「モニク、注文を受けたMSについては?」
「基地の方に連絡して、ロッキー級で運んで貰う事になったわ。ただ……精霊の卵から人を出して貰う事になるけど」
正確には精霊の卵に所属してるのは人ではなくエルフなんだが。
こういう場合の表現としては決して間違ってはいないからいいか。
「そうか。なら問題はないだろ」
幸いにもサン・アンジェロ市にいるフリーのMS乗りやバルチャーは、俺がどういう性格をしているのかを理解している。
そうである以上、やって来た精霊の卵のエルフ達に妙なちょっかいを出すような者はいないだろう。
あるいはサン・アンジェロ市に来たばかりの奴がエルフ達を見て、ちょっかいを出してくる可能性はあるが……エルフ達もホワイトスターでは相応に訓練を重ねている。
その程度の相手をあしらうのは難しい話ではないだろう。
あるいは、この街にいる俺について詳しい奴が、そんな馬鹿な真似をしようとしているのを止めるか。
寧ろ問題なのは、街中であったり人の前で帽子を脱がないようにする事だろう。
エルフという事で、当然ながら耳は尖っている。
それを見られれば、色々と面倒な事になってもおかしくはない。
パイロットスーツを着るとか?
ただ、このX世界において地上でMSを乗る限りではパイロットスーツを着るなんて事は滅多にないんだよな。
これが宇宙での話なら別なんだろうが。……実はこの世界において、パイロットスーツが発展していないなんて事はないよな?
いや、コロニーや宇宙革命軍という存在がある以上、パイロットスーツの類がないとは思えない。
そうなると、地上だからこそパイロットスーツは使っていないってところか?
まぁ、パイロットスーツというのは相応に高価だ。
基地には相応に備蓄があったが……あれ、使えるのはどのくらいだろうな。
きちんと保存されていたような物ならともかく、普通に置かれてあったパイロットスーツは15年も前の奴になる。
そう思えば、そのパイロッツスーツが使い物にならなくなっていてもおかしくはない。
「じゃあ、アクセル。サン・アンジェロ市でやる準備は全部終わったわ。出発する?」
俺とモニクの会話を聞いていたマリューが、そう視線を向けてくる。
マリューにしてみれば、出撃するのはそれなりに思うところがあるのだろう。
何しろこの世界での初めての実戦なのだから。
それに今まで陸上戦艦とかは殆ど使った事がなかっただろうし。
とはいえ、いつまでも試してみないことには何とも言えない。
その辺は結局のところ慣れなのだから。
それに……マリューは今まで艦長として働いてきた実績がある。
そうである以上、このテンザン級の指揮に関しても、いずれ慣れるだろう。
「あら? ……アクセル、ロッソさんから通信よ」
ミナトのその言葉に少し驚く。
まるでこっちの様子を見ていたかのような、そんなタイミングでの通信だったのだから。
とはいえ、だからといって通信に出ないという選択肢はない。
「出してくれ」
その言葉にミナトが頷き、映像モニタにロッソが表示される。
ちなみに本来ならミナトは操舵士なんだが、元々多くの資格を持っているだけあって、通信に関しての仕事もこなせるらしい。
『おう。アクセル。そろそろ準備が出来たと思ったんだが、どうだ?』
映像モニタに表示されたロッソは、やはりこちらの予想通りの言葉を口にする。
「ああ。MSの売買の件も片付いたし、そろそろそっちに連絡をしようと思っていたところだ。それで、いつ出発する?」
『そっちがいいなら、出来るだけ早く出発してえ。ジャミルの奴もかなり急いでいるらしいからな。本来ならサン・アンジェロ市に戻ってこないで、適当な街や村で補給してそっちに合流するつもりだったんだが……まぁ、こっちにきたおかげでアクセルという援軍を入手したんだし、万事OKってところか』
がははは、と笑うロッソ。
この豪快な感じがいかにもロッソらしい。
「分かった。ならこっちの準備も終わった事だし出発するか。ロッソがそこまで褒めるジャミルとかいうバルチャーと会うのも楽しみだしな」
『アクセルとは……そうだな。生真面目な奴だからちょっと性格が合わないかもしれねえが、悪い奴じゃねえのは保証するよ』
生真面目なタイプか。
シャドウミラーで言えば、イザークやエザリア、オウカ、ナタルといった面々が思い浮かぶ。あとはエリナや美鶴もそっち系か?
