案の定、
とはいえ、本来仕事などする必要は彼女にはないのだ。資産があり時間もある。アイドルになるための活動に全てを費やすことだってやろうと思えばできた。
ただ、彼女の生真面目な性格が、一人で生きていく以上は仕事をしなければと自分を律してしまうのだ。両親を亡くし、その資産を受け継ぎ、物忘れの激しい祖母と暮らしてきた。──今は施設に入っていて、週に数度顔を合わせる程度になってしまっている。灯のことをよそのお嬢さんだと認識する祖母とも、灯は良い付き合いを続けている。
年齢に見合わない成熟した雰囲気とはきはきとした物言いで大人と誤認させて──もっとも、本人にそんなつもりはないのだが、結果としてそうなっている──時に設営スタッフとして、時に臨時の販売員として、時に場末のバーで歌をうたったりなどして働いていた。いくらかのトラブルと夢へ向かうための諸々の事情により職を転々としている。今度の着ぐるみショーは、方向性は違うが芸能に触れられる機会であったのだ。熱意を買ってくれた人との約束も取り付けられたのだが、一つの失敗で流れてしまった。
……実のところ灯に非はない。警備員を打ち倒してまで侵入した悪漢や脆弱性のある仮設の更衣室について謝罪されたし、壁やロッカーを壊してしまったのは不可抗力だ。
平謝りする彼女を解雇するのは忍びないと向こうも思ってはいたのだが、結果として職を失ってしまった。クビ、というほど強い拒絶はなかったが、仕方のないことだ。
彼女の家に招かれたセルは、これでようやく邪魔くさいローブを脱ぎ捨てることができて一息つけた。忌々しげに放られたローブが突き広がった尾に飲まれて収納される。手ぶらになったセルは、腕を組んでこの場所を観察した。
広い敷地に立つ三階建ての家は、中の都でも高級住宅の部類に入るのではないだろうか。手入れされた庭にはガーデニングもあり、開発された都市の中でもここは見渡す限り自然豊かな空気であった。ただ、どこにも人の気配がなく、寂れた雰囲気である。
ポストを開けて中身を確認していた灯は、きらっと目を輝かせ封筒を取り出すと、その薄さに肩を落とし、しょぼしょぼと封を切って一枚の紙を取り出して広げると、がっくりと落ち込んだ。
「やはり"ウィング"です……! "ウィング"しかありません……!」
アイドル志望は伊達ではないらしく、彼女はこれまで幾度となく様々なオーディションに挑戦してきているようだ。しかし結果は芳しくないらしい。拳を握り締めて燃える灯がこうも容易く自宅へセルを連れ込んでしまったのは、舞空術さえ覚えることができれば、という焦りからなのかもしれない。
「広い家だ……他には誰がいる」
「誰もいませんよ。私一人です」
今はいないようだが、外に出ている家族でもいたらまたローブを纏わなければならないし、面倒な説明もしなければならないと辟易していたセルは、灯の答えに「そうか」以外の感想を持たなかった。
その年齢で一人なのかとか、両親はどうしたのかとか、普通持ち得そうな疑問などセルにはない。
あるのは武への関心だけだ。灯の持つ技術のみがセルの関心を買っている。今は修行こそが飢えを癒してくれるのだから。
「さっそく始めようではないか」
ザッと両手を伸ばして重ね、構えるセル。やる気は十分。年甲斐もなくはしゃいでしまっているのを自覚しているが、催促するのを我慢できなかった。はやくその技術を知りたい、ものにしたい。強くなりたいという情動に突き動かされているのだ。
振り返った灯は、困り顔であった。手を当てたお腹からくうっとかわいらしい音が鳴る。
「あの、その前に食事にしませんか?」
「必要ない。私にはナメック星人の血も流れているのだ。水さえあれば問題ない」
「いえ、私が空いてるんです、けど……」
なめくじ? と首を傾げる彼女の言葉は、もっともであった。
たしかにそうだ。そういうことなら仕方がない。人間は本当に不便な存在だ。
時と場合を考えず楽しそうに歌うお腹の虫を必死で押さえ込んでいる灯を、セルは不満げに見下ろした。腕を下げ、口の端も下げ、不服なのを隠そうともしない。熱視線に彼女が身動ぎしてもじいっと見続ける。盛り上がった気分に水を差され、目の前のご馳走をお預けされた気分だ。
あ、と小さく零す灯。機嫌を損ねてしまったのかと焦ってしまう。
「よ、よろしければセルさんも一緒に食べませんか? 一人で食べるより二人で食べた方が、料理は美味しくなると思うんです!」
