ランス00 ジルルート   作:甘党熊猫

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 Q 魔王スラルが突然現れたらどうする?


SS0193 魔王スラル

ーーーー私はスラル、魔王よーーーー

 

 ランスは、目の前でそう名乗った少女から、目が離せなくなっていた。

 

 目の前の少女は、ジルとは別の角度で男が目を奪われる、類い稀な美少女である。

 

 しかし、その正体は、この大陸において、表状最強の魔物。

 人々を苦しめる魔人達の支配者にして、魔人圏最強の生命体。

 

 

 

 長年に渡り、メインプレイヤー達へ不幸を与える存在、魔王である。

 

 

 

 

「初めまして、貴方が私のメガラスを倒した人間であってるわよね?」

 

 ピラッ

 

「ほう、黒か。 結構ませとるな」

 

 ランスはスラルのスカートをめくった。

 

「…………え?」

 

「うーむ、眼福眼福……やはり可愛い子のパンツはいいものだ」

 

 無駄な肉の付いてないほっそりとした太腿に、大人びた黒い下着が、彼女の美貌をより一層磨いていた。

 

 鬼畜戦士ランス、あえて気配を隠しているスラルがただの少女にしか見えなかった彼にとって、相手が自身を魔王と名乗った事など、美女か可愛い女の子である事に比べれば、心底どうでもよい男であった。

 

「……あ」

 

「ん……なんかデジャブ……」

 

 何となく懐かしい感覚になったランスが顔を上げると、そこには毒々しい赤い涙目を丸くさえ、パクパクと口を開口させながら、同じように赤く染まった顔でこちらを見つめる少女の姿があった。

 

「きゃっ……」

 

 

 

 

 ーーーーきゃぁああああああああッ!!ーーーー

 

 

 

 

 

「ぐぎゃぼおおおおっっ!!」

 

 スラルが悲鳴を上げた瞬間、彼女から赤い突風が発生し、そのまま周囲を吹き飛ばした。

 無論、スカートの中身を覗く為にしゃがんでいたランスも巻き込まれ、突然の事に踏ん張る事も出来ず、そのまま少し先の地面に叩きつけられた。

 

「か、かうかうかう……」

 

「ひゃ、ひゃぁぁ……み、みられたぁ……初めて異性にあ、あんな場所を……ひゃぅぅ……」

 

 ゴキブリのように地面を這い回るランスと、赤く染まった頰を両手で押さえ、いやんいやんと顔を左右に振るスラル。

 

 現場は既に収拾がつかなくなっていた。

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

「ん……うーむ、俺様いったい……」

 

「ーッ!? や、やっと目を覚ましたようね……」

 

「ん? うぉっ!?」

 

 気絶していたランスが目を覚ますと、そこには、自身を見下ろすスラルの姿があった。

 その頰はまだ少し赤くなっており、人差し指で髪先をクルクルと弄っていた。

 

「全く、ロクに話もしないで、私のぱ、ぱ……あ、あんな物を見るだなんてッ!」

 

「パンツの事か? 中々グッドだったぞ」

 

「炎の矢ッ!!」

 

「んぎゃーーーーッ!?」

 

 ランスの顔に炎の矢が直撃した。

 ……もっとも、かなり、かなーり手加減されていたようで、前髪の先が少し焼ける程度のものであった。

 

「おのれ、何をするッ! 俺様が何をしたってんだッ!」

 

「えっ、だって私のパンツ……て、ここで怒るのって私の方じゃないのッ!?」

 

 ランスのあまりにも横暴な激昂に、流石のスラルも目を丸くさせて驚いた。

 

「……ったく、こんなのが本当にメガラスを倒したのかしら? それとも人違い……?」

 

「おい、何をブツブツ言っとる」

 

「あっ! そ、そうよ! 一つ聞きたいんだけど! 私のメガラスを倒したのって、貴方の事かしら?」

 

 慌てて持ち直したスラルは、くだんの件の人間の片方がこの男なのかを確かめる為、その問いを発した。

 

「……? メガラス…………? あっ! あの素早い無口の雑魚か!」

 

「え、ちょっと、今変な間がなかったかしら?」

 

 何とか思い出せたランス。

 彼にとって、男の名前など三歩歩けば忘れていくものであった。

 

「がはははは! 確かにあの白いハエ野郎を倒したのは俺様だぞ?」

 

「ーーーッ!! やっぱり……」

 

 自慢気に話すランス、一見信じられないが、メガラスの容姿を思わせる発言に、彼の言葉が嘘ではない事を察したスラル。

 そんな彼女は、一息ついて目を瞑ると、更に言葉を続けた。

 

