影から姿を現したテンザン級は、サン・アンジェロ市からあまり離れていない場所であるのを確認すると、すぐにサン・アンジェロ市に向かう。
「それにしても……大丈夫?」
マリューの気遣うような言葉に、そんなに問題はないと手を横に振る。
マリューが心配してるのは、俺の魔力だ。
「テンザン級は空間倉庫に収納して、乗ってる人達だけを影のゲートで転移するんだとばかり思ってたけど……まぁ、テンザン級諸共転移した方が便利なのは間違いないけどね」
操舵士ながら、各種データをチェックしてテンザン級に異常がないかどうかを確認しながらミナトがそう言ってくる。
そう。俺は結構な魔力を消費しつつも、テンザン級ごと影のゲートで転移したのだ。
その理由としては、やはり一番面倒が少ない方法を欲したというのが大きい。
もしテンザン級に乗っていた面々――コバッタはともかく、量産型Wも含む――を全員下ろしてからテンザン級を空間倉庫に収納して転移した場合、テンザン級を空間倉庫から出して、それに全員が乗り込むという点で時間が掛かる。
テンザン級は連邦軍が開発した陸上戦艦の中でも最大級だ。
それだけに、自分の持ち場に移動するだけでも、相応に時間が掛かってしまう。
そうならないようにする為には、こうしてテンザン級に乗ったまま影のゲートで転移するというのが最善の選択だったのは間違いない。
まぁ、そういう真似が出来るのは、俺の魔力量があってこそだが。
とはいえ、さすがに疲労感がある。
これがもっと別の世界なら、ここまで魔力を消耗する事はなかったのだが。
何しろこのX世界は15年前にコロニーが大量に落とされ、かなりの自然環境が破壊されている。
そして俺が使う魔法は、ネギま世界で習得した精霊魔法だ。
……まぁ、俺自身が混沌精霊といった存在になっているので、そういう意味では今も俺が使っているのは精霊魔法でいいのか? と思わないでもないが。
ともあれ、精霊魔法というのは自然環境が豊かな場所なら、非常に使いやすい。
だが逆に、X世界のように自然環境が破壊されている場所では……魔法は使えない訳ではないが、普通に魔法を使うよりも大きな魔力を必要とする。
そんな中で俺はテンザン級を転移させるといった真似をしたのだ。
当然ながら、そうなると俺が持つ魔力も大量に消費される。
俺は自然と魔力を回復するので、そこまで時間を掛けなくても魔力は回復するだろうが。
「さすがにちょっと疲れたから、俺は部屋に戻って休むよ。マリューとモニクがいれば、交渉をするのそんなに問題じゃないだろ?」
「でも、結局このサン・アンジェロ市で顔が知られているのはアクセルなのよ? 交渉する時は、やっぱりアクセルがいた方が色々とやりやすいと思うけど」
「もし何か問題があったら呼んでくれ。そうしたらすぐに行く」
そう言い、俺はブリッジから出て……
「あたしが部屋まで送っていくよ。アクセルも疲れたんだろうし、途中で倒れたりしたら困るしね」
「あ、ちょっとシーマ。私が送っていくつもりだったのに!」
シーマの言葉にクスコが不満そうに言う。
モニクはマリューと一緒に交渉を任されたという事で、特に口を出してくるつもりはないらしい。
クリスは1歩出遅れたといったところか。
この4人の気持ちは分かっているので、そんな行動に対しては特に何も言わない事にする。
この状況でもし俺が何かを言ったら、それはそれで問題になったりしそうだし。
「ふふん、こういうのは早い者勝ちさね。出遅れた以上はあたしに譲るんだね」
その言葉に悔しそうな様子を見せるクスコだったが、結果として特にこれ以上は何も言う様子はなく素直に諦めたのだった。
「送ってくれるのは嬉しいが、別に魔力を消耗したとはいえ、限界まで魔力を使った訳じゃないんだけどな」
テンザン級の通路を歩きながら、シーマにそう声を掛ける。
実際、大量の魔力を消耗したのは間違いないが、足取りがふらつくといったような事もなく、今もこうして普通に歩けている。
時間が経過すれば、自動的に魔力……ステータスのSPも回復していくし。
「そうだろうね。けど、折角の機会なんだ。それを逃す訳にはいかないだろ?」
ここで何の機会なのかといったような事は、聞かない方がいいんだろうな。
いや、聞けば聞いたで素直に教えてくれるとは思うけど。
だが、それでも今の状況は他人から見た場合、幸福だと思えるのだろう。
そうして数分の間、特に何を喋るでもなく通路を進み……
