ドラゴンクエストビルダーズ 紡がれるもう一つの歴史   作:seven river

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1-42 おおきづちの里の決戦

鎧に複数の傷を負いながら、メルキドの町に駆け込んで来るフレイユ。

魔物との戦いも一旦終わり、ファレンたちは彼女の元に近づいていく。

 

「アルドーラ…また襲って来るとは思ってたけど、こんな時に…」

 

「たくさんの魔物を引き連れてて、みんな苦戦してる…私はポルドと一緒に戦ってたんだけど、助けを呼んで来るように言われたの。まさか、そっちにも何かあったの?」

 

メルキドの町はゴーレムが、おおきづちの里はアルドーラが、同時に襲撃して破壊しようとしているようだ。

 

「うん…魔物の親玉が目覚めて、僕たちの町を壊そうとしてるんだ。手下の魔物は倒したけど、親玉との戦いが残ってる…」

 

「そうなんだ…助けを呼びに来たんだけど、どうしたらいいんだろう…」

 

おおきづちたちも共に戦い、物作りをしてきた仲間たちなので、簡単に見捨てることは出来ない。

しかし里を救援に行けば町の戦力が下がり、ゴーレムに勝てる可能性は下がってしまう。

厳しい決断を迫られる中、ロロンドはファレンに告げた。

 

「ここは仕方ない…行ってくるのだ、ファレン。我々の町作りにもおおきづちは不可欠な存在だった…メルキドの町は、吾輩たちで何とかする!」

 

「僕も行きたいけど…本当に大丈夫なのか…?」

 

武器や庭園作り、共同での素材集め、人々は幾度となくおおきづちたちに助けられていた。

そして、町をこれから発展させていくにおいて、仲間は多い方がいい。

戦いへの不安もあるがみんなそう思い、ロロンドに続いてレゾンもファレンを後押しする。

 

「大丈夫に決まってんだろ。この時のために、俺たちは強くなって来たんだ。俺たちを信じて、存分に戦ってこい!」

 

そう言われた後も、ファレンは決断できずにいた。

しかし、ロロンドたちが自信に満ち溢れた表情を見せると、彼はおおきづちの里の救援を決める。

 

「…分かった。行って、おおきづちたちを助けてくるよ。なるべく早く終わらせるから、それまで持ちこたえてくれ」

 

「もちろんだぜ!おおきづちのみんなとも、一緒に勝利を祝ってやろう!」

 

おおきづちのために危険を冒してくれるみんなに、フレイユは涙ぐみながら感謝する。

 

「みんな、本当にありがとう…!戦いが終わったら、おおきづちの精鋭を連れて来るよ。行こう、ファレン!」

 

「それじゃあ、お前さんたちのことも信じて、思いっきり戦い抜くぜ!」

 

ゆきのへたちに見送られながら、ファレンとフレイユはおおきづちの里に向かう。

それと同時に、見張り台の上にいたケッパーも大声で叫んだ。

 

「みんな、また新しい魔物が近づいて来てる!すぐに戦いの準備をして」

 

メルキドの町には、死霊や鉄の蠍、鎧の騎士、彼らを束ねる悪魔の騎士が接近してくる。

 

「本体のお出ましの前に、まだ手下がいやがるのか…まあ、一つ残らず潰してやるぜ」

 

ロロンドたちは剣を構え直し、魔物たちが侵入してくるのに備えた。

メルキドの町とおおきづちの里、二つの拠点の存亡を賭けた戦いは激しさを増していく。

 

ファレンたちは青の旅の扉を抜けると、魔物の襲撃を受けている里の中央部に急ぐ。

そこには多数のブラウニー、死霊の騎士、鎧の騎士がおり、おおきづちたちは3つの部隊に分かれて交戦している。

里の奥では、悪魔の騎士とポルドが一騎打ちをしているのも見えた。

3つの部隊は兵士のほとんどが重傷を負っており、今にも壊滅しそうな状況だ。

 

「まずいことになってるね…助けに行こう!」

 