「なら、倒した後にその魔人はどうしたのかしら?」

 

「ん、ヘンな事が気になる子だな、もしかしてアイツに家族でも殺されたのか?」

 

「……そうよ」

 

 本来は、最初に名乗った通り、魔王としての威厳を見せつける事で言いなりにし、おそらく殺されてるであろうメガラスの魔血魂を回収し、あわよくば彼を倒した人間2人も魔軍に加えようとしたスラル。

 

 しかしどうやら彼の様子を見るに、自身が魔王だと名乗っても信じず、それどころかセクハラを仕掛けてくるような男であるらしいので、彼女は彼の言った、『魔人に家族を殺された少女』を演じる事にした。

 

 無論、ここで魔王としての力を解放し、彼を威圧する事で従えるのもありだろう。

 

 だが、それでは今までの魔人を従えて来た時と変わらない。

 

 新たな刺激を求めるスラルは、新しいやり方で目的を達し、彼を自身に忠誠を誓わせようとしていた。

 

「そ、それで、魔人メガラスの死体はどうなって……」

 

「死体? アイツはまだ死んどらんぞ?」

 

「えっ……」

 

「実はな、俺様の女に、ジルちゃんという子がいるのだが、何やらヘンな実験が好きなようでな、マケッコンがどうとやらという実験をしとるみたいなのだ」

 

「マケッコン……魔血魂の事よね……なんで人間があれの事……」

 

「ジルちゃんが言うには、自身のものと比べるなどと言っとったがな」

 

「ッ!? そ、その話は本当かしら!?」

 

「うぉ、ああ、ほんとだぞ」

 

 自身には全くわからない実験内容であったが、やけに少女の食いつきがいいため、あっさりとバラしていくランス。

 この場にジルが居たら、死なない程度に罰っせられていただろう。

 

(まさかこんな所で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?)

 

 対してスラルは、魔人が総勢24体という情報に反し、魔王城に集まる魔人が23体である事に悩んでいたのだが、その最後の一人と思われる存在の手がかりがこんな所で手に入るとは思っていなかった為、つい演技を忘れて食いついてしまっていた。

 

「やったわ……ぱ、パンツは見られちゃったけど、今日の私、ツイてるわ……」

 

「どうした、えーーーと……」

 

「スラルよ、私の名前はスラル」

 

 自身の名を覚えられていないランスに、改めてスラルは名乗った。

 

「ああ、そうだスラルちゃん! ……あれ、なんか他にも名乗っていたような……」

 

「さ、さあ? 気のせいじゃないかしら?」

 

 幸いな事に、彼は自分が魔王と名乗った事とその直後の突風は忘れてくれていたようだ。

 

「それでスラルちゃん、君は俺様に何のようがあるのだ?」

 

 ランスがそう尋ねた瞬間、スラルはわざとその両目を潤ませると、上目遣いで彼に頼んだ。

 

 

「あのメガラスを倒した貴方に、頼みがあるの!」

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 一方、その頃のジルは、

 

「………なんだ?」

 

 何故か胸騒ぎがしたものの、あまり気には止めず、改めて魔血魂の研究を続けるのだった。

 

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 アミカゴ国

 

 遠い未来、ゼスと呼ばれる土地の端に、その国は存在した。

 

「おせおせーーッ!!」

 

「人間どもをぶち殺せーーーッ!!」

 

 今代の魔王、スラルはありゆる国に戦を仕掛けては、後の指揮はそれぞれの国につき、1人の魔人に全権を託していた。

 

 そしてこの戦場にも、1人の魔人がいた。

 

「ぶはーはっはっ!! 殺せ殺せぇッ!! 八つ裂きにしろーーーッ!!」

 

 それは、別の世界で学ランと呼ばれる服を身につけ、頭には天を貫かんと伸びる巨大なリーゼント。

 

 ヤンキーの魔人、『バンチョー』が、アミカゴ国の指揮担当だった。

 

「おう、これでいいのか?」

 

「はい、兵士達への一喝、感謝いたしますバンチョー様」

 

 もっとも、彼に指揮の能力や統率の技能はなく、彼の軍の指揮は数体の魔物将軍が代わりに行っている。

 

「それでは、バンチョー様はこちらにてご待機ください」

 

「何ぃ? 俺ぁ今からあのヘンテコな人間共をぶち殺しにいくんだよ!! それとも何か? 俺様には人間共に挑ませねぇってか? あぁんッ!?」

 

「はい、バンチョー様には()()待機していて貰います。 ですが、我々魔物では勝てぬ敵、あの『ムシ使いの男』が出てきたその時、バンチョー様にはその男と戦っていただきたいのです」

