「へぇ、ここがサン・アンジェロ市かい。……戦後の世界にしては、それなりだね」
サン・アンジェロ市を見たシーマが、感心したように呟く。
シーマにしてみれば、初めて見るX世界の街だ。
それに戦後15年と聞いていたのもあって、それなりに繁栄しているこの街並みに感心してるのだろう。
セインズアイランドとかは、サン・アンジェロ市よりも更に繁栄してるんだが……後で連れて行ってもいいかもしれないな。
「さて、それで俺はちょっと知り合いのところに顔を出してくるけど、シーマはどうする?」
「あたしもアクセルと一緒に行くよ。アクセルのパートナーとして一緒に来たんだから」
ちなみにマリオンや黒い三連星の面々以外……具体的にはクリス、モニク、クスコの3人も俺と一緒に行きたいと主張してきたのだが、基地の方で色々と準備もあったし、女……それも美人ばかりを一緒にサン・アンジェロ市に連れてくるような真似をすれば、他の連中に目を付けられて面倒に巻き込まれる可能性もある。
サン・アンジェロ市において、俺は色々と目立つ存在なのは間違いない。
だが、それはあくまでも腕利きのMS乗りという意味では目立っていただけだ。
そこにシーマを含めて4人の美人を引き連れているような真似をすると、腕利きのMS乗りとはまた違う意味で有名になってしまいそうな気がする。
いやまぁ、それはもう今更の話ではあるが。
ちなみにシーマを含めて俺と一緒にサン・アンジェロ市に来たいと言っていた者達の中でシーマが選ばれたのは……純粋にジャンケンによる結果だった。
モニクやクリスはともかく、ニュータイプのクスコを相手にしてもジャンケンで勝利をした辺り、シーマって凄いよな。
ジャンケンにニュータイプの能力が使えるのかどうか、生憎と分からないが。
ともあれ、そうしてシーマはジャンケンで勝利して俺と一緒にサン・アンジェロ市に来た訳だ。
「そうか? まぁ、シーマが来るのならそれでもいいけど。……まずはメンテ親父の工場に行くか」
サン・アンジェロ市において、俺が一番世話になった場所となるとメンテ親父の工場だ。
フリーのMS乗りとして行動している時に入手した各種MSを修理したり整備したり、あるいは弾薬の類を補給したりといった真似をしているのだから。
ちなみに当然ながらそれらは別に無料でやって貰った訳ではなく、相応の報酬は支払っている。
メンテ親父にしてみれば、俺は多数の仕事を持ち込むお得意さんといったところだろう。
……もっとも、持ち込まれる仕事は非常に忙しく、メンテ親父だけでは手が回らず、何人もの知り合いのメカニックを呼んでいたが。
「メンテ親父? それはあだ名だろう?」
「まあな。ただ、メンテ親父で通ってるのは間違いないしな」
実際、メンテ親父の本名は俺も知らない。
サン・アンジェロ市にメンテ親父の本名を知ってる奴はいるのか?
これが戦前であれば、戸籍とかで本名が分からないといったような事もあるのだろうが、今は戦後だ。
サン・アンジェロ市はそれなりに復興しているが、戸籍とかはしっかりとしていないと思う。
税金とかそういうのは、一体どうなっているのか少し気になる。
「なるほど、そういう事かい。……なら、まずはそこに行くとしようかね」
こうして俺とシーマはメンテ親父の工場に向かったのだが……その工場では、メンテ親父が働いていた。
いや、それだけなら特にそこまで気にするようなことではない。
問題なのは、メンテ親父の指示に従ってMSの整備をしている者が数人いたことだ。
メンテ親父がまた仲間を呼んだのか? と思ったが、見る限りメンテ親父の指示で動いている者の動きは決してよくない。
素人よりは少しマシといった程度か。
だとすると……従業員か?
