ソードアート・オンライン〜絶剣と絶えぬ光〜   作:ルサンチマン
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投稿が遅い上に次回予告詐欺になってしまって申し訳ありません。
第一層攻略ですが、予想以上に長くなったため、二つに分けました。
後半は九割方完成しているので明日投稿予定になります、



これからもよろしくね

 デスゲームが始まって一ヶ月。レイトたちは第一層ボス攻略会議に参加していた。

 多くのプレイヤーが劇場型の広場に集められ、会議が開かれるのを待っている。

 

「うわ~、強そうな人がいっぱいいるね。ボク大丈夫かな」

 

 レイトと一緒に広場に入ったユウキは不安そうに辺りを見回している。病室で暮らしていた彼女にとっては人がたくさんいるところには慣れてないのである。

 

「人込みが嫌なら無理してくる必要は無かったんだぞ」

「だって一人でお留守番なんて寂しいし」

 

 一応レイトは、宿屋で人が多いかもと止めたがこういうとこでは強情な彼女は無理してついてきた。あるいはレイトと離れるほうが不安だったというのもあるかもしれない。

 

「まあ俺がいるから安心しろ」

 

 とは言ったものの彼女はSAOでは数少ない女性プレイヤーである。中にはユウキに声を掛けてくる輩もいた。凄みを利かせて睨みつけたらすごすごと下がっていったが。

 そんなやり取りをしつつ待っていると後ろから聞き覚えのある声が掛かった。

 

「その白コート、もしかしてレイトか?」

 

 ん?と振り返ると中性的な顔立ちの少年が立っていた。こんな知り合いいたかと記憶を探ってる途中で思い当たった。

 

「白コートってことは、お前キリトか?」

「ああ、久しぶりだな」

「何だよ。ベータの時とは随分違うじゃねえか」

 

 ベータテストのときは爽やかな好青年の風貌をしていたが、今は幼さが残る顔立ちであり、レイト達と同年代であることが伺えた。

 

「まあな。それよりまずは自己紹介からするべきかな。お互い連れがいるみたいだし」

「私はあなたの連れじゃないわよ」

 

 さっきからキリトの後ろで控えていたローブ姿のプレイヤーから不満そうな声が上がる。アバターは見えないが、声から察するに女性のプレイヤーのようである。彼女の素性が気になったが、特にユウキの反応は顕著であった。

 

「わあ~、女性のプレイヤーさん!?」

「え、ええ」

 

 予想外の食いつきに少し困惑気味に答える女性。SAOにいる数少ない女性の一人なのだから当然と言えば当然である。

 

「とりあえず俺はレイト。でこいつはユウキ。俺の……友達だ」

「よろしくね」

 

 友達という表現に一瞬ムッとしたユウキだが特に異論はないのかいつもの人懐っこい笑顔で応じる。

 

「ああ、よろしく。俺はキリトでこっちはアスナ。少し縁があって一緒に行動している」

「よろしく」

 

 頭をかきながら紹介するキリトと無愛想に応じるアスナ。だがさすがに顔を合わせないのは失礼に思ったのかフードを取った。

 

「わあ」

「へえ」

 

 フードの中から現れた顔立ちにユウキとレイトは同時に感嘆の声を上げる。その顔立ちは取り分け整っており、ユウキの可愛さとは違い、綺麗というべきタイプの美少女であった。

 しかし、拒絶するかのようにすぐにまたフードを被ってしまう。近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女だがユウキには特に関係ないようで

 

「ボク、女の子の友達欲しかったんだあ。ねえあっちでお話しよ」

「ちょ、ちょっと待って」

 

 アスナの手を無理やり引っ張って向こうに行ってしまった。思えば病室暮らしの彼女にとった同年代の少女と話す機会はそうそうない。こういう機会に交流を深めるのもいいだろう。

 

「まあ、ああいうやつだ。よろしく頼む」

「賑やかそうでいいな」

 

 デスゲームではあまり見ることはない子供らしい光景に苦笑していると

 

「そろそろ始めるので集ってください」

 

 と声が掛かり、二人は慌ててユウキ達の後を追った。

 

 

 

 

 ユウキ達と合流するレイトとキリト。二人は女性プレイヤーということもあって後方の席に座って話していた。

 

「ボクあの映画好きなんだ。テロリスト相手に一人て戦うやつ」

「あ、シリーズ4まで出たやつでしょ。私も見たわ」

 

 相性が良かったのかどうやらもう打ち解けたらしい。少し安堵しながらレイトとキリトが彼女らの隣に座るとすぐに会議は始まった

 

