TS転移で地球人   作:月日星夜(木端妖精)

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明日って今さ


サイヤ人絶滅計画 / 銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴
第六十五話 非情の花嫁


 トランクスがリビングの灯りを付けると、パラガスはのっそりとした動きでテーブルに赴き、アオに椅子を引かせて腰を下ろした。杖が必要な老人のような緩慢な動作だが、むっつりとした顔はどこか尊大で、ナシコを見上げて「座らないのかね」とでも言うように顎をしゃくるのは家主のような振る舞いだ。ナシコが不在の間にすっかりこの家に馴染んだようだった。

 

「……」

「ありがとう、アオちゃん」

 

 その隣に座ったトランクスは、紅茶を淹れるアオに礼を言った。あいにく視線は噛み合わなかい。鋼鉄の乙女はその名の通り心を固く閉ざしているのだろうか。むっつりと口を噤むアオはまだ座っていないナシコの分まで紅茶を用意すると、一礼して壁際まで下がった。

 

「えっ……と。どうしたんだい、その格好……?」

 

 一度カップに口をつけたきりテーブルに視線を落として喋らないパラガスに、突っ立ったままのナシコ。話を切り出す者がおらず、代わりに少し気まずそうにするトランクスが問いかけた。

 どこかの民族衣装だろうか、純白なのに蠱惑的な印象を受ける衣服は、どう見ても普段着ではない。これからパーティにでも出かけるのか。諸々の疑問が含まれた問いかけに、ナシコは答えなかった。

 代わりに待たせていた事を詫びる。

 

「……ごめんなさい。こんなに時間がかかってしまって……」

「あ、いや……大丈夫だよ。オレの時代に早く戻りたいのは確かだけど、何か大事な話があるんだろ?」

「ええ。とても大事な……」

 

 言いながら、ようやくナシコも椅子を引いて腰を下ろした。

 暗い瞳と正面から向き合うことになったトランクスが何かを言いたげにするのに先んじて、ナシコは「家には戻ってないの」と聞いた。あまり心の内に触れられたくないようだ。

 年頃の少女の気難しさは正しくトランクスに伝わって……やつれているように見えるし、あまり体調もよくなさそうだから心配なのだが、とりあえずはそこには触れないことにした。

 

「うん。この家で過ごしてたよ」

「……そう、なの」

「未来に母さんを待たせてるから、こっちの母さんと過ごすのも……その」

 

 言い辛そうに口ごもるトランクス。

 ナシコとしては、せめて待たせてしまっている間は家族との時間を過ごしてもらえれば、と考えていた。

 それは少しばかり軽率な考えだったかもしれない。彼としてはいち早く未来に戻り、母の安否を確かめたいだろうし、人造人間を倒して平和を取り戻したいだろう。

 

 こちらで日数が進む分だけ未来の時間も進んでいく。もたもたしていれば被害は広がるばかりだからだ。なのにのうのうとこの時代のブルマやベジータと穏やかに過ごすのは無理があった。

 それでも待っていたのはナシコを信頼してのこと。神殿で見せたナシコの真剣な表情に、未来に何かが起こるのだと察したからこそ、こうして何日も待った。

 

 きゅ、と膝元の服を握ったナシコは、自分の至らなさを痛感した。

 限界まで鍛えあげるのに3年もかかったから、その分無為に時間を浪費させてしまった。伝えなければならない事があったとはいえ、それが辛くてたまらない。だって、伝えるだけなら神殿に入る前にできたはずだ。気が急いて、もうどうしようもないほど自分を追い詰めなければならなくて……その気持ちを建前に、自分の都合を優先してしまった。

 

 過剰な自責の念を抱く内心とは裏腹に、表情は凪いでいる海のように静かで、しかし正面にいるトランクスには、些細な影もよく見えたのだろう。なおも心配そうな目をしている。

 

「でも、大丈夫さ。パラガスさんに色々話も聞けたしね」

「パラガス、さんに……?」

 

 親しげな身振りで言うトランクス。

 この家で共に過ごしていた二人は、ラディッツやターレスは家をあける事が多く、ウィローは研究所にいる事が多いので必然的にほとんど二人きりの暮らしをしていた。

 というのもシスターズは二人が一緒に食卓につかなければ食事を用意しなかったし、本を読んで時間を潰すトランクスと図書館の住人となっているパラガスの遭遇頻度は高かったので、徐々に会話が増えていった形だ。

 

 その中で、未来にも現れるかもしれないブロリーの弱点や秘密を聞けたことはトランクスにとって大きな収穫だっただろう。

 「これはもう私には必要のないものだ」、と制御装置も譲り受けることができた。これをブルマに解析させれば、万一未来の地球に伝説の超サイヤ人がやってきても、無傷で撃退できる確率がぐんと上がった。

 

「……その、未来に関してなのだけど」

 

 明るい顔で話すトランクスとは対照的に、ナシコの影は増すばかり。

 もっと多くの脅威がある事を伝えなければならない。……話さなければならない。

 それでも……ピッコロやデンデに対してもそうであったが、どうしても必要な事は伝えなければ。自分の心の痛みを気にして最低限の備えを怠れば訪れるのは破滅だけだ。

 

 セルが倒されて平和になったはずなのに、ナシコの心にはずっと暗雲が立ち込めている。

 未来への不安が尽きない。新たに得た力が、本当に超サイヤ人3を超える程なのか? これで魔人ブウやヒルデガーンに太刀打ちできるのか……?

