俺とクスコがフォートセバーンに侵入するという事で話は決まる。
シーマはともかく、モニク、クリスからはそれなりに不満そうな様子だったが。
それに関しては、後でデートをするという事になって取りあえず落ち着いた。
そんな訳で俺とクスコが一緒にフォートセバーンに侵入する事になったのだが、今回の件は俺達だけで動いている訳ではないので、フリーデンの方に話を通す必要があり、連絡をしたのだが……
「本気か?」
『うむ。出来れば頼みたい』
ジャミルがそう言ってくる。
ジャミルが提案したのは、フォートセバーンへの侵入に自分達の方からも人を出したいというものだった。
しかし、今回の一件はそれなりに慎重に動く必要があるのは間違いない。
「危険だぞ? まさか、ティファみたいに炎獣で守らせるなんて真似をする訳にもいかないし」
フリーデンにいるティファは、俺が生み出したリスの炎獣によって守られている。
この世界の原作の中心人物の1人であり、同時にガロードやジャミルと違って運動神経の問題もある。
また、その優しい性格から敵に攻撃をするといった真似は出来ない。
……そういう面では、ガロードは普通に敵を殺せるんだよな。
人を……殺した……とか、ありきたりのショックを受けたりといったような事はない。
相手がMSに乗ってるからこそかもしれないが。
生身の人間となると、ガロードも殺すのを躊躇すると思う。
そんな風に必要だと思えば人を殺す事が出来るのは、戦後世界で生きてきた経験からだろう。
けど、そのガロードも現在カリスに負けた事で思い切り落ち込んでいるらしい。
GXは回収し終わったという話は聞いてるし、ガロードも怪我らしい怪我はなかったらしいが。
『それでもだ。アクセルにこのような事を言うのはどうかと思うが、アクセルは別の世界の人間だろう? だとすれば、この世界の常識について理解出来ていない可能性が高い』
「いや、俺は結構な時間、この世界でフリーのMS乗りとして活動してたんだが。……まぁ、いい。話は分かった。それで俺と一緒に行くのはウィッツか? ロアビィか? ガロードはまだ落ち込んでいるって聞いてるけど」
『ウィッツもロアビィも、フリーデンの護衛戦力として必要だ。いつフォートセバーンからカリスを取り返しに来るか分からんからな』
「は? いや、護衛の戦力が必要なのは分かるが……俺達の方でも戦力は出せるぞ?」
俺とクスコ以外のMSパイロットはテンザン級に残るのだ。
護衛戦力として期待出来るのは間違いない。
だが、そんな俺の言葉にジャミルは首を横に振る。
『アクセルの気持ちは嬉しいが、それでもいざという時の事を考えればこちらの戦力は用意しておきたい』
「それは分かったが……なら、誰がフォートセバーンに行くんだ?」
『サラとトニヤだ』
そんなジャミルの言葉に、俺は唖然とするのだった。
「で、本当にいいのか?」
フリーデンにやって来た俺は、目の前のサラとトニヤにそう尋ねる。
トニヤはいつもは露出度の高い格好をしているのだが、フォートセバーンという雪国にいるという事もあってか暖かそうな格好をしている。
サラもまた、いつものようなスーツ姿よりは暖かそうな格好だった。
「ええ、問題ありません。ただ、私達はあくまでもフォートセバーンの街中の様子を見てくるだけです。アクセルさんのように、敵の本拠地に忍び込んだりといった真似はしません」
「ああ、なるほど」
もし本気で俺やクスコと一緒に敵の本拠地……政庁とか軍事基地とかそういう場所に行くと言うのなら、2人を止めただろう。
サラやトニヤはバルチャーとして荒事には慣れているものの、本格的に特殊な訓練を積んだりした訳ではない。
クスコは……ルナ・ジオン軍のパイロットとして、厳しい訓練を受けているのでその辺はある程度何とかなるのだが。
「ふふ」
と、不意にクスコが笑みを漏らす。
そんなクスコの笑みが気になったのだろう。俺だけではなく、サラとトニヤもクスコに視線を向ける。
「どうした?」
「いえ、アクセルがシーマ達を置いていく理由って何だったかしらと思って」
「それは……」
クスコの言いたい事を理解し、俺はサラとトニヤを見る。
「うん。いやまぁ……まさかジャミルがこんな事を考えてるとは思わなかったし」
「どうしたの? 一体何の話?」
俺とクスコの意味ありげな会話が気になったのだろう。
