取りあえずフォートセバーンに対して降伏勧告を送るということで話は決まった。
調べ終わったパトゥーリアは再び空間倉庫に収納し、そして現在は降伏勧告についての文章をジャミルが考えていたのだが……
「その、気を付けて下さい」
俺とクスコ、マリオンの前を歩くティファが、そう言ってくる。
その肩には炎獣のリスがいるのがかなり目を惹く。
そんなティファは俺と目が合うと、即座に逸らす。
それでもジャミルから言われた行動……俺達をカリスのいる部屋に案内するという仕事は、しっかりとこなしていた。
本来ならティファは俺を怖がって……いや、それだけではなくマリューやミナトの心を見て、刺激的な光景を感じてしまった。
それによって、怖がるだけではなく恥ずかしがるという一面も出て来たのだろう。
この件に関しては、俺は何とも言えないな。
とはいえ、そのような状況であってもこうして気を付けて下さいと言ってきたのを思えば、こっちを心配している辺り優しい性格をしてるんだろうな。
「心配するな。ティファが俺を大きな海と評したように、カリスもまた人工ニュータイプではあっても、ニュータイプなのは間違いない。事実、捕獲した時に直接俺を見たカリスはかなりこっちを驚きの視線で見ていたしな」
MSで戦っている時も俺の存在を疑問に思っていた様子だったが、その時はMS越しだったからか、あるいは戦闘中でそんな事を感じる余裕がなかったのか、とにかくそこまで驚く様子はなかった。
しかし、鹵獲してフリーデンに連れていった時、生身で俺に会った時のカリスの様子を思えば……うん。
「アクセルという存在を見たら、そんな風に思うのは仕方がないと思うわ。けど……そんなアクセルだからこそ、私は好きになったんだけど」
「クスコさん、そんなに堂々と言わなくても……」
マリオンが薄らと頬を赤くして言う。
自分はオルテガと色々としてるんだから、この程度の事でそこまで気にする必要はないと思うんだが。
そんな風に思ったが、マリオンの性格を思えばこのような対応になってもおかしくはないのだろう。
「分かりました。私も……信じます」
ティファのその言葉に、クスコは笑みを浮かべてティファの頭を撫でる。
「そうね。信じるというのは大きな意味を持つわ。貴方もあの子……ガロードだったかしら。あの子の事を信じてあげなさい」
「……はい」
何だか2人で分かり合っているように思えるのだが、これは女同士だからなのか、それともニュータイプ同士だからなのか、あるいはその両方だからなのか。
ともあれ、ティファがクスコに懐いているのは間違いない事実らしい。
「あそこです」
俺達を案内していたティファが不意に足を止め、指さす。
そこには扉があり、扉の前にはフリーデンの人員が見張りをしていた。
これがテンザン級なら、量産型Wやコバッタが見張りをするといった真似も出来るのだが、フリーデンではどうしても人が見張りをする必要がある。
いっそ量産型Wやコバッタをフリーデンに派遣してもいいかもしれないな。
そうなればそうなったで、フリーデンで仕事がなくなる者も出てくるだろうが。
ともあれ、扉の前にいる男は俺達の姿を見るとすぐに扉の前から移動して場所を空ける。
どうやら俺達が来るのは既に連絡されていたのだろう。
「カリスはどんな具合だ?」
「特に何も。ただ、大人しくしています」
その言葉は少し驚きだった。
てっきり脱出しようとして何かを企んでいるとか、そんな感じだと思ったんだが。
あるいは今は大人しくして脱出するチャンスを待っているという事かもしれないが。
「そうか。じゃあ、通らせて貰うぞ。話は聞いてるんだよな?」
「はい」
頷いた男は、扉の鍵を開ける。
ガチャリ、という音が周囲に響く。
カリスも当然鍵が開いた音は聞こえているだろう。
とはいえ、この状況で脱出する事はまず不可能だが。
確かにニュータイプは新人類の先駆けなのかもしれない。
だがその能力はあくまでも感覚的なもので、肉体的な意味では普通の人間でしかないのだから。
フォートセバーンのMS部隊を率いていたので、ある程度は軍人として訓練しているのかもしれないが、言ってみればそれだけでしかない。
ティファやマリオンはどうにか出来るかもしれないが、クスコをどうにかするのは難しいだろう。
ましてや、魔法とかを使って生身で戦う世界での戦いを経験してきた俺に対しては、どうにか出来る筈もない。
「カリス、入るぞ」
そう言い、扉を開ける。
この部屋は別に牢屋という訳ではなく、軟禁する為の部屋なのだろう。
当然だが窓の類はないが、部屋の中にはベッドや机、何冊かの本が入っている本棚といった物もあった。
