フリーデンとテンザン級は、現在フォートセバーンに向かっていた。
当初、ジャミルはフォートセバーンの住人にも分かるように降伏勧告するのを躊躇っていたのだが、それでも今の状況を考えると結局俺の意見に賛成したのだ。
勿論フォートセバーンの住人にも分かるように降伏勧告をするというのは、下手をすればフォートセバーンの住人達が協力してこちらに攻撃を仕掛けて来る……という可能性もある。
その辺は賭けなのは間違いない。
……最悪の場合は、それこそ一般人を相手に攻撃するといった事にもなりかねないものの、そうなる可能性はかなり少ないというのが俺の予想だった。
ノモアがどう反応するかが、この場合は一番の問題だろう。
「私としては、フォートセバーンの住人をあまり刺激したくないのだけれど」
モニクがあまり面白くなさそうにそう告げる。
モニクはルナ・ジオンにおいて、純粋な軍人として働いている訳ではない。
それこそ役人として働いているので、降伏勧告の件についても思うところがあるのだろう。
「けど、向こうにもう戦力は残ってないんでしょう? なら、もしフォートセバーンの住人が妙な真似をしても、対処は出来るんじゃない?」
「クスコ、事はそう簡単じゃないのよ」
クスコの言葉にクリスがそう告げる。
きちんと士官学校を出ているクリスに比べて、クスコはフラナガン機関出身だけに、軍人としての教育は受けていない。
一応月で活動を始めてからその辺の教育はしてるんだろうが。
「MSで攻めてくるのなら、それはそれで構わないわ。いえ、寧ろそっちの方が楽よ。もしMSを使って攻撃してこないで、フォートセバーンが生身でゲリラ戦をするといった場合、面倒なことになるでしょう?」
「それは……嫌ね」
クスコはしみじみと呟く。
実際にそのような状況になった時、どうなるのか想像したのだろう。
一般人がそこまでやるか? という思いもあるのだが、カリスを助けるという大義名分があれば、そんな真似をしてきてもおかしくはない。
「カリスをこっちに引き入れるのが成功すればいいんだけどな」
今のカリスは、間違いなくノモアの言葉を素直に信じることは出来なくなっている。
人工ニュータイプの存在や、自分をパトゥーリアの生体部品にするつもりだったという事を考えると、そんな状況でノモアを信じろという方が無理だろう。
その上で、ティファやジャミルといった面々がいれば、カリスを説得出来る可能性は高い。
「出来るのかい?」
シーマが疑問を抱きつつ尋ねてくる。
シーマにしてみれば、カリスを本当に説得出来るのか? といった疑問があるのだろう。
「その辺はジャミルとティファ任せだな。……そもそもの話、もしフォートセバーンを降伏させたとしても、俺達がいつまでもフォートセバーンにいる訳にはいかないんだ。最悪の場合は量産型Wを大量に派遣してフォートセバーンを治めるという手段もあるが……出来ればこの世界の住人に治めて貰いたい」
ぶっちゃけた話、フォートセバーンにはもう美味しい場所がないんだよな。
パトゥーリアやベルティゴ、ジュラッグといったMAやMSは入手したし。
人工ニュータイプのデータは……ハッキングして入手したデータに入っている可能性が高い。
もしないのなら、その辺のデータだけは出来れば入手しておきたいと思うが。
そういう意味で、フォートセバーンに旨みはない。
そもそも雪国というだけで難易度は高いのだから。
「それは……そうでしょうね」
フォートセバーンを確保するのはあまり意味がないというのは、話を聞いていた者達にとっても納得出来る事だったのだろう。
言葉に出して同意したクリスは勿論、他の面々も同意するように頷いていた。
「とにかく、今回の件でフォートセバーン関係の騒動は終わって欲しいところだな。雪国というのは、MSを動かす上でも色々と面倒だし」
「あたし達は、全機空を飛べるからそこまで面倒じゃないと思うけどね。……ただ、MSはともかくテンザン級の方は整備とかがかなり面倒なことになってそうだけど」
シーマが言うように、雪の上をホバー移動している関係上、テンザン級の細かい隙間に雪が入り込んだりしているのは間違いない。
勿論、雪というのは解ければ水となる。
しかもこの辺りの地面は特に除雪材とかが撒かれていたりとかはしてないし。
雪国では道路に除雪材……成分的には塩がメインのそれを撒く事が多い。
そんな場所で車を走らせるのだから、錆止めのコーティングをしていたり、定期的に洗ったりしないと車の底が錆びて、最悪の場合は穴が開いたりといったことになる。
まぁ、それはあくまでも一般人が使う車の場合の話だし、軍用の陸上戦艦と一緒にするのは間違ってるだろうが。
ただ、テンザン級は陸上戦艦として武装はそれなりに整ってはいるが、あくまでもそれなりだ。
今回の件が終わったら、一度ホワイトスターに戻って改修して貰った方がいいかもしれないな。
重力波砲……いや、さすがに技術レベルやその方向性が違いすぎるか。
やっぱりビーム……ビームはビームでも、世界によって微妙に違ってくるんだよな。
そうなると、やっぱり無難に実弾を使った方がいいのか?
