転生とらぶる   作:青竹(移住)

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番外編129話 アクセルの恋人達

 時は戻り、アクセルがフリーデンの面々とバスに乗って移動していた頃……シーマ、モニク、クスコ、クリスの4人はアクセルとは別行動をしていた。

 向かったのは、アクセルの家。

 それを案内したのは、マリューとミナト。

 シーマ達にしてみれば、正直なところまさかこのような状況でアクセルの家に行く事になるとは思ってもいなかった。

 愛する男の家に行けるという行為は非常に嬉しいことだったし、酸いも甘いも知っているシーマですら、アクセルの家に行けるという行為に喜びを見出していた。

 しかし、当然だがその心の中にあるのは喜びだけではない。

 寧ろ、それ以上にあるのは緊張だった。

 何しろこれから自分達が会うのは、アクセルの恋人達。

 勿論、今までの活動で何人ものアクセルの恋人達に会った事はある。

 ルナ・ジオンを建国する際にシャドウミラーからは大きな協力をして貰い、その際にアクセルの恋人達がUC世界に来るのも珍しくはなかったのだから。

 しかし、その時と今とでは自分の立場が違う。

 

「さて、準備はいい? レモン達は家の中で待ってるわ」

 

 確認を求めるようなマリューの言葉に、シーマは頷く。

 それはシーマだけではない。モニク、クスコ、クリスの3人も同様だ。

 ……純粋な緊張という意味では、シーマ以外の3人の方が大きいだろう。

 何人ものアクセルの恋人達と会っているシーマと違い、他の3人がシャドウミラーと関わったのはルナ・ジオン建国後だ。

 その分だけシャドウミラーと関わるような事はなく、どうしてもアクセルの恋人達との関わりはシーマよりも少なくなってしまうのだ。

 

(そういう意味では、マリューとミナトがあたし達に協力的なのは……嬉しいことなんだろうね)

 

 マリューとミナトもアクセルの恋人達だ。

 だが、そんな2人はシーマ達に協力的……あるいは好意的ですらあった。

 普通なら、アクセルという男を愛した者達の集まりということで、余計なライバルは少ない方がいいと、そんな風に思ってもおかしくはない筈なのに。

 ……実は、夜の行為における戦力不足がマリューやミナトが好意的な理由の1つだったりもするのだが、生憎とシーマ達にその辺の事情は分からない。

 それでもシーマ達が……正確には最初にモニクがアクセルに向かって告白したのは、ミナトの言動があってこそだ。

 モニク以外の3人は、その流れに乗ったにすぎないのが実情だったりする。

 とはいえ、その流れに乗らなければアクセルに告白するといった真似はまず出来なかっただろうというのも、理解していた。

 

「準備は万端。さて……行こうか」

 

 シーマの言葉に他の3人もそれぞれ頷き、そしてマリューが家の扉を開く。

 アクセルの家そのものは、そこまで変わった感じではない。

 シャドウミラーを率いているアクセルの家だし、10人以上恋人達や養子のルリやラピスと一緒に暮らしているので、普通の家よりも広いのは間違いないが、それでも豪邸という表現は合わない。

 恐らくこの家の中で一番変わっているのは、アクセルや恋人達が夜の営みを行う寝室だが、それは家に入っただけで分かる筈もない。

 

「これ……普通ね。てっきりもっと何かこう、あるのかと思ってたけど」

 

 クスコが周囲を見ながら、そう呟く。

 

「アクセルはそういうのをあまり好まないしね。勿論、どうしてもそういう風じゃないと駄目となると、それなりに順応するでしょうけど。それより、リビングに行くわよ。そこで待ってるから」

 

 そう言い、ミナトはシーマ達と共に家の中を進む。

 そしてリビング……こちらも10人以上で使うのが普通になっているので、相応の広さを持つそのリビングには……

 

「いらっしゃい」

 

 そう声を掛けてくるレモンがいた。

 勿論、リビングの中にいるのはレモンだけではない。

 コーネリア、あやか、千鶴、円、美砂、シェリル、凛、綾子、エリナ、ゆかり、美鶴といった恋人達もいる。

 ゆかりと美鶴は、ペルソナ世界に住んでいるので、本来ならこの時間にここにいるのはおかしい。

 もっともそれを言うのなら、本来なら実働班や政治班で働いている者達もここに揃っているのだが。

 このような状況を作ったのは、当然だがマリューとミナトの2人だ。

 アクセルに自分の想いを告白した、シーマ、モニク、クスコ、クリス。

 そんな4人をホワイトスターに連れていくという風に連絡をした結果、こうして恋人達全員が集まったのだ。

 ……実際にはマーベルやシーラといった恋人達もいるのだが、この世界にいない以上はここにいる事は出来なかった。

 

