フォートセバーンの中から影のゲートで転移すると、次の瞬間には既に俺達の姿はフリーデンに戻ってきていた。
「相変わらず凄いわね……」
サラが周囲の様子を見てそう告げる。
サラにしてみれば、つい先程までフォートセバーンにいたのが、次の瞬間にはフリーデンにいたのだ。
それを見て驚くなという方が無理だろう。
「取りあえず……どうする? フォートセバーンで入手した情報とかを交換したいところだけど、どこでやる?」
カリスが軟禁されているという意味では、フリーデンでやった方がいいかもしれない。
だがテンザン級はフリーデンよりも圧倒的な広さを持つので、多くの者が会議室でゆっくりと話を聞く事が出来る。
「フリーデンでいいでしょう。ただし、アクセルさんが色々とやらかしたのを思えば、一度ここから離れた方がいいと思うけど」
「私もサラの意見に賛成ね。フォートセバーンでアクセルがやらかしたことを考えれば、間違いなくパトゥーリアやカリスを取り戻すべく戦力を送り込んでくるでしょうし」
サラの意見にクスコが同意する。
エニル達の話を盗み聞きした時は、戦力が足りないからカリスを取り戻すべくMS部隊を派遣するのは難しいので、潜入してカリスを助け出すという流れの筈だった。
だが、それはあくまでもあの時点での話でしかない。
フォートセバーンの奥の手であるパトゥーリアを俺に奪われた以上、向こうは何が何でも取り戻そうとするだろう。
フォートセバーン側にしてみれば、パトゥーリアを奪ったのが俺だとは限らない訳だが。
ただ、カリスが俺達に捕らえられてからそう時間が経っていないのにパトゥーリアを奪われたのだ。
普通に考えれば、俺達の仕業だと思うだろう。
街中でエニルに会ってるってのもあるし。
パトゥーリアがフォートセバーンの秘密兵器や奥の手、切り札である以上、地下空間には監視カメラの類があってもおかしくはない。
もしあった場合は、気配遮断を使った俺であっても容易に見つけられるし、パトゥーリアに近付いた事も把握するだろう。
……だからといって、一瞬でパトゥーリア程の巨大なMAが消えた理由は、全く理解出来ないだろうが。
このX世界において魔法とかは存在していない以上、その辺を理解するのは難しいだろう。
ただ、それでも俺が近付いて消えた以上は、俺が関わっているというのはエニルには理解出来るだろう。
そうなればフォートセバーン側にも俺の情報が伝わり……自分達の切り札を取り返すべく、必死になって攻めて来てもおかしくはない。
「そうだな。まずはここから離れるか。今のフォートセバーンなら、すぐにどうこうって事はないだろうし」
勿論、フォートセバーンにはまだ相応の戦力が残っているのは間違いない。
だがカリスがいない以上、向こうは纏まりに欠ける。
ジュラッグはそれなりに高性能なMSではあるが、それでもガンダムやオクト・エイプが大量に存在するこっちをどうにか出来るような性能ではない。
カリスのベルティゴが向こうにあれば、かなり不味かったのは間違いないだろうが。
「じゃあ、まずはキャプテンにフリーデンを動かすように言ってきます。テンザン級の方はアクセルさんがお願い出来ますか?」
「分かった。ならそれなりに離れるとするか」
カリスがこっちの手にある以上、フォートセバーンからの侵入者を少しでも減らす為にも俺達は出来るだけフォートセバーンから離れた方がいいのは間違いなかった。
「そんな訳で、さっさと移動するか」
そういう事になるのだった。
テンザン級とフリーデンが待機していた位置から数時間程移動する。
たった数時間と考えるべきか、それとも数時間もと考えるべきか。
テンザン級もフリーデンも、機動力の高い陸上戦艦だ。
テンザン級はフリーデンよりも圧倒的に大きいのに、それでも最高速度はフリーデンより上だった。
小回りというか、運動性という点ではフリーデンに劣るが。
そんな訳で、数時間の移動でもフォートセバーンからかなり離れる事が出来た。
それだけではなく、丘の陰になっている場所……つまり見つかりにくい場所にいるので、隠蔽もそれなりにしている。
ただし、敵はスノーボード型のSFSを使うMSだ。
雪の中でも……いや、雪の中だからこそ、その性能を最大限に発揮出来るのは間違いない。
それでもフォートセバーンのMS隊が攻めて来たら、すぐにでも対処出来る準備は整っているのだが。
