白衣に身を包んだ俺とクスコだったが……
「うーん、アクセルと白衣ってちょっと似合わないわよね」
笑みを浮かべて告げるクスコ。
だが、そういうクスコも白衣が似合ってはいない。
男好きのする身体と美貌を持っているクスコが白衣を着ていると、研究者というよりはそういう店にいてもおかしくはないと思えるような姿だったのだから。
「ねぇ、私の白衣姿はどう?」
「ある意味で似合ってると思うぞ」
「……ある意味って、何か意味ありげね。もしかして似合ってない?」
自分の姿を見るクスコだったが、そういう様子もどこか男を誘うように見えるのは、俺が男だからか。
「まぁ、そういう格好であまり人前に……男の前に出ない方がいいかもしれないな」
「え? ……ふぅん」
俺の言葉でクスコは俺が自分をどう見てるのか分かったのだろう。
嬉しそうな様子で納得した様子を見せる。
「アクセルに喜んで貰えるのなら、私は嬉しいわ。……さて、じゃあ色々とあるでしょうし、そろそろ行きましょうか」
ご機嫌そうな様子を見せるクスコ。
ここで何かを言っても、恐らくあまり意味はない。
寧ろクスコを喜ばせるだけだろうし、何よりも地面に倒れている3人を捜して誰かが来ないとも限らない。
そんな連中にこの3人が見つかれば、間違いなく騒動になるだろう。
そうならないようにする為には、やはり素早くニュータイプのデータを入手する必要がある。
こうして白衣を着ている連中が多いのだから、ニュータイプ研究をしている場所が政庁にあるのは間違いないと思う。
とはいえ、問題なのは政庁のどこに研究所があるかどうかなんだよな。
スライムを使うか。
「クスコ、ちょっと待った。どこにニュータイプ研究所があるか分からない以上、まずはそれがどこにあるのかを見つける必要がある」
「それは……分かるけど、でもどうやって見つけるの? 尋問する?」
クスコの視線が向けられたのは、気絶している3人。
いかにも研究者といった様子なのだから、色々と情報を持ってはいるのだろう。
だが……情報を持っているからといって、それを話すかどうかは別だ。
「街中で捕らえた軍人の事を忘れたのか? もしカリスがフォートセバーンにおいて大きな影響力を持っている場合、この研究者達に話を聞こうとしても話さないだろう」
研究者と軍人という立場から違うかもしれないが、それでもフォートセバーンの住人である以上は軍人と同じくカリスに関する情報を話さない可能性は高い。
軍人と違って研究者である以上、痛みに弱いから痛めつければ情報を話すかもしれないが。
「いや、まずは俺の能力で研究所を探す。それで探してもし見つからなかったら……あるいは探している途中で目が覚めるような事があったら、その時は尋問をしてもいいが。とにかく、まずは俺の能力で探す」
「アクセルがそう言うのなら、それはそれでいいけど……でも、アクセルの能力で探すって、どうやって探すの? 炎獣だっけ? あれで?」
「いや、違う。知っての通り、俺には幾つも能力がある。その中にはこういう時に便利な能力もあるんだよ。驚くなよ? スライム」
一応、といったように驚かないように言ってから、スライムを出す。
銀色の液体金属といった見た目である以上、見る者によっては気持ち悪いと悲鳴を上げてもおかしくはない。
その為、最初に驚かないようにと言っておいたのだが……クスコはスライムを見てもそこまで驚いた様子はない。
クスコにしてみれば、この状況はそこまで驚くようなものではなかったのだろう。
「これ、スライムっていうの? それで、これはどういう風に使うのかしら?」
「ちょっと待っててくれ。……今からスライムを使って情報を集める」
そう告げ、スライムを細い……目に見えないくらい細さの糸にして、部屋の隙間から伸ばしていく。
政庁の全てを把握するかのように。
『なぁ、おい。カリス様が捕まったって噂が流れてるんだけど知ってるか?』
『馬鹿を言うな、馬鹿を。ニュータイプのカリス様が捕まる訳がないだろ』
最初に聞こえてきたその会話は少し興味深かったが聞き流す。
どうやらやっぱりカリスが捕まったのはもうフォートセバーン側に噂という形で流れているらしい。
何故そのようなことに? と思うが、恐らくは俺が予想した通りカリスの様子を偵察していた者がいたのだろう。
あるいはエニルから流れた情報か。
『まったく。上司だからってセクハラしまくりなのは何とかならないかしら?』
『あー……あの人ね。私もお尻を触られたことがあるわ。ノモア市長に訴えたら? ノモア市長なら、そういうのをどうにかしてくれるんじゃない?』
セクハラ云々はともかく、このフォートセバーンを治めているのはノモア市長で間違いないのだろう。
肩書き的に市長というのは……いや、サン・アンジェロ市という風に市を名乗ってるところもあるんだから、フォートセバーンを率いるのも市長でいいのか?