 

 わからない。

 わからないのは、怖い。

 

 何より、親しい人や慕ってくれるファンの子達が不幸になるのが耐えられない。自分だけが傷つくなら、こんなに恐れることはないのに。

 

「君の未来を見る力は、こことは違う未来をも見る事ができるのかね」

「ええ」

 

 要領悪く話そうとするナシコに区切りをいれるように、パラガスが口を開く。

 

 どれから話せばいいのか。説明が得意ではないナシコは、察したアオがコルクボードからメモ用紙を破ってきてくれたのと、ポケットに差し込まれていたペンを借してくれたので、一つずつ纏めていくことにした。

 時間に沿って伝えていくならば、いずれかの界王が死んだ場合に現れるボージャックのことから話すべきか……これは、あまり地球と関りはない気がするが……。

 なにせ劇場版でもなぜ大天下一武道会に現れたのかもわからないのだ。たとえ復活したとして、わざわざ辺境の惑星と称される地球に来るのだろうか?

 

 魔人ブウの事も伝えなければならない。魔導士ビビディによって作り出された怪物。その封印された珠が地球にあり、この時代では7年後……トランクスがやって来た未来ではいつになるかはわからないが、その息子バビディがやってきて復活のためのエネルギーを集めようとすること、暗黒魔界の王を従え、その力は完全体のセルを大きく上回っていること。 

 

 気を付けるべきは、魔人ブウの吸収能力だ。どれほど強くとも取り込まれてしまっては元も子もない。

 現代においても、ナシコの懸念はそれだ。

 修行して強くなったはいいが、もし吸収されてしまえば……。そうでなくとも、ナシコは自分がバビディに洗脳されてしまわないかが不安だった。

 

 あの魔術は人の持つ悪心を増大させて操るものだが、自分に悪い心が欠片もないなどとは言えない。

 真っ当な善人であると、ナシコは胸を張る事ができなかった。

 

 ドラゴンボールを用いた回避策を考えてもみたが、地球さえ良ければそれでいいのかと自問してしまい、いずれも断念した。バビディをブラックホールにでも転移させるとか、魔人ブウの珠を宇宙の隅っこにでも放逐するとか……。

 だがやはり目の前で完全に倒しきってしまわなければ何かの拍子に地球に現れて暴れ回られてしまいそうで不安になった。だから力をつける事に専念して、それでも不安の種は尽きない。

 

「そんな奴、いったいどうすれば……」

 

 話を聞くにつれ、明るくなるはずだった未来に立ちはだかる困難の数々にトランクスの眉間に皺が寄っていく。深く刻まれたそれは苦労の表れだ。──生まれてからこれまでの18年、厳しい環境に身を置いてきて、まだ戦いが続くと知って、しかし彼の目から光が失われる事はない。今口にした言葉も、どうすれば倒せるのかを模索しているだけで、決して諦めはしていなかった。

 

 その表情に、ナシコは眩しそうに目を細めた。

 やはりみんな、違う。

 根本的なところで一般人の域を出ないナシコとは芯の強さが違いすぎる……そう実感して、それがとても……羨ましかった。

 

「同時期に現れる界王神様と協力すればいいと思う」

「界王神、様……?」

 

 ナシコの助言したかったことは、魔人復活を阻止するために現れる若い界王神を通じてゼットソードに封じられた老界王神の助けを借りる事だ。

 潜在能力の解放さえできれば多くの相手が敵ではなくなるはずだ。

 破壊神の協力も得られれば万全なのだが、事情を説明したところで動いてくれるかは怪しい。

 

「より先の未来……あなたの未来に、ゴクウブラックと呼ばれる悪人が現れる」

「悟空……ブラック?」

「目的は人類の絶滅。その正体は、別の宇宙の界王神ザマス」

「な、絶滅……!?」

「さらにその仲間にもう一人ザマスがいて、そちらは不死身で」

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 必死に話の内容を咀嚼しようと前髪を掻き上げるトランクスに止められて、ナシコは走らせていたペンを置いた。こればっかりは全部彼に詰め込むほかない。さすがにナシコも未来についていく事はできないから、トランクスに委ねるしかないのだ。

