キレイな束さんをヒロインにしたくて思い付きでやった。反省も後悔もしていない。

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無理やりな展開はゆるちてくだちい^q^


西暦の天才科学者と機甲暦の天才パイロット

私はいわゆる天才だった。幼い頃から子供とは思えない、否、大人すらも軽く凌駕する知性を持っていた。

だから私は世界の人間が人間であるとは思えなかった。どうしてわからない。どうしてできない。どうしてやらない。どうして諦める。

年を取っただけで威張り散らす大人も、癇癪を起こして泣き叫ぶ子供も、私からすれば何ら変わりもなかった。

 

もちろん、私も初めからそうであったわけではない。年相応ではなかったが、他の子供と同じように、自分のできたことを親に褒めてもらおうと自分にできることをした。大人に褒めてもらおうと色々と注意をした。子供たちに尊敬してもらおうと自慢をした。

しかし、それで返ってきたのは私を否定する言葉だけだった。

子供だからこんなことをしてはいけませんよ。こんなことをしてなにになるんだ。子供のくせに何がわかる。子供だからそんなことが言えるんだ。なにそれ変なの。大人がやったものをとって自分のものにしようとしてる。

善意の行動がすべて否定で、拒絶で、悪意で返ってきた。

 

こいつらは自分にわからないものは排除するしか()がない、下らない()でしかないんだ。

こいつらは何を言っても無駄だ。所詮否定しかできない猿なんだと、すべてを諦めかけていた私の前に、それは突然現れたのだ。

 

『あー。また来たよ』

 

気がつけば、全く見覚えのない場所で倒れていた。いつ気を失ったのか、いつここに来たのか、どうやってここに来たのか。ここに来るまでの過程の記憶がない私はしばらくの間目の前にいたガキに手を引かれるがまま歩いてていた。

 

『じいさん!またよその世界から流れ者が来たよ!しかも今度は俺と同じぐらいの女の子!』

 

じいさん、と呼ばれたその人は見た目が怖い人だった。ガリガリにやせ細り、片目だけ飛び出ているかのような目は、本当に生きている人なのかとすら思えてしまうほどに不気味な人だった。

ただ、そんな見た目に反して子供には優しいようで、そして人を見る目というのは確かのようで、ここに来たということもあって私のレベルに合わせた説明をしてくれた。

 

その世界は、戦争によって二度も滅びかけた世界だった。宇宙での活動を可能にするスペースコロニーの所有権を巡った戦争。宇宙民への大きな負担がきっかけとなった戦争。様々な思惑が交錯した世界中が戦争を起こし、戦争に勝つために制御もできないエネルギーを使って自滅しかけ、やっとの思いで普通の生活ができるまで復旧した。そんな世界だった。

 

ありえないと思った。そんなSFのような世界があるわけがないと私は鼻で笑った。でも、それを予想していたのか博士は私をとある場所に連れて行ってくれた。そして、そこにあったのは巨大な人型をしたロボットが稼働している場所だった。

すごい。それを見た私の感想はそれに尽きた。天才たる私がそんな言葉しか思いつかなかったのは屈辱でもあったけど、でもその時はそれだけの言葉しか出ないぐらいに、それは素晴らしいものだと感じた。同時に、私はここでかつての場所では得られなかった希望を見出すことができた。

 

私がありえないと思った世界でなら、そこで私は私の知らない、今まで感じることのなかった未知を感じることができたんだ。今までいた場所ではありえないとされていた巨大ロボット、ここではガーディアンと呼んでいるけど、が存在している。宇宙にはコロニーと呼ばれる地球外でも住むことのできる場所ができている。宇宙からきた侵略者も、かつて地球上で栄華を誇った人外も、何もかもが私にとっての未知で、私にとっての楽しみで、私にとっての希望だった。

ここでなら、できるかもしれない。脳無しだけじゃない、私と同じ天才がいる、そして私に夢を見せてくれる世界だと感じた。かつての世界で感じなかった満ち足りた世界がここにあると、そう直感した。

 

そう感じた私は、世話になっている研究所の廃棄物から自分専用のパソコンを作り上げ、こっそりとガーディアンに関するデータを盗み見しながら私が思い描いている構想を叩き始めた。でも、いくら元となるデータがあるとはいえ、いや、データがあるからこそ進みはよくなかった。ここの研究所はあらゆる最前線のガーディアンを研究、開発を行っている大きな研究所だ。ここの研究所は所長の博士を除いて私には及ばない連中ばかりだったけど、数の多い凡人だからこそ天才の発想を研究、実験の繰り返しを行えるという利点があった。