「動き出したみたいだね」
テンザン級が動き始めたのを感じたシーマが、そんな風に言ってくる。
各種チェックも終わり、サン・アンジェロ市に向かって進み始めたのだろう。
「どうやらそうらしいな。……後は、サン・アンジェロ市で情報を得られればいいんだが」
シャギアがフリーデンにちょっかいを出すのに俺達が邪魔で、足止めとしてバルチャーを派遣した。
いやまぁ、邪魔という以外にも俺個人に対する恨みを持っていてもおかしくはない。
何しろ、シャギアはヴァサーゴを俺に奪われたのだから。
ヴァサーゴはベルフェゴールの後継機で、シャギアが所属している組織が開発したと思われる機体だ。
それも、こちらはあくまでも予想でしかないが、ヴァサーゴとアシュタロンの2機は15年前の戦争中に開発された機体ではなく、戦後にシャギア達の組織が開発した機体だと思われる。
戦後に開発されたガンダムタイプのMS。
それも性能的には非常に高性能だ。
そう考えると、ヴァサーゴやアシュタロンがどれだけ貴重なのかが分かるだろう。
組織の性格によっては、MSを奪われたシャギアが処刑されてもおかしくはない。
だが、バルチャーを相手に俺達を襲うように依頼しているのを見れば、殺されるといったような事はなかったらしい。
とはいえ、それでも組織での立場は低くなっているだろう。
そんなシャギアにとって、俺という存在は殺してやりたい程に憎いと思ってもおかしくはない。
そういう意味で、バルチャーが襲ってきた一件は俺に対する個人的な恨みという点もあるのだろう。
「アクセルがいるんだから、何らかの情報は入手出来ると思うけどね」
「だといいんだが。情報屋とかも何らかの情報を得ていれば嬉しいとは思うし」
情報屋とはそれなりに友好的な関係を築いているとは思う。
しかし、それはあくまでも俺がそのように思っているだけで、情報屋の方でもそんな風に思っているのかどうかは分からなかった。
ただ、情報を得る時に報酬をケチったりはしていないから、情報屋にとって俺が優良な顧客であるのは間違いない。
……中には、金払いがいいという話を聞いて、嘘の情報を俺に売ろうとした奴もいたが。
その情報屋もそれが嘘の情報だと知らなかったのなら、まだ許せる。
しかし、その情報屋は最初からその情報が嘘……というかデタラメだというのを知っていて、それで俺に情報を売ろうとしてきたのだ。
当然だがそのような相手を許す訳にはいかず、痛い目に遭わせた。
殺さなかったのは、せめてもの温情だろう。
そういう風に会話をしながら通路を進み、やがて俺の部屋に到着する。
「ほら、到着したよ。アクセルは魔力を回復する為に、ゆっくりと休まないといけないんだろう? あたしがしっかりと世話をしてやるから」
「いや、別に寝てれば魔力は回復するんだし、そこまで気にするような事はないんだが」
「女に恥を掻かせるんじゃないよ」
シーマにそう言われると、俺も断れなくなる。
姐御と呼ばれる事も多い強気な性格をしているシーマが、頬を薄らと赤くして照れ臭そうにそんな事を言ってるのだ。
そんなシーマの様子に、心が動かされないかと言われれば……その答えは否だ。
「そうだな。じゃあ……その、任せるよ」
そう言い、俺はシーマと共に部屋の中に入る。
とはいえ、俺の部屋は広い事は広いのだが、その広さの半分以上がベッドで塞がっているのだ。
かといって、まさかシーマをベッドに座らせる訳にもいかず、部屋にあるソファで休んで貰う。
シーマはベッドで休んでもいいといったような表情を浮かべていたが。
「ほら、まずアクセルは横になりな。あたしが見ているから、安心して眠るといいよ」
「何度も言ってるように、別に俺はそこまで疲れている訳じゃないんだ。少しゆっくりしていれば、問題はないんだが」
「そう言われてもね。あたしはアクセルの世話をする為にここにいるんだ。なら、世話をするのは当然だろう?」
その言葉に、何と反応していいのか迷う。
だが、結局シーマの言葉に押し負けた俺はシーマがソファに座らず、ベッドに上がってきて隣で横になるのを見る事になった。
シーマにどう反応すればいいのか少し迷ったが、そのシーマは俺の隣で横になると、頭を撫でてくる。
そんな気持ちよさを感じながら……俺は自然と眠ってしまうのだった。
「ん……んん……?」
柔らかい何かが顔に押し付けられているのを感じ、目が覚める。
すると目の前に広がっているのは……何だ、これ?