 

「……よし。よし、いいよ……思ってた以上に覚悟しなきゃ駄目な話だったみたいだ」

「……ごめんなさい」

「ナシコちゃんが謝ることはないよ。教えてくれてありがとう。おかげで心構えができた」

 

 悪い情報ばかりをもたらされているのに、気落ちするナシコへの気遣いができるトランクスという人間は本当に芯が強い。安心させるように笑ってみせて、なんとかしてみせるさ、と力強く言い切った。

 

 その後、いくつか宇宙があることや、それを統べる王がいること。……全部を話し終える頃には、すっかり紅茶が冷めてしまっていた。

 

「もし無理だと思ったら、その、破壊神……ってのも頼ってみるよ」

「……本当に、ごめんなさい……」

 

 いてもたってもいられないのか、何をするでもなく席を立ち、拳を握り込むトランクスに、ナシコは俯いてしまった。

 孫悟空さえ死んでいなければ、トランクスを超サイヤ人ゴッドにする事もできただろう。

 協力する5人のうち、足りないもう一人のサイヤ人は、自分が種族を変えてしまえば済む話だった。

 それができないのは、みすみす悟空を死なせてしまった自分の落ち度である、と、そう思い込んで肩を落としている。

 

「……」

 

 繰り返し慰めの声をかけても効果はないと知ったトランクスは、どこまでも真摯に自分達や未来のこと考えてくれるナシコに、笑みを浮かべて肩をすくめた。

 

「嬉しいよ。こんなに心強い味方がいてくれるなら、オレは未来でも頑張れる」

「……」

 

 だから、半分独り言のように感謝を伝えた。

 彼女が教えてくれたからこそ脅威に備える事ができる。想ってくれるから力になる。

 絶対に負けられない……! その決意が、トランクスをより強くするのだ。

 

「未来が完全に平和になったら、報告しに来るよ。必ず、さ」

 

 ナシコの傍らへ立ったトランクスが、そっと肩へ手を置いて語りかける。

 子供の姿の時ど同じように頭を撫でて落ち着かせようとして、勝手が違うのに手が宙を彷徨った。

 

 彼女のしょんぼりとした雰囲気は心細さを感じている子供に見えるが、これで見た目はクールな美少女。装いも相まってなんとも……いうなれば、未亡人のような……花嫁衣装を纏った少女を形容する言葉には相応しくないが、雰囲気はまさしくそれだった。

 

「じゃあ……」

 

 そして、振り返ったナシコの顔を至近で覗く形になってしまったトランクスはその造形に息を呑んだ。

 触れてはいけない、壊してはいけないような印象がより強まっている。一種の芸術のような……無意識のうちに手折ってしまいたくなるような危うい魅力が、意識を惹きつけてやまない。

 

「その時はきっと、歌をうたうから」

 

 そっと差し伸べられた手が頬に触れるのに、トランクスは照れるでもなく、不思議な安心感を抱いた。

 ナシコにこうして頬を撫でられるのは何回目か。癖なのかなんなのか……他の人間にそうしているのは見た事がない。

 大人の姿だと母のような慈愛を持ったスキンシップになるが、これはどうにも、彼女自身の確認の意味合いが強いようだとトランクスには感じられた。

 

 現実に……そこに本当の人間がいるのを確かめているような……その人を守りたい気持ちが自分の心にあるのを確かめているような、そういったもの。

 ……単に未来人に触れていたいだけかもしれない。突拍子もない彼女の行動に特に理由がない……あるいは理由がつけられないのはよくある事だ。……なんて、あまり長いこと触れられていたせいでさすがに照れが入ってきたトランクスは、誤魔化し混じりに思った。

 

「……うん。お願いするよ」

 

 彼女にとって歌は祈りだ。彼女を表す要素の全て。すなわち、生命(いのち)だ。

 それを捧げようと言ってくれているのだから、全力で応えられるよう頑張らなければ男が廃る。

 

「出発はいつ?」

「すぐ、と言いたいけど、ここのみんなや母さんや父さんに挨拶もしたいし、夜になるかな」

「間に合ったら、見送りに行くね」

 

 小さく頷いて返したトランクスは、一度室内を見渡すと、最後に壁際に立つアオを見やった。

 

「ここにもずいぶんお世話になったよ、ありがとう」

「なんにも気にしないでいいんだよ。また……遊びに来てね」

「ああ。ウィローちゃんのところに顔を見せてから出るよ。ナシコちゃんは……」

「私も出ます。アオちゃん、手の空いている子を呼んでくれる?」

 

 会話を通して少し元気になったのか、口数の多くなってきたナシコに、知らずトランクスはほっとしていた。

 先程までの……いや、今もそうだが、このナシコの変わりようには戸惑いが強い。

 