博士の発想はどれも素晴らしいものだった。だけど理論上は可能であってもどれもコストが高い、または今の技術では奇跡が起こらない限り不可能とされているものばかりだった。私が思いついたことも、かつて博士が考えて不可能とされたものばかりで進みはどうしても遅かった。

 

『なーにしてんだ?』

 

やっとのことで構想が固まって設計している中、暇だったのかバカが私の後ろからパソコンの中を覗き込んできたことがあった。一応完成はしていたもののまだまだ詰めが甘い部分が多かったり余分な部分、改修できる部分が多いものを再確認している時だったから、バカの相手がめんどくさくて無視をしていた。

 

『プログラム?しかもこれちゃんと走るやつじゃ……』

 

無視されているというのに、確認しているプログラムを見てぶつぶつとうるさいバカは、何を思ったのか私とパソコンを文字通り持ち上げて施設の中に入り込んでいった。このときは何をするんだと全才能を使って追いかけたが、それでも追い付くことはなく、追い付いたのはとある研究室に入ったときだった。

 

『じいさん!ちょっと見てやってくれよ!』

 

興奮しながらノックもなしに扉を開けて突撃するバカ。この先には何かの研究をしていたのだろう博士が、バカに呼ばれてめんどくさそうな表情を浮かべて私たちのほうを向いては説明を求めてきた。

そこに興奮気味に私のすごさをほめたたえた後で私の持っていたパソコンを博士に見せると、それを見たじいさんは最初は胡散臭そうにしてみていたのに、いつしか真剣な表情を浮かべて私の作っていたものを見ていた。

 

『なんと!これをこの子がやったと言うのか!?』

 

最後まで読み終えたのだろう。やや興奮したように目を見開いて私を見て確認をとる博士に、なぜかバカは得意げにそうだと言って私の頭をたたいてきた。お返しに腹パンしてやったら唸りながらお腹を抑えていた。ざまあみろ。そうしたら今度は痛みに耐えながら私につかみかかってきて取っ組み合いが開始された。

 

『画期的だ!なんと画期的な発明なんじゃ!これはガーディアンの性能をさらに上げることができるぞ!』

 

私たちの攻防を無視しているのか博士、鹿伏兎研究所の責任者である鹿伏兎(かぶと)博士は楽しそうに笑っていた。

 

それからは私も研究に混ぜてもらえるようになった。最初は研究所の凡人たちは驚いたような表情を浮かべていた。こんな子供が研究に携わるのかといった表情が見て取れたけど、鹿伏兎博士、そして私の説明を受けると今度は驚愕の表情を浮かべ、心強いといわんばかりの笑みを浮かべて私を迎え入れてくれた。

その反応に、今度は私が困惑することになった。いくら鹿伏兎博士という私と同じぐらいの天才がいるといっても、博士はそれなりの経験と実績があるからこそ受け入れられているはずだ。それに対して私は実績も経験もない、あっても私を研究に加える際に説明したものだけなのに、どうしてこんなにも簡単に受け入れてくれたのかが不思議だった。

でも、その理由というべきか、原因ともいえる存在が私のすぐそばにいるとはこの時の私は思いもよらなかった。

 

『なんだ、この、ゲデモノ、機体は』

 

『は?なに?ケンカ売ってるの?』

 

『こんなピーキーな性能にするなって言ったよな!?仮想だってのにGで潰されたかと思った……ぉぇ』

 

私に突っかかってくるバカ。こいつは、悔しいことに操縦という点に関しては天才たる私よりもはるかに上だった。年齢的な問題もあってまだガーディアンに乗ったことはないが、シミュレーション内での成績はとてもじゃないが優秀という言葉では片づけられないほどだ。私がここに来る前、それも1年近くも前にこっそりと忍び込んで起動させたシミュレーターで、まだ幼いといってもいい年なのに最前線で戦うエースパイロットとほぼ同じスコアをたたき出していたのだ。

狙撃という点では凡人以下ではあるが、白兵戦では並みのパイロットを、それこそ機体性能が並以下でなければエースパイロットと同格の戦闘を行えるほどだ。厳密には仮想空間での戦闘であり、相手も似せた戦闘を行うAIだから本当に戦ったら多分勝てないだろうけど、それでもその操縦は天才というしかないだろう。

 