「はーい! 五分遅れたけど、そろそろ始めさせてもらいます!」

 

 そう言って、劇場型の広場の一番下の段に青い髪のプレイヤーが降り立った。どうやら彼がこの会議の司会を務めるようだ。

 

「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう! 俺はディアベル。職業は気持ち的に《ナイト》やってます!」

 

 胸を叩きながら冗談交じりに言うディアベル。その言葉に一部からどっと笑いが起こる。職業システムがないSAOに《ナイト》などという職業は無い。だが彼のいで立ちは騎士然としていてナイトと言えなくもない。ともかくつかみとしてはばっちしである。

 全員の注目を集めたのを実感したディアベルは、一部の盛り上がりを手で諫めながら続けた。

 

「さて、早速本題に入らせてもらうけど、今日、オレたちのパーティーが、第一層のボスの部屋を発見した!」

 

 群衆からどよめきが起こる。そこそこ迷宮区に潜っていたレイトもそこまで進んでいたのか感心していた。

 

「一ヶ月。ここまで一か月かかった。けど、それでも、オレたちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームもいつかクリアすることができるということを、はじまりの町にいるみんなに伝えなきゃならない。それが、今この場所にいる俺たちの義務なんだ! そうだろ、みんな!」

 

 ディアベルの言葉に、あちこちから拍手が起こる。プレイヤーの士気も大分上がり、ボス攻略に対す一致団結した空気が流れるがその時、

 

「ちょお待ってんか!」

 

 階段状の席の中段から声が上がる。そこに目を向けると、小柄ながらがっちりした体格であり、サボテンのように尖った茶色い髪が特徴的な男が立っていた。その男は階段を降り、下の段までやってくると

 

「わいはキバオウってもんや」

 

 と大胆に名乗り、周囲のプレイヤー達を見回す。突然の乱入者にディアベルは落ち着いた声で対応する。

 

「何か意見があるのかな?」

「せやで。少し言わさせてもらうが、こん中に何人か、今まで死んでいった二千人にワビ入れなあかん奴らがおるはずや」

 

 キバオウの粗暴な言葉に先ほどとは違ったどよめきが沸き起こる。ディアベルも少し眉をひそめたが、先を促した。

 

「キバオウさん、君の言う《やつら》とはつまり、元ベータテスターのことかな?」

「決まっとるやないか」

 

 背後に立つディアベルを一瞥してから、キバオウはさらに続ける。

 

「ベータ上がりどもは、こんクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった。やつらはウマい狩場やボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強なって、その後もずーっと知らんぷりや。こん中にもおるはずやで! ベータ上りが! そいつらに土下座さして、貯め込んだ金やアイテムを吐き出してもらわな、パーティメンバーとして命は預けられんし、預かれん!」

 

 キバオウの糾弾が終わり、キバオウの言わんとしていることを理解した群衆のどよめきはさらに大きくなる。

 ベータテスターであるレイトはキバオウの言い分に思うところが無いわけではなかった。だが、彼自身、ユウキを守るのに精いっぱいだった。

 しかし何より気に食わなかったのは

 

「恵まれてねえのを言い分に不満を言って、他人から奪い去ろうとする。そういうやつ心底嫌いだ。必死に耐えて、頑張っているやつもいるというのに」

「レイト……」

 

 レイトの瞳に怒りにも似た激情が宿るのをキリトは見て取った。今にも飛び出していきそうな勢いだったが。唐突に響いた声にさえぎられた。

 

「発言、いいか」

 

 と言いながら前に出てきたのは、大柄な男性プレイヤーだった。頭を完全なスキンヘッドにし、焼けた肌。そして彫りの深い顔立ちは外国人を思わせた。

 

「俺の名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターたちが面倒を見なかったせいで二千人が死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろ。そういうことか?」

「そ……そうや」

 

 エギルの風貌に若干気圧されたものの言い返すキバオウに、エギルは腰につけたポーチから一冊の本を取り出した。

 

「このガイドブック、あんたも貰っただろう? 道具屋で無料配布しているからな」

「貰たで。それが何や」

「これを配布していたのは、元ベータテスター達だ」

 

 プレイヤーたちの間で大きくどよめきが起こる。この場にいた全員が、同じようなものを持っていたのだろう。エギルは全員にガイドブックを見せながら続ける。

 

「いいか、情報は誰にでも平等に与えられていたんだ。それなのに多くのプレイヤーが死んだ。そのことを踏まえた上で、どうボスと戦うか。それがこの場で議論されると、俺は思っているんだがな」

 