「そんな訳で、フォートセバーンにおいてはカリスはかなり信奉されているのは間違いありません。彼がいれば何でも出来る。そんな風に思ってる人が多かったですね」
「まぁ、ニュータイプだしな。アクセルが倒したからどうにかなったが、もしいきなりあのベルティゴとかいうMSと遭遇したら……勝つのは難しいと思うぜ」
サラの報告にウィッツがそう告げる。
あの手のファントム系の武器は、俺にしてみれば自分で使う事もあるし、敵として使われた事もあるので、ある程度の対処法は理解している。
この世界で行われた以前の戦争に参加したジャミルも、ニュータイプであるという事で、宇宙革命軍のニュータイプを相手に小型のビットを使う敵と戦った経験があってもおかしくはない。
しかし、ウィッツ、ロアビィ、ガロードといった若い面々は当然ながら戦争に参加していないので、ビットを使う敵と戦った事はないだろう。
実際、ガロードはカリスとの戦いでボコボコにされたし。
……そう言えば、一応この会議にはガロードも参加してるな。
フリーデンで行われているから、ガロードも参加しやすかったんだろうけど、それでもかなり落ち込んでいたあの状況からよく復活出来たと思う。
あるいはティファが何らかの協力をしたのかもしれないが。
「とにかく、ベルティゴはアクセルが確保したんだから心配はいらないだろう? ちょっと気になるけどよ」
そう言いつつ、キッドの視線は俺に向けられる。
メカニックとして高い才能を持つだけに、キッドにしてみればベルティゴには興味津々なのだろう。
とはいえ、ベルティゴは俺達にとっても非常に重要な機体なのは間違いない。
この世界のニュータイプが使っているという点でも貴重なのだが、それより大きいのは、小型のビットだ。
シャドウミラー的にはファントムの技術があるものの、SEED世界のドラグーンの技術も集めているのを見れば分かるように、この手の技術的な蓄積はあればあっただけいい。
また、X世界の件に協力しているUC世界の面々にとっても、小型のビットはかなり魅力的だろう。
現在、UC世界にもエルメスのように無線で使うビットは存在している。
だがエルメスのビットはMSの半分くらいの大きさがある。
無線で動かすだけに、そのくらいの大きさであっても十分に効果的ではあるのだろうが、それでも敵との戦いにおいてはビットは小さい方が見つかりにくい。
UC世界の月にあるニュータイプ研究所のアルテミスにしてみれば、ベルティゴとビットの技術は是非とも欲しいだろう。
問題なのは、X世界とUC世界のニュータイプは、名称こそ同じだし、その能力も似ているところが多いものの、実際の能力は大きく違う事だろう。
事実、クスコやマリオンがフラッシュシステムを動かそうとしても、全く動かなかった。
ただ、それでも技術的な参考になるのは間違いない。
ルナ・ジオン軍に所属するニュータイプが、全てベルティゴの使うビットと同じような武器を使いこなしたら、どうなるか。
そうなったら恐らく圧倒的な実力を発揮する事になるだろう。
ルナ・ジオンに対しては、シャドウミラーからもかなりの持ち出しがある。
それだけにルナ・ジオンが強化されるのは嬉しいし、独自の技術を発展させるのも大歓迎だ。
……X世界のニュータイプ技術を解析してUC世界のニュータイプ技術を発展させるのを、独自の技術と呼んでもいいのかどうかは微妙だが。
そんな風に考えていると、サラの説明が終わり……そして次は俺の番となる。
最初はクスコに報告を任せようかとも思ったのだが、エニルの件とか色々と事情があり、その全てを知ってるのはやっぱり俺だけなので、俺が説明する事になるのは当然だった。
「まず、フォートセバーンの住人がカリスに対してどう思ってるのかは、サラの報告からでも十分に理解出来ると思う。ただ、問題なのは住民だけではなく、軍人もカリスに心酔している者が多い事だ。例えば俺が尋問しようとした軍人は、自分が拷問されても絶対にカリスについての情報は口にしないと言い張った」
「何故軍人を尋問するような事になったのかは分からないが……どうやら本当に慕われているらしいな」
元ニュータイプのジャミルにしてみれば、今のカリスの状況に色々と思うところがあるのだろう。
「それと……ガロード」
「……え?」