まぁ、それ以外だと格闘技ぐらいが突出しているぐらいで、あとは凡人でしかないバカだ。頭も器用さも勘の良さも、ガーディアンの操縦および戦闘以外では完全に凡人のそれでしかなく、何度それにイライラさせられたことか数えきれないほどだった。

それでも、シミュレーターとはいえどんなガーディアンでも十全に操縦できる才能は、私が欲するデータ収集役にぴったりな人材だったのは認めざるを得なかった。私がいじった設定で、私が作った機体をシミュレーターに登録し、癪なことに操縦に関しての意見は参考になるからそれを基に修正をして、延々とバカに操縦させてデータを取る。そんな日が何日も続いた。

 

そんな日が続いて、気が付けば1年が経過していた。今までに感じたことのなかった、充実した1年間だった。今までの世界にいたことが間違いなんだと、そう感じるほどにここでの生活は私に今までなかったものを与えてくれていた。

博士や研究所の人たちは私を子供扱いはするけど、研究者としては敬意を示してくれた。私の言うことを一蹴することなく、それをどうすれば実現できるのか、どうすれば改良できるのかを話し合う場があったのは、あの世界では絶対にありえなかったものだっただけに、凡人ばかりとはいえなかなか充実した日々を送ることができた。

バカはいつも通りのバカだったけど。

 

そんな生活をしていたある日、鹿伏兎博士からとあるお誘いを受けることになった。どうも私の作っているシステムについて作りかけでもいいから話をしたいと向こうから話が来たみたいで、私も今まで会うこともなかったもう1人の天才が気になっていたから承諾して行くことになったんだ。

 

準備も整い、鹿伏兎博士の日程も調整して、ついに鹿伏兎博士にバカと一緒に博士のライバルでもあり親友でもある博士がいる天城研究所へむかうことができた。私が認める鹿伏兎博士のライバルというだけで期待できる。そう思っていったのに、その時はガーディアンに関する会議が延びて天城博士はまだ戻ってこれてなかったのだ。

呼ばれたというのに待たされていることに怒りを感じなくはなかったけど、天城博士の立場を考えれば、そしてこのご時世を考えれば仕方がないことだと割り切ることはできた。

時間もできて、どうせならと、仕方なく暇だったからバカを連れて街にでも行こうと思ったのに、能天気なバカが違う研究所のシミュレーターに目を輝かせていたのにあきれて外に出た時だった。

 

『この子供が例の?』

 

『あぁ。拐って帝国の力を底上げするんだ』

 

そんなことを話していたのを聞いたのは、本当に偶然だった。思わずその声が聞こえた方を向くと、そこには普通の男2人組が私を見ていて、私と視線が合ったことに向こうも驚いていた。

身の危険を感じた私は、急いでその場から逃げるように離れた。2人組も急いで私の方に走ってくるのを感じ、なんとか必死に逃げようとした。けど、いくら私が天才だとはいえ大人と子供、しかも向こうはプロだったこともあってすぐに追いつかれそうになった。このままだと捕まる。そう思った私は他にも人がいるにも関わらずいつも持ち歩いている鉄製の野球ボールのようなものを取り出し、出ているスイッチをを押し込んで地面にたたきつけた。地面に金属がぶつかる音が鳴ったと同時に、強い光と音が辺りに相手がひるんだところで逃げる。それを繰り返していき、後ろから追いかけてくる気配がなくなったと安心したときにそれは襲い掛かってきた。

 

『身柄を確保。これから収容を開始する』

 

それは金属の網だった。重しで網を簡単に取れないようにされたいたってシンプルなそれは、シンプルすぎるがゆえに私でも外すのは時間がかかる。それを発射したであろう機体は、小柄なことを生かした機動性が高いライトニング級のガーディアンだった。

もはやこれまでか。柄にもなくそう諦めかけたときに、この場にそぐわない間抜けな声が響いた。

 

『だらっしゃあああああ!』

 

こちらを捕まえるために手を伸ばしてきたガーディアンを蹴り飛ばし、私を捕らえていた網をおぼつかないながらも器用にはぎとったそれは、平均的なライトニングの大きさよりもやや大きい程度の、ミーレスのような線の細い機体だ。このバカはそれに乗って、どこから持ってきたのかヒートブレイドとチェーンガンを持って()()()()私を助けに来てくれた。

 

『大丈夫か!?ケガないな!?』

 

コックピットが開き、中から現れたのは私がよく知っているバカだった。早く乗れ、と誘拐犯たちを警戒しながら空間の空いているコックピットの後ろへ入るよう指示されるが、そんなの指示されるまでもなく入る。その機体の大きさゆえにかなり狭いけど、生身で戦闘に巻き込まれるよりかはずっとマシだった。

