約束の日、サン・アンジェロ市の外にはロッキー級が3隻あった。
恐らくその全てがダイラスの所有している陸上船艦なのだろう。
バルチャーの間で名前が知られているロッソでも、所有するロッキー級は1隻だけだ。
そう考えれば、ダイラスはバルチャーとしてかなり大きな集団なのは間違いない。
フリーのMS乗りをあれだけ集め、雇うということが出来るのも当然か。
とはいえ、ロッソの場合はやろうと思えばロッキー級を増やせる筈だ。
ロッソはそれを理解した上で、自分から好んで1隻だけで行動している。
そう考えると、ある意味でこれはそこまで驚くような事でもないのかもしれないな。
「あんたが、アクセルか。あんたのオクト・エイプは、向こうにあるロッキー級の格納庫に入れてくれ!」
オクト・エイプから降りると、すぐにダイラスの部下の1人がやって来て、そう言ってくる。
どうせなら俺がコックピットから降りる前に言ってくれれば、手間も掛からなかったのにな。
とはいえ、俺はあくまでも雇われている身のフリーのMS乗りだ。
そうである以上、ここで文句を言っても仕方がない。
そう判断し、すぐに再びオクト・エイプに乗り込むと指示されたロッキー級に向かう。
にしても……こうして見ると、この前のダイラスの招集に集まった奴の殆どはやって来ているようだな。
エニルは俺と話した通り、来ていないみたいだが。
そうしてロッキー級の格納庫に入ると……
「げ」
コックピットの中で、思わず声を上げる。
既に格納庫に収納されているジェニスに見覚えがあったのだ。
俺とこの前模擬戦を行った……つまり、俺に敵意を抱いているMS乗りのジェニスだ。
模擬戦で俺によって汚されたMSの装甲は、既に綺麗に洗われている。
また面倒な事にならないといいんだが。
そんな風に考え、コックピットから降りる。
するとすぐにメカニックがやって来て、話し掛けてくる。
「アクセルだよな? あんたの部屋に案内する。今回の仕事が終わるまでは、その部屋を使って貰う」
「個室か?」
「あんたの場合はそうなる。あんたの腕はこの前の模擬戦でも見せて貰ったしな。ダイラスさんは今回の一件、あんたが攻略の鍵になると思っているらしい」
どうやら俺が予想していた以上に期待されているらしい。
とはいえ、今の状況を思えば喜んでいいのかどうか、微妙だが。
そんな風に思いながら、部屋に案内して貰ったのだが……
「ふーん。俺達が多人数の部屋なのに、アクセルは1人部屋なのか。腕利きのMSパイロットは羨ましいね」
丁度部屋に入ろうとした時、隣の扉が開いてそこから出て来た男……俺に対して敵意を露わにし、模擬戦で戦った男がそんな風に言ってくる。
ダイラスは何を考えてこんな部屋割りにしたんだ?
俺を頼りにしているという割には、何故かこうして俺に敵意を抱いている奴と同じロッキー級に配属した。
あるいはそれだけであれば、多少は納得出来たかもしれない。
しかし、こうして部屋がすぐ隣……それも俺は個室で、向こうは違うとなれば、俺に向ける敵意が増えるのは当然だろう。
俺を頼りにしているという割には、俺に危害を加えようとしているようにすら思う。
エニルが言っていた、ダイラスの悪い噂というのがちょっと気になるな。
だが、この状況で俺に危害を加えてどうなる?
百害あって一利なし……いや、一利はあるのか?