そう思いながら顔の前から寄せると……
「ん……」
色っぽいというか、艶っぽい声が聞こえてくる。
同時に、手に感じる柔らかな感触。
毎晩のようにマリューやミナトのそれに触れている身としては、それが何なのかはすぐに理解出来た。
けど、服を着ている状態なのは……何でだ?
そう思って俺の顔に触れていた双丘の持ち主に視線を向けると、そこにいたのは眠っているシーマ。
えーっと……あれ?
一体何故このような事に?
そう考えつつ、上半身を起こす。
俺もシーマも普通に服を着ているのを確認する。
それはつまり、最後の一線は越えていないという事を意味していた。
そして同時に、シーマと一緒に寝たのを思い出す。
「ああ、つまりそういう事か」
現在の状況を理解し、安堵する。
とはいえ、この状況を誰かに……特にクスコ、モニク、クリスの3人に見られたらちょっと不味い事になりそうだなと思っていると……コンコン、と。扉がノックされる音が部屋の中に響く。
噂をすればなんとやら。
この部屋にはブリッジに繋がっている通信機もあるのだから、直接部屋を訪ねるのではなく、その通信機を使ってくれればよかったものを。
コンコン、と再びノックの音が周囲に響く。
このまま相手を持たせる訳にはいかないし……そう、それに俺は別に決して悪い事はしていないのだ。
実際にシーマと一緒に昼寝をしただけなのだから。
あ、そう言えば魔力が全開に近い状態にまで回復してるなと、そんな事を思いながらベッドから降りて扉に向かう。
コンコン、と。三度ノックされたところで、扉を開ける。
「あら、アクセル? てっきりシーマが出て来ると思ってたんだけど。ちょっと驚いたわね」
扉を開けた先にいて、そう言ったのはクリス。
シーマが俺の世話をするという事で一緒に行動していたのだから、そう思ってもおかしくはないだろう。
「シーマはちょっと眠ってしまっていてな」
「あら、そう? なら起こさないと。そろそろサン・アンジェロ市に到着するわよ」
その言葉に、何故クリスがやって来たのかに納得する。
ただし、ベッドで眠っているシーマをどうするべきかという風にも思えたが。
今のシーマの状態を見せるのは、少し不味いと思う。
後ろめたい事はしていないが、それでもベッドでシーマが眠っているというのは、クリスにとって面白くないだろう。
勿論、シーマは服を着たまま眠っていたのだから、見ればそういう行為をした訳ではないというのは理解出来るだろうが、それとこれとは話が別といったところか。
そんな時、救いの声……あるいは破滅の声が聞こえてくる。
「うるさいねぇ。ゆっくり眠っていられやしない。一体何だい?」
そう言いながら、シーマがベッドから降りてこっちにやって来たのだ。
寝ているところを起こされたのが面白くなかったのか、不機嫌そうな様子のシーマ。
しかし、誰が自分達を起こしに来たのかを知ると、何かを思いついたかのように悪戯っぽい笑みを浮かべる。
あ、これ不味いんじゃ? やっぱり救いじゃなくて破滅か。
そんな風に思った瞬間、シーマが口を開く。
「アクセルのベッドで、アクセルの体温を感じながら眠るのは、幸せ……いや、女の幸せだね。出来ればもっとゆっくりと眠りたかったのに」
「……アクセル、これは一体どういう事かしら?」
シーマの言葉を聞いたクリスは、ヒクリと頬を動かしてそう聞いてくる。
シーマは一体何を考えて今のような事を口にしたんだ?
ともあれ、クリスの誤解を解く必要があるのは間違いない。
このままだと厄介な騒動になりかねないし。
「別に特に何もなかったぞ」
「その割には、シーマの肌が妙に艶々してるように見えるのだけど?」
「ふふっ、愛する男と一緒に眠れば、こうなるのも当然さね」
艶然と笑みを浮かべるシーマと、そんなシーマを不満そうな視線で見るクリス。
どうするべきかと考え……テンザン級の動きが停まったことから、サン・アンジェロ市についたと判断して俺はその場を離れるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750