「いやぁ、面白かったわ。……ん? あれ、サラは何を持ってるの?」
ホワイトスターにある牧場で、ワイバーンから降りてきたトニヤはサラが手に持っている諸々……クッキーやチョコレートを始めとした甘味や、本物の水牛で作られたモッツァレラチーズが入った袋を見て、不思議そうに尋ねる。
「トニヤを待ってる間、暇だったからアクセルと一緒に売店に行ってたのよ」
「へぇ……ふーん……ちょおっと意外ねぇ」
サラの言葉に意味ありげな様子で呟くトニヤ。
そんなトニヤの様子に、サラは何かピンと来たのだろう。慌てた様子で口を開く。
「ちょっと、いい? 別にそういう訳じゃないんだから……妙な勘違いしないでよ?」
「キャプテンがここにいたら、一体どういう風になってるのかしらねー……」
トニヤの言葉に、サラは不満そうな様子を見せる。
そう言えばサラはジャミルを好きだとか何とか。
何となくそんな話を聞いたような覚えがあった気がするが……この様子を見ると、どうやらただの噂という訳ではなかったらしい。
なるほど。そんなサラが俺と一緒に売店で買い物をしたというのは……見方によっては、デートをしたようにも思えるのか。
サラにしてみれば、そんな気はなかったのだろうが。
勿論、俺にもそういう気はなかった。
ただ一緒に買い物をしただけといった感じだったし。
「アクセル」
サラとトニヤのやり取り……というかじゃれ合いを見ていると、狛治が俺の方に近付いてくる。
「狛治か。この様子だと特に何の問題もなかったみたいだけど、一応聞いておくか。問題はなかったんだよな?」
「ああ、トニヤだったか。あの女、ワイバーンを乗りこなす才能があるのかもしれないな」
「……へぇ」
まさか狛治の口からそんな言葉が出て来るとは思わなかった。
狛治は自分に厳しいが、他人に対しても相応に厳しい。
そんな狛治の口から、トニヤを褒める言葉が出たのだ。
それはトニヤがただワイバーンに乗せられていたのではなく、ワイバーンをきちんと乗りこなしていたという事になるのだろう。
「ワイバーンに関してはあまり詳しくないが、魔法世界ではそういうのに乗ってる奴も多かった。そんな連中との戦いの中での経験からすると、シャドウミラーの基準で超一流とまではいかないが、一流くらいにはなってもおかしくはない」
鬼滅世界の狛治が超一流とか口にしているのを見ると、何だか……うん。まぁ、色々と思うところがあるのは間違いない。
とはいえ、今の状況を考えるとそんな風になってもおかしくはない……のか?
それだけ狛治もシャドウミラーに慣れてきたといったところだろう。
ネギま世界の魔法世界に行っていた期間が長い筈、と思わないでもないが。
「アクセル、アクセル、アクセル。サラとのデートはどうだった? サラってば、あまり積極的じゃないから……」
「ちょっ、トニヤ!」
俺と狛治の方に近付いてサラの事を聞くトニヤだが、そのサラから口を押さえられる。
サラにしてみれば、トニヤにある事ない事を喋られるのは困るのだろう。
……混沌精霊である俺の耳には、普通に聞こえていたのだが。
恐らく狛治もまた、俺と同様にサラとトニヤの会話は聞こえていただろう。
「トニヤ、お前はワイバーンに乗る才能があるらしいぞ?」
「……へ?」
サラの手から逃れて再び何かを聞こうとした様子のトニヤだったが、俺の言葉を聞いてその口から間の抜けた声が出る。
その気持ちも分からないではない。
普通に考えて、まさかいきなりそんな風に言われるとは思わなかったのだろう。
「えっと……何、それ?」
「俺とサラが買い物に行ってる間、トニヤを放っておく訳にもいかなくてな。何かあった時は狛治にお前の面倒を見て貰おうと思ってこっちに残って貰ったんだ。で、その狛治が見たところ、トニヤにはワイバーン乗り……俗に言う竜騎士とかそういうのの才能があるらしい」
戦後世界のX世界で竜騎士とか言っても分からないかもしれないが。
ファンタジー世界ではお馴染みなのだが、そのファンタジーの物語とかを楽しむ余裕がなかったのがX世界だしな。
だが、幸いな事にトニヤは竜騎士という言葉を理解出来たらしい。
「嘘……本当に私が竜騎士なんてのになれるの?」
「そうなるな。ただし、それはあくまでもそういう才能があるというだけで、今すぐに竜騎士になれるとか、そういう訳じゃないが」
「え? そうなの?」
俺の言葉を聞いた途端、がっかりした様子を見せるトニヤ。