「これは……また……」

 

 そう呟いたのは、モニク。

 リビングに揃っていたアクセルの恋人達は、揃いも揃って美女という言葉が相応しい美しさを持っていた。

 それも外見だけの美女という訳ではなく、内面からも輝いている……そういう意味で、本物の美女と呼ぶべき女達。

 正直なところ、モニクも自分の外見には相応の自信を持っていた。

 そのきつい性格ながらも非常に整った顔立ちや男好きのする身体によって、何人もの男達に告白されてきたのだ。

 その全てを断ってきたものの、それでもそのような事から自分はそれなり以上にモテるというのは理解していた。

 しかし……今のこの状況で、自分がモテるとは、とてもではないが思えない。

 

「座ってちょうだい。貴方達も色々と話を聞きたいでしょう?」

 

 レモンの勧めによって、シーマ達はそれぞれ空いている椅子に座る。

 

「さて、もう知ってるとは思うけど一応説明しておきましょうか。ここにいるのが、アクセルの恋人達よ」

「そうだろうね。アクセルから……それにマリューやミナトからも話を聞いてるから、大体理解はしてるよ」

「それは何より。そして……シーマ達がアクセルに告白したということは、この中に入ってくるつもりになったという認識でいいのかしら?」

 

 確認の意味を込めて尋ねてくるレモンの言葉に、シーマ達はそれぞれ頷く。

 アクセルを愛した事、そして告白した事は、シーマ達にとって喜ぶべきことではあっても、否定的な意味はないのだから。

 

「そうなるね。ただ……一応マリュー達には言ってあるけど、もしアクセルがあたし達を受け入れて本当の意味で付き合うようになったとしても、マリューやミナト達みたいにホワイトスターで暮らす事は出来ないと思う」

「それは別にいいわよ」

「……そうなのかい?」

 

 シーマにしてみれば、それが理由で何か言われるかもしれないと思っていたのだが、レモンの口から出た言葉は予想外な事にそれを受け入れるというものだった。

 あっさりと出て来たその言葉に驚くシーマだったが、そんなシーマに続けて声を掛けたのは、美鶴。

 

「私と彼女……ゆかりもアクセルの恋人ではあるが、ペルソナ世界においてやるべき事があるので、ホワイトスターで暮らしてはいない」

「私は高校を卒業して大学に通うようになったら、ホワイトスターに引っ越してこようと思ってるんだけどね。ただ、住所の件とかを考えると、ちょっと難しいところもあるけど」

 

 美鶴に続いてゆかりがそう言う。

 ゆかりとしては、ホワイトスターから大学に通うといった真似をしたいところなのだが、大学に届ける住所や、郵便物の関係もある。

 それ以外にも、ペルソナ世界で行動する上では、住所が必須となるのだ。

 勿論、桐条グループの力や、シャドウミラーの財力を使えばどこかのマンション……あるいは俗に億ションと呼ばれるような場所であっても部屋を借りる事は難しくないだろうし、場合によっては購入する事も出来る。

 ゆかりはまだ10代ではあるが、何気にかなりの財産を持っているのだから。

 これはアクセルも関わった影時間の騒動における、桐条グループからの報酬だ。

 元々影時間の原因となったのは美鶴の祖父であり、つまりあの一件は桐条グループの尻拭いという形になる。

 その為、桐条グループから影時間に関わった者達には相応の報酬が出ていた。

 ゆかり以外のペルソナ使い達にもそれは同様だった。

 しかし、資金的に問題がないからとはいえ、ただのダミーにそこまで金を使うのはどうかと思うのは、ゆかりのしっかりとしたところだろう。

 

「あら、そうなの? なら、アクセルと付き合う事になっても、ルナ・ジオンを抜けなければならない訳じゃないのね」

「そうなるわ。勿論、そういう状況でもこの家に泊まりに来るのは、そんなにおかしな事じゃないけどね」

 

 笑みを浮かべて言うゆかり。

 実際、ゆかりも美鶴も、かなり頻繁にこの家に泊まりに来ている。

 恋人のアクセルと一緒の時間をすごしたいというのは、女として当然の事だろう。

 ……それ以外にも、夜の行為に心惹かれるものがあるのも事実だったが。

 

「それは……いいわね」

 