 

「ん、あぁ、そういう事か! ぶはーはっはっ! お前らじゃ勝てん一番強え奴を殺せばいいんだな!!」

 

 魔物将軍の言葉に、大人しく戦場を見渡せる位置に設置された椅子にどっしりと構えるバンチョー。

 

 粗雑で乱暴や性格ではあったが、彼はまだ魔人の中では融通の利く方であった。

 

 そして少しして、人間側が劣勢に見えてきたその時、戦場に動きがあった。

 

「……これはッ!」

 

「ようやく、来やがったなぁああ!!」

 

 魔物将軍の声に、バンチョーが立ち上がる。

 その視線の先に居たのは、身体中からムシを飼って、それを活用して戦う種族、『ムシ使い』の一族であった。

 

「よし、ムシ使いの奴らが来たぞーーッ!」

 

「前線はアイツらに任せて、負傷者は全員引けーッ!!」

 

「まだ戦える奴らは、魔法でもなんでも、ムシ使いの後ろから攻撃しろーーーッ!!」

 

 彼らの参戦により、人間側の士気が上がったのが目に見えてわかった。

 実際、先ほどまで剣や魔法では倒せなかった魔物達が、ムシ使いのムシによる毒や炎などで殺されていき、逃げようとした魔物達も麻痺させられていく。

 

「や、ヤベェッ! コイツら強えぞッ!」

 

「狼狽えんなッ! 数ならこっちが上だ、押せば殺せるッ!!」

 

 そう叫ぶ事で自身らを鼓舞した魔物達が、獲物を振り上げムシ使い達を殺さんと迫る。

 

 

「ーーーおっと、そいつはいただけねぇなっと」

 

「なっーーき、貴様ッ!」

 

 だが、その魔物が一撃を振り下ろすより早く、後方から一気に跳躍し、間合いに入り込んできたムシ使いの青年の蛮刀によって、その身体を真っ二つに切り裂かれた。

 彼は辺りに残った魔物をぐるりと見渡すと、

 

「よし、こんなモンだな」

 

 その数に合わせて、自身の身体から8匹のムシを放った。

 

「や、やべぇッ!?」

 

「で、出やがったッ! ()()()が出やがったぞぉーーッ!?」

 

 彼を見た魔物達が口々に叫び出し、魔物側の士気が崩れていく。

 そんな魔物達に追い打ちをかけるように、ムシ達背中を狙い撃ち、動きの鈍った所を青年の蛮刀が切り裂いていく。

 

「何してんだテメェら!! コイツがムシを出したって事は、本体は無防備って事だろうがよぉッ!!」

 

「あっ、おいバカ! やめ……」

 

 仲間の制止を振り切り、毒に耐性を持った魔物が襲いかかる。

 

「ん、次はテメェか?」

 

「死ねーーーーッ!!」

 

 ガキィィィンッ!!

 

「なっーーーー」

 

 魔物の振り下ろした一撃を、青年は片手だけで受け止め、金属音が鳴り響いた。

 既に8匹ものムシを外に放ったというのに、彼の身体にはまだムシが残っていたのだった。

 

「悪りぃな、敵なら死んでくれ」

 

「がはっーーーッ!!」

 

 そう言って、振り抜いた蛮刀で魔物の首を落とす。

 その隙に不意を撃とうとした魔物の首が、ムシによって引き裂かれる。

 攻防共に隙も油断もない、魔物達からすれば悪夢のような男であった。

 既に戦意を砕かれつつあった魔物達が撤退しようとした、その時だった。

 

「ぶはーーーはっはぁあッ!! テメェか、ガルティアってのはよぉッ!?」

 

「こ、この声はッ!」

 

 大音量のバカ笑いが戦場に響き、魔物達が一斉に振り返る。

 

 そこにいたのは、大人の倍もある大きさと太さの棍棒を持ち、青年を睨みつける魔人の姿。

 

 バンチョーが戦場に降り立ったのだ。

 

「ば、バンチョー様だぁッ!!」

 

「いけるっ! 俺たちの勝ちだぞーーッ!!」

 

 絶対的な力を持つ魔人の参戦に、魔物達の士気が跳ね上がる。

 それもそのはず。

 彼らにとって魔人とは、敗北の二文字が存在しない、無敵の存在。

 彼らが負けるとすれば、同じ魔人か魔王しかありえない。

 

「よぉし、構えなガルティアとやらよぉッ! 俺様が直々に殺してやんよぉッ!」

 

 そう言って、四股を踏んだバンチョーが、バットのように棍棒を構える。

 