カリスはベッドに座り、こちらに視線を向け……俺を見ると一瞬顔が強張る。
ニュータイプとしての能力で、俺が……あるいは俺と認識出来なくても、誰かが部屋の前にやって来たのは分かっていた筈だ。
それでもやはり俺を見たカリスは何かを感知したのだろう。
「大丈夫か? 俺が言うのも何だが、俺は色々と特殊な存在だ。俺の心を見るといったような事はしない方がいい」
そう告げると、カリスはこちらを睨み付けてくる。
以前話した時もそうだったが、カリスは気が強いよな。
……でないと、人工ニュータイプでMSに乗ったりはしないか。
「その様子を見ると、どうやら大丈夫そうだな。さて、それで俺達は一体何をしにここに来たんだと思う?」
「現在の状況を知らせる為ですか?」
「それもある」
実際、この部屋に軟禁されているカリスは現在の自分の状況を完全に理解するといった真似は出来ないだろう。
あるいは見張りの男からニュータイプ能力を使って情報を入手している可能性もあるが……ジャミルもその辺は理解しているのか、可能な限り情報を与えないようにするといった真似をしている。
「では、他に何があるのですか?」
「そうだな。色々と聞きたい事はあるが、シナップス・シンドロームは大丈夫なのか?」
「っ!? 何故それを? ……いえ、そちらにもニュータイプがいるのです。その辺りについて知っていても、おかしくはないでしょう。まさか全部で3人もいるとは思っていませんでしたが」
「へぇ、クスコとマリオンもニュータイプと認識してるのか。どう思う?」
連邦軍の兵器であるガンダムに使われているフラッシュシステム。
クスコとマリオンはそのフラッシュシステムを起動出来ない。
それこそフラッシュシステムを起動させるというだけなら、ベルフェゴールを操縦していた俺の方が完全ではないにしても、それなりに起動していた。
そういう意味では、このX世界では実は俺の方がニュータイプとして認識されてもおかしくはないのだろう。
「ニュータイプとして認識して貰えるのは嬉しいわね。ただ、私やマリオンはニュータイプであってもフラッシュシステムは発動出来ないけど」
「なるほど。カテゴリーFですか」
クスコの言葉を聞いたカリスが呟くが、その意味は分からない。
分からないものの、カリスの様子からするとあまりいい意味でないのは間違いないらしい。
「カテゴリーFというのは何だ?」
「自分達の事なのに、知らないのですか? もっとも、私もノモア市長から聞いただけなので詳しくは知りませんが、連邦軍におけるニュータイプ研究において、ニュータイプ能力らしき能力を持っていても、フラッシュシステムに対応出来ない者がカテゴリーFと呼ばれていたようです」
「なるほど。連邦軍にとってのニュータイプは、フラッシュシステムを動かせるのが前提……うん? ちょっと待て。何でそこでノモア市長が出てくる?」
そう言った時、カリスは一瞬だがしまったという表情を浮かべた。
これは……恐らく、何かを隠しているな?
そうして思い当たる事は、そう多くはない。
カテゴリーFという、それこそニュータイプ能力の研究をしている者でなければ知らないような言葉。
それを口にしたという事は……
「なるほど。ドーラット博士……いや、ドーラットがノモアか」
「っ!?」
俺の言葉を聞いた瞬間、カリスが息を呑む。
そんな様子を見れば、俺の予想が間違っていなかった事を示している。
「どうやら当たりらしい。……しまったな」
フォートセバーンに侵入した時、エニルと話していたのがドーラット。
そのドーラットがフォートセバーンの市長をしていたノモアだと分かっていれば、あの時点で殺すなり、捕獲するなり出来たんだが。
名前を変えているというのは。少し予想外だった。
「アクセル、今はそれよりも」
クスコも俺と一緒にフォートセバーンに乗り込み、政庁に侵入している。
だからこそ、ドーラットの件についても十分に理解していた。
「そうだな。とはいえ、ノモアがドーラットだったとなると……いや、ベルティゴやパトゥーリアの外見を思えば、そうおかしな話でもないんだろうけど」
機体に曲線を多く使っているのが宇宙革命軍系のMSで、直線的なのが連邦軍系のMSだ。
そう考えれば、ベルティゴなんかは宇宙革命軍用のMSそのままの特徴だろう。
とはいえ、このX世界においてはバルチャーやそれぞれの街が独自にMSを入手して運用している。
ジェニスはそのいい例だろう。
そういう意味では、このベルティゴをフォートセバーンに所属するカリスが使っていても、そうおかしな話ではない……のか?