 

『なんで君みたいなのが来るのかな。しかも来るのが遅いし』

 

『それが助けに来たやつに言う言葉かよ!?仕方ねぇだろ!俺以外に動ける人いなかったんだしこいつ以外に動かせれる機体がなかったんだからよ!』

 

たどたどしい動きで敵からの攻撃を避けている中、器用にも私との会話を成立させている。けど、こいつにしては珍しくまるで初めてのガーディアンに乗ったかのようなお世辞にも普通とすら言えないほど拙い動きだった。

 

『クソッうまく、動かせねぇ!』

 

こいつの使っているガーディアンは、こいつが一番得意としているパイロットの動きをそのままトレースするダイレクト(D)リンケージ(L)システム(S)を使っているクラッシャークラスの機体ではない。私の才能に投資してくれた博士が、私に譲渡してくれた古い量産型のミーレス機体を操縦しているのだ。

私のミーレスは譲ってくれた段階で戦闘はできなくはないという程度のものだった。博士の好意で戦闘するには差し支えはない程度の改修作業はしてもらっていたが、前線に、しかも子供が操縦するにはあまりにも粗末なものだった。

そんな機体に、私はある装置を試験的に導入している。人の思考をダイレクトに受け、機体の動きと操作をやり易くするための装置だ。

しかし、導入したと言ってもテストパイロットもいない、みんなを驚かせたいがために私だけで作業をしている不完全な機体だ。試作機未満の機体だ。そんな機体のせいか、こいつは普段よりもうまく操縦をすることができていない。

 

『チクショウ!お前と代わるタイミングもねぇ!』

 

その言葉は、()にとってとても屈辱的だったのだろう。後ろからは表情は見えないが、その声は悔しさに満ちているものだった。凡人なんかを気にしない私でもわかるほどに、操縦に関しては自分よりも開発を主としている私の方が上なんだと認めてしまったがゆえの悔しさが。

 

『……時間を稼いで』

 

あぁ。だから私はこいつを気に入ったんだ。普段は何も考えていない、鹿伏兎博士や他の人たちと同じように私を見ても普通の子供のように扱い、そして一研究者として扱ってくれるこいつを。

かつての私の周りにはいなかった、私を私として見てくれる人間だから、私はこの子を作ったんだ。こいつのために作りたいと、そう思ったんだ。

 

『……時間を稼げばなんとかなるのか?』

 

『天才を甘く見ないで。時間さえあればこの子を最高のコンディションにしてあげられる。そもそもこの子はシステムの関係上お前にしか扱えないようになっている。この窮地を脱するには、結局お前の力がいる』

 

半分は嘘だ。確かにこの子には私が作っている思考をダイレクトに受けて操縦の補助を行うシステム、コンサイドレイション(C)エイド(A)システム(S)はつけている。簡単に言えば慣れてしまえばガーディアンでペン回しや折り紙といった細かい操作を思考で行うことができるシステムだ。

 

けど、このシステムの大きな問題がある。それは操縦者を固定してしまうことだ。

確かに細かな動きをすることはできる。しかし、そのために脳波や癖などのパイロットの細かなデータが必要となってくるのだ。

これがなければ必要となってくるデータ容量が大きくなってしまい処理が遅くなってしまう。結果、動くまでに大幅なラグが生まれてくるのだ。

 

そして、この機体のCASはその対象が誰なのかの指定を行っていない。

そもそもCASとともに動くことを前提としているこの子をここまで動かせていること自体がおかしいことなのだが、まぁこのバカはそんなことも分かっていないんだろう。

 

普通ならこんな未完成のものを使っていればこの子の悪口の一つも出てもおかしくはない。でも、こいつはバカだから、まだ未完成であることをわかってなくてもこの子を、この子を作った私のことを悪く言わずに信頼しているんだろう。自分の腕が悪いんだと言って、自分で乗ると決めたら作り手を悪く言わないんだから。

 

『んじゃ、やれることはやってやるよ!ヘマをするなよ大天才!』

 

『誰に物言ってるのかなド凡人!』

 

私お手製のパソコンを立ち上げ、剥き出しになっているコードを繋げる。相手の攻撃を避けているがゆえに起こる上下左右の揺れの中、天才たる私の才能を総動員してキーボードを正確に叩き続ける。