まさかここで自分の名前が出るとは思わなかったのか、ガロードの口からは意外そうな声が上がる。
「フォートセバーンにはエニルがいる。それもニュータイプ研究の中でも偉い人物と知り合いらしい。何でエニルがフォートセバーンに来たのか……それは言わなくても分かるな?」
偶然旅行に来たなどと思う者はいないだろう。
間違いなく、GXを巡るガロードとの一件の意趣返し。復讐、仕返しといったような狙いの筈だ。
ガロードもそれが分かってるのか、背筋が総毛立ったかのような表情を浮かべていた。
あるいはエニルと何かあったのをティファに知られないようにしているとか、そういう可能性もあるな。
「それともう1つ重要な事がある。カリスはニュータイプではあるが、実際には人工ニュータイプらしい」
『なっ!?』
人工ニュータイプという言葉に、多くの者達が声を上げる。
この世界において、人工ニュータイプというのがどういう意味を持つのかは分からない。
あるいは戦前、戦中から人工ニュータイプが研究されていた可能性もある。
とはいえ、ジャミル以外の者達にとっては初めて聞く言葉なのか、驚いているのは間違いない。
「ちなみに人工ニュータイプはシナップス・シンドロームとかいうのがあるらしい。これが具体的にどういうのかは分からないが。それと、フォートセバーンの地下には巨大なMAがあった」
「巨大? それって具体的にどのくらいの大きさだったんだ?」
「百mくらいだな。それが地下空間にあった。ただ、あの様子だと出撃する際には政庁やその周辺にある建物を破壊しないとどうしようもないだろう」
「それは……参ったね、こりゃどうも」
ロアビィが唖然とした様子で呟く。
まぁ、そんなに巨大なMAを相手にするとなると、ロアビィの操縦するレオパルドでもそう簡単に対処出来ないだろうし。
「でも、アクセルがそれを見つけたということは……」
「正解だ、マリュー」
そう言うと、マリューはやっぱりといった表情を浮かべる。
そんなマリューの隣では、ミナトもまた同様の表情を浮かべていた。
しかし、俺がどんな行動をしたのかを予想出来るのはあくまでもこの2人。そして直接見ていたクスコだけだ。
それ以外の面々は、俺達が何を言っているのか全く理解していない。
シーマを含めたテンザン級の面々ならクスコから話を聞いていてもいいと思うんだが、どうやらこの様子だとクスコは他の面子に話をしてはいないみたいだな。
「ねぇ、アクセル。一体何をしたんだい?」
シーマのその問いに、他の面々の視線が俺に向けられる。
一体何がどうなったのか、興味津々といったところか。
そうして全員の注目が集まっている中で、俺は笑みを浮かべて口を開く。
「巨大MA……パトゥーリアという名称らしいが、そのパトゥーリアを奪ってきた」
「奪ってきたぁ!?」
ウィッツの一体何を言ってるんだこいつといった視線がこっちに向けられる。
他の面々も、口には出さないがウィッツと同じような視線を俺に向けていた。
ただ、違うのはテンザン級からやって来た面々だろう。
少なからず俺と一緒に行動したことがある者達だけに、俺ならもしかして……と思っているのだろう。
「俺の能力には空間倉庫というのがある。その名の通り、空間に色々な物を収納出来る能力だ。それを使えば、パトゥーリアを奪うのはそう難しい話じゃない」
「……本当なのか?」
確認するようにジャミルが尋ねてくる。
魔法の存在や異世界の存在、狛治やエルフを見ても、パトゥーリアを奪ったという話はとてもではないが信じられないのだろう。
「ああ、勿論本当だ。こんな事で嘘を言っても仕方がないだろう? ただ、パトゥーリアがどういう性能を持ったMAかは分からないから、この会議が終わったら一度出す。マリューとキッド、後は適当に選んで調べてみてくれ」
「え? マジ!?」
キッドの事だけに、当然パトゥーリアに興味があったのだろう。
俺の言葉に嬉しそうに叫ぶ。
「私も問題ないわ。そんな巨大なMAはちょっと興味あるもの」
キッドに続き、マリューもまた笑みを浮かべてそう告げる。
……ロアビィやウィッツがそんなマリューの笑顔を見て顔を赤くしていたのは、多分突っ込まない方がいいんだろう。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751