにセインズアイランドは栄えていた。
サン・アンジェロ市と比べても、街中は賑わっているし、何よりも人が多い。
バルチャーやMS乗りに襲撃されるといった心配は……していない訳ではないが、それでもやはりサン・アンジェロ市に比べれば安心の度合いが大きいのだろう。
これはサン・アンジェロ市とは違って、海上に街があるというのが大きいだろう。
周辺が地続きの場所であった場合、それこそどこからでも敵が襲ってくる。
それに比べると周囲が海のセインズアイランドは、防衛がしやすい。
シーバルチャーやオルクといったように、十分敵と呼ぶべき存在は多いのだろうが。
まぁ、俺がサン・アンジェロ市からセインズアイランドに来るまでには、そういう連中に襲われるといった事はなかったが。
そんな風に考えていると、やがてタクシーが止まる。
運転手が怯えた様子を見せていたのが気になったものの、一般人にしてみればシーバルチャーというのは決して好ましい相手ではないのだろう。
料金を支払うと、タクシーはすぐにその場を走り去る。
「さて」
周囲の様子を見ると、やはりと言うべきか目的の店の周囲には一般人の姿はない。
シーバルチャーが集まっている酒場だって話なんだし、一般人にしてみれば近寄りにくい場所なのは間違いないよな。
周囲の様子を確認してから、酒場の中に入っていく。
すると酒場の中にいた者達の大半が、入ってきた俺の方に視線を向けていた。
もしこれで俺が10代半ばの姿だったら、坊主は帰りなとか言われるんだろうか。
そして10歳くらいの姿なら……その時は、寧ろ可愛がって貰えそうな気がする。
ともあれ、俺が初めて見る顔だからだろう。酒場の中にいた者達の多くは、俺に警戒の視線を向けている。
シーバルチャーという、ヤクザな職業をしている者達だ。
そんな者達が集まっている場所に俺みたいな初めて見る男が姿を現したのだから、警戒するのは当然だろう。
あるいはこの酒場の常連と一緒に姿を現すといったような事であれば、もう少し話は違ったのかもしれないが。
とはいえ……俺を見ている者の中に、そこまで腕利きの奴はいないな。
俺を見て実力の違いを理解出来ないといったような者がいないというのが、その証だ。
そんな中、俺の近くにいた1人の男が立ち上がって俺の方に近付いてくる。
「おう兄ちゃん。ここがどんな場所か知ってて来たのか?」
「ああ、ちょっとシーバルチャーを探していてな。俺はサン・アンジェロ市でフリーのMS乗りをしているアクセルだ」
そう言うと、酒場で俺の言葉を聞いていた者達の視線が少し変わる。
ある者は警戒を強くし、ある者は軽蔑の視線を向け、ある者は友好的な視線を向ける。
そして……俺に声を掛けてきた男は、双方共に幸いな事に友好的な態度になる。
「おう、そうか。兄ちゃんもサン・アンジェロ市の。俺もちょっと前まではサン・アンジェロ市を拠点にしていたんだよ。今はこっちにいるがな。……で、シーバルチャーを探してるって話だったが、誰を探してるんだ?」
「ルマーク・カウト。シーバルチャーの中でも腕利きだって話だ」
「あら、私に用事? ふふっ、貴方みたいな人に選ばれるなんて、シーバルチャー冥利ね」
俺のその言葉が聞こえたのか、他の連中のようにテーブルで酒を飲んでいるのではなく、カウンターで酒を飲んでいた人物がこっちにやって来る。
言葉遣いは女だし、外見も中性っぽいが、実際には男だろう。
……なるほど。船長が少し変わってるって話だったが、こういう事か。
いわゆるそっち系なのだろう。
まぁ、別にそれで俺に被害がある訳でもないだろうし、その辺についてはそこまで気にするような事はない。
勿論、俺に向かって言い寄ってくるとか、そんな真似をされれば話は別だが。
「ああ、俺が現在雇われているバルチャーの船長から、あんたが腕利きのシーバルチャーだって話を聞いたんでな」
「嬉しいわね」
ルマークがそう言って背中まで伸びている銀髪に触れると、俺に話し掛けてきた男も渋々といった様子だが自分の席に戻っていった。
ルマークが腕利きのシーバルチャーであるという事には異論がないのだろう。
「それで? 私を捜していたという事は、何かの商談があるのよね? なら、ちょっと場所を変えましょうか。マスター、2階の部屋を少し借りるわね」
ルマークの言葉に、マスターと呼ばれた50代程の男は無言で小さく頷く。
それを確認すると、ルマークは俺を先導するように酒場の中を進む。
俺もまたそれを追うと、ルマークが言ったように2階へと続く階段を上がる。
2階にはそれなりに部屋がある。
ここがシーバルチャーの溜まり場となってる事を考えると、恐らくは俺みたいな奴が訪ねてきた時に商談をしたりする為に用意されているのだろう。
あるいは酒場である以上、飲みすぎて酔っ払い、自分だけでは帰れなくなった者が泊まるとか。
それ以外だと、単純に男と女が一夜の逢瀬を楽しむ場所とか。
酒場だけに色々と使い勝手のいい部屋ではあるんだろうが……取りあえず俺とルマークが最後の理由でここを使う事だけはないな。
そんな風に思いながら、俺はルマークと共に部屋の1つに入るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1840
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1736