「うん。アルドーラも気になるけど、まずはみんなを助けなきゃ!」

 

アルドーラの姿は見えないが、どうやら里のさらに奥でラグナーダと戦っているようだ。

ファレンたちは中でも被害が大きい部隊の元に向かい、おおきづちを襲うのに集中している魔物たちの背後に迫った。

フレイユはハンマーで鎧の騎士の頭部を潰し、ファレンは腕に力を溜めて旋風斬りを放つ。

 

「みんな、助けに来たよ!」

 

「こっちは僕たちが引きつけるから、みんなは残りを倒して」

 

魔物の数は多く、ファレンたちでも全員を引きつけることは出来ない。

そこで、彼らは特に強力な鎧の騎士と死霊の騎士を攻撃していった。

ブラウニーだけならば、鎧を着たおおきづちたちで十分倒すことが出来る。

 

「また助けられたな…分かった、こっちは任せてくれ!」

 

鎧でダメージを緩和して、ブラウニーたちの頭に殴りかかっていく。

その間、ファレンは騎士たちの斧や剣を回避しつつ、体勢を崩そうと足元に攻撃を加える。

鋼の剣では容易に傷をつけることができ、少しづつ体力を減らしていった。

 

「人間め…せっかくおおきづちを殺せると言うのに…!」

 

「邪魔をするな…!人間もおおきづちも今日で終わりだ!」

 

魔物たちが攻撃の手を早めて来ると、ファレンは盾での防御も行う。

攻撃力は高いものの十分受け止められるほどで、突き破られることもなかった。

 

「結構強い力だけど…僕も負けないよ!」

 

骨や鎧に傷をつけ、その傷のついた部分を集中して攻撃していった。

ファレンと並んで、フレイユも騎士たちの相手をしていく。

おおきづちの中では素早いものの、全ての攻撃をかわしきることは出来ず、鎧で多くを受け止めていった。

鎧の下にも強い衝撃が走るが、今までの戦いで痛みには慣れており、こらえて打撃を与えていく。

 

「なかなかやるね…でも、私たちは里を守り切るよ!」

 

「そこらのおおきづちよりは強いか…まあ、大した差ではないけどな!」

 

そうして騎士たちの鎧や骨は少しずつ歪んでいくが、攻撃は簡単に収まらない。

フレイユの鎧の方にも傷がつき、彼女は砕けないことを祈りながらハンマーを振っていった。

ファレンとフレイユの攻撃で、騎士の魔物たちは大きなダメージを受ける。

まだ倒れる気配はないが、このまま押し切れそうであった。

しかし、二人が戦いを続けるなか、鉄が砕け散る音が響く。

 

「くそっ…鎧が!まずいことになったな…」

 

「お前たちの鎧なんてただの鉄クズだ!今のうちに潰すぜ!」

 

先ほどまでの戦いでついた傷の影響もあり、ブラウニーと戦っていた兵士の鎧が砕けてしまった。

ブラウニーたちはそれを見ると、その兵士を集中して潰そうとする。

 

「やばいな…オレたちが援護するぜ…!」

 

「お前たちの相手も僕がするぞ!」

 

他の兵士たちは鎧を失った兵士をかばうが、彼らの鎧が砕けるのも時間の問題だった。

ファレンはその様子を見て、騎士たちを引き付けつつブラウニーの元に向かった。

 

「あっちも危ないな…このブラウニーたちも僕が引きつけるよ!このまま戦ったら危ないから下がってて」

 

「分かった…ありがとうな、ファレン」

 

ブラウニーを背後から斬りつけ、その隙に鎧を失ったおおきづちは離れていく。

ファレンは3種類の魔物から攻撃を受けることになり、盾を使っても防御は間に合わない。

彼の鎧はまだ傷が少なく砕ける気配はないので、鎧も使って防いでいった。

ブラウニーは騎士たちよりは弱く、まずはそちらを攻撃していく。

 

「邪魔な人間だな…こいつの鎧もぶっ壊してやるぜ!」

 