ただ、実弾やミサイルの類となると、それはそれで残弾を用意するのがそれなりに大変だったりするのがちょっとな。
まぁ、どのみちその件に関してはフォートセバーンの件が終わった後での話か。
「とにかく、降伏勧告をフォートセバーンが受け入れるかどうかは別として、もし受け入れなくても次の戦いがここでの最後の戦いになると思う。……その場合でも、戦いらしい戦いになるかどうかは、また別の話だが」
カリスと一緒に攻めて来た連中は全滅したし、カリスを取り返す為の陽動として攻めて来た連中も全滅した。
ジュラッグを含めて、フォートセバーンに一体どれだけの戦力が残っているのかは、微妙なところだろう。
つまりノモアがどう考えているのかはともかく、こっちと戦うだけの能力がないのは事実だ。
「とにかく、敵がどう動くのかは分からないが……そこまで大きな戦いにはならないだろ。だからこそ、一般市民がゲリラ戦をしたりするのは厄介なんだけど」
いっそ、一度フォートセバーンの住人を一気にスライムでどこかに移動させた上で、ノモアに対処する……いや、止めた方がいいな。
もしそのような真似をすれば、今後色々と不味い事になるだろうし。
やっぱりカリスがこっちに味方をしてくれるのが一番いいんだが。
「それより、アクセル。シーマやクスコとデートしたんだから、そろそろ私の番じゃない?」
「あ、ちょっとクリス。それなら私だって権利があると思うけど?」
「モニクはアクセルと一緒に出掛けた事があったでしょ?」
「それはデートじゃなくて、情報屋との交渉よ!」
「ふーん。……それでも一緒に出掛けたのは間違いないと思うけど? 私はそういう経験がないし、やっぱり次は私の番ね。……もっとも、フォートセバーンでデートというのはクスコがやったし、もっと別の場所の方がいいけど」
「スキーとかスノーボードはどう? フォートセバーンならではだけど」
クリスとモニクの言い争いに、クスコがそう茶々を入れる。
俺は別にそれでもいいんだが。
スキーはともかく、スノーボードはやった事がない。
MSでもスノーボードに乗れるんだから、混沌精霊の俺も普通に乗れる筈だった。
ちなみにあのスノーボード、正確にはスノーボードではないらしい。
量産型Wからの報告によると、雪上だけではなく普通の地面の上でも使えるとか何とか。
SFSとしてはそれなりに便利な代物なのは間違いない。
とはいえ、空を飛ぶ方が色々と便利なのは間違いないが。
「うーん、それもいいけど……やっぱりもっと普通の街でのデートを楽しみたいわ」
俺がスノーボードについて考えている間も、どうやらデートについての話はされていたらしい。
正直なところ、もう好きにしてくれという気持ちだ。
勿論、クリス達とデートをするのは嫌いではない。
寧ろ楽しみだ。
全員が全員美形だし、だからといって外見だけではなく内面的な魅力もある。
そんな面々が俺に好意を向けているのだから、俺も嬉しくない訳ではない。
……クリスの場合は、正直ちょっと意外だったと思うけど。
何しろ俺がクリスと初めて会った時……というか、それから暫く、控えめな胸について色々と言っていたし。
実はクリスもあの言い合いを楽しんでいたとか、そんな感じか?
