転生とらぶる   作:青竹(移住)

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3261話

 狛治と共に交流区画にやって来た俺が見たのは、倒れているロアビィとその側にいて顔を赤くする明日菜の姿。 

 その光景を見れば、何故このようになってしまったのかすぐに分かってしまう。

 だからこそ、何なのよこの人という明日菜の言葉に口を開く。

 

「その男はロアビィだな。X世界……俺達が現在行動している世界の人間だ」

「それが、何でホワイトスターにいるのよ」

「俺達がどういう存在なのかを理解させるには、こうして見せてしまった方が手っ取り早いだろ。それでロアビィを含めたX世界の者達を連れてきた訳だ」

 

 そう言うと、明日菜は黙り込む。

 反論したいものの、今はそのような真似が出来ないと理解はしているらしい。

 とはいえ、今の状況に納得している様子はないが。

 

「明日菜、大丈夫?」

 

 今までは黙って周囲の様子を見ていたステラだったが、取りあえず事態は落ち着いたと判断したのだろう。

 心配そうに明日菜に尋ねる。

 

「え、ええ。大丈夫、大丈夫よ。……ただ、ちょっと驚いただけで。それよりも、いい? ステラもこういう奴に声を掛けられたからって、ついていっては駄目よ?」

「うん、ステラ分かった」

 

 明日菜の言葉に頷くステラ。

 実際、ステラを心配する明日菜の気持ちも分からないではない。

 ステラは顔立ちも整っており、その身体もかなり女らしい。

 性格が天然気味というか、電波系というか……とにかくそんな感じなのは間違いないが、そういうのが好みだという者もいるだろう。

 ステラのこの性格は、素のものなのか、SEED世界でブルーコスモスとかに妙な薬とかを使われたからなのか。

 その辺は分からないが、多分天然のものなんだろうと思う。

 薬の関係はレモンの治療によって完全に抜かれた筈なのだから。

 

「アクセル、そちらの男……ロアビィと言ったか? その男は起こさなくてもいいのか?」

 

 狛治のその言葉に、そう言えばと改めてロアビィを見る。

 具体的に明日菜にどんな迫り方をしたのかは、俺にも分からない。

 しかし明日菜にとって、ロアビィの迫り方は決して好ましいものではなかったのだろう。

 とはいえ、俺が知ってる限りロアビィも……そう、例えば強引に言い寄るといったような事はする性格ではない。

 だとすれば、生理的に合わなかったとかだろうか。

 

「狛治……」

 

 俺に声を掛けた狛治を見て、明日菜が少し戸惑う。

 戸惑うというのに、少しだけ驚く。

 俺が知ってる限りだと、以前狛治と明日菜が会った時、明日菜は狛治を拒絶した。

 狛治の由来とか、鬼の時に今までやって来たことを思えば、そんな態度になってもおかしくはないと思うが。

 しかし、今の明日菜は狛治に対して苦手意識はまだあるものの、以前のように嫌悪感の類はない。

 多分、俺がX世界で活動している間に何かあったんだろう。

 狛治は自分の名前を呼んだ明日菜に軽く頭を下げると、改めて俺を見る。

 

「アクセル、どうする?」

「そうだな。目覚めさせてやってくれ」

「分かった」

 

 俺の指示に従い、狛治は気絶しているロアビィに近付くと……背中を軽く押す。

 

「をびゃっ!?」

 

 瞬間、ロアビィの口から妙な声が漏れる。

 狛治が何か特別な事をやったようには見えなかったものの、何らかの手段で気付けをしたのだろう。

 ……それが具体的にどのような手段だったのかは、生憎と俺にも分からなかったが。

 格闘技を学んできた狛治だけに、その流派独自の気付けとかがあってもおかしくはない。

 ただし、その気付けは非常に強力だった反面、あのような悲鳴……奇声か? とにかくそんな声を上げさせるようなものだったみたいだが。

 

「ロアビィ、起きたか」

「へ? ……アクセル? 俺は一体……って、うおっ!」

 

 ロアビィは俺の存在に気が付いて周囲を見回すと、次の瞬間に狛治の顔を見て驚きの表情を浮かべる。

 額から角が生えて、背中には竜の翼を持つ狛治を間近で見れば驚くのも当然だろうが。

 

「取りあえず無事なようで何よりだ。……お前が明日菜にどんな風に迫ったのか分からないが、もし明日菜が本気なら、気絶程度ではすまなかったぞ?」

「え? ……またまた。彼女が美人なのは分かるけど、だからってそんな事は……」

 

 ロアビィは俺の言葉が冗談だと思ったのだろう。

 笑い飛ばそうとするも、それに首を横に振る。

 

「真面目な話、明日菜はかなりの強さを持つ」

 