「大勢に囲まれては何もできまい!さっさとくたばるがいい!」

 

ブラウニーがハンマーを振り下ろしたところで頭を攻撃していく。

何度か斬っていくと表面の毛皮も落ち、よりダメージを与えやすくなっていった。

そこでファレンはさらなる斬撃を加え、だんだん弱らせていく。

 

「結構な数だけど、何とか勝てそうだね」

 

「だが、お前の鎧もかなりの傷だ。このまま砕いてやるぜ!」

 

しかし、騎士たちの攻撃も激しく、ファレンの鎧にも多くの傷がつく。

まだ壊れそうにはないが、戦いに時間をかければいずれは破られる。

また、おおきづちの他の部隊の戦況もさらに悪化しており、一刻も早く救援に行かなければならなかった。

 

「そうはさせないよ!これでどうだ、ブラウニーども!」

 

周囲の魔物たちの討伐を急いでいると、先程撤退したおおきづちが戻って来る。

鎧を壊されたため強敵と戦うことは出来ないものの、弱ったブラウニーたちを背後から殴りつけて怯ませた。

彼らが怯んだのを見てファレンは強力な一撃を放ち、トドメを刺す。

 

「さっきは助けてもらった…僕もできる限りの援護はするよ」

 

「こっちこそありがとう。残りは僕だけで戦えるから、任せて」

 

さすがに鎧なしで騎士たちと戦うのは難しいので、ファレンが感謝の言葉を言うと、おおきづちは再び下がっていく。

ファレンはまた骨や鎧への攻撃を行い、体勢を崩させようとしていった。

先に死霊の騎士たちの骨が損傷によって身体を支えられなくなり、彼らは倒れて動けなくなる。

鎧の騎士もいるので力を溜めることは出来ないが、腕の骨を集中して攻撃していった。

 

「このくらいで我らを倒せると思うな…!」

 

「お前たちがどれだけ足掻こうと、人間が勝つことなどありえない…!」

 

死霊の騎士は倒れてもなお剣を振り回し、ファレンを攻撃しようとする。

今までにはなかったことで彼は回避することはできず、盾で受け止めた。

 

「なかなかしぶといね…でも、もう少しで倒せるはず…!」

 

一度受け止めた後は、もう攻撃が来ることは分かるため避けられる。

しかし、多くの魔物の攻撃を避けつつ反撃しなければならないので、戦いには時間がかかっていた。

戦いが長引くと体力を消耗する上、他の部隊への救援も遅れるので、早めに倒さなければならない。

回避を怠るわけにもいかないので、ファレンはできる限り一撃の威力を上げようと、力を込めて腕に武器を叩きつけた。

 

「諦めの悪い人間め…早く倒れやがれ…!」

 

死霊の騎士は抵抗をやめず、弱っても鋭く剣を振り続ける。

少しずつ体力を削って倒していくことは出来たが、かなり時間がかかってしまっていた。

死霊の騎士たちが消えると、ファレンは囲まれた状態から脱して距離をとる。

そして、大きく力を溜めて近づいてきた鎧の騎士を薙ぎ払った。

 

「早く倒して、他のおおきづちたちも助けないと…!」

 

回転斬りを受けて鎧の騎士たちは大きく怯み、ファレンはその間に連続で剣を振り回す。

今までの戦いで弱っていたこともあり、騎士たちはだんだんと数を減らしていった。

早くまわりの魔物たちを倒して、さらなるおおきづちやラグナーダを助けなければならない。

しかし、怯んだ時には倒し切れず、ファレンはまた盾や鎧で斧を防ぎつつ、騎士の身体を斬り裂いていった。

鋼の剣で身を斬り刻まれ、残った鎧の騎士も光を放って消えていく。

 

「結構強かったけど何とか倒せたね…そっちはどうだ?」

 

鎧が砕けていない兵士たちはブラウニーを倒しきり、フレイユと共に騎士たちと戦っている。

救援に来た時と比べてこの部隊の戦況は大きく好転しており、このまま押し切れそうであった。

だがそんな中、遠くで戦う他の部隊の状況が目に入る。

 