 落ち着いているというよりは感情が希薄で、精神的に成長しているというよりは達観しているというか……ソファにだらりと寝そべってお菓子を貪り漫画を読むような少女とは同じ人間に思えず、どう接すればいいのかわからなくなってしまいそうだった。

 

「はいはぁい、お呼びですか~」

「ミドリちゃん、悪いけど少しの間だけ、アオちゃんの代わりにパラガスさんについていてもらっていい?」

「はあ、構いませんが……?」

 

 厭世的な瞳の色は変わっていないが、指示を出すナシコは気持ち背筋が伸びて、元気さを取り戻しつつあるように見えた。内面はどうあれ、そうして安心したトランクスは、「おじさま、お加減はいかがですか~?」とミドリに世話を焼かれて満更でもなさそうなパラガスが席を立つのに合わせ、彼と共に部屋を後にした。

 

「アオちゃん、瞬間移動をお願いできる?」

「……?」

 

 カップなどの食器が片されたのを見計らい、部屋の明かりを落としたナシコの頼みに、アオは視線のみを上げて疑問とした。すなわち、「なぜ」と「どこへ」。

 小さな肩に手を置いたナシコは、「どこへでも」と答えた。

 

 これは気紛れな主人のお散歩か何かか。頼まれれば否とは言わないアオは、それ以上の疑問を挟まず即座に周囲へレーダーを広げ、少し遠い位置に引っかかった見知った気のもとへ瞬間移動を実行した。

 

 異空間を経て宇宙へ。

 体感では一瞬。二人は和風の一室に侵入していた。

 

「では最初の質問を……ほっ、何者!? どこから!!」

「……、土足で失礼いたします」

 

 まったく見当違いの場所に飛んでしまい、表情無く困惑するアオの前に出たナシコは、こちらを振り向く桃色の獣人と、部屋の奥の一段高い場所にいる三人の者達へ、失礼を詫びるために頭を下げた。

 

「──……ナシコ。と、その借りの従者であるアオだな?」

 

 浮遊するポッドに入った巨大な男──一言で表すなら福助人形。ちょんまげに袴の、大福のような白く大きな頭を持つ異星人──は、見開いていた目や口を閉じ、僅かに乗り出していた体を戻すと、落ち着き払った声でナシコらの正体を言い当てた。

 

「ええ、はい。重ねて失礼をお詫びします」

 

 いるか、いないか。それすらわからないまま、ナシコは前に神龍へ願い事をする時、副次的な願いとして『誰かに頼んで瞬間移動した際にズノーの前へ出る』ように含んでいた。だからアオが目的地を窺った際にどこへでもと答えたのだ。

 ズノー様と呼ばれる大男が真に博識であるのも今の一言で判明した。突然現れた自分と、近年に作られたばかりの人造人間の名前、自分との関係性まで言い当てたのだから。

 

「さすがはズノー様……」

 

 感心した風に呟いたナシコは、

 

「アオという少女の瞬間移動によって地球という星からやってきた。エイジ726年生誕。年は41、身長は165cmで体重は57kg」

「……?」

 

 止まらず続く説明染みた言葉に、どう反応すれば良いのかわからず固まってしまった。

 小ズノーとでもいうべきか、左右に控えるズノーそっくりな従者や説明を続けるズノーの視線は、ナシコではなく、ナシコへ振り向いている桃毛の獣人に向けられているようだった。

 

「戦闘力は13ラチカ、変身形態は全部で七つ。スリーサイズは上から90、56、83。お前を害する意思はない」

「質問は以上ですね。はい、お帰りください」

「えっ! あ、まさか……そんな殺生な!」

 

 従者に促されてはっとした獣人は、今のが自分が口にした「何者か」「どこから来たのか」というのを質問として処理されてしまったのだと気づいた。みるみる青褪めていく彼に、悪い事をしたと思いつつも、赤裸々に語られてしまった身体データについて思う事がない訳でもないので詫びようとは思わないナシコであった。

 

 ……ウェブ上に掲載されている身体データを下回っているのは、精神と時の部屋で食料を口にしたのが一度のみであったのが原因の減量だろうか。別に減っても構わないが。

 

「お、おまえ、なんということを! ゆるさん!」

 

 再度の質問を試みた獣人は、すげなく切り捨てられてもはや視線も合わせてもらえなくなってしまい、怒りの標的をナシコに変えて詰め寄った。が、割り込んだアオに腕を捻り上げられて膝をつく。

 

「あっ、いたい! はなして! 冗談です!」

「アオちゃん、放してあげて」

「……」

 

 一転して泣き言を口にする獣人を解放するよう促せば、アオはゴミでもみるような目をそのままナシコへ向けた。感情の乗らない瞳に、「いいのか」と確認するような意思を読み取り、頷く。