 これは冗談でも何でもなく、事実だ。

 明日菜に出来るかどうかは別として、もしその気になれば明日菜の一撃は容易に人を肉塊にするだけの力を持つ

 明日菜の使う咸卦法というのは、それだけ圧倒的な効果を持つ技術なのだ。

 何しろこの咸卦法。肉体強化、物理・魔法防御、加速、鼓舞、耐熱、耐寒、耐毒その他諸々といったように、圧倒的なまでの性能を誇る技術なのだから。

 その代わり燃費が悪いという欠点を持つが、言ってみれば咸卦法の欠点はそれだけだ。

 ……いや、正確には習得する難易度という点がかなり高いのを考えると、最大の欠点はそっちになるのか?

 

「……え? マジで?」

 

 俺の様子から、冗談ではないというのを理解したのだろう。

 ロアビィは驚きに固まる。

 

「ちょっと、アクセル。あんまり人を化け物扱いしないでよね。……まぁ、言ってる事は間違ってないけど」

 

 不満そうにしながらも、素直に俺の言葉を認める明日菜。

 明日菜にしてみれば、今の状況では色々と思うところがあるのだろう。

 

「えっと……じゃあ、俺はこの辺で失礼するよ。またね」

 

 軽く手を振り、その場から立ち去るロアビィ。

 

「明日菜、あのままロアビィを行かせてもいいのか? 何なら、罰を与えてもいいけど」

 

 その言葉が聞こえたのだろう。ロアビィの走る速度が一瞬落ちる。

 ロアビィに限らず、フリーデンの面々にはもし何か罪を犯した場合、狛治との模擬戦をやらせると言った事を思い出したのだろう。

 そしてロアビィは、実際に狛治と接触した事によってその実力をある程度理解出来たといったところか。

 ロアビィも、あれでX世界においてはフリーのMS乗りとして相応の実力を持っている。

 ましてや、乗っているのはガンダムだ。

 それだけに、相応の修羅場を潜り抜けてきたのは間違いない。

 X世界において、ガンダムというのは力の象徴とでも呼ぶべき存在だ。

 ガロードのGXを求めて、ザコットが全力で襲ってきたのを思えば、分かりやすいだろう。

 X世界においてガンダムに乗るという事は、そのような危険が前提となるのだ。

 ウィッツもそうだが、ロアビィもまたそのような状況でガンダムに乗ってフリーのMS乗りとして活動していた。

 これでどこかのバルチャーに正式に雇われているとか、そういう事ならまだ幾らか安全かもしれないが。

 もっとも、雇っているバルチャーが欲深い奴の場合、パイロットは余計に危険が多くなるだろうけど。

 一緒の船で活動しているのだから、食事に薬を盛るなり、寝込みを襲うなりといった真似も出来るのだ。

 ロアビィやウィッツはそういうのを考えると、やはり危険の察知については理解出来てもおかしくはない。

 

「いいわよ。別にそこまでする必要はないし」

 

 そう言う明日菜だったが、本当にそう思っているのか、あるいは狛治が関係してくるのか分からないものの、そう言ってくる。

 この件はこれ以上深く突かない方がいいな。

 

「分かった。ならこの件はこれで終わりにする。……それで明日菜はここで何をしてたんだ? ステラと一緒だという事は、生活班としての仕事か?」

「え? うーん、別にそういう訳じゃなわいわ。今は休憩時間だから、ステラと一緒に見て回ってたの。その……もし何なら、アクセルも一緒に見て回らない?」

 

 そう言ってくる明日菜だったが、俺はその言葉に首を横に振る。

 

「いや、止めておく。さっきのロアビィの件もそうだが、X世界から来た連中が何か問題を起こさないか、ちょっと確認しておきたいし」

「そう。……馬鹿」

 

 最後の一言は、明日菜にしてみれば口の中で呟いただけなのだろう。

 だが混沌精霊の俺にとっては、十分に聞こえる内容だった。

 明日菜にしてみれば、折角自分が誘ったのに俺がそれに頷かないことが面白くなかったのだろう。

 ロアビィの件がなければ、俺も明日菜の誘いに乗ったかもしれないんだがな。

 

「じゃあ、俺と狛治はそろそろ行く。明日菜とステラも仕事を頑張れよ」

「……分かったわよ。じゃあ、アクセルも気を付けてね」

「ばいばい」

 

 明日菜とステラからそれぞれ声を掛けられ、俺と狛治はその場から立ち去るのだった。

 

 

 

 

 

「きゃー、きゃー、きゃー! 凄いわよ、サラ! ほら、牛とか馬とか羊とか山羊とか……初めて見た!」

「分かったから、少し落ち着きなさいよトニヤ」

 