「覚悟はいいかぁッ!? ムシ使いぃッ!!」

 

『槌戦闘LV2』による一撃を放とうとするバンチョー。

 

「ん、ちょっと待て」

 

 しかしそれを、青年が制した。

 

「あぁん? 今更命乞いか?」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

 彼は背中の袋に手を伸ばすと、中からいくつかの食べ物を取り出し、バクバクと食べ始めた。

 

「……は、はぁ?」

 

「んーんまい、やっぱりあの国の食いモンはいい……」

 

 こんな時だと言うのに、呑気に味わいながら食事を始めた青年に、バンチョーも棍棒を構えた姿勢のまま固まった。

 

「ん……? ああ、待てったぁいったが、別に攻撃はしてきても構わねぇぜ、これもムシ達の栄養補給の為だからな、攻撃の貯めみたいなモンだ」

 

 こちらを見て固まるバンチョーの姿に、青年は一度食べる手を止めてそう話すと、再び食事に没頭した。

 彼からすると、フォローのつもりだったのだが、バンチョーにとってそれは、バカにしてるようにしか見えなかった。

 

「……ふ、ふざけやがってぇええええッ!! お望み通り殺してやんよぉおおおッ!!!」

 

 そう言って、棍棒をバットのようにフルスイングで振り抜く。

 

「う、うわぁああああッ!!」

 

 それだけで、周囲に竜巻のような暴風が吹き荒れ、人間や魔物問わず、一斉に吹き飛ばされていく。

 

 そして、攻撃の対象であった青年は、跡形も残らなかったのか、バンチョーの視界から消えていた。

 

「へ、へへへ……ザマァ見……」

 

 

「うぉっと、中々強えなアンタ」

 

「ッ!!?」

 その声に、バンチョーは咄嗟に上を見上げた。

 そこには、背中からムシの羽を生やしたガルティアの姿があった。

 

「んーんまかった……よっと」

 

「ーーッ!? ふんッ!」

 

 上空で食事を終えた青年は、そのまま左手を振り抜き、それぞれの指から小針のようなものを放つ。

 それをいくつか喰らったバンチョーだが、この程度の攻撃で怯む魔人ではなかった。

「テメェッ! 今度こそぶっ殺してやるッ!!」

 

 バンチョーが両足に力を込め、一気に青年のいる高さまで飛び上がり、そのまま棍棒で叩き落とさんと攻撃を仕掛ける。

 

「危ねぇな……よし、お前頼むわ」

 

ビカーーーーッ!!

 

「ッ!? ぐぉ……っ」

 

 しかし、バンチョーが攻撃を行うより早く、ガルティアの腹から現れたムシが強く光り輝き、バンチョーの目を潰した。

 そのせいで振りかぶった一撃は全く別の場所へと振り下ろされ、そのままバンチョー自身も落下していく。

「さて、俺もちゃんと戦わねぇと、アイツに失礼だな」

 

 そう言って青年が、バンチョーの落下した近くに降り立った。

 あの高さから落ちたというのに、バンチョーに目立った傷はなく、その筋肉の鎧の頑丈さがよくわかった。

 

「ぶはーはっはっ! よくもやってくれたなぁッ!!」

 

 むくりと起き上がったバンチョー。

 その声はいつものバカ笑いと変わらなかったが、その表情は間違いなくブチ切れていた。

 

「俺様をここまで怒らせた礼だぁッ! テメェの死体はこの国の玉座にでも飾ってやんよッ!!」

 

「そいつは嫌だな、ならこっちも、負けらんねぇなっと」

 

 ゴォオオウゥゥゥッ!!

 

 音を立てて空気を裂いた一撃がぶつかり合い、バンチョーと青年の武器が拮抗する。

 

「うぉおおおおッ!? コイツぁ……っ」

 

「ん、コイツは重いなぁ……」

 

 驚愕の声を上げるバンチョー。

 自身の体長の半分程しかない人間が、自身の一撃をいなすのではなく、正面から受け止めたというのに、そのまま潰れないのだ。

 これは魔人である彼にとって、初めてのことであった。

 

「んぎぎぎぎぃいいいッ」

 

「うぉ……ふんっ……」

 

 互いに力を込め、相手の獲物ごと振り切らんとする両者。

 どうやら全力なのは互いに同じであるようで、飄々とした様子の青年も、身体からムシを出す余裕がなく、その全てを自身の身体の強化に回していた。

 

「ーーーーーッ!!」

 

「いかせるかッ! テメェら! 残ったムシを抑えろッ!!」

 