とにかく、その市長は下の者達に信頼されているらしい。
『全く、1回寝たくらいで恋人扱いされるのよ? その上、下手くそだし、早いし』
『あ、それ私も友達から聞いたわ。自信満々なのに、凄い早かったって。顔は悪くないのにね』
『自信満々だっただけに、期待外れもいいところよ』
うん、この会話は聞くのを止めておこう。
色々と悲惨な立場にいる男の話みたいだし。
あ、でも自信満々とか言っていたのを考えると、ある意味自業自得なのか?
『カリスを取り戻すのに、戦力が必要なのだ! そろそろシナップス・シンドロームが起きる頃合いだ。前もって処置をしなければ……』
『落ち着いて頂戴。ドーラット博士の最高傑作なのでしょう?』
この声……エニル!
どうやらようやく当たりを引いたらしい。
とはいえ、俺が本当に見つけたかったのはエニルではなくニュータイプ研究の研究者だ。
だが、エニルと話しているドーラットという人物が口にした、シナップス・シンドロームというのは一体なんだ?
ニュータイプ特有の何かか?
カリスがどうとか言っていたのを考えると、多分その認識で間違っていないとは思うが。
だが、俺が知ってる限りニュータイプにそういうのはない。
クスコの方を見るが、クスコも特にそういうのがあるといったような事はない。
X世界のニュータイプ特有の症状かとも思ったが、ティファにそういうのがあるとは聞いていない。
何よりも、最高傑作という単語が気になる。
もしかして、カリスは天然のニュータイプではないのか?
そう考えた時に思い浮かんだのは、UC世界で戦い、保護したクロエ。
EXAMシステムをベースにして開発されたというHADESシステム。
それが採用されたペイルライダーというMSに乗る為に、身体を投薬や手術、暗示といった諸々で強化されていたのがクロエだ。
そういう強化をされたという事になると、実はシャドウミラーにもいる。
スティング、アウル、ステラといった面々がそれだ。
ただ、もうレモンの治療によってその辺は解決してるし、何よりもSEED世界よりもUC世界の方にニュータイプがいるので、クロエの方に強い印象を抱いたのだろう。
「アクセル? どうかした?」
俺の表情を見て、クスコも何かあったのだと理解したのか、そんな風に尋ねてくる。
「ああ。カリスだが……天然のニュータイプじゃないかもしれない」
「つまり、人によって作られたニュータイプだと?」
「そうなる。スライムを通してエニルがドーラット博士とかいう奴と会話をしているのを聞いたんだが、カリスはそのドーラット博士とやらの最高傑作らしい」
「……そう」
クスコにとって、人工のニュータイプというのには思うところがあるのだろう。
望んでニュータイプになった訳ではないが、ニュータイプであるという事によってクスコはフラナガン機関で辛い体験をしたのだから。
「けど、エニルが話していたという事は、そのドーラット博士というのが、エニルの父親の知人という事で間違いないらしいわね」
「どうやらそのようだ。話の感じからして、恐らくフォートセバーンのニュータイプ研究の中でも主導的な立場にあるのは間違いない。……ちょっと待った」
クスコと話すのを一旦止めて、改めてスライムで話を聞く。
『地下にあるパトゥーリアはどうするの? ニュータイプがいないと意味はないんでしょう?』
『ぐ……カリスが近付いてくるニュータイプを感じたので、出したのが間違いだったか。カリスよりもパトゥーリアの適性があるのではないかと思ったのだが』
『それ以外にも、ニュータイプの研究について使えると思ったんでしょう? 本物のニュータイプがいれば、人工ニュータイプの完成度も今より上がるかもしれないもの。今はカリスって子が最高傑作かもしれないけど、フリーデンにいるニュータイプを手に入れれば、より完成度の高いニュータイプを作れるかもしれないし』
この会話だけで、色々と情報があったな。
まずは人工ニュータイプ。
最初の会話から予想していたものの、その名称は人工ニュータイプと呼ばれているらしい。
他に注目すべきなのは、パトゥーリアだろう。