女心は分からん。
とはいえ、クリスが俺に対して向けている好意は間違いなく本物だ。
そうである以上、俺もそれに本気で応える必要があるのは間違いなく、俺もまたクリスに対して好意を抱いているのは間違いない。
「ねぇ、アクセル。アクセルはどこに行きたいの?」
「そう言われてもな。X世界というだけで、デート向きの場所はかなり絞られるぞ?」
コロニーが大量に落下したせいで、観光資源とかを誇っていたところも大きな被害を受けている。
また、人も99%が死んでおり、自分が生きていくので精一杯だ。
……あ、でもセインズアイランドならそれなりに平和な街なので、観光とかそういうのを楽しめる要素もあるのかもしれないな。
いつセインズアイランドに行けるのかは分からないけど。
「なら、ホワイトスターでのデートはどう? この前行った時は、私達はちょっと用事があってアクセルと一緒に遊ぶ事は出来なかったけど」
「ホワイトスターか。そうだな。フォートセバーンの一件が終わったら、一度ホワイトスターに行ってテンザン級を改修しようかと思っていたし」
「あら、そうなの? じゃあ決まりね」
「ならクリスだけじゃなくて、私がデートをする時間もあるんじゃない?」
モニクのその言葉に、シーマとクスコは自分もといった表情を浮かべる。
「とにかく、ホワイトスターに行ったらアクセルは私と一緒に出かける事。いいわね?」
クリスはそんな仲間の言葉を無視して、そう言ってくる。
俺にとっては、時間があったら全員とデートしてもいいんだが。
ただ、フォートセバーンの件が終わって休日を楽しむにしても、1日か2日。どんなに頑張っても5日というのは無理だと思う。
幸いな事に、基地に戻るというのは俺が影のゲートを使えば移動時間は考えなくてもいい。
「ああ、それでいい。俺もクリスとのデートを楽しみにしてるよ」
「あら。……ふふっ」
クリスは俺の言葉に満足したのか、笑みを浮かべるのだった。
「で? 俺に用件があるという話だが?」
そう言い、俺は目の前にいるカリスを見る。
テンザン級でシーマ達と楽しい時間をすごしていたのだが、そんな俺に対して急にフリーデンからちょっと来て欲しいと言われたのだ。
そうしてやって来た俺が案内されたのは、カリスの捕らえられている部屋だった訳だ。
部屋の中には俺とカリス以外に、ジャミルとティファ、ガロードの姿もある。
ジャミルとティファはともかく、ガロードがここにいるのはちょっと驚きだな。
カリスに対して、ガロードは一方的にやられている。
そんなガロードがこうしてカリスのいる部屋にやって来るのは、ちょっと驚きだった。
「はい。僕が気絶する前に聞いた話について、改めて色々と伺いたいと思って」
「そう言われてもな。俺が言えることは多くないぞ? ニュータイプは自然に発生する。ノモアが開発していたパトゥーリアは、カリスを生体部品にするつもりだった。……一応聞くが、フォートセバーンにはカリス以外に人工ニュータイプはいないんだよな?」
「……はい。僕以外にはいません。少なくても僕の認識ではそうなっています」
この質問に正直に答えるというのは、少し驚いた。
カリス以外に人工ニュータイプがいないのかという質問は、言ってみればフォートセバーンの戦力に対しての質問だ。
そして何故か、ジャミルは俺に驚きの視線を向けている。
サングラスをしてるので、正確にはそれが本当に驚きの視線なのかどうかは分からない。
分からないが、それでも雰囲気で考えると驚きの視線のように感じられる。
何故そのような視線を向ける?
そう疑問に思ったが、もしかしたらジャミルが尋ねた時は人工ニュータイプについての情報を話したりはしなかったのかもしれないな。
理由はどうあれ、素直に情報を話してくれるというのは俺にとって悪い話ではない。
「そうなると、ノモアは完全にカリスを使い捨てるつもりだった訳か。……それともカリスはパトゥーリアを自由に動かせるのか?」
「それは……正直なところ分かりません。ですが、僕が知ってるパトゥーリアの巨大さを考えると、恐らく難しいでしょう」
「なら、カリスはあのパトゥーリアをどう使うつもりだったんだ?」
「それこそ、普通にMAとして操縦するものだと思っていました」
そう告げるカリスの表情は、とてもではないが嘘を吐いているようには思えなかった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1930
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1754