 他のムシ使いや既に放たれていた8匹が向かおうとするも、残った魔物達がそれを抑える。

 彼らは皆、このような力比べに持ち込めば、バンチョーに負けはない事を確信していたのだ。

 

 そして、その考え通り、青年の蛮刀が徐々に押され出していく。

 

「ぐぉ……んんッ……」

 

「ぶはははは……ッ、残念、だったなぁッ! 俺様は、戦い始めて時間が経てば経つ程、その筋力が上がる能力を持ってんだよぉッ!!」

 

 その能力こそ、彼が魔人化した際に得た能力であり、彼の最大の武器であった。

 

「さぁッ! 潰れろムシ使いぃッ!!」

 

 そう言って、トドメに全体重を棍棒にかけ、そのまま青年を潰そうと力を込めた。

 

 

 グチャァアアッ!!

 

 

「がはっ……!?」

 

 そして、勝敗が決する。

 

「あー、危ねぇ、もう少しで俺の負けだったな」

 

「なっ……なぁッ!?……」

 

 驚愕に目を見開いた()()()()()が、口から吐血しながら倒れていく。

 最後の一撃を決めようとしたその時、彼は自身の身体から力が抜けていくのを感じていた。

 

 ーー何故……何故このようなっ……ーー

 

 既に声すら出せなくなったバンチョーが、問うように青年に手を伸ばす。

 

「いやぁ、魔人ってのは『毒』が回るのも遅せぇみたいで、結構焦ったぜ」

 

 額の汗を拭う青年。

 彼の言う通り、バンチョーの身体中には、先ほど左手から放った小針によって、大量の猛毒が回っていた。

 

「にしても、普通なら魔物だろうと回れば殺す毒だってのに、まだ死なねぇなんてな……他にもいるなんて勘弁してほしいぜ」

 

 青年は、これ以上バンチョーを苦しめない為にも、その剣を振り上げる。

 

「ま、ま……ま、待、て……」

 

 痺れる舌を何とか動かし、制止の声を上げるバンチョー。

 周囲の魔物が助けに入ろうとするも、今度は人間側や青年のムシに抑えられ、バンチョーを助けに入る者は誰一人いなかった。

 

「じゃあな、強かったぜアンタ」

 

 彼なりの賞賛の声を掛け、青年は剣を振り下ろした。

 

 首から上が胴体とおさらばしたバンチョーの身体が光り、その場には小さな赤い塊、『魔血魂』だけが残された。

 

 

「よし、それじゃメシにするか」

 

 そう言って彼は、再び食事を始めた。

 彼が戦線に復帰したのは、一時間の食事が終わってからの事だった。

 

 

 彼こそ、ムシ使いの青年にして伝説、『ムシ使いLV3』を持った、『獣の王・ガルティア』であった。

 

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 そして、魔人敗北という魔軍中を震わせた事態から3日後。

 

「がははははー!! お前がスラルちゃんの兄の仇、ガルティアとやらだなーッ!! 俺様の剣の錆にしてくれるわーーッ!!」

 

 残った魔軍との戦いの最中に、謎の覆面を被った男が彼の目の前に飛び出してくるのだった。

 

 

「ちょ、ちょっと! 私の名前は出さないでよッ!」

 

「ん、あーすまんすまん、だがコイツを倒せば、約束通りご褒美は貰うからなーッ!!」

 

 男の背後から、同じように覆面を被った少女が現れる。

 

 (……今度の敵さんは、中々愉快な奴のようだな)

 

 それを見たガルティアの警戒が、少しだけ薄れていた。

 

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「………やはり、嫌な予感が……」

 

 ジルの胸騒ぎは、大当りであった。

 




 A スカートをめくる。

 なお01で実際に美樹ちゃんに仕掛けた模様。

 というわけでスラルちゃん回でした!
 ……え、ほぼガルティア回?
 じ、次回はスラルちゃんの出番多目だから……(震え声)

 スラルちゃんの性格ちゃうやんけって人もいるかもだけど、ちゃんと最後には原作通りになってるから。
 むしろ天真爛漫な女の子が慎重で冷静な性格にならざるを得なくなる出来事があるっていう展開の方がルド世界っぽいしね!
 これは酷いが常時発動中の世界やしな!
 ちなみにランスを戦わせる理由は別にガルティアが怖いわけじゃないからね。

 オリ魔人バンチョー君。
 元ネタは特になし。
 てか原作にいない魔人ってだけで死亡フラグっていう……。

 あと原作スラルちゃんは貴族っぽい白タイツだけど、本作スラルちゃんはスカート履いてます。
 べ、別に作者が忘れてた訳じゃないんだからねッ!

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