まず不可能だが、俺を殺す事に成功すればオクト・エイプはダイラスの物になってもおかしくはない。
オクト・エイプは宇宙革命軍が開発した量産型MSの中でもトップクラスの性能を持つ。
そんなMSは、ダイラスにとって欲しいと思うのは当然だろう。
いや、ダイラスだけではなく、MS乗りやバルチャーであれば欲しがるのは当然だった。
「腕を認められたって事だろ。それは模擬戦をしたお前も十分に分かってると思うが?」
「てめえっ!」
叫びそうになった男だったが、俺はそれを無視し部屋の中に入る。
まだ廊下では叫び声が聞こえていたが、それを無視してベッドに横になった。
エニルから聞いた噂や、色々と不自然なこの状況を考えると、あるいはあの男と友好的に接しておいた方がいいのかもしれないが……生憎と、今の状況でそんな真似をしても既に手遅れなような気がする。
なら、適当に相手をしながら、何かちょっかいを掛けてきたら対処すればいい。
向こうが何をしようとも、混沌精霊の俺が死んだり怪我をしたりといったようなことにはならない。
そういう余裕があるからこそ、このように判断するのだった。
『さて、これから俺達が行く場所は、連邦軍の重要拠点だ。それも、まだ誰も中を探索したことがないような、極上の場所となる』
映像モニタに表示されたダイラスは、そう言って獰猛な笑みを浮かべた。
しかし、すぐに誰かが質問をする声が聞こえてくる。
『誰も探索していないって事は、あんたもか? これだけの戦力があったら、多少強引でもどうにか出来そうな気がするんだが』
『そうだな。だが、俺はこう見えても部下を大事にしている。それに腕利きのMS乗りがいれば、そういうのに対処も出来る。そう考えれば、無理に俺達だけでやる必要もないだろう?』
腕利きのMS乗りという表現のところで、ダイラスは映像モニタ越しではあるが俺を見たような気がする。
……いや、気がするのではなく実際にそうなのだろう。
事実、俺の近くに座っているMS乗り達は俺に向かって視線を向けているし。
それにしても、ダイラスが俺と同じロッキー級に乗っていないというのは、ちょっと驚きだったな。
あれだけ腕利きだ何だとこっちを持ち上げてくるんだから、てっきりダイラスも俺と同じロッキー級に乗るのだとばかり思っていた。
『なるほど、話は分かった。それで……その基地は連邦軍の重要施設だって話だったが、何を根拠にそう判断したんだ?』
『自動防衛装置が多数あるのが第一だな。また、基地のある場所が山奥で、そう簡単に見つかるような場所じゃねえ。それに……戦前のこの辺りについて知ってる奴から情報を聞く事も出来たが、俺達が行く辺りに基地があるという情報は……それこそ、噂の類であってもなかったらしい』
それは、また。
ダイラスがここまで堂々と連邦軍の重要拠点であると言うだけの事はあるな。
とはいえ、それだけに攻略するのが難しいのだろうが。
『そのような場所だけに、今回は腕利きのフリーのMS乗りを雇わせて貰った』
『話は分かった。だが……それは俺達フリーのMS乗りを盾に使おうとしているだけではないのか?』
『そんなつもりはないから安心してくれ』
安心してくれと言うダイラスだったが、実際にどうするのかというのを口にする様子はない。
この辺りについては、信用出来るのか? といった疑問を抱くには十分だった。
『さて、向こうに到着するまでの数日は、特にやって貰う事もない。MSの操縦訓練の類はそれなりにやって構わないが、メカニック達を疲れさせるような真似はしないでくれると助かる』
その言葉を最後に、通信を使ったブリーフィングは終わるのだった。
そしてブリッジに集まっていた面々は、それぞれが自分の部屋に戻る。
途中で何人かのMS乗りに敵意の視線を向けられたが、それについては無視しておく。
向こうも実力差を知ってる以上、この状況で手を出してきたりはしないだろう。
そうなったらそうなったで、こっちも相応の態度を取ればいいだけなのだが。
ともあれ、一番の問題は……数日の暇潰しをどうするかだな。
エニルでもいれば、話し相手に困る事はなかったんだが。
いやまぁ、エニルが俺と一緒にいればいたで、それを妬ましく思う奴もいるだろうけど。
俺と模擬戦をやった奴以外にも、普通にエニルの件で絡んでくるような奴がいてもおかしくはない。
エニルは間違いなく美人だし、身体付きも女らしい。その上で露出度の多い服を着ているので男に人気があるんだよな。
……普通ならそういう女は乱暴なバルチャーに襲われてもおかしくはないのだが、エニルが今もああいう服装をしているままだという事は、襲ってきた相手は返り討ちにしてきたのだろう。
ともあれ、そんなエニルと一緒にいれば問題になる事も多い。
だとすれば、俺は適当に時間を潰すしかないんだが……
「やる事が何もないんだよな」
ベッドの上に寝転がりながら、そんな風に呟く。
これでこのロッキー級に乗っているのが俺と友好的……とまではいかずとも、せめて中立的な奴なら話し相手になって貰ったりするんだが。
ダイラスが何を考えてこんな風にしたのかは分からないが、とにかく俺を嫌っている奴ばかりを集めていた。
その上で、俺が1人部屋で他の連中は2人から4人部屋。
そんな状況で俺が話をしたいと言っても、間違いなく喧嘩を売られていると思われるだけだ。
そうである以上、無駄に騒動を起こす事もないだろう。
いっそ刈り取る者でも呼ぶか?