 ゆかりの言葉に、クリスは安堵した様子で告げる。

 クリスはルナ・ジオンにおいてそこまで重要な地位にいる訳ではない。

 それこそここにいる4人の中では、影響力という点では一番低いだろう。

 セイラとはまた別の意味でルナ・ジオンの象徴である、シーマ。

 政治家、もしくは役人として活躍しているモニク。

 女王であるセイラと同じくニュータイプのクスコ。

 そんな3人に比べると、クリスはアルテミスで新型機の開発やテストパイロットをやっている程度だ。

 ……それはあくまでも他の3人が非常に重要な地位にいるだけで、クリスもまたアルテミスにおいては非常に重要な存在と認識されているのだが。

 MSの開発にも高い能力を発揮し、テストパイロットとしても十分な実力を持つというのは、一般的に見て十分高い能力なのは間違いない。

 

「ただ……この家に泊まりに来るようなことになった場合、翌日は間違いなく魔法球で身体を休める必要があるわよ」

 

 シェリルがゆかりと美鶴の2人を見て、意味ありげに笑う。

 シェリルが何を言いたいのか理解したのだろう。ゆかりと美鶴の2人は薄らと頬を赤く染める。

 そしてシーマ達4人もまた、そんなやり取りを見ていて何を意味するのかを理解したらしく、頬を赤くする。

 ただし、シーマ達はゆかりや美鶴と違って薄らと頬を赤くするのではなく、リンゴのように真っ赤に染まっていた。

 この辺り、現在のアクセルの恋人とまだ仮の恋人でしかない者達との違いを表していた。

 

「初々しいな」

 

 笑みを浮かべつつ、コーネリアが言う。

 コーネリアも、アクセルに抱かれるまでは自分が女であるというのは分かっていたが、そうであるという実感そのものはあまりなかった。

 しかし、今は違う。

 そんなコーネリアから見て、シーマ達は言葉にしたように非常に初々しい。

 

「アクセルの恋人になるのを希望する以上、これは言っておくべきだろう。夜のアクセルは……凄いぞ? それこそ、私達全員で挑んでもこっちが先に音を上げるくらいだからな」

「それは……」

 

 女であってもゾクリとする艶っぽさと共に告げるコーネリア。

 そんなコーネリアの顔に思わず目を奪われるシーマ達。

 新たなアクセルの恋人候補4人の中で、男性経験があるのはシーマとクスコの2人だけ。

 しかもその2人の中でもクスコは連邦軍の軍人によって無理矢理に抱かれたのだ。

 そういう意味ではクスコにとって男に抱かれるというのは、正直なところ嫌悪感しかない。……いや、なかったというのが正しいか。

 不思議と最初からアクセルには嫌悪感を抱かなかった。

 その上で、今のコーネリアの様子を見れば……もしかして、と、そう思ってしまうのだ。

 そんなクスコとは違い、シーマは一応以前は恋人がいた経験があるし、その男に抱かれもした。

 しかし、その男は1年戦争のゴタゴタによって別れている。

 そういう意味で男性経験という意味では2人はあったのだが……そんな2人であっても、コーネリアの様子を見ればアクセルに抱かれるのがどれだけ幸福なのかと想像してしまう。

 そんな2人とは違って男性経験のないモニクとクリスの2人は、そのような経験がないからこそ、コーネリアの様子を見て自分が抱かれた時の事を想像してしまう。

 

「その……アクセルって、そんなに……凄いんですか?」

 

 恐る恐るといった様子でクリスが尋ねる。

 その頬は先程よりも更に赤くなっていた。

 クリスもまた、その才色兼備振りから男に言い寄られることは珍しくなかった。

 男とデートをしたこともある。

 だが……それ以上となると、ない。

 それだけに、尋ねたのは恐る恐るだったが……

 

「凄いという言葉じゃ足りないわね」

 

 しみじみと千鶴が言う。

 しっとりしたその様子は、人妻と認識してもおかしくはないくらいの艶っぽさがあった。

 ……今となっては、実質的に人妻のようなものなのだが。

 

「正直なところ、あたし達がここまで歓迎されるとは思わなかったよ」

 

 少し話を変えたいと思ったのだろう。シーマはそんな風に告げる。

 話題を変えたいと思ったのもあったが、ある意味ではそれが本題でもあった。

 普通に考えれば、アクセルを好きな者達が集まっている場所に新しい女が……それも1人ならともかく、4人が一緒に増えるのだ。

 それを好まないと思う者がいてもおかしくはない。

 そう思っての質問だったのだが……

 

「アクセルの性格を思えば、納得出来る事なのよ。それに……不思議な事に、アクセルが好きになる人は、そういう問題を起こすような性格じゃないから安心してるというのもあるし、何よりもそれがアクセルらしいでしょう?」

 

 そんなレモンの言葉に、不思議とシーマ達は納得してしまうのだった。


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