そんな風に疑問を感じていると、ジェニスの整備の指示をしていたメンテ親父が俺の姿に気が付き……そして俺の隣にいるシーマを見て驚きの表情を浮かべながら、近付いてくる。
「おいおい、アクセル。そっちの美人は一体誰だよ?」
「最初に聞くのがそれなのか? 久しぶりに会ったんだから、俺の無事を祝ってくれてもいいと思うが」
「ダイラスの一件はもう噂は広まってるよ。お前は腕利きのMS乗りだとは思っていたんだが……まさか、ダイラス達を倒すとは思わなかった」
この話を聞く限り、ダイラスの一団……正確にはダイラスは死んだので、その部下達は無事にサン・アンジェロ市まで戻ってきたらしい。
ダイラスの乗っているロッキー級は俺に撃破――破壊したのはブリッジだけだが――され、残る2隻のロッキー級のうち、1隻は俺が奪ったので、3隻分の人員が1隻のロッキー級に乗ってあの基地を出発したんだが。
「あの連中、サン・アンジェロ市に戻ってきたんだな。今回の一件でもう誰も雇ったりはしないと思うから、名前が知られていないどこか別の場所に行くかと思ってたんだが」
「そういう連中も結構いるらしいぞ。何しろ、アクセルは評判がよかったからな」
「それは、俺が安い値段で依頼を引き受けていたからだろう?」
バルチャーやフリーのMS乗りを雇う者達にしてみれば、当然ながら少しでも支払う報酬は安い方がいい。
そんな中で俺は比較的安い値段で依頼を引き受けていた。
まぁ、俺の場合は敵を倒して、その敵が持っていたMSを奪うとか、そういう方法で稼いでいたし。
とはいえ、その辺は俺を雇おうとしている者には関係ない。
少しでも安く、そして当然ながら相応の技量を持つ者を雇いたいと思う者が多い中で、俺はこれ以上ないくらい相応しい存在だった訳だ。
そんな俺を嵌めようとして返り討ちにされたのだから、評判が落ちるのは当然だろう。
寧ろそんな状況でもまだサン・アンジェロ市に残ろうとしてる奴がいる事の方が驚きだ。
とはいえ、この辺りではサン・アンジェロ市が一番繁栄している街なのも間違いない。
そういう意味ではここから離れられないような奴もいるのだろう。
「そうだな。だが……これからは安値で依頼を引き受けるとはいかないだろう?」
そう言って、メンテ親父はシーマに視線を向ける。
シーマを連れて来た事で、俺の仲間が増えたと判断したのだろう。
実際にそれは間違っていない。
「ああ。とはいえ、今度からはフリーのMS乗りとして活動するんじゃなくて、バルチャーとして活動することになる。仲間も集まっているしな」
「そう言えば、MSを集めたのをせっせと運び出していたよな。それを使うのか?」
「そんな感じだな」
実際にはこっちで改修して量産したオクト・エイプを使う予定なのだが。
とはいえ、その辺は今は言う必要もないだろう。
俺の行動が何気に現在の状況をカモフラージュするようになっていたのは、喜ぶべきか、驚くべきか。
「うちのアクセルが世話になったようだね。話は聞いてるよ。腕がいいんだってね?」
「ははは。そう言って貰えると嬉しいね。ただ、アクセルは次から次にMSを持ってきたから、それの修理や整備に嬉しい悲鳴を上げさせて貰ったよ。それで……あんたはアクセルの?」
「ああ。パートナーだと思って貰えばいい」
「おお、やっぱり! アクセルは腕は立つけど、色々と隙も多いからな。あんたみたいに腕利きの人物が一緒にいると、安心出来るよ」
「ふふっ、任せておくんだね」
何だか俺が予想していなかった方向に話が進んでないか?
気のせいか?
その辺は正直どうか分からないが……まぁ、シーマとメンテ親父が友好的なのは問題ない事だろう。
「そう言えば、ロッソはもう戻ってきたのか?」
「いや、まだ戻ってきてないな。そろそろ戻ってきてもいいと思うんだが」
「出来ればロッソにも俺がフリーのMS乗りからバルチャーになったというのを知らせておきたかったんだがな」
メンテ親父にも世話になったが、ロッソにもかなり世話になっている。
バルチャーの中でも有名人で影響力の大きいロッソが俺の技量を保証して半ば後ろ盾に近い状況になっていたので、俺は依頼人達に信頼された。
勿論ロッソの後ろ盾がなくても、フリーのMS乗りとして活動していればいずれ腕利きのMS乗りとして依頼は多くなっただろう。
だが、その期間が短くなったというのは、俺にとって悪い話ではなかった。
そのおかげで、ホワイトスターに戻るまでに多数のMSを入手出来たのだから。
「分かった。ロッソが戻って来たらすぐに教えるよ。……それで、バルチャーになるって話だったが、いつから行動するんだ?」
「もう少しだな。ダイラスの一件で入手した基地を拠点として行動する。今は陸上戦艦やMSのチェックとかをしているところだし」
「陸上戦艦か。どんな奴だ?」
MSだけではなく陸上戦艦にも興味津々なのか、メンテ親父はそう尋ねてくる。
「テンザン級だよ」
「うおっ、マジか!?」
テンザン級という単語にメンテ親父は思いきり驚く。
逃げてきたダイラスの部下は多少なりともその辺の状況を持っていた筈なんだが……それについては口にしなかったのか?