とはいえ、刈り取る者は俺の言葉は理解するのだが、話すといったような真似は出来ない。
……いや、魔法とかを唱えているし、本来なら話す事も出来る筈だよな?
それで話さないのは刈り取る者に何かあるのだろう。
かといって、狛治を召喚するのも……ちょっとな。
角と翼を隠す事が出来ない以上、誰かに見られると間違いなく問題となる。
刈り取る者の場合は、何かあっても俺の影の中にいるから問題はないのだが、狛治の場合はそうもいかないし。
「暇だな。……そう言えば、MSの操縦訓練については認められていたよな? なら、ちょっとオクト・エイプを動かしてくるか。ついでに周辺の偵察とかもしてもいい」
ダイラスの事だから、周囲の偵察とかはやってるだろう。
それでも偵察をするのなら、空を飛べるオクト・エイプの方が効率的なのは間違いない。
とはいえ、ロッキー級が3隻の集団だ。
そう考えれば、もし盗賊の類がいても攻撃を仕掛けるような真似はしない筈だ。
この状況で戦いになったら、普通に俺達が勝つだろうし。
とはいえ、それはあくまでも俺の予想でしかない。
場合によっては、戦力差なんて関係ないといったように襲ってくる奴がいるかもしれないし、あるいは……本当にあるいはだが、ダイラスがこうして大所帯で移動しているという情報を得て、盗賊をやってるバルチャー達が協力して襲ってくる可能性もある。
……ないか。
ともあれ、今の俺はやるべき事がなくて暇なのでMS格納庫に向かうのだった。
「え? 偵察? あー……後じゃ駄目か? 今からアクセルのオクト・エイプの整備をしようと思ってたんだが」
格納庫に行って偵察をしに行きたいと言うと、メカニックからそんな風に言われてしまう。
確かに雇われている間のMSの整備とか補給とかそういうのはダイラス側がやる事になっていたんだが……
「その整備は今やる必要があるのか? オクト・エイプはサン・アンジェロ市からこのロッキー級まで移動しただけだぞ?」
メンテ親父の工場に預けておいたので、その間に整備もして貰っている。
なのに、今この状況ですぐに整備をすると言われても、納得は出来ない。
そう思ったのだが、メカニックはあっさりと頷く。
「整備をするために、今のMSの状態を確認しておく必要があるんだよ。それに……こう言っちゃなんだが、サン・アンジェロ市にある工場とかが出来る整備には限界がある。どうしても現場で働いている俺達に比べると腕は落ちるんだよ」
その説明は俺にも納得出来るところがある。
これは別にメンテ親父の腕が悪いと言ってる訳ではない。
実際、今までオクト・エイプは問題なく動いているし、俺が鹵獲したMSの修理や整備も問題なく行っているのだから。
そういう意味では全く問題はない。ないのだが……それでも、やはり常に最前線でMSの整備や修理をしているメカニックに比べると技量は劣ってしまうのだろう。
「だから、な? 頼むよ。オクト・エイプは……というか、アクセルが操縦するオクト・エイプは、今回の基地攻略の要になるんだ。だからこそ出来るだけ万全にしておきたい」
メカニックのその言葉に、どうするべきか迷い……だが、すぐに決断する。
そもそもの話、俺が偵察に出るというのはあくまでも暇潰し以外のなにものでもないのだから。
そうである以上、この一件は明らかにメカニックの方に理があった。
勿論、ここで俺が強引にオクト・エイプで出撃すると言っても、最終的にはメカニックもその言葉に従うだろう。
だがそれでも、やはり今の状況を思えばそれは俺の我が儘でしかない。
「分かったよ。まずはそっちの方で整備をしてくれ。いざという時に何かあったら困るしな」
「悪いな、その代わり整備はしっかりとさせて貰うよ」
そう言うメカニックと別れ、俺はロッキー級の中を適当に歩き回って時間を潰す。
そうして特に何もやる事がないまま時間は流れ……
『目的地が見えてきたぞ!』
サン・アンジェロ市を出発してから数日後、そんな声で俺は目覚めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1850
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1738