殺すと宣言されたダイラスは、一体どう出るのか。
ガンダムベルフェゴール……いや、これだとちょっと名前が長いから、これからは単純にベルフェゴールと呼んでおくか。
見た感じでは、ガンダムという名前を付けるのはちょっとどうかと思うしな。
完全にゲテモノガンダムって感じがするし。
ともあれ、ダイラスの反応を待ちながらストライククローについての動きを確認する。
やっぱりフラッシュシステムとやらの影響か、非常に使いにくいな。
出来ればこのフラッシュシステムをどうにかしたいんだが……多分、この調子だと難しいんだろう。
「どうした? この状況になって逃げられるとは思っていないだろう?」
『ふざけるな……何だっててめえがガンダムなんかに乗ってやがる!』
俺の通信に、ダイラスは苛立ち混じりといった様子で叫ぶ姿がベルフェゴールの映像モニタに表示された。
その顔は真っ赤に染まっている。
無理もない。
オクト・エイプに乗っている俺を上手い具合に殺したと思ったのだが、こうしてベルフェゴールに搭乗して姿を現したのだから。
「何でと言われてもな。あの地下格納庫にあったからだが? お前達にオクト・エイプを動けなくされたんだ、他のMSに乗るのは当然だろう?」
『ふざけるな!』
数秒前と同じ言葉を口にするダイラスだったが、その叫びには苛立ちが溢れている。
顔が真っ赤に染まっているのは、そんな苛立ちからだろう。
『お前のMSには細工してあった。俺がスイッチを入れたら動かなくなる。それはコックピットも同様だ。ましてや、ジェニスがお前を狙っていたのに、それでどうにかなると思っているのか!?』
「どうにかなったから俺はこうしてここにいるんだよ。……さて、負け犬の遠吠えはそのくらいでいいな? もう何もないなら、そろそろお前には死んで貰うぞ」
慣れた様子のやり口を思えば、恐らくダイラスは今までに何度も同じような事をしているのだろう。
つまり、ダイラスは最初から俺を殺すつもりで雇ったという事になる。
腕の立つMS乗りであっても、どこかに専属として雇われているのではなく、フリーの立場だ。
ダイラスにしてみれば、切り捨てるのにちょうどいい存在だったのだろう。
そんな奴をそのままにしておくのは、今後の事を思っても許容出来ない。
『て……てめえ……』
睨むダイラスだったが、それでダイラスに何か出来る訳ではない。
もっとも……
「ダイラスに唆された連中は、攻撃をしなければ殺す事はない。勿論、相応のペナルティは負って貰うがな」
こう言っておく。
向こうにしてみれば、取りあえず殺される事はないと思えばこの状況で俺を始末しようとは思わないだろう。
何しろ俺はガンダムに乗ってるのだから。
……とはいえ、ベルフェゴールはフラッシュシステムのせいでオクト・エイプとどっこいといった機体性能しか出せないのだが。
それでも攻撃力はかなり強力なので、そういう意味ではオクト・エイプよりもこっちの方がいい。
メンテ親父がフラッシュシステムを取り外すような真似が出来れば……多分、無理だな。
ガンダムというのは、連邦軍にとっての秘密兵器や最後の切り札的な存在だった。
そうである以上、多少腕はいいのかもしれないがメンテ親父のような一介のメカニックにどうにか出来るとは思えない。
もしフラッシュシステムをどうにかするとすれば、それこそシャドウミラーの技術班に頼んだりといったような真似をする必要があるだろう。
「さて、どうする?」
改めてそう告げた瞬間、ロッキー級の周辺で待機していたMSのうちの何機かが、武器を地面に落とす。
どうやら降伏するという賢い選択をしたらしい。
しかし……残念ながら、全てのMSが大人しく降伏した訳ではない。
まだ何機かのMSは武器を持ち、抵抗の意思をなくしてはいなかった。
多分、このMSは俺や降伏した連中みたいにフリーのMS乗りという訳ではなく、ダイラスの部下なのだろう。
だからこそ、俺を殺すというのが失敗した現状で自分達が降伏しても大人しく受け入れられるとは思っていないらしい。
「どうやら話は決まったようだな。……なら、今いる連中は俺の敵と判断して撃破する」
そう告げると同時に、ロッキー級の1隻から砲弾が放たれる。
こっちの隙を突いたつもりだったんだろうが、そんな攻撃でどうにか出来ると思われたのは予想外だったな。