テンザン級やガンダムがあると情報を広めれば、バルチャーの中にはそれを欲して基地を襲撃する奴も出て来るかもしれないような。
……いや、だからか?
あの連中にしてみれば、俺にやられたという恨みがあると同時に、もし恨んで妙な真似をした結果俺に被害が出たら、その元凶に報復すると思われていてもおかしくはない。
実際、そんな風になる可能性は否出来ないし。
「ああ。ちなみに基地には他にもロッキー級を含めた陸上戦艦がそれなりにあったんだが、そっちはどうするか迷い中だな」
いっそ量産型Wにバルチャーをさせても面白いし、シャドウミラーの実働班や、その予備部隊の精霊の卵辺りにバルチャーをさせてみても面白い。
……耀哉辺りに艦長を任せたら、それはそれで凄い発見をしたりしそうなんだが。
社長として忙しい以上、そんな無理はさせられないか。
「ロッキー級か。……それを売るという事は考えてないのか?」
「地上戦艦は色々と使い道があるから、基本的には考えてないな」
「そうだね。けど、MSの生産ラインが無事だったから、現在それを修復中だ。それが直ったら、MSは結構な量を売れるようになると思うよ」
シーマが俺の言葉に続いてそう告げる。
それを聞いたメンテ親父は、目を輝かせる。
メンテ親父なんて名乗ってるんだし、MSに愛着があるのはこれまでの付き合いから分かっている。
だが、このX世界でMSというのはそう簡単に入手出来るものではない。
それこそバルチャーが基地から発掘するか、あるいはMSを持ってる奴から奪うか……捨てられているのを修理するというのもあるな。
あるいは相応の技術があれば、ルマークのように色々な部位を集めたりして全く新しいMSを作ったりといった真似も出来ると思うが……これは本当に例外だ。
そうである以上、MSの生産ラインが無事だという事は、ある程度MSを纏めて取り扱えるという事になる。
「とはいえ、そのMSが盗賊をやってるバルチャーとかに買われると、厄介な事になりそうだな」
「一応、その辺は考えて信用出来る奴だけに売るつもりだ」
俺にしてみれば、敵になるかもしれない相手にMSを売るつもりはない。
そもそも、MSを売るにしても、代金をどうするかという問題がある。
ぶっちゃけ、宝石とかそういうのは普通にキブツを使えば幾らでも入手出来る。
金の類を貰っても……この世界では特に何か買いたい物はない。
まだ俺が持っていないMSなら、是非とも欲しいが。
だが、調べてみた限りでは俺がまだ持ってないMSというのはそんなに多くないみたいなんだよな。
あるいはガンダムなら是非とも欲しいが。
だが、普通に考えてガンダムを売るような奴はいないだろうし。
もしそういう奴がいるのなら、それこそ俺はすぐにでもガンダムを買うんだが。
「そうか。そうしてくれると、俺も助かる。このサン・アンジェロ市にもMS乗りが襲ってくるといった事はあるし」
「その場合は、街で雇っているMS乗りが出るだろう?」
俺が初めてこのサン・アンジェロ市にやって来た時、夜になってから近付いて来た事で怪しまれて盗賊のMS乗りだと勘違いされ、サン・アンジェロ市からMS隊が出撃してきた。
その時は結局誤解が解けて……それでも攻撃をしてきた奴がいたが、そいつの乗っているMSを奪う事は出来た。
この辺りで一番大きな街だけに、MS乗りが襲ってきた時の対策もしっかりとしているのだろう。
とはいえ、MS乗りを雇っていても敵のMSの数が多くなれば厄介に思うのは間違いないだろうが。
それにMS乗りを出撃させれば、その度に金が掛かる。
「それでもだよ。……いっそ、フリーやバルチャーのMS乗りじゃなくて、サン・アンジェロ市専属のMS乗りがいれば、その辺についても考えなくてもいいんだろうがな」
はぁ、と。
憂鬱そうに言うメンテ親父に、それはそれでありなのでは? と思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750