 

「いたた、ら、乱暴者め……」

「申し訳ありません……お邪魔してしまったようで」

「邪魔どころの話ではないぞ! せっかく遠路はるばるここまでやってきたというのに、無駄足ではないか!」

 

 つぶらな瞳でキューキューと怒る獣人に、故意ではなかったとも言えず困ったナシコは、ひとまず彼をアオに任せて前へ出た。

 詫びるのはここに来た目的を済ませてからで良い。……悪いと思う気持ちもあるが、ナシコには今は何よりも優先しなければならない事があるのだ。

 

「では、貢ぎを」

「……」

「貢ぎとはズノー様の頬へのキスです」

 

 ナシコから見て右側に立つ従者がズノーを示した。

 ナシコが何も言わないでいれば、丁寧に説明までしてくれた。

 もちろんそれはわかっている。だがナシコは、思っていたより強い抵抗感を抱いてしまうのに少しばかり戸惑ってしまった。

 ……正直に言って、あまりしたくない。

 

「では、失礼します」

 

 そうも言っていられないため、数段の階段を上ってズノーの側へ赴き、無心で口づけをした。

 ……雪見だいふくの皮のようなもちっとした感触に、あっかわいい、などと感想を抱いた。

 

「複雑な気分だ」

 

 じろりとナシコを見下ろしたズノーが呟くのは、内心で思った事さえ知っているからだろうか。

 

「しかしお前は若いしかわいいし、頬への口付けはまだ二度しかしたことがない。よし、じゅっ……、……、……。……4……5個までの質問を許可しよう」

 

 歯切れの悪い宣言に「ん、」と内心引っかかりを覚えたナシコは、しかし5つなら特に不自由しないため、何も言わず元居た場所へ戻った。

 そうしてズノーと向き合えば、両側の従者がズノーの耳元へ顔を寄せてごにょごにょ囁いている。見る限り、それは抗議に近い疑問のようだった。

 

(今たしかに10個と……最大数の10個ではないのですか?)

(い、いや、これはチャンスなのだ。質問に来る者といえば知識を求める老い枯れた老人ばかり……このようなおなごが今後現れるとは思えん)

(うわあ)

(ばっばかもの! これは戦略であるぞ!!)

 

「おっほん……もし質問を増やしてもらいたければ、反対の頬にもチッスをするのだ」

「……結構です」

 

 下心が透けて見える誘いに乗る理由も余裕もないナシコに、表情を変えずしょんぼりした雰囲気を醸し出したズノーに代わり、では質問を、と従者が促した。

 

「お聞きしたい事のまず一つ目は、ツフル人の科学者であるドクター・ライチーが作り上げた怨念増幅装置ハッチヒャックが、どの惑星にあるのか……その位置……座標を教えて頂きたいのです」

「ふむ」

 

 当初、ナシコは「怨念増幅装置は存在するのか」と聞こうと思っていた。

 しかし話しているうち、それではあるかないかしかわからないと思って位置を聞こうとし、それだけ聞いても意味がないと思い直して座標を聞いた。

 ズノーが並べた数字はナシコには理解できないが、アオにはわかる。インプットさえしてしまえばそこへの瞬間移動は容易い。

 

「2つ目は……現在の私と破壊神ビルス様とではどれ程の力の差があるのでしょうか」

「破壊神ビルス様? 恐れ多い事を聞くな……天と地ほどの差がある。数字にすればお前が1で破壊神ビルス様は10だ」

「……ありがとうございます」

 

 内心、ナシコはかなりの失望を感じた。

 やはり限界まで鍛えても、自分では端役にすらならない。

 これからの戦いには無用な存在であるとはっきりわかってしまった。

 

「……大サービスでもう少し詳しく教えてやろう。お前が力を解放すれば、その数字は3にほど近い2となる」

「……」

「そして宇宙全てから力を集める術を使えば、お前の数字は…………15となる」

「!」

 

 はっとして顔を上げたナシコは、ズノーが目を泳がせて焦っているのを見た。

 口を滑らせてしまった、というよりも言ってはならない事を言ってしまったような反応だ。

 それも当然だろう。破壊神より上になるとはっきり断言してしまったからだ。

 

 真実味のある言葉に元気づけられたナシコは、しかしよく考えてみるとそれは当たり前だと気が付いた。

 なぜなら、宇宙中から元気を集めるという事は、当然その中に破壊神等も含まれるからだ……彼らの力をそのまま借りたなら上回るのは当然の話。

 そして、もし破壊神と相対した時にいざ元気を集めようとしても、提供する事を拒まれて超えられずに終わるだろう。ようするにぬか喜びであった。

 とはいえ、心が上向きになったのは事実。……自分の力でなんとかしていくしかないのだから、腐ってなどいられない。

 