「……」
良い提案とばかりに手を合わせて誘う彼女に、断わっても良かったが、それでへそを曲げられては面倒だ。騒ぎを起こさず可能な限り早く技術を習得するためならば、我慢くらいはいくらでもしよう。そう決めたセルは渋々彼女に続いて屋内に入り、促さされるまま椅子に座って、彼女が料理をする間大人しく待つ事にした。
「ふんふんふー、ふんふんふ~ん♪」
「……」
手を組み足を組み、静かに待つセル。「お暇ならテレビをつけてくださっても構いません」と言われてはいたが、壁にかかる大液晶に興味などなかった。……椅子に引っかかる羽根の心地がやや悪いのもある。たびたび足を組み替えて誤魔化しつつ、料理とやらの完成を待つ。
「ふふふんふー、とろぴかる~」
衣装の上にエプロンをつけ、リズムに乗ってフライパンを動かす灯が口ずさんでいるのは、街でも流れていたフラワープティングの曲だろう。なんとも苛つく楽しげな曲調だ。
「お待たせしました! どうぞ!」
「……」
ノリノリのクッキングタイムの終わりに出されたのは、よくわからない何かだった。
そういえば。セルがまともに料理というものを見たのはこれが始めてだ。せいぜいゴミ箱から溢れるバーガーを包装紙越しに見たくらいか。
四角い固形物に緑のソースがかかった食物。ソースで皿に線を描く様は、なるほど中々センスがある。こういう無駄をこらしたものは、セルも嫌いではない。
「どれ……」
添えられたナイフとフォークを手に優雅に切り分けたセルは、それを口に運び、サイケデリックな味を楽しんだ。
「ふむ、非常に刺激的だ……悪くない」
灯がそっと差し出したナプキンで口を拭いたセルは、意外な高評価を贈った。
「えっ」と灯が零す。
……それもそのはず。今のは明らかに人間が食べられるようなものではなかったのだが……。
いや、別に灯が毒を仕込んだとか、わざとそういったゲテモノを作った訳ではない。そりゃあ多少は楽しくレシピをアレンジしたりしてみたが、真面目に豆腐ハンバーグを作ってみたつもりだ。カロリー抑えめで、寝かせておいた特性の野菜ソースを使って健康的でヘルシーな一品。体重管理が重要な年ごろの少女には大好評。最近どんどん体重が重くなってしまっている灯の渾身の創作料理だ。
「そ、そうですか!?」
こういったものをたまに披露する機会があるとたいてい苦笑いか真顔で手を付けられさえしないので、灯は感動してしまったようだ。くうっと顔を上げて涙をこらえ、ぱっと笑顔になって喜ぶ。
「お口にあったようでよかったです! こちら、お飲み物です!」
「ご苦労」
「はい!」
冷蔵庫から取り出したクーラーポットから細長いワイングラスへトクトクと液体が注がれ、提供されたそれを二指で挟んだセルは、一つのためらいも無く口をつけた。
芳醇な果実の香りが駆け抜ける。そして舌の上で弾ける泡の快感。うむ、こいつはなかなかいいものだ……。
「これは?」
「スパークリングジュースです。ナシ味です!」
お気に入りなんです!! と弾む口調で言われ、グラスから口を離す。
ナシ……コ。スパークリング。
……どうにも嫌な姿を想起させるドリンクだ。
「口に合わん」
「あっ、そ、そうですか……」
今はナシコのナの字を見るのも聞くのも嫌なのだ。むかむかして仕方がない。
不機嫌にグラスを戻したセルに、目に見えて落ち込んだ灯が食器を片す。
それから、自分の分の軽食を用意して向かいの席に腰かけると、手を合わせてから食べ始めた。
どうにもそれはセルが食したものとは違う。というかサンドイッチだった。
「あむ……なんでしょうか」
手袋を外した手で挟んだパンの角っこを小さく食んでもくもくやっていた灯は、じっと送られる視線に手を止めた。
が、セルは答えない。見ていた事に理由などない。しいて言うならば、料理の形を眺めていただけだ。
「はむ……」
返事がないので食事に戻った灯は、どうにも座りが悪いというか、落ち着かない様子だ。普段は一人で食べているために視線がとても気になってしまう。こうして他人と食卓を囲むのはいつぶりだろうか。
他人……以前の問題ではないだろうか。今日会ったばかりの、それもいきなり殴りかかってくるような異形の怪物を懐に招き込んでしまうなんて、とんでもなく愚かな話だ。
それでも……。
成功したアイドルの誰しもが持っている空を飛ぶ技術に、灯はずっと憧れを抱いていた。