「―もしかして、間に合わなかったのか…?」

 

残り2つの部隊で戦うおおきづちの数が、里に入った時に比べて明らかに減っている。

どこかに撤退しているのも見かけられず、戦死したとしか考えられなかった。

 

「くそっ…僕がもっと早く倒せていれば!」

 

騎士たちとの戦いに時間をかけすぎて、仲間たちを守れなかった。

ファレンは自分の力不足を悔いるが、そんなことを考えている時間すらない。

まだ生き残っているおおきづちもみんな重傷を負っており、今すぐ救援に向かわなければならなさそうだ。

 

「…とにかく、今生きてるみんなを助けないと…!」

 

ファレンは剣を構えて、生き残っているおおきづちたちの元に向かう。

2つ目の部隊にはマレスやランジュがおり、みんな瀕死と言えるほど弱っていた。

救援に行くのが遅れたこともあり、みんな鎧ももうなく、魔物たちの攻撃が直撃している。

ファレンは魔物たちに後ろから忍び寄り、旋風斬りを叩き込む。

 

「みんな、助けに来たよ…!遅くなって、仲間たちを守れなくて、ごめん…」

 

「こんな数の魔物なんだ…仕方ないよ。もうダメかと思ったけど、嬉しいぜ…」

 

強烈な一撃を受けて、戦いの中でダメージを受けていたブラウニーの数体が消えていく。

魔物たちはファレンに狙いを定め、その間にマレスは息も絶え絶えになりながら話し、仲間たちと共に撤退した。

旋風斬りで少しは倒したとは言え、前よりも多くの魔物に取り囲まれる。

一つ目の部隊の兵士たちと違い、この部隊の兵士はもう戦える状態になかった。

どう戦おうかとファレンが考えていると、フレイユたちも駆けつけて来た。

 

「こっちも終わったよ、ファレン。一緒にこの魔物たちを倒そう!」

 

「オレたちもまだまだ戦える。手伝うぜ!」

 

フレイユたちは果敢に魔物に挑んで行くが、仲間たちの戦死を知ったことで、みんな悔しそうな顔をしていた。

仲間たちの仇を討つため、そして今生きている者を救うため、ハンマーを振り回していく。

先の戦いと同様にファレンとフレイユは騎士たちを、おおきづちたちはブラウニーと戦った。

鎧を失った兵士は直接戦いには加わらず、攻撃出来る隙を伺っている。

 

「おおきづちどもを皆殺しに出来ると思ったのに、邪魔しやがって…!」

 

「人間もおおきづちもまとめてあの世送りだ!」

 

盾と回避を駆使しつつ、こちらの魔物たちにも少しずつ傷をつけていく。

死霊の騎士は倒れても攻撃して来るので、今度は腕を先に斬っていった。

仲間を殺された悔しさと怒りで、みんな力強く武器を叩きつける。

しかし、それでもすぐに魔物たちを倒すことはできず、3つ目の部隊はさらに厳しい状況に置かれている。

まだ窮地の仲間がいるのに助けにいけないということが、さらにファレンたちの悔しさを増幅させた。

 

「くそっ…!早く倒さないとあっちのみんなまで!」

 

「人間など所詮無力な存在!一人増えたところで滅びの運命は変わらぬ」

 

これ以上の犠牲を出したくないのにそれは叶わない、そんな状況に置かれている。

 

仲間たちが殺されていく様子を見て、悪魔の騎士と戦っているポルドも強い怒りを覚えていた。

一刻も早く助けに行こうと、彼は単身で強力な魔物に立ち向かっていく。

 

「貴様の仲間たちも次々に死んでいる。おおきづちどもは魔物たちを裏切ったことを後悔し、絶滅するがいい!」

 

「なんと言われようと、俺は屈するつもりはない!よくも里のみんなを…絶対に倒してやる」

 