そんな砲弾を回避し……するとその砲弾は扉に命中する。
とはいえ、当然ながらこの扉はかなりの厚さだ。
陸上戦艦の中でも最大級のテンザン級や、ベルフェゴールを隠してあった場所なんだから、強固な防御力を持ってるのは当然だろう。
そうして近くにいたドートレス……ではなく、少し離れた場所にあったロッキー級の1隻。
ダイラスの乗っているロッキー級だ。
ダイラスにしてみれば、まさか自分が狙われるとは思っていなかったのか、ロッキー級からの迎撃は一瞬遅れる。
そうして進む中で、ストライククローを展開してロッキー級のブリッジに向け……
「死ね」
その言葉と同時に、ストライククローの大出力ビームサーベルが展開し、それがブリッジに放たれた。
大出力ビームサーベルが突き込まれる寸前、ダイラスは一体何をされているのかという事が分からないような、そんな表情を浮かべ……次の瞬間、ビームによってブリッジ諸共にダイラスは消滅する。
「ダイラスは死んだぞ! これでもお前達はまだ戦うつもりか!」
オープンチャンネルで叫ぶと、数秒の沈黙の後……俺が乗っていたロッキー級の艦長が映像モニタに表示される。
「降伏する」
その言葉を皮切りに、ダイラスの部下達は全員が降伏するのだった。
「条件はこれでいいな?」
「ああ」
俺に最初に降伏すると通信を送ってきた男は、素直に頷く。
向こうが降伏する条件は、まだ残っているロッキー級1隻とMS全ての譲渡。
ダイラスが乗っていたロッキー級は、ブリッジが破壊されたので修理しないととてもではないが使えない。
そんな訳で、なし崩しにそっちのロッキー級も貰う事になった。
本来ならもう1隻のロッキー級も奪ってもよかったのだが……向こうにしてみればここから近い街はサン・アンジェロ市で、ロッキー級でも数日が掛かる場所だ。
そんな場所を歩いて移動するとなれば、それこそ到着するのは難しいだろう。
そうなった場合、破れかぶれにこっちに襲いかかってくる可能性があった。
勿論そうなったらそうなったで戦ってもよかったのだが……何しろ地下格納庫の中にはテンザン級を始めとしてロッキー級やピオーネ級の陸上戦艦も多数ある。
いやまぁ、テンザン級は1隻だけだけど。
多分……本当に多分の話だろうが、テンザン級はベルフェゴールを運用する際の母艦として使い、そんなテンザン級を中心にしてロッキー級やピオーネ級で艦隊を組むつもりだったのではないかと予想している。
勿論その場合は、戦力のMSがベルフェゴールだけという事はないだろう。
それを示すように、この基地にはドートレスの生産工場があるのだから。
ともかく、ロッキー級は結構な数がある以上、1隻くらいは渡しても構わないと判断した。
それにMSも、フリーのMS乗りやダイラスの部下のMS乗りの分も含めて、全部俺が貰ったし。
考えてみれば、ロッキー級3隻に乗って移動していた人数が1隻に乗って移動するんだから、サン・アンジェロ市に到着するまでは地獄だろうな。
「なら、行け。一応言っておくが、また戦力を整えて攻撃してきても、同じ目に遭うだけだぞ」
「分かっている。お前を敵に回すのは割に合わないというのは理解した。だが……これだけの広大な基地をお前だけでどうにかする気か?」
この男の疑問はもっともだろう。
この地下基地……正確には地上にもある程度出ている部位があるので、半地下基地とでも呼ぶべきこの場所は、UC世界のジャブロー程ではないしろ、結構な広さがある。
ましてや、ダイラスは地上に近い部分から順番に基地を調べるのではなく、一気にこの地下格納庫までやってきた。
いやまぁ、俺と一緒に行動していたダイラスの部下がコンピュータを調べてこの辺りについて知ったのだから、理解は出来ない訳ではないが。
意見を聞かれた時、俺も最初に地下格納庫を調べた方がいいって言ったし。
こうなると分かっていれば、しっかりと上の方から調べてくるといった真似をしたんだが。
とはいえ、まさかあの時はこんな展開になるとは思っていなかったし。
ダイラスが最初から俺を騙すつもりだったら、あるいは殺意とか悪意とかで分かったかもしれない。
だが、ダイラスはいざという時は俺を嵌めて殺すつもりだったのだろうが、もしそのいざという時が来なければ普通に依頼を終了させていたのだろう。