興味津々といった様子で、トニヤが尋ねてくる。
「何の話かしらね? アクセルに聞いてみたら?」
面白そうな表情を浮かべはするものの、確信について言う様子はないらしい。
このまま誤魔化してもいいんだが、サラやトニヤ達がフォートセバーンでどういう風に見られるのかはしっかりと教えておいた方がいいだろう。
「男は俺が1人。そしてクスコ、サラ、トニヤ。こういう4人が一緒にいた場合、どうなると思う? しかも女3人は顔立ちが整っていて、美人が揃っている場合」
そう言うと、2人は最初何を言われたのか分からなかったように呆気に取られていたものの、俺の言葉を理解するとサラは頬を赤く染め、トニヤは照れたように笑う。
実際、サラは生真面目な性格をしているものの、顔立ちはかなり整っている。
普段着ているスーツも、スーツだからこその色気があるのは間違いない。
トニヤは明るい性格をしていて、誰とでも友好的な関係を築ける。
普段から露出の高い格好をしているので……うん。多分フリーデンの男達にとっては目に毒的な存在なのは間違いないだろう。
そんな2人と比べても決して引けを取らないどころか、美人という点では勝っているのがクスコだ。
そんな3人と一緒にいるのだから、爆発しろと思われたり嫉妬から絡まれるといった事になってもおかしくはない。
「そんな訳で……出来るだけ騒動は起こさないような感じで行くとしよう」
「もう……そんなに急に褒めるなんて」
嬉しそうな様子のトニヤとは裏腹に、少し困った様子のサラ。
トニヤはともかく、サラは自分が男にそういう視線を向けられるという自覚があまりないんだろう。
あるいは口説かれ慣れてないか。
「とにかく、いざとなったらどうとでも出来るが、出来ればそういう風にならないようにしてくれると助かる。俺達がどうしようとも、結局相手がどういう反応をするかにもよるんだけどな。とにかくいつまでもフリーデンでこうしている訳にもいかないし、早速フォートセバーンに向かうぞ」
「車で?」
「いや、違う。魔法だ」
「え? 魔法?」
まさかここで魔法という言葉が出て来るのは予想外だったのか、サラとトニヤは驚きの表情をこちらに向けてくる。
クスコはある程度こっちの事情を知ってるので、そこまで驚いた様子はないが。
「そうだ。俺が魔法を使えるのは、炎獣の件で分かってるだろ? それ以外にも、色々な魔法が使える。そして俺が使える魔法の中には転移魔法もある」
「え? それ本当!?」
トニヤは驚きの表情で叫ぶ。
その目には強い好奇心が宿っていた。
トニヤにしてみれば、転移魔法というのは非常に興味深いのだろう。
「ああ。そんな訳でそっちの準備が整ったら、すぐに転移するぞ」
「私は問題ないけど、トニヤは?」
「こっちも問題はないわ」
そんな2人に頷き、クスコを含めた3人に声を掛ける。
「なら、3人とも俺に近付いてくれ。影のゲートを使うにはそうした方がいい」
「大丈夫なのよね?」
少し不安そうな様子のサラ。
トニヤやクスコは特に気にした様子もないが、この辺は人それぞれなのだろう。
「これから影のゲートを使う。身体が沈む感覚は人によっては不快だったりするけど、その辺は我慢してくれとしか言えないな」
影に沈む感触は、それこそ人によって大きく違う。
最初から特に気にしないという者もいれば、何度繰り返しても慣れないという奴もいるといったように。
それでも我慢するのは数秒程度なのだから、そこまで気にするような事ではないが。
「よし、準備はいいな。行くぞ」
そう言い、影のゲートを展開する。
「きゃっ、ちょっ、ちょっとこれ何!?」
「落ち着け、トニヤ。これが影のゲート。この影に身体が沈めば、次の瞬間にはもうフォートセバーンにいる」
「そうは言っても……ちょっと、これ……本当に大丈夫なのよね!?」
驚きの声を発するトニヤ。
そんなトニヤとは裏腹に、最初は影のゲートに及び腰だったサラはそこまで嫌そうな様子を見せず影に沈んでいくのだった。
「きゃっ!」
影のゲートから出ると、トニヤの口から悲鳴が上がる。
クスコとサラもトニヤと一緒に影のゲートから出たものの、こちらは特にショックを受けたりしている様子はない。
「まさかトニヤがこうなるとは予想外だったな。……てっきりサラの方がこういうのは苦手だと思ったんだが」
建物の陰、誰もいない場所であるというのを確認しつつ、そう告げる。