悪魔の騎士の攻撃を鎧で受け止め、何度も頭に向かってハンマーを振り下ろした。

騎士は救援を呼びに行く前のフレイユとも戦っており、かなりの傷がついている。

しかし、ポルドの鎧も砕けかかっており、勝利を確信して斧を振り回していた。

ポルドは攻撃力は高いが回避力はなく、攻撃は全て受け止めるしかない。

強烈な斬撃を受け続けて、彼の鎧はついに壊れてしまう。

 

「終わりだな、おおきづちめ」

 

「まだ終わるつもりはない。必ず里を救って見せる!」

 

悪魔の騎士は思い切り斧を叩きつけ、ポルドも力をこめて受け止める。

両者は一歩も譲らず、どちらも簡単に弾き返されることはなかった。

このままでは決着がつかないと、悪魔の騎士は一度斧を振り上げて、ポルドの横側に斬りかかる。

だが、彼もすぐに反応して受け止め、せめぎ合っていた。

何度も斧とハンマーが激しくぶつかり合い、互いの武器が削れていく。

しかし、木製のハンマーの方がもろく、壊れかけていた。

 

「ダメだ…このままだとハンマーが…。普通に押し切ろうとしても無理だ」

 

何とかして力を溜められないかと思い、ポルドは後ろに下がっていく。

しかし、弱ったポルドではなかなか距離を取れず、隙が出来ない。

さらに、距離を長くとると悪魔の騎士の方も力を溜め始めた。

 

「逃げようとしたところで無駄だ…ハンマーだけじゃない、全身を砕いてやる!」

 

鎧の騎士や悪魔の騎士の大技である突進を使うのであろうとポルドは推測し、受け止めるためにも力を溜め始める。

突進は速く、この距離では避けられるものではなかった。

遠くに逃げられる時間もなく、ポルドは全身の力を手足に溜める。

 

「散れ、おおきづちめ!」

 

「うぐっ…!何としても防いでやる…!」

 

足で地面を強く踏みしめ、突進の威力を相殺しようとする。

強い怒りを持って、残った力を集中させていった。

悪魔の騎士の突進の威力は次第に弱まり、直撃は避けられる。

しかし、大きく体勢を崩して動けなくなり、突進後の隙での攻撃は出来そうもなかった。

 

「くそっ…やるなら今しかないのに…!」

 

全身の激痛を抑えて何とか立ち上がるが、一撃しか与えられないまま、悪魔の騎士は立ち上がろうとする。

 

「よく耐えやがったな…おおきづちの中でも別格のようだが、もう限界だろう」

 

ポルドの二撃目を受け止めて、悪魔の騎士は体勢を立て直す。

これ以上はハンマーが耐えられず、逆転できる望みは薄い。

 

「いや、オレたちはまだ終わりじゃない…!」

 

「んっ、誰だ…!?」

 

だがその瞬間、悪魔の騎士の後ろから力強い声が聞こえ、悪魔の騎士の身体に3つのハンマーが振り下ろされる。

突然の一撃に悪魔の騎士は怯み、ポルドはそれを見て反撃を行う。

騎士の後ろを見ると、そこにはファレンたちに助けられたマレスたちがいた。

 

「お前たち、来てくれたのか…!」

 

「うん。オレたちはもう鎧もないけど、このまま引き下がっちゃいけねえと思ってな!」

 

「鎧をなくしても頑張ってる奴もいた…僕たちも下がってはいられない」

 

助けられた1つ目の部隊の中に、鎧を失っても攻撃の隙を伺い、戦おうとしていた者がいた。

マレスたちは彼より怪我が酷いが、それでも下がってはいられなかった。

 

「おのれ…余計な邪魔をしやがって…!全員引き裂いてやる!」

 

「みんな、今のうちにやるんだ…!」

 

斧を振り下ろして来る悪魔の騎士に対して、ポルドが再びハンマーで受け止め、みんなに指示を出す。

悪魔の騎士自体も今までの戦いで弱っており、3人の力もあれば押し切れる。

 

「了解だ、兵士長!」

 