具体的には、俺が地下格納庫を見つけなければ……いや、地下格納庫があっても、そこにベルフェゴールがなければ。
だが、ベルフェゴールはあった。
その結果が今の状況だった。
「心配するな。俺にも仲間がいる。この基地の探索は仲間と一緒にやるさ」
「仲間……?」
心の底から不思議そうな様子で男が呟く。
俺がこのX世界にやってきてから、それなりに時間は経つ。
その間、俺はフリーのMS乗りとしてやって来た。
ダイラスが俺を捨て駒にしようとしたのも、俺がフリーのMS乗りだというのが理由だろう。
当然ながら、俺を雇う前にその辺は調べていた筈だ。
幾つかのバルチャーに雇われたりはしたものの、そんな中で俺が一番親しいバルチャーとなると、ロッソとなる。
だが、ロッソとは最初の仕事以来は会っていない。
結構な長期間サン・アンジェロ市に戻ってきてはいないのだが、その辺を考えるとそろそろ戻ってきてもいいんじゃないかと思う。
それはともかくとして、俺を調べた限りでは仲間が出てくるといった事はない。
この男も当然のようにそれを知っているからこそ、こんな驚きの表情を浮かべているのだろう。
「俺に仲間がいないと思ったか? ……まぁ、けどお前達が俺の仲間について知る事はもうない。いや、あるいはお前達がまだバルチャーを続けているのなら、いずれシャドウミラーという名前を聞く事になるかもしれないがな」
「シャドウ……ミラー?」
「そうだ。その名前を持つ集団に会ったら、俺にしたのと同じような真似はしない事だな。俺が言うのも何だが、色々と振り切れている奴が多い」
いや、本当にこの発言をシャドウミラーの連中が知ったら、お前が言うなと言われてしまいそうだが。
ともあれ、男は俺のその言葉でこれ以上関わらない方がいい、詳しい情報を聞かない方がいいと判断したのだろう。
それ以上は何も尋ねる事はないまま、座っていた椅子を立つ。
「そうさせて貰うよ。……正直なところ、アクセルの腕が立つというのは分かっていたが、それでもあの状況から逆転が可能だとは思わなかった。もしかしたら……あんたみたいなのをニュータイプって言うのかもしれないな」
「さて、どうだろうな」
そう言いつつ、ふと気が付く。
この世界にもニュータイプがいるという情報はある。
前大戦でニュータイプが非常に大きな活躍をしたという事も。
つまり、サイコミュのような物があるのは当然で、フラッシュシステムというのがこの世界におけるサイコミュ的な存在じゃないのか?
だとすれば、俺がフラッシュシステムを使えなかったのも理解出来る。
そもそもの話、俺の能力は念動力だ。
ニュータイプ用の機器に対応する筈がない。
だからこそ、ベルフェゴールの操縦でフラッシュシステムが起動せず、その能力の本来の性能を発揮出来なかったのだろう。
「あんたがどう思っていようが……いや、今更そんな事を言っても意味はないか。とにかく、俺は戻るよ。もう会う事がないように祈ってる」
そう言い、男は部屋から出て唯一残ったロッキー級に乗り込み、基地から去っていくのだった。
もしかしたらここに残って俺をどうにかしようとする奴がいるかも? と思ったが、気配の類はない。
この巨大な基地の中にいるのは、俺だけ。
……いやまぁ、ネズミのような野生動物とかはいるかもしれないが。
それはともあれ、問題なのはどこにゲートを設置するかだな。
地下格納庫に設置は……あそこだと外に出るのは結構面倒だ。
だとすれば、いっそ基地の地上部分にするか?
この地下基地は俺達の拠点として使うとして。
そうなるとゲートがバルチャーに襲われるかもしれないというのがあるが、こんな山奥までバルチャーがやって来るのかどうかというのが問題だろう。
それに道はあるんだから、そこに検問を用意すればいいし、量産型Wやバッタ、メギロート、イルメヤでゲートを守っておけばいい。
そう判断すると、俺は基地の地上部分に影のゲートで向かうのだった。
「さて、繋がらないという事はないよな」
ダンバイン世界の事があるので、少し慎重になりながらもゲートを空間倉庫から出して設置する。
するとゲートは展開していき……
『アクセル代表?』
やがて技術班の1人の顔が空中に浮かんだ映像スクリーンに映し出されたのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750