「質問は以上です。あとは……先程無為にそこの方の質問回数を消費させてしまったお詫びに、私の残り回数をお譲りしたいのですが」

 

 とりあえず聞きたいことは聞けたので、アオの横でうなだれているアニマルタイプの人間に場所を譲ろうと思い立つ。

 

「原則として質問を終えた者が次に質問できるのは1年置いてからとなります」

「まあ、いいだろう」

「本当ですか! やったー!」

 

 従者は規則に則った答えを示したが、ズノー本人から許可が出た。

 礼を言うより早く小躍りして前へ出た獣人に、ナシコは下げかけた頭を戻し、ああ、と声に出さず哀れな眼差しを贈った。そんな喜び方をしては……いや、もう義理は果たしたのだ。ナシコは目を伏せて何も言わず踵を返した。

 

「本当だ」

「残り2回です」

「えっちょ、そんな!」

 

 揚げ足を取るような答え方をする彼らに無駄口を叩いては無意味に回数を減らしてしまうだけだと、最初の失言で学べなかったのだろうか。

 それでも残り二つ。慎重に言葉を選ぶ獣人を後ろに、アオの肩に手を置いたナシコは、先程聞かされた座標へ飛ぶよう指示を出した。

 

「……」

 

 顎を引くように頷いたアオが、その位置を元に戻す頃には、広い一室に転移していた。

 埃や鉄の臭いで満ちる、天上の高い部屋の半分を未知の金属塊が埋めている。

 

「下がってて」

「……」

 

 顔を寄せて囁きかけ、優しくアオの肩を押して後ろへやったナシコは、乳白色の気を噴き上げ、芯から真っ白に染め上げた。淀んだ空気を打ち払う澄み切った気。

 照らし出された室内に不穏な気配が渦巻く。

 

 中央に鎮座する機械らしきものの前へナシコが歩み寄っても、反応は特にない。

 ナシコの知るドクターライチーの怨念がまろびでる訳でもなければ、ハッチヒャックが出現する事もない。

 ただ白く染め上げられて、そこにあるだけだった。

 

『──』

 

 タ、タタッ。

 ナシコの左右後方に次々と気配が降り立つ。

 それは金の髪を持つ戦士達の気質そのもの。

 

 孫悟空、孫悟飯、ベジータ、ラディッツ、ターレス……そしてブロリー。

 それらを模った影に、室内がにわかにざわめき出す。

 憎きサイヤ人の存在を感知して目覚めようとしているのだ。

 

『だあああ!!』

『はあああ!!』

『うおおおおおおお!!!!』

 

 咆哮をあげ、気を噴出させて輝くサイヤ人達に、呼応するように空間が脈打ち、一息の内に形を成した。

 薄紫の肌に赤い装甲を持つ怨念の集合体、ハッチヒャックだ。

 

「さ、サイヤ……じ、人……!」

「……恨みはないけど、放っておくと地球が危険だから……」

 

 イカ型の伸びた額や胸部などの緑の宝石が輝きを増し、気が充実し増大していくその様に、ナシコは独り言を口にした。

 メキメキ、メリメリと音をたて、ほとんど時間をかけずにハッチヒャックが変身を遂げる。

 凶悪なサイヤ人の気にあてられて進化したのだ。ナシコの知るハッチヒャックよりも数段強くなり──それでも脅威にはなり得なかった。

 

「はぁああ!!」

 

 交差させた腕の宝石を輝かせてパワーをチャージし、巨体に見合わぬスピードで接近したハッチヒャックの大振りのワンツーパンチは、回避行動も防御姿勢も取らないナシコに直撃した。

 衝撃が空間を突き抜けて──ナシコは、微動だにしていなかった。

 

「ぬ……!?」

 

 戦闘力差からくる防御力の高さ、ではない。今のは明らかに攻撃を無効化していた。

 大きく跳び退ったハッチハックが両腕を広げ、再度交差させて全身までに力を籠め、全ての宝石を緑の光で溢れさせてパワーを溜め始める。

 15秒の隙ができるチャージタイムを、ナシコはただ見上げるだけの姿勢で過ごした。

 

「ぐおおおお!!」

 

 チャージの姿勢そのままで緑の極大光線が放たれる。リベンジャーカノン。

 本来サイヤ人を討つために蓄えられたはずの力は、無関係の人間であるナシコを飲み込み──そこを起点として羽根に変換され、吹き荒んでいた。

 

「!!」

 

 貯めた時間に比例して発射する時間も長い。攻撃が通用しないという事実を確認するには充分だった。

 気功波の全てが無力化されて羽根に変わっている。輝く白が雪のように舞い落ちて、床に触れて溶けていく。

 歯を剥き出しにして唸るハッチヒャック。打撃も光線も無意味なら、いったいどのようにして戦えばいいのか。

 