昔は臆病だったマレスも、勇敢に強大な敵に立ち向かっていく。

みんなの攻撃を受けて、悪魔の騎士はまた動きを止めていた。

そこでポルドは再び力を溜めて、旋風打を放つ。

 

「みんなよくやったな!悪魔の騎士め、これで最後だ!」

 

旋風打を受けてさらに大きく怯み、マレスたちは残った生命力を削り取っていく。

旋風打とその後の連撃で、悪魔の騎士は力尽きて消えていった。

戦いを終えたポルドに、マレスたちは3つ目の部隊について話す。

 

「何とか倒したな…本当に助かったぞ」

 

「こっちこそ役に立ててよかった…そうだ、あっちの部隊がまだ苦戦してるんだ」

 

マレスたちが戦っていた魔物を相手しているファレンたちは安定して戦えているが、3つ目の部隊は危険な状態のまままだ。

全滅は免れており、ポルドはそれを聞いてすぐに援護に向かう。

アルドーラと戦うラグナーダの様子も気になるが、兵士を見捨てることは出来なかった。

 

「すぐに向かう。みんなは隙が出来たところで魔物を叩き潰してくれ」

 

ポルドは手下の魔物と戦う余力はあるが、マレスたちが正面から戦うのは難しい。

3人は隙が出来たところで攻撃を行うため、少し距離を置いて様子を伺っていた。

ポルドはまずブラウニーたちの後ろにまわり、旋風打で薙ぎ払う。

 

「遅くなってすまない。後は俺に任せてくれ!」

 

戦いで弱っていたブラウニーは旋風打が直撃し、倒れて消えていく。

3つ目の部隊にはプロウムやアンセルがおり、彼らは戦線を一度離脱していた。

ポルドは残った魔物に囲まれ、攻撃を弾き返しながらハンマーで叩き潰していった。

今のポルドであれば、手下の魔物の攻撃は容易に弾き返すことが出来る。

しかし、魔物の数が多すぎて全てを弾き返すことは出来ず、身体中に攻撃を受けてしまう。

 

「数が多すぎるな…ここは何とか耐え抜くしか」

 

ポルドの生命力はだんだん失われていき、攻撃の勢いも少しずつ弱まっていく。

誰もが命の限りを尽くして戦わなければ、この戦いに勝つことは出来ない。

ポルドが武器を弾き飛ばしたことでマレスたちや撤退した兵士たちも全員で集まり、魔物たちに殴りかかった。

 

「もう兵士長だけに任せてはいられない、全員で行くぞ!」

 

魔物が起き上がった後も再撤退はせず、残った力で戦いを続ける。

弱った兵士たちでも大勢が集まるとかなりの戦力になり、敵に大きなダメージを与えられた。

しかし、いつ誰が死んでもおかしくない状況であり、安定しているとは言えなかった。

 

ファレンたちは1つ目の部隊の時と同様に戦い、騎士たちやブラウニーを追い詰めていく。

ポルドたちの加勢で3つ目の部隊の壊滅は避けられたが、依然として危険な状態には変わりない。

まずは死霊の騎士の腕を破壊して、剣を落とさせていった。

 

「俺の腕をぶっ壊しやがって…だが、まだやられねえぜ」

 

死霊の騎士は剣を持つ腕を失うと、もう片方の腕ですぐさま拾おうとする。

しかし、拾おうとする動きが隙になり、ファレンはそこで強力な連撃を叩き込んでいった。

拾った後も反対の腕では攻撃速度が下がりより斬りかかりやすくなっている。

 

「どこまでもしつこい奴だぜ…もう諦めたらどうだ?オレたちを倒したところでブラウニーの長老様がいるんだぜ」

 

「確かにあいつは強い…でも、勝って生き残ってやるさ」

 

彼らを倒しても、この後にはアルドーラやゴーレムが待ち受けている。

だが、ここまで進んできた以上、彼らも倒してメルキドとおおきづちの里を救うしかない。

ファレンは強い思いを抱きながら、騎士たちを攻撃していった。

死霊の騎士の片腕を落とした後の攻撃もかわしやすいとはいえ、倒すのが遅れる原因となるので、もう片方の腕も破壊していく。

腕を2本とも失うと死霊の騎士は無力化され、その隙にとどめを刺していった。

 