取り続けてきた脳波のデータ、シミュレーションで取り続けてきた操縦の癖、好んで行う戦闘の癖、そしてずっと見てきたこいつの性格。

それらを機体の動きと連携するようにプログラムし、すべてを繋げるように組み立てていく。

テストなんてしない。そんなことしている暇なんてないし、そんなことをする必要もない。なぜなら、これを作ったのは希代の大天才、篠之乃束なのだから。

 

『完成したよ!すぐにインストールするけど、少しの間は動かなくなるよ!』

 

『俺のタイミングでインストールしろ!ヘタなタイミングで止まると胴体にもらっちまう!』

 

本来ならこいつの言うことなんて無視して自分勝手にインストールしているところだった。

けど、こいつは天才だ。操縦、そして戦闘に関する勘は私以上だ。だから、私が認めたこいつがへまをするはずがない。

 

『今だ!』

 

気を付けるように完成したプログラムをすぐに機体にインストールする。プツリとコックピット内の電源が落ち、数秒後に再起動を始める。

突然行動を止めたことに狙いが定まらなかったのか、私たちに攻撃を仕掛けていた機体がこの子の片腕が斬る。斬られた腕が飛ばされ、腕からはコードがぶら下がり、電流が走る。

 

それを好機と見たのかもう一機がサーベルを振り上げ、足に向かって振り下ろす。

そして、ミーレスは空を舞い、なんともないその足をコックピット目掛けて踏み潰すかのようなヤクザキックをかました。

 

『おい。おいおい。なんだこれ』

 

その声色は、その声色だけで喜色満面だとわかるほどに喜びがあふれ出て上ずっていた。さっきまでの不愉快な振動は一切なくなり、操縦をしていない私ですら不快と思わないほどに繊細な動きでミーレスは目の前のガーディアンに攻撃を仕掛ける。

 

『動く!片腕ないのにさっきまでのが嘘みたいに動く!こいつ俺の手足かってぐらいに動くぞ!』

 

『基本的にはミーレスの操縦と変わらない。けど、ミーレスの操縦じゃできないことは考えればできるようになっているから慣れないと転けるかもしれない』

 

『慣れりゃいいんだろ?なんでか知らんが転ける気がしないな!クラッシャークラスよりも動かしやすいし、相性が良すぎるってぐらいに動く!5分もいらねぇ!すぐに完璧に操縦してやるよ!』

 

彼のその宣言は、まさにその通りだった。片腕を失ったというのに、それを感じさせない動きを見せて敵を翻弄していた。

残り僅かな弾数しかないチェーンガンを巧みに使って相手の動きを制限し、うかつな行動をとれば瓦礫を蹴り飛ばして怯んだ隙をついて一気に攻める。ただのミーレスでは不可能な動きをする私のガーディアンは、私が想定した以上に人間じみた細かな動きを見せる。

連中のガーディアンが捕獲に特化していたこともあったのかもしれない。でも、それでも連中はガーディアンを動かすプロのはずだ。だというのに、それらを手玉に取っている。器用にもコックピットを歪ませて開かせないようにできるほどに、その差は圧倒的なものだった。

 

『……ホント、パイロットとしての腕はこの束さんよりも上だね』

 

普通ならば片腕がなくなってしまえばバランサーの関係で十全な機動はできなくなる。CASはそれすらもサポートするように開発はしたが、それでも片腕がないバランスの悪さは操縦にひどい悪影響が出るはずなんだ。

にもかかわらず、こいつはそれを感じさせない。片腕がないことを前提とした操縦をしているんだ。普通ならそんなことをとっさにできるなんてことはできない。私もしようと思えばいくらでもできるが、こいつほど器用に動かせるかと言われればそれは不可能だ。

あぁ。認めよう。認めたくないけど認めよう。こいつは天才だ。束さんと同じ人を傷つけることができる天才なんだ。

 

『当たり前だ。大天才パイロットとは俺のことなんだぜ?』

 

ものの数分で2機のガーディアンをだるまにして鎮圧したこいつは、そう笑顔で言い切るこいつの顔は、いつも通り小憎たらしいものだったのに、どうしてだろう。その笑みは私にはとても輝いて見えた。

 




束さんって、結局肯定してくれる人が少なすぎたからひねくれたんだって勝手に思ってかきました。束さんの才能を世間が認めてくれて相応の対応ができていればもっときれいになってたと思うんだ。
そういう意味ではメタリックガーディアンの世界はその筋の天才って結構いそうだし、束さんが認めそうな人もそこそこ出てくると思うんだ。


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