通りの方からこっちを覗いているような奴はいない。
いやまぁ、影のゲートは魔法だ。
科学技術で幾ら警戒していようとも、魔法の侵入を察知出来る筈もない。
ましてや、ここはフォートセバーンの街中で、政庁や軍事基地といったような場所ではないのだから。
「そう言ってもねぇ……うわ、寒いっ! ここ……もう本当にフォートセバーンなの?」
「どうやらそうみたいね」
トニヤの言葉にサラがそう告げる。
特に驚いた様子がないのは、本当に驚いていないのか、それとも驚きすぎて感覚が麻痺しているのか。
何となく後者のような気がする。
「クスコ、何か感じるか?」
「いえ、特に何もそれらしいのは」
ニュータイプの勘でも、特に何もないらしい。
「そうか。なら、まずはどこに侵入するのかを決める必要があるな」
「じゃあ、私達と一緒に行く?」
トニヤの問いに首を横に振る。
「止めておく。さっきも言ったが、クスコだけじゃなくてサラやトニヤと一緒にいると、さっきも言ったように絡まれる可能性が高いからな」
「もう」
トニヤが照れた様子でそう言う。
ここでもう少しサラやトニヤと話してもいいんだが、いつまでもこの場所にいる訳にもいかない。
出来るだけ早く行動を起こした方がいい。
「じゃあ、そんな訳で……そうだな、4時間後にまたここで待ち合わせって事で」
そう言い、俺はクスコと共にその場から移動する。
「で、アクセル。まずはどうするの?」
「そうだな。まずはフォートセバーンでカリスがどういう扱いをされているのか、そしてカリスの……ニュータイプの研究をしている場所を見つけたい」
「でも、そう簡単に分かりやすい場所にあると思う?」
クスコがそう言ったのは、自分が以前所属していたフラナガン機関がキシリアによって秘密裏に用意された場所だったからだろう。
アルタネイティブ社のように分かりやすい研究所の類があればまだしも、フォートセバーンに見た感じそんな場所はない。
つまり、どこかに隠蔽されているのだろう。
「考えられるとすれば、大々的には他の建物に見せ掛けるとかだな」
サイド6のリボーでアレックスを開発していたクリスの部隊は民間企業をカモフラージュンとして使っていた。
フォートセバーンにおいても、そういう風にしている可能性は十分にあると思ったのだが……
「おい、聞いたか? カリス様がここを襲いに来たバルチャーを倒しに向かったらしい」
「え? 本当か? いつの間に? ……大丈夫かな、カリス様」
「カリス様だから大丈夫に決まってるだろ。何てったって、カリス様はニュータイプなんだぜ? バルチャーなんか楽に倒せるさ」
俺とクスコが街中を歩いていると、そんな会話が聞こえてくる。
声を発したのは、知り合い同士が街中で偶然出会って立ち話をしている……ってところか。
フォートセバーンの住人にしてみれば、特に気にする必要もない会話だが、俺にしてみれば重要な情報が幾つも知る事が出来たありがたい話だった。
「どうやらカリスは自分がニュータイプであるというのは隠してないみたいだな。それどころか、ニュータイプであるというのを売りにしているらしい」
「そうね。前回の戦争でもジャミルのようなニュータイプは英雄的な扱いだったらしいし、そう考えるとこの世界のニュータイプは……少なくてもUC世界より扱いはいいのかもしれないわね」
フラナガン機関での件を思い出しているのだろう。
クスコの美貌には憂鬱そうな表情が浮かんでいた。
「ほら、行くぞ」
そんなクスコの手を引き、その場から移動する。
いつまでもあのような場所にいた場合、それこそ怪しまれてしまうかもしれないし。
そんな風に考えながら街中を歩き回る。
聞こえてくるのは、フォートセバーンの住人がカリスに対して絶対的な信頼を寄せている事だろう。
話を聞く限りでは、今まで何度もフォートセバーンを襲おうとしたバルチャーを倒してきたという話だったんだが……これ、どうなんだろうな。
もしかして俺達みたいに何もしてないバルチャーも襲ってたりしたんじゃないか?
そんな風に思っていると、不意に向かい側から歩いて来た人物を見て、動きを止める。
「……エニル?」
「え? ……アクセル?」
そこにいたのは、エニルだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751