「あはははは!」
トニヤが嬉しそうに声を上げながら、ワイバーンに乗って牧場の上を飛び回る。
結局サラはワイバーンに乗らなかったものの、トニヤはワイバーンに乗る事を選んだのだ。
それでも交流区画の上を飛ばず、牧場の上だけを飛んでいるのは……もし何かがあった時、俺や狛治がすぐに助けてくれると思っているからか。
あるいは単純に、まだそこまでの度胸はないのか。
「全く……あら、美味しいわね」
ワイバーンで空を飛ぶトニヤを見ながら、サラはソフトクリームの味に驚く。
そんなサラに少し自慢げに言う。
「だろう? この牧場のソフトクリームの味はかなりのものだ。牛も乳牛としては一級品の品種を使っているし、その世話をするのも一流の技術を持つ量産型Wだしな」
牧場において、牛の世話をするというのは実は結構な技術を必要とする。
乳牛と一口で言っても、その乳牛は全てが別の個体だ。
世話の仕方も、個体に合わせて微妙に変える必要があった。
その辺りは、本来なら長年の経験が技術の蓄積が必要になるのだが、量産型Wの場合は疑似記憶や疑似経験といったものを使えるし、得た知識が技術、経験を蓄積するような事も出来るので、短時間でそれらを使いこなせるようになっていた。
その上、牧場はかなりの広さを持つので牛にはストレスの類もない。
最高の環境に最高の品種、最高の畜産技術……だけではない。
当然ながら、ソフトクリームを始めとして、牧場で売られているチーズを始めとした食品の数々も量産型Wが行っている。
それらが合わさった結果が、この極上のソフトクリームとなったのだ。
ましてや、それを食べているのはX世界のサラだ。
戦後のX世界においては、当然ながらコロニー落としの影響によって自然環境とかも激変しているので、砂糖とかの甘味も……食べる事は出来るのだろうが、それでもかなり値段が上がっているのは間違いない。
サラはバルチャーとして一ヶ所に定住している訳でもないので、余計に甘味の類の入手は難しいだろう。
……いや、色々な場所に行くからこそ、甘味を入手出来る可能性も高まるのか?
それにバルチャーという事で、稼ぎもいい。
フリーデンは王道なバルチャーだ。
盗賊をやっているようなバルチャーに比べると、どうしても稼ぎは劣るだろう。
だがそれでも、普通のバルチャーであっても一般人と比べると間違いなく稼ぎは高い。
それこそ俺の認識で言えば、バルチャーの面々は大企業の部長クラスの給料を貰っているような感じだろう。
とはいえ、金があってもそれを使う暇もそうないし、何かを買ってもフリーデンはそこまで大きな陸上戦艦ではないので部屋も小さく、置く場所がない。
「ソフトクリームが気に入ったのなら、チーズとかレトルトの食品とかも買っていったらいいんじゃないか?」
「そうね。服とかはあまり買わなかったし、そう考えるとここで何か買っていくのもいいかもしれないけど……狛治だったかしら。あの人、表情を変える事はないと思っていたのに、随分と美味しそうに食べてるわね」
サラが少し離れた場所でソフトクリームを食べている狛治を見ながら、そう告げる。
その言葉は間違っておらず、狛治は口元に笑みを浮かべつつソフトクリームを食べていた。
「まぁ、狛治にとって食事というのは特別だしな」
鬼滅世界で俺が狛治と何度も戦った時、空間倉庫の中に入っていた料理……とはいえ、それはコンビニやスーパーで買えるようなおにぎりとかだったが、そういうのを食べさせた。
本来なら鬼は人の肉以外は食えない身体になっている。
しかし、それはあくまでも鬼滅世界の食料は食べられないという事で、俺が持っていた他の世界の料理は普通に食べる事が出来た。
そして狛治は……当時は猗窩座だったが、100年ぶり以上に食べる料理の味に半ば取り憑かれた。
あるいは俺が餌付けをした的な感じでもあるが。
そんな感じで、当時の猗窩座が俺に気を許し始めたのは食事が影響していたのは間違いない。
俺の召喚獣になって鬼ではなくなった狛治だが、それでも食事の楽しみは忘れていないらしく、食事を楽しむようになった。
美食家……というのとは、ちょっと違うか。
狛治は基本的にどんな料理でも美味そうに食べるし。
勿論それはきちんと調理された料理に限っての話で、失敗した料理の類は狛治であっても美味いとは言わないだろうが。
「狛治は料理を食べるのが好きだからな」
「そうなの? ……見た目では分からないのね」