『だありゃあ!』

「お──!」

 

 慄き狼狽える隙をつくように上空から襲撃を仕掛けた形の無いサイヤ人の気質に、思わず顔を上げてしまったハッチヒャックは、懐に潜り込んだナシコが放つ正拳突きによって腹を突き破られ──。

 

 

◆ 

 

 

「ぐ、おおあああ!!?」

 

 血液が噴出する。

 たったの一撃。腹への拳撃一つで串刺しにされ、致命傷を負ったボージャックが目を見開いて吐血する。

 

「こ、こんなガキにっ──」

「ふっ!」

「ごはあっ!! ぐぶ!!」

 

 細腕によって廃墟のビルに縫い付けられた体が逃れるすべはない。

 より深く押し込まれるのに言葉さえ紡げ無くなった悪漢にパラパラと建物の欠片が降る。

 

「き、きさま……!」

 

 眼球が裏返りそうなほどの衝撃に、それでも銀河戦士の意地か、腕を回してナシコを抱きかかえるように両手で頭を締め付けたボージャックは、白い光に触れた手の平が焼け爛れるのに苦悶の声を上げて手を逃してしまった。

 

「はあっ!」

「ま──」

 

 腹に刺さる腕から光が溢れ、内側からその肉体を粉々に砕いていく。

 最期に言おうとした何ごとかは、崩れ落ちるビルの中に葬られた。

 

「ふっ、う……」

 

 腕を戻したナシコは、流れで髪を払い、指を通して梳いた。昂った気を落ち着かせるために、何度も。

 

 どうにも副次的に備わった能力によってボージャックの攻撃がまったくの脅威でなかったとはいえ──フルパワーになったというのに、拳も蹴りもナシコに一つの傷を与えることなくむなしく暴れ回っていた──連戦はさすがに疲れてしまう。精神的なのはもちろん、食事もとらずここまでやってきたのだから肉体的な疲労も相当だ。

 

『お、おお、やりおった……!』

 

 ボージャックの討伐に協力してくれた北の界王の声も、今はナシコに届かない。

 吐息に重い疲労が乗るほど参っているナシコは、表面的には涼し気な顔をして、降り注ぐ瓦礫の中に立っていた。

 やがて形を保ったビルが真横に落ちて地面を揺らす。

 

「……」

 

 奇跡的に残った窓ガラスに写る自分の姿をなんとなく見たナシコは、髪に触れる手にべったりと付着した血液に凍り付いた。

 

「あっ……あ」

 

 花嫁衣装のところどころにも血液が染みついている。

 それはボージャックの部下達を始末する際に浴びた返り血だ。

 一切の容赦をしなかった表れのように、繊維にこびりついた血が乾いて、もはや取れそうにない。

 

「ひっ!」

 

 あわてて髪から手を放しても、もう触れてしまっているのだから、髪にまで血が付着しているのは間違いない。

 どこまでも……穢れている。

 悪党の血が、ではない。

 それを躊躇なく殺せてしまえる精神性が汚れ切っていた。

 

「ひ、ひ、ぅ……」

 

 呼吸は浅いものに変わって、声にならない悲鳴を漏らして座り込んだナシコは、衣服が光の粒子となって消えて、元の白い洋服に戻るのも気にせず蹲った。

 周囲を照らしていた気が消えてしまうと、そこは影が溜まって暗く、衣服や肌はまたたくまに土埃で汚れていく。

 あさましく震えて、吐く息にさえ血の臭いが混ざっているようで、足元を漂う影が蝕むように体に染み込んでいく。

 

 

 

 それが、今の彼女だった。

 

 

 

 

 

「こ、こんなにたくさん……ナシコちゃん、本当にありがとう」

 

 ホイポイカプセルが六つ収まったケースで膨れ上がった旅行鞄が、地面に10個並べられている。

 それは今日の日のため、未来のためにナシコが用意したトランクスへの餞別だった。

 日持ちする食料や機材から、日用雑貨に、電気の必要ないゲームなど、ナシコの思いつく限り買い集めたものが詰まっている。

 

「ううん、気にしないで」

「月並みな事しか言えぬが、未来でも頑張るのだぞ」

 

 首を振ったナシコは、トランクスを見上げて微笑んだ。

 

 その腕をウィローが支えている。

 帰宅してからのナシコは普段と変わりない態度だったが、どことなく変で、ぼうっとしてしまったり脈絡なく蹲って動かなくなったりとおかしな部分も多々あったので、叱ろうと思っていたウィローも、今は黙って歩行や会話の補助をしている。

 大袈裟だよ~と笑うナシコに不安しか抱けなかったのだ。

 

「ウィローちゃんもありがとう。……お世話になりました」

「うむ、励めよ青年」

「ほんと、気にしなくていいからねー」

 