今ここにいる中では……
「何かしら?」
俺の視線を感じたのか、先程までMSの売買について話をしていたモニクが不思議そうに視線を向けてくる。
何だかんだと、モニクは現在ここにいる中では一番真面目な性格をしているのは間違いない。
それがモニクらしいと言えばモニクらしいんだが。
「いや、何でもない。向こうのジャミルとかいう相手を交渉をする時は、モニクがいたら頼もしいと思っただけだよ」
「あら、そう? ……任せておきなさい」
満更でもない様子を見せるモニク。
そんなモニクに、映像モニタの向こう側でロッソは笑い声を上げる。
『がはははは。そのモニクとかいうお嬢ちゃんは、交渉相手としてはなかなかの強者だと聞く。そういう意味では、俺のところの奴の保証付きだ』
ロッソの部下とちょっとした交渉をしたのだが、どうやらその件ではそれなりにモニクはやり込めたらしい。
ロッソの部下もこの戦後のX世界で活動しているのだから、当然のように相応の能力を持ってるだろうが……モニクには勝てなかったらしい。
とはいえ、考えてみればそれも当然だが。
モニクはバルチャーという集団ではなく、ルナ・ジオンという1つの国を代表して交渉しているのだから。
……まぁ、ジオン共和国は半ば敗戦国だし、今となってはルナ・ジオンの友好国でもあるので、そこまで気にする必要はない。
だが、強硬派が力を増しているという連邦や、少しでもルナ・ジオンのお零れを貰おうとしているサイド6との間では、かなり熾烈な交渉が行われているだろう。
そういう意味で、交渉をする際にモニクとロッソの部下ではお互いの立っている場所がそもそも違うのだ。
「モニクは俺が信頼している相手だからな。そのくらいはやってくれないと俺も困る」
そう告げる俺の言葉に、照れからかモニクの顔は赤く染まるのだった。
「アクセル、ちょっといい?」
サン・アンジェロ市を出てからそれなりに時間が経つが、その間、俺に出来るようなことは特にない。
そんな訳で、食堂で時間を潰しているとクリスがそう声を掛けてくる。
「どうした?」
「どうやら目的の場所にもう少しで到着するみたいよ。アクセルもブリッジに行った方がいいんじゃない?」
「そうか。ジャミルってのは一体どういう奴なんだろうな。……どう思う?」
「それを私に聞かれても困るわよ。実際に会ってみないと、その辺は分からないんじゃない?」
そう言ってくる言葉を聞けば、なるほどなと納得する。
とはいえ、クリスにとってもこれからどういう騒動が起きるのかは疑問なのだろう。
「ロッソを呼ぶ……いや、ロッソ以外にも何人か呼んでるって話だったから、それを思えば、結構な騒動になるのは間違いないと思う。クリスの実力を発揮する機会はかなりあると思うぞ」
「いや、別に私は実力を発揮するのを楽しみにしてる訳じゃないんだけど」
なら、何で来たんだ?
一瞬そう突っ込もうとしたのだが、せっかくクリスがここまで来てくれたのだから、そんな風に言ったりするのは悪いか。
「クリスの実力には期待してるんだけどな」
これはお世辞でも何でもなく、本当に俺が心から思っている事だ。
クリスの操縦技術は元々高かった。
そんな中でルナ・ジオンに所属するようになってからは、より高い操縦技術を身につけていた。
元々、MSの運用や操縦技術という点では連邦軍よりジオン軍の方が上回っていた。
そんな状況で上達意識の高いクリスがいて、同じルナ・ジオンの人間として元ジオン軍の軍人がいれば、どうなるのかは明らかだろう。
「あら、そう? ふふっ、アクセルがそう言うのなら、私もちょっと頑張ってみようかしらね」
そんな風に会話をしながら、俺はブリッジに向かうのだった。
『おう、アクセル。そろそろジャミルのフリーデンと合流するぞ。お前の事も紹介するから、そのつもりでいてくれ』
ブリッジに入ると、映像モニタに表示されたロッソがそんな風に言ってくる。
フリーデンというのが、ロッソに応援を頼んだバルチャーの陸上戦艦なんだろう。
「俺をか? いやまぁ、何か大きな戦いになるのなら俺の紹介は必要か」
ロッソはともかく、そのジャミルという男は俺が具体的にどれくらいの実力があるのかは知らない。……いや、バルチャーという事だし、サン・アンジェロ市を拠点にしている俺の噂は聞いた事があってもおかしくはないか。
あるいはジャミルというバルチャーが知らなくても、他に集まってきているバルチャーが俺について知っている可能性は否定出来なかった。
別に名前が知られていて困るということはないので、構わないのだが。
『そうだ。俺はともかく、お前の事を知ってる奴はいないだろうし、知っていても噂だけだろうしな。特に……グリーツとアクセルは早く会わせてみてえ』
グリーツ……確か、グリーツ・ジョーだったか?