話の流れからすると、どうやら地下にはパトゥーリアという兵器があるらしい。
MSかMAか、あるいはそれ以外の何かか。
それは分からないが、その兵器を動かすのにニュータイプが必要なのは間違いない。
考えられる可能性としては、エルメスやジオングみたいなタイプのニュータイプ専用の兵器といったところか。
具体的にはどのような兵器なのかは分からないが。
地下にあるという事は、地上用なのか、あるいは空を飛べるタイプなのか。
これがUC世界なら、空を飛ぶのは結構難しい。
しかし、このX世界においては量産型MSであっても普通に空を飛ぶ事が出来るのだから。
『そうなると、問題なのはどうやってカリスを取り返すかだけど……戦力の余裕はあるの?』
『あるにはあるが、その戦力が蹴散らされればもうどうしようもなくなる。そして残っている戦力はそこまで精鋭という訳ではない』
『……でしょうね。相手はフリーデンは別としても、アクセルもいるもの。その辺のMSパイロットでは、簡単にやられるだけよ』
『そう言えば、君は敵のパイロットを知っているのだったね。捕らえにいった者達が逃げ出してきたと聞いている。出来ればその辺については前もって話しておいて欲しかったのだがね』
『あら、そう言われても……私もアクセルがフリーのMS乗りとして高い技量を持ってるのは知っていたけど、MSに乗っていない生身の状況でもここまで強いとは思わなかったもの。本当に一体どうすればあんな強さを手に入れられるのかしらね』
『一応聞いておくが、君はそのアクセルという人物とどういう関係なのだね?』
『どういうと言われても……私が以前サン・アンジェロ市で活動していた時に、ちょっと話したくらいよ』
『ふむ。フォートセバーンは知っての通り僻地と言ってもいい場所にある。パトゥーリアの上に街を作ったのだから当然かもしれないが。その分、情報には疎くてね。指名手配をしておいて今更だけど、どういう人物か聞かせて欲しい』
『そう言っても、さっきも言ったように私はそこまでアクセルと親しい訳じゃないわよ? それこそ一般的な情報しか持ってないけど』
『それでも構わんよ。元々何の情報もない状態だったのだ。そうである以上、今は少しでも情報が欲しい』
『そうね。突然サン・アンジェロ市にやって来たフリーのMS乗りよ。それもとびきり腕のいい。しかも仕事の依頼を受ける時は、他よりも安く依頼を受けていたから、依頼者には感謝されていたけど、他のフリーのMS乗りの中には嫌ってる人も多かったわ』
『腕がいいのに、安く依頼を受ける? それはまた……随分と奇妙な人だね』
『そうでもないわ。聞いた話によると、依頼を安く受ける代わりに倒したバルチャーやフリーのMS乗りのMSとか全部自分の物にしていたらしいもの。サン・アンジェロ市の中でも腕のいいメカニックとも懇意だったから……分かるでしょう?』
『なるほど。つまり依頼料を安くした代わりに、敵から奪ったMSを修理して売りに出していた訳だ』
『そう……だと思うわ』
『思う? それは一体どういう事です?』
『MSを奪って修理していたのは間違いないけど、それを買ったって人の話は聞かないのよ』
『それは……疑問だね』
『ええ。多分独自のルートを持ってるんでしょうね。とにかく戦うのなら一筋縄ではいかないと思った方がいいわ。正面から戦っても勝ち目はないでしょうから、カリスを奪うのならMSで攻撃をするのではなく、誰かを侵入させた方がいいと思う』
『カリスは絶対に取り戻す必要があります。そうすると、やはりその方がいいでしょうね』
そんな会話を聞いて、敵の次の行動を理解した。
エニルの俺に対する分析はそれなりに正しく、実際に敵が正面から攻めてくるといったような事があった場合は、フリーデンに接触するのは無理だろう。
だとすれば、侵入すればいいというのは間違っていない。
間違っていないが……それが分かった以上、相応の対処をすればいいだけだ。
そんな風に考え、クスコに聞こえてきた会話を説明するのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751