しみじみと呟くサラ。
狛治の外見を思えば、そんな風に思ってもおかしくはないだろう。
「その辺はひとそれぞれだろ? ……それより、トニヤが降りてくるまでもう少し時間があるし、売店を見てみないか? 何かサラのお気に入りになりそうなのがあったりするかもしれないぞ?」
この牧場の売店は、売店という表現が似合わないくらいに大きい。
それこそちょっとした店くらいはある。
いや、ちょっとしたというか、完全に店といった規模だろう。
「ちょっと見てみたいけど、トニヤはあのままで大丈夫かしら?」
「あの様子を見ると、心配はないだろ。ワイバーンから降りてくれば、こっちに来るだろうし。それに……落ちたりしても、量産型Wがいるしな」
何かあっても、トニヤの1人くらいなら量産型Wがどうにかしてくれるのは間違いない。
「心配なら、俺がここに残ろう」
俺とサラの話を聞いていたのか、狛治がそう言ってくる。
牧場で売ってる料理の類は、狛治にとっても興味深い筈だ。
さっきのソフトクリームを食べていたのを見れば、狛治も売店に行きたいと思ってもおかしくはないのだが。
「いいのか? お前も売店は行ってみたいだろう?」
「ああ。だが、別に売店に初めて来た訳ではない。以前も何度か来た事がある」
狛治の言葉には十分に納得出来た。
狛治にしてみれば、ホワイトスターにある料理店……超包子を始めとした店で食べるのもいいが、牧場で売ってるレトルトや缶詰といった料理も入手しておきたいと思うのは当然だろう。
……超包子は明日菜がいたりするので、狛治には寄りにくかったりするだろうし。
勿論交流区画には色々な世界の者が出店しており、食材や料理を売ってる店も多い。
それらの店で買ってもいいが、牧場で売ってる料理は普通に美味い料理が多い。
基本的にレトルトや缶詰というのは、どうしても出来たての料理には劣る。
これは当然の事なのだが、牧場で使われている技術の中には技術班が開発した技術の類もあって、それを使うと出来たての料理並み……とまではいかないが、それより多少劣る程度の味になるらしい。
具体的にどんな技術を使ってるのかは分からないが、多分その技術を他の世界に売ればかなりの金額になるのは間違いないと思う。
それはともかく、そんな料理やレトルト、缶詰は狛治にとってありがたいものだろう。
だからこそ、今まで何度も訪れた事があるらしい。
「分かった。じゃあ、こっちは任せる。サラ、行くぞ」
「え? ええ、そうね。じゃあ、そうしようかしら」
少し戸惑った様子のサラだったが、何だかんだと美味い料理や甘味の類には勝てなかったのか、素直に俺と一緒に売店に向かう。
「そう言えば、彼……狛治は私達がここで何か罪を犯した場合、それに罰を与えるのよね? 今こうしてここにいるという事は、問題ないのかしら?」
売店に向かう途中、サラがそんな風に聞いてくる。
これは……どう答えればいいんだろうな。
数秒戸惑った俺を見て、サラは何かを感じたのだろう。
疑問の視線をこっちに向けてくる。
「アクセル、もしかして何かやらかした人がいたりするのかしら?」
女の勘か、それとも実質的なフリーデンの副艦長としての勘なのかは分からないが、そう尋ねるサラ。
尋ねてはいるが、実際にはもう確信しているのは間違いないらしい。
「やらかしたのは間違いないが、同時にやらかされてしまったというのが正しいか。安心しろ、取りあえず実際に狛治が同行するといったような事にはなってないから」
「……説明して貰える?」
これは下手に誤魔化そうとしたりはしない方がいいな。
ロアビィの株が落ちるが、それは仕方がないという事にしておこう。
「正確には、やらかしたのはフリーデンのクルーじゃなくて、ロアビィだな」
その言葉に少しだけ安堵するサラ。
フリーデンの正式なクルーが何かしでかしたのではなく、あくまでも雇われているロアビィがやらかしたのがその理由だろう。
「ロアビィだとすると、その……女関係かしら?」
そして即座にロアビィが何をやらかしたのかを予想出来る辺り、サラから見てもロアビィの女好きについては思うところがあるのだろう。
とはいえ、女好きという点では俺も決してロアビィに負けていないとサラには思える以上、俺は一体どういう風に思われているのやら。
「正解。正確にはシャドウミラーに所属する女を口説こうとして……まぁ、色々とあってその女に気絶させられた」