 明日菜と別れて、牧場に向かった俺と狛治だったが、そんな声が聞こえてきた。

 その声が誰の声なのかは、声を聞けば……というか、その会話の内容ですぐに理解出来た。

 同時に、何故ワイバーンの類でもない普通の動物を見て歓声を上げているのかと思ったが……X世界の事を考えると納得してしまう。

 戦後世界のX世界において、動物というのはいない訳ではないが、戦前と比べれば明らかに数は減っている筈だった。

 そうなると普通に生活している上で牛とかを見る機会がなくてもおかしくはない。

 本とかで知識を仕入れていれば、牛を始めとした動物がどのような存在なのかは分かるだろうが、こうして直接見るとやはり興奮するのだろう。

 

「サラ、トニヤ。牧場に来てたのか?」

「アクセルさん……はい。アクセルさんのお勧めでしたので」

 

 サラが俺を見ると、そんな風に言ってくる。

 少し恥ずかしそうにしているのは、トニヤのはしゃぎっぷりを見られたからか。

 

「ああ、別に普通にアクセルでいい。トニヤもな」

「ですが……国の代表をそのような……」

「あら、いいじゃないのサラ。アクセル本人がこういう風に言ってるんだから」

 

 戸惑うサラだったが、トニヤの方は特に気にした様子もなくそう言ってくる。

 トニヤの性格を思えば、堅苦しいのは苦手なんだろう。

 俺とトニヤの付き合いはまだかなり短いが、それでもトニヤの性格は何となく理解出来た。

 

「ちょっとトニヤ……その、分かりました。ではアクセルと。それで、そちらはその……バスで言ってた人……人? えっと、とにかくそういう人ですよね?」

 

 サラが狛治に視線を向けつつ、そう聞いてくる。

 ロアビィは狛治を見て強さを理解したようだったが、サラやトニヤはバルチャーとはいえ、実際に前線で戦うタイプではない。

 そうである以上、狛治を見てもその強さは理解出来ず、ただ額の角と竜の翼を見て驚くだけだ。

 

「ああ。ちょっと一緒に行動していてな。それにしても、トニヤとサラが牧場にいるのはちょっと驚きだな。交流区画には服とかそういうのが売ってる店とかもあっただろう? そっちの方を見て回るんじゃないかと思ってたんだが」

「そっちも見ては来たんだけど、それよりも牧場が気になったのよ」

「……そういう事らしいわ」

 

 トニヤの言葉に、サラがそう続ける。

 最初は俺に対する言葉遣いに少し迷っていた様子のサラだったが、それでもあっさりと普段通りの口調にした辺り、俺に対して丁寧に接するのには違和感があったのだろう。

 

「それにしても、折角牧場に来たんだ。ワイバーンに乗ってみないのか? 一応、ワイバーンに乗るのがこの牧場の目玉なんだがな」

 

 ソフトクリームや、牧場の肉を使った加工品、チーズのような乳製品といったように、食べ物の目玉も多いのだが、それでもやはり一番人気はワイバーンの乗馬……乗竜体験と表現した方がいいのか? とにかくそういうのになる。

 

「勿論やるわよ! けど、サラが……」

 

 トニヤがやる気満々といった様子で叫ぶも、その視線がサラに向けられる。

 するとサラは少し困った様子で口を開く。

 

「私はいいから、トニヤだけでやって来なさいよ」

 

 なるほど。どうやらサラにとっては、ワイバーンに乗るのはちょっと怖いらしい。

 ワイバーンに乗って、その動きに関してはワイバーンに任せれば何の問題もないのだが、サラにしてみればそれでも怖いのだろう。

 とはいえ、その気持ちは分からないでもない。

 ワイバーンそのものが怖くて、乗るのが無理というのは結構聞く話なのだから。

 実際には牧場のワイバーンはしっかりと躾けられている。

 自分に乗っている相手を攻撃したり、無理に身体を揺らして空中から落とすといったような真似はしない。

 だが、それを知らない者にしてみれば、素直に信じることが出来ないのだろう。

 例えば、初めて見る虎……それも子供ではなく成獣と呼ぶに相応しい虎が、きちんと調教されていると言われたからといって、すぐに虎を撫でたり触れたりする事が出来るか。

 俺のように物理攻撃を無効化したり、あるいは狛治のように虎に攻撃されても対処出来るような者ならともかく、ただの一般人がそんな虎に触れるのは……人にもよるだろうが、大抵の者が怖がるだろう。

 ワイバーンも、ある意味で似たようなものだ。

 いや、危険度という点ではワイバーンの方が虎よりも高いのは事実。

 そう思えば、サラの態度にも納得出来るのだった。




アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1750

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