 エギルの理路整然とした言葉にさすがに言い返す言葉がなかったのか、ふんと鼻を鳴らして近くの席に座り込んだ。一連の騒動が終わり、他のプレイヤーも落ち着いてきた。それを見て取ったディアベルは会議を再開した。

 

「ボスの情報だが先ほど例のガイドブックの最新版が配布された!」

 

 ディアベルはその最新版を掲げて全員に見せた。

 

「これによるとボスの名前は、《イルファング・ザ・コボルトロード》。そして《ルインコボルト・センチネル》という取り巻きがいる。ボスの武器は斧とバックラーだが、四段あるHPゲージの最後の一段が赤くなると《曲刀》カテゴリのタルワールに持ち替え、攻撃パターンも変わるということだ」

 

 ボスの説明が終わるとディアベルはガイドブックを閉じてパーティ編成に取り掛かった。

 

「それじゃあ、六人のパーティーを組んでみてくれ! 六人のパーティーを束ねた《レイド》で戦うことになる!」

 

 あちこちでパーティが作られる中、レイトは迷っていた、不用意にパーティーを組んでユウキを不安がらせるのは避けたい。そんなふうに考えていると

 

「ボク、アスナとパーティー組みたいなあ」

「わ、私と⁉︎」

 

 女子の間で勝手にパーティー作りが進んでいた。こういうときの行動の遅さは男子特有のものか。キリトも同じようなことを考えていたのか互いに苦笑いをする。

 

「どうせ人数的にも四人余るんだ。俺たちでパーティーを組むか」

 

 キリトの言葉にアスナは何か言おうとしたが、ユウキの頼みも相まって断りづらいのか渋々了承する。

 パーティーを組み終わったのを確認したディアベルは各々に役割を与えた。レイト達は《ルインコボルト・センチネル》の相手をすることとなった。そしてディアベルディアベルが攻略の日時だけ伝えると会議はお開きになった。

 

 会議が終わってレイトとキリトもそれぞれの宿に帰ることにした。別れ際、ユウキはアスナに向かって

 

「またね、アスナ」

 

 と大きく手を振るとアスナは小さく手を振って去っていく。レイトはその光景をほほえましく見ていた。

 

 

 

 宿に戻ってユウキとレイトは一息つく。明日に備えて英気を養おうとレイトはベッドに横になる。横になって目をつぶるレイトは今日の会議のやり取りが脳裏に浮かんでいた。

 キバオウが言っていたベータテスター。自分もその一人という事実。自分だけならともかくユウキまで非難の対象になるのではないのかという不安があった。

 

(俺はユウキを守り切れるのか)

 

 明日のために早めに寝なければならなかったが、その不安が脳裏にこびりついて離れない。寝れずにうなっているとドアがコンコンとノックされる。扉を開けるとユウキが立っていた。

 

「あ、レイト、ちょっといい」

「ああ、いいぜ。何か飲むか」

「あ、ううん。ちょっとだけだから」

 

 ユウキはドアのとこに立ったまま、少し恥ずかしそうに言う。

 

「ボクはしばらく病室で過ごしてたから外の世界を見れなかった。でもレイトが連れ出してくれたから、外の世界が見れたし今日は友達もできた」

「そうか」

「だからレイト、これからもよろしくね」

 

 いつもの笑顔のユウキだが、今浮かべた笑みは格別のもののようにレイトは感じた。だが、すぐに顔を真っ赤にして

 

「あ、これはべ、別に深い意味とかは無いからね。これからもずっとというか何というか。じゃ、じゃあね!」

 

 バタンとドアをしめて駆け出して言ったユウキ。後半はごにょごにょ言って聞こえなかったが、感謝してくれてるらしい。

 しかしユウキは気づいているのだろうか。レイトのせいでこのデスゲームに閉じ込められたということを。

 だからこそレイトはせめてもの罪滅ぼしとしてユウキを守り、幸せにしなければならなかった。

 

(迷うことじゃなかったな)

 

 再びの決意を固め、レイトは床に就いた。




会話に出てきた映画は何の映画か分かるでしょうか。
映画は好きなのでこういう映画ネタみたいなのはちょくちょく入れていきたいです。

題名現在は『絶剣と絶えぬ光』なんですが、元はレイトの二つ名をとって『絶剣と白夜叉』の予定でした。 しかし見た感じ作風とかは違うと思いますが、他の方の作品で白夜叉とタイトルに入った作品がありました。あんまり被りたくなかったので現在のタイトルにしてます。 私としては読者の方があまり気にしないのであれば『絶剣と白夜叉』にしたいのですが、どうでしょうか。

  • 今のまま
  • 絶剣と白夜叉

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