「これでこいつらは終わりだね…後は鎧の騎士を倒そう」

 

鎧の騎士は斧を振り回し続けるが、盾は分厚く壊れる気配がないので、防御も確実にして剣を振り回す。

弾かれないように側面にまわり、鎧を斬り裂き深いダメージを与えた。

フレイユたちも魔物にダメージを与え続け、少しづつ数を減らしていた。

ブラウニーを倒しきると、兵士たちも騎士たちに挑んでいく。

多少の攻撃を受けてはいたが、まだ鎧が砕かれてはいなかった。

魔物が怯んだところでは、先ほど鎧を失った兵士も攻撃を行う。

こちらの戦いは順調で、ポルドたちもまだ誰も死んではいないが、あまりゆっくりと戦ってはいられない。

 

「早く倒して、ポルドたちを助けに行こう」

 

二段跳びで勢いをつけて、側面から鎧の騎士を斬りつける。

勢いをつけた分だけ威力も大きくなり、騎士たちの体力は次々に削れていった。

鎧の騎士たちが瀕死になると、ファレンは勢いをつけての攻撃を続け、全員倒していく。

おおきづちたちも攻撃を続け、2つ目の部隊を襲っていた魔物たちを倒しきった。

目の前の魔物たちとの戦いが終わると、ファレンたちはポルドの元に向かう。

今のところ、新たな死者は出ていないようだった。

 

「何とか倒したな…そっちも終わったみたいだね」

 

「うん。ポルドたちはまだ苦戦してるし、みんなで助けに行こう」

 

共に戦ったおおきづちも全員引き連れて、ファレンたちはポルドの元に向かう。

兵士たちはそのまま戦いに参加するが、ポルドはファレンとフレイユに別の指示を出す。

 

「ポルド、みんな!助けに来たよ!」

 

「厳しい戦いだったけど、本当に助かったぜ。…だが、ファレン、フレイユ、二人には長老の元に行ってほしい」

 

アルドーラと戦い続けているラグナーダと一部の兵士たち。

彼らの状況はここからでは見えないが、アルドーラの強さから苦戦を強いられていることは用意に想像出来た。

 

「アルドーラと戦ってるんだったな…確かに心配だけど、こっちは大丈夫なのか?」

 

「仲間たちもたくさん来てくれた…みんなの力があれば必ず勝てるはずだ」

 

おおきづちの兵士たちが集まり、騎士たちやブラウニーとの戦いは好転して来ている。

それでもファレンは心配だったが、マレスとアンセルは自信ありげに話した。

 

「大丈夫さ。今までもオレたちは、魔物を倒して里を守ってきた。今回だってこのままうまくいくさ」

 

「長老の相手はこいつらの比じゃない…ここはオイラたちに任せて、長老を助けてくれ!」

 

2人だけでなく、兵士たちみんなが勝てると信じて、目の前の魔物に立ち向かっている。

メルキドのみんなもおおきづちの里のみんなも、勝利を確信して送り出してくれた。

そんなみんなの様子を見て、ファレンは二人の長老の元に向かう決意をする。

 

「分かった。それじゃあ、ラグナーダのところに行ってくるよ!」

 

「長老には何度も助けられた…こうしてファレンと仲良くなれたのも、長老のおかげだよ。絶対に長老を助けようね!」

 

「そうか…みんなと仲良くなれたのも。うん、必ず勝とう!みんなも負けないで!」

 

ラグナーダが今の考えを持っていなければ、おおきづちと人間の協力はなかった。

おおきづちたちの勝利を信じ、人間とおおきづちを結んでくれた彼を救うため、そしておおきづちの里を救うため、ファレンとフレイユはアルドーラとの戦いに向かった。

2章以降に関して。1話の長さを短くして毎日投稿出来るようにするか、1話の長さはこのままで不定期更新にするか、どちらが良いでしょうか?

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