そう言うが、実際には色々と疑問があるのは間違いないんだよな。
ロアビィとの付き合いはそこまで長くない……どころか非常に短い。
それでもロアビィが女を口説こうとする時、強引に迫るといった真似をするとは思えなかった。
明日菜の方も、美人と表現するのが相応しい顔立ちだし、身体も十分に女らしい。それでいて性格も明るく接しやすい。
つまり明日菜はそれだけモテるのだ。
実際、男に言い寄られた時も1度や2度ではないらしいし。
つまり、男のあしらいにはそれなりになれている筈なのだ。
そんな2人の中で、ロアビィがああいう結果になるというのは正直疑問だ。
「それは……うん。まぁ、そういう風な事があるかもしれないとは思っていたけど。それで、罰はどうしたの?」
「ロアビィも別にそこまで酷い事をした訳じゃないし、明日菜……ロアビィが口説こうとした女だが、その女に殴られて気絶させられたしな。それでいいだろ」
「いいの? 女に殴られてた程度で……」
サラのその言葉に、なるほどと納得する。
普通に考えれば、女の一撃程度で罪が許されてもいいのかと疑問に思うのは当然だろう。
「明日菜は外見はともかく、生身での戦闘力という点ではフリーデンのクルーが総出で掛かっても勝てないだろう力を持つぞ」
エヴァから相応の訓練を受けているシャドウミラーの面々なら、明日菜が咸卦法を使っても対処するのは難しい話ではないだろう。
しかし、それがX世界の者達となれば……それこそ銃火器を使っても咸卦法を使った明日菜に勝てるとは思えなかった。
MSを使えば……攻撃が命中すれば勝てるだろうけど、問題なのは咸卦法を使った明日菜の速度にMSで狙いを付けられるかといった事だろう。
明日菜というのは、それだけの実力の持ち主なのは間違いないのだ。
そんな明日菜に殴られたのだから、ロアビィに対する罰としては十分だろう。
というか、もし明日菜が手加減をせずロアビィを殴っていたら、気絶程度ではすまなかった筈だ。
頭部が爆散……まではいかないにしても、首の骨が折れたり、頭蓋骨が陥没したりといったようになっていてもおかしくはない。
「それは……凄いわね」
驚きつつも、半信半疑といった様子のサラ。
普通に考えれば、女が1人でフリーデンのクルー全て以上の力を持っているとは考えられない。
素直に信じろとまでは言わない。
実際に明日菜が咸卦法を使うところでも見れば、また話は別だが。
「あら、このクッキー……美味しそうね。これなら購入してもいいかしら」
話の途中でサラが見つけたのは、クッキー。
当然ながらこの売店で売っている以上はただのクッキーという訳ではない。
クッキーの間に挟まっているクリームは、この牧場の牛乳から作られたものだ。
それ以外にも、クッキーの材料も牧場で作れるものは使っている。
ちなみにサラの精神上の問題から言わないが、このクッキーを作っているのも実は量産型Wだったりする。
料理人やパティシエとしての技能も持っているのだから、それを使わない手はない。
「そう言えば、少し前からモッツァレラチーズを売りに出していた筈だけど、それはどうだ?」
「モッツァレラチーズ?」
「ああ。それも本物のモッツァレラチーズだ」
日本で売っているモッツァレラチーズというのは、基本的に牛から作られたものだ。
しかし、本当のモッツァレラチーズというのは、水牛から作られる。
牛と水牛。種類は似ているし種族的にも近いんだろうが、モッツァレラチーズを作った時の味は大きく違う。
詳しい話は分からないが、四葉から以前聞いた話によるとチーズに使う牛乳の旨み成分だったか? そんなのが水牛の方がかなり多いらしい。
勿論、普通の牛から作られるモッツァレラチーズも相応に美味いらしいが。
色々な世界では日本とかにも輸入したりしているらしいが……モッツァレラチーズというのは、基本的にナチュラルチーズ、いわゆる生のチーズだ。
当然だが水牛のモッツァレラチーズを輸入するとなると……どうしても味は落ちる。
まぁ、俺みたいに空間倉庫とか、転移魔法とか使えるのなら話は別だが。
「そんな訳で、出来たての水牛のモッツァレラチーズはそう簡単に食べることが出来ないんだ」
「アクセルの話を聞いてると、美味しそうに思えるわね。分かった、買うわ」
そうサラは言うのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750