竜騎士になろうと思えば、今すぐにでもなれると思っていたらしい。
ゲームとかでよくある職業を決めるシステムとか、そういうのがあればその場で竜騎士になるといったような真似が出来るかもしれないが。
「ああ、もし本当に竜騎士になるつもりがあるのなら、まずは身体から鍛えないと駄目だろうな。最低でも気や魔力は使えるようになった方がいい」
あるいは気の派生形である呼吸でもいいのかもしれないが。
ただ、呼吸は虚空瞬動とかそういうのがないんだよな。
気を身に着けた上で呼吸を身に着けるといったような真似をするのならいいだろうが、呼吸だけを身に着けるというのは……特に竜騎士のように空を飛ぶ必要があるのを考えるとお勧めは出来ない。
「え……じゃあ、フリーデンには?」
「本気で竜騎士になるつもりなら、戻れないな。そもそもX世界で竜騎士とか、目立つにも程がある」
ましてや、竜騎士はあくまでも生身の竜……この場合はワイバーンだが、それに乗るのだ。
そうである以上、ぶっちゃけMSの持つ武器に命中すれば一撃で致命傷となる。
ダンバイン世界のバイストン・ウェルにおいて、オーラバトラーと恐獣に乗っている奴が戦った時の事を思えば分かりやすいだろう。
いやまぁ、その辺を経験した事のないトニヤにその辺りを理解しろと言うのは難しいかもしれないが。
ああ、けど別にダンバイン世界での件じゃなくて、門世界との戦いに参加した事がある者なら、素直に俺の言葉を理解出来るかもしれないな。
そもそもの話、ワイバーンは門世界で捕らえたのだから。
そして門世界での戦いにおいて、ワイバーンに乗った竜騎士も当然戦いに参加していたものの……
「え? ちょっと、何? 何でアクセルが私を見る目が哀れみに満ちてるのよ!?」
納得出来ないといった様子で叫ぶトニヤ。
門世界で帝国との戦いに参加した者にしてみれば、竜騎士がどれだけ脆い存在なのかは明らかだ。
それこそシャドウミラーの戦力ではなく……日本の自衛隊とかでも十分対処出来るくらいなんだよな。
そう考えると、やはり竜騎士というのはロマン職と呼ぶべきかもしれないな。
ロマン職だけあって、子供達とかファンタジーを好きな者にとってはかなり人気なのは間違いないだろうけど。
「で、どうする? もしトニヤが竜騎士になりたいのなら、俺も本気で応援するけど」
門世界においては、ワイバーンは銃弾やミサイルであっさりと致命傷を受けた。
それでもシャドウミラーなら……そう、例えば魔力や気によってワイバーンを強化し、銃弾やミサイルが命中してもダメージを受けないという事になってもおかしくはない。
それが本気で出来るかどうかは、実際に試してみないと何とも言えないが。
「止めておくわ」
あっさりとトニヤはそう言う。
一切の迷いもなくそう告げるのは、正直なところ予想外だった。
「いいのか?」
「ええ。竜騎士になる為には、こっちで修行しないといけないんでしょう? そんなのは嫌だし……何より私の居場所はフリーデンだから」
「トニヤ……」
サラが嬉しそうに呟く。
トニヤが竜騎士になる為にフリーデンを降りると言ったらどうしようと思っていたんだろう。
まぁ……正直なところ、その気持ちは分かる。
フリーデンにいる女は、サラとトニヤ、そしてティファの3人だけなのだから。
あるいはもっと女がいるのかもしれないが、生憎と俺が接する機会はないので何とも言えない。
そしてサラとティファの相性は……何となく、そこまでいいとは思えない。
これは俺の予想であって、実はサラとティファの仲が良好な可能性もあるが。
それでもフリーデンには結構な人数がいるのに、女が3人から2人になるという事を考えると、やっぱり思うところがあってもおかしくはないだろう。
「トニヤがそう言うのなら別に構わないぞ。気が向いたら言ってくれ。そうすればお前を鍛える師匠を用意するから」
「師匠って……うーん、それはちょっと遠慮したいわね」
しみじみと、トニヤが言う。
どうやら師匠という存在はトニヤの趣味に合わなかったらしい。
「そうか。じゃあ、この話は終わりだ。……それでどうする? 俺は狛治と一緒に他の場所に行くけど、トニヤとサラはまだここにいるのか?」
「うーん……どうする、トニヤ」
「私はもう少しいたいわね。サラがアクセルとショッピングデートした売店で買い物をしてみたいし」