 明るい声で重ねるナシコ。

 もっとも、ぽそっと呟いただけのそれが聞こえたのは隣に立つウィローくらいのものだろう。声量を除けばなんてことはない言葉なのに、背が冷えるような感覚に身動ぎしたウィローは、トランクスを見送るために集まったそれぞれをなんとなく見回した。……ナシコの顔を見ていられなかったのだ。

 

 これくらいは当然のこと、とナシコが笑う。あまり使い道のないお金を有用に消費できて、むしろ感謝したいくらいだ。

 本音をいえばもっとたくさんの物資を送りたかったが、一人乗りのタイムマシンに詰め込むにも限度がある。現在の量だけでもトランクスが埋もれてしまうくらいだった。

 

「なあに、こんなにプレゼント用意して。ひょっとしてナシコってトランクスの事好きなの~?」

 

 大量の物資に、赤子を抱いたブルマがからかう。未来を知らなければ、たしかにこれは異常に見えるだろう。

 とはいえ、別にブルマはこれを異常と見ている訳ではない。これから平和になるはずの未来にこんなに大量の物資が必要になるなどと思いもしていないのだから。単に、ナシコってこんなにたくさんの贈り物をしたことあったかしら、と少し疑問に思っただけだ。

 

「はい、大好きです! もちろんブルマさんも、みんなのことも、だ~いすきです!」

「ふふ、アイドルだし、誰が好きとは言えないわよね」

 

 模範的な回答が微笑ましい。はいはい、私も好きよ、と軽く流したブルマは、トランクスに向き直った。

 

「トランクス、元気でね」

「はい。母さんも……父さんも、元気で」

「……フン」

 

 輪から外れて建物に背を預けるベジータは、目だけを向けて、それ以外に何も言わなかった。

 ……いや、組んだ手から二本指が覗いている。気難しいベジータの、これが精いっぱいの別れの挨拶らしかった。

 にっと笑みを浮かべたトランクスは、悟飯達が協力して鞄を詰め込んでくれたタイムマシンを見上げ、笑みを苦笑に変えつつ乗り込んだ。思った通りギュウギュウ詰めで、蓋を閉めると動く隙間もない。

 

 浮かび上がるタイムマシンの中から、トランクスが手を振る。

 歓声とともに振られる手の中で、ナシコも小さく手を振って未来の戦士を見送った。

 機体が消えても、歓声がやんでも、ずっと。

 

「帰るぞ」

「……うん」

 

 ぱたりと落ちた手が服を打つ。

 そのまま蹲ろうとしたナシコは、ウィローに手を引かれて帰路についた。 

 それぞれへの挨拶の際の笑顔はいつも通りなのに、空に浮かび上がって人目がなくなると、すうっと表情が抜け落ちてしまう。

 

「……」

 

 くっついて飛ぶナシコの中の底冷えした何かに触れたウィローは、しばらくは休養させねばな、と考えた。戦いの連続で疲れている彼女を休ませてやろうと決めた。

 数日わがままを許せば、きっとまたいつも通りの能天気な彼女に戻るだろうと……半ば無理矢理に思い込んで。




TIPS
・年齢
41歳、というのはこの世界に出現してから今までの時間
男であった時を含めると69歳くらい
精神的な年齢は9歳を下回ったり19歳あたりとまちまち

・スリーサイズ
詳しくはニシタプロのwebサイトを見てね
各写真集の購入でも知れるぞ

・ハッチヒャック
サイヤ人を恨むツフル人の科学者ドクター・ライチーが作り出した怨念増幅装置から生まれた怪物
出演作品が非常に多い
「パワーだけならブロリーより上かもしんねぇ」という悟空の台詞は有名だろう
セルゲーム時の孫悟空らでも戦えたという事で戦闘力は13億ほどとする
形態変化後は15億

・ボージャック
通常形態とフルパワーが存在する銀河戦士の首領
前作にあたる映画のボスがブロリーだったせいでそんなに強い印象がない
仲間との連携を取る、というより部下任せで、美味しいとこ取り
パーフェクトセルとどっちが強いかがよく議論の的になるが
どの道超2悟飯には手も足もでないんだよね
戦闘力は12億、フルパワーで15億

・ナシコ(ブランシュ) - ベール・サンクチュアリ -
戦闘力にして20億以下の攻撃を無効にする

・パーティクルドレス
邪悪なる心持つ者触れる事あたわず
神の気で編まれたそれは善なる気質の現れ。ひとたび悪人が触れれば瞬くまに燃え尽きるだろう
というよりナシコの発する気に触れると死ぬ

・救聖拳-カンタービレ-
神の気を込めた拳打
清く白い輝きはまさしく神の一撃
見た目は華やかでとても綺麗だという

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