俺と同じテンザン級を使っていて、そしてMS乗りが使っているMSも俺が以前乗っていたオクト・エイプ。
そういう意味では、ロッソが俺に会わせたいというのも分からないではない。
「分かった。なら……どうやって移動すればいい? ロッソが迎えに来てくれるか?」
『ああ、そうだな。……いや、ちょっと待て。そう言えば、まだ俺はお前のガンダムを見た事はなかったな。いい機会だから、お前はガンダムに乗ってフリーデンまで移動してくれ』
「ガンダムで? まぁ、見たいのなら別にいいけど。ただ、かなり目立ちそうだな」
『初めて会うんだ。それくらいはいいだろ。ああ、それと……そうだな。モニクだったか。お前のところの交渉役の女も連れて来た方がいい。色々と交渉することが必要になるかもしれないからな』
ロッソは何だかんだと、こうして面倒見がいいんだよな。
だからこそ、他のバルチャーに慕われたりもしてるんだろうが。
そうして、俺はモニクと共にジャミルというバルチャーの陸上戦艦フリーデンへと向かうのだった。
「モニク、問題ないか?」
「ええ、このコックピットでも、アクセル以外に私が乗るだけなら問題ないわ。……それにしても、今更の話だけど、このベルフェゴールはフラッシュシステムというのがあるんでしょう? サイコミュに近い感じの。それなのに、私が乗ってもいいの?」
「それはモニクがいるのがフラッシュシステムに影響を与えるんじゃないかって事か? それなら大丈夫だと思うぞ。そもそもの話、もしフラッシュシステムに悪影響を与えるのなら、こうして動かすのも出来なくなっているだろうし」
それ以前に、俺が乗っている時点でフラッシュシステムは上手い具合に動いていないのは間違いない。
そのせいで、MSの性能を万全の状態で発揮出来ていないのだから。
……ただ、レモン曰く俺が操縦する事によって中途半端にフラッシュシステムが動いているので、俺の念動力や魔力によってフラッシュシステムに影響を与えて、いつか本来の性能で動かせるようになるのではないかという事らしいが。
「そう? ならいいんだけど。……あ、ほらアクセル。あれよね」
そう告げるモニクの言葉に、視線を向ける。
するとベルフェゴールの映像モニタには、1隻の陸上戦艦が見えてきた。
あれは……確か、アルプス級の陸上戦艦だったか?
どうやらあれがフリーデンらしい。
そうしてベルフェゴールを操縦してフリーデンに向かっていたのだが……
「おい、何かフリーデンの銃口がこっちに向いてないか?」
俺の気のせいでなければ、フリーデンの前方にある銃口がこちらに向けられている。
それは明らかにこちらに攻撃をするように思えたのだが……しかし、その銃口は再びベルフェゴールから外される。
何だ? 結局攻撃はされなかったが、銃口を向けられたのは間違いない。
バルチャーやフリーのMS乗りとして、銃口を向けてきたという事は反撃をされても文句は言えない。
それだけの事を、フリーデンは行ったのだ。
当然ながら、モニクも今のフリーデンの動きには気が付いていたのだろう。
その強気な美貌の眉を顰め、不愉快そうにしている。
「今の行動、どう思う? まさか、罠って事はないと思うが」
ダイラスの事があるので、ロッソについてももしかしたら……と一瞬思った。
しかし、ロッソがそういう真似をするとは思えない。
そもそも俺を罠に掛ける気なら、銃口を向けつつも攻撃をしなかったというのは疑問だ。
つまり、これはフリーデンにいる誰かが行った事なのだろう。
「罠じゃないにしても、フリーデンと交渉する上で、大きな武器を手に入れたのは間違いないわね」
そう言うモニクの表情に、銃口を向けられたにも関わらずフリーデンの連中がどういう目に遭うのかと哀れに思うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750