「ちょっと、トニヤ! 私とアクセルはそういうのじゃないってば!」
そんなやり取りを眺めていたものの、いつまでもこのままという訳にもいかないだろうと、俺は狛治と牧場から立ち去る事にする。
「じゃあ、俺と狛治は行くな。買い物をするのはいいが、約束の時間までにはきちんと戻って来いよ」
「分かったわ。トニヤは私が引っ張っていくから心配しないで」
「ちょっと、サラ!?」
サラの言葉が不満だったのか、トニヤが叫ぶ。
とはいえ、これに関してはトニヤよりもサラの言葉の方が正しいように思えた。
「さて、狛治、次はどこに行く?」
「それは俺が考えるよりもアクセルが考えた方がいいだろう。X世界からやって来た者達がどのような場所にいるのか、生憎と俺には分からないからな」
「なら、取りあえず博物館にでも行くか」
フリーデンの面々には牧場を勧めたが、それ以外に博物館も勧めていた。
とはいえ、博物館は生きているワイバーンがいたり、美味いソフトクリームが売っていたりする牧場と違い、あくまでも純粋に見るだけだ。
門世界のモンスターの剥製とかがあるから、ネギま世界以外の世界の出身者にしてみれば、本物のモンスターを見られるという点で何気に人気があるのは間違いなかった。
実際、結構な人数が博物館には来てるらしい。
どこの世界の話かはちょっと忘れたが、博物館に客がこなくて運営が厳しい……といったような話を聞いた事がある。
そういう点では、ホワイトスターにある博物館はかなり有益な場所なのは間違いなかった。
そうして俺と狛治は博物館にやってきたのだが……
「まさか、ジャミルがここにいるとは思わなかったな。そっちの医者……テクスだったか? 男2人で博物館とは」
そう、博物館にいたのは、ジャミルとテクスの2人。
ウィッツ辺りなら博物館にいてもおかしくはないと思ったのだが。
木彫りの熊とか好むようだったし……いや、博物館と木彫りの熊は関係ないか?
いっそ博物館にも木彫りの熊を置いたら面白そうな気がするんだが……どうだろうな。
「この博物館は十分に興味深い。異世界の存在……これを見れば信じない訳にもいかないだろう」
「うむ。ジャミルの言う通りだ。……だが、疑問もある。ゴブリンはいい。だが、このトロルというのは物理的に問題がないか?」
トロルを見ながら、テニスが呟く。
医者だけに、巨人……いや、巨鬼と呼ぶべきか? そんなトロルの存在を見て疑問に思うことがあるのだろう。
「その辺は物理的というか、魔力とかが関係してるのかもしれないな。あるいは筋肉の質がそもそも人と違うとか」
門世界はファンタジー世界だ。
魔法が普通に存在しているし、何より神ですら実在している世界である以上、その世界の生き物が地球と同じといったように考えるのは難しい。
そもそもの話、物理的に説明出来ないというのであれば混沌精霊である俺はどうなるのか。
宇宙でもパイロットスーツの類が必要なく、生身であっても普通に行動出来たり、物理攻撃は核兵器の類であっても効果がなかったりといったように。
俺の存在そのものが魔力や精霊といった存在を抜きには語れない。
「なるほど、興味深い。出来ればいつかそのような世界に行ってみたいものだ」
「行けるといいな」
X世界での原作が具体的にどんな風に始まり、どんな風に終わるのかは分からない。
いや、ティファの存在を思えば、恐らくアルタネイティブ社の一件がX世界の原作は始まったのだろう。
それが一体どういう終わりを告げるのか。
これが戦後ではなく普通の世界なら、どこかと戦争になったりといったように考えられるのだが……戦後世界である以上、大規模な戦争が起きる可能性は低い。
つまり、どういう展開になるのかが全く分からないのだ。
戦後であっても、連邦とかがまだ生き残っていれば……とも思うが、その連邦も既に消滅している。
そうなると、宇宙革命軍が生き残っていて、また地球に攻め込んでくるとか?
それをジャミルのようなバルチャー達が協力して対処する。
可能性としては十分に有り得ると思うが……どうだろうな。
そんな風に考えつつ、俺は狛治やジャミル、テクスと一緒に博物館を見て回るのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1910
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1750