大量に量産されたジェニスならともかく、ニュータイプ用のMSとなれば連邦軍のガンダムと互角にやり合えるだけの能力を持つ。
そう考えると、やっぱりフォートセバーンにベルティゴや……ましてやパトゥーリアがあったのはおかしいと思うが。
しかし、ノモアがドーラットだったなら、宇宙革命軍の兵器を持ってるのも理解は出来るのだが。
「それでパトゥーリアだが……この巨大MAについては知ってるか?」
「……はい。勿論知っています」
「知ってるのか。なら聞くが、パトゥーリアがあるのは政庁の地下だったが、あれはどうやって出すつもりだったんだ? あの地下空間を見た感じでは、地上に出る為の出口の類がなかったが」
これは普通に疑問だった。
ドーラット……いや、ノモアにしてみれば、最初からフォートセバーンを破壊しながら出るといった事を考えていたのかもしれない。
だが、それはあくまでもノモアの考えだ。
地下空間にいて、ノモアに従ってパトゥーリアを開発していた者達は一体何をどう考えていたのか。
「それは……僕には分かりませんが、ノモア市長には何か考えがあったのでしょう」
「本当にそう思っているのか? いや、それでお前が納得してるのなら、俺は別に構わないけどな」
「ぐ……」
まさにぐうの音も出ないといったころか?
とはいえ、もっと突っ込む必要もあるけどな。
「それとパトゥーリアだが……知ってたか? もしパトゥーリアを動かそうとした場合、ニュータイプが操縦をするのではなく、ニュータイプをパトゥーリアの生きた部品として消耗させていく必要があるんだぞ?」
「……え?」
俺の言葉に、カリスは数秒沈黙した後で間の抜けた声を上げる。
どうやらパトゥーリアの存在については知っていたのだろうが、それをどうやって動かすのかというのは全く知らなかったのだろう。
甘い……いや、それだけノモアを信頼していたのか?
カリスを人工ニュータイプにしたのはノモアだ。
それだけに、カリスがノモアを心の底から信頼していてもおかしくはない。
「う……嘘だ!」
「残念ながら本当だ。なんなら、パトゥーリアを見るか?」
「何を……何を言ってるのです!? パトゥーリアはフォートセバーンにあるのですよ!?」
「違う。少し前までフォートセバーンにあったのは間違いないが、今は俺が持ってる」
「そんな嘘で僕を騙そうとでも?」
「……ティファの肩にいる炎獣、分かるよな? そして俺の存在を人工ニュータイプのお前は分かった筈だ。天然のニュータイプであるティファも分かったんだから」
「天然の……? 一体何を言ってるのですか? ニュータイプというのは、自然発生する事がないのですよ?」
ああ、なるほど。
ちょっと話が噛み合わないところがあると思っていたんだが。
どうやらカリスにとって、ニュータイプというのは自然発生するものではなく、人工的に作り出す存在だと思っていたのだろう。
「違う。ティファも、他の2人も自然発生した……天然のニュータイプだ。また、ここにはいないが、フリーデンの艦長のジャミルも今は能力をなくしたが、元ニュータイプだ」
「え……な……」
そう言うと、カリスは理解出来ないといったような表情を浮かべ……
「あ……」
ドサリ、とベッドに倒れ込んだカリスを見て、ティファが小さな声を上げる。
「ちょっと、アクセル。いいの?」
情報過多。そして恐らくだが俺という存在の異質さを感じていたこともあってか、カリスは気絶した。
そんなカリスを見てクスコが少しだけ責める視線を向けてくるも、俺は問題ないと頷く。
こうなるのは予想していたので、ある意味狙い通りではあったのだから。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1915
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1751