いつしかそれが彼女の中でのアイドルの最低条件になっていた。
飛べない少女はアイドルにはなれない。空を翔ける事ができなければ大好きを届けられない。
それが現実となって降りかかるように、挑戦の日々には未だ勝利の二文字はなかった。
だから、なんとしてでも彼から技術を教わらなければならなかった。
たとえ対価に何を要求されようともだ。自分にできる事ならなんでもしようと思っている。……夢を叶えられなくなるような要求だと困ってしまうけれど、それだけの覚悟を持っているつもりだ。
……それは、セルとて同じ。
まったく力が及ばなかったナシコに……他のZ戦士達に、今のセルでは太刀打ちできない。
そこに現れた灯の技術は、騒ぎを起こさず修行するにはうってつけで、もしかすれば絶対的な力の差さえ覆す可能性さえあるとみている。
何より……セルが見つめる先で、やや視線を下げて頬を朱に染めている少女が、限りない武の才能を秘め、それを自覚していなさそうだというのが我慢ならなかった。
数多の天才武道家の細胞を持つセルにはわかるのだ。
その才能に触れたい、育てたいという願望を無意識化で抱いてしまうのは……セルもまた武道家のようなものだからだろう。
「ごちそうさまでした!」
手を合わせて行儀よく挨拶をする彼女に、ようやく補給が終わったか、と息を吐いたセルは、「食休みです!」と無駄に気合いを入れて目をつむってしまった彼女に、もう少しばかり待たなければならないらしいとわかって腕を組み直した。
……自分のペースを崩さない奴だ。このセルを前にして。
もし何か勘違いしているようだったなら、正してやらねばならない。自分がどれほど恐ろしい存在なのか……それを知った時、彼女がどういう表情を浮かべるのかという予想のみを楽しみに、緩やかに過ぎる時間を過ごすセルであった。
◇
「改めまして、
1階にあるレッスンルームにて、セルは灯と向き直って改めて自己紹介をしていた。
煌びやかなステージ衣装からレッスン用の赤ジャージへチェンジして、きゅっと靴音を立ててお辞儀をした灯が顔を上げれば、さらりと髪が揺れて、笑顔が映える。
その背を映す鏡張りの壁に視線をやったセルは、姿だけならなんら遜色ないアイドルである灯が、なぜくすぶっているのかを疑問に思った。……特に興味があるものでもなかったのですぐ消えたが。
「年齢は11歳、趣味は読書とスポーツ、好きな食べ物は梨のタルト、特技はロンダートです!」
「……」
そのくだりは毎回やるのか。というか前と内容が変わっている。彼女も試行錯誤しているという事だろう。
「アピールポイントは……瞳、でしょうか。夜のようで吸い込まれそうだってよく言われます!」
ぎゅっと両拳を顔もとで握って得意満面の灯に、まあ、付き合ってやるかとセルは胸に手を当てた。
「私の名はセル。人造人間だ……趣味は、闘いかな」
「素敵な趣味だと思います!」
がんばりポーズのまま大きく頷いてセルを肯定した彼女は、単に相槌を打ったのではなく本気で素敵だと思っているらしい。他人を好意的にしか見れないのだろうか。善性を信じ切っていそうな瞳のきらめきにややうんざりしてしまうセル。……好き好んでこういった手合いと付き合うのは本来遠慮しているところだろうし、手を組むのなら馬が合う相手がいい。たとえば、地獄で出会ったフリーザだとか、ああいった悪そのものとがやはり相性が良いだろう。
フリーザと灯とでは……善悪は対極にあるように思える。少なくともこの少女が非行に走る姿を、セルは想像もできなかった。
「……?」
見下ろしていれば、どうしましたかとでもいうように小首を傾げる彼女が悪に傾くような事は今後もなさそうだ。
まだ年若く、将来どう成長するかもわからない段階ではあるが……これもまた勘である。
酔いも苦いも知らない箱入りのようであっても、逆にいえばこの年で芯の通った性格をしているのだ、簡単には変わらないだろう。
セルの中に一瞬よぎった、思想を植え付けて手先として育て上げて使ってやるのはどうだろうという考えはすぐ棄却された。
部下など必要ない。そんなものを必要としない絶対的強者となるべくしてセルは生まれたのだ。必ずや自らの手でナシコらを打ち倒し、宇宙一とならねばならない。
そのためには……こんな地球人の女にも付き合ってやらねばならないのだ。
「まず初めに言っておくが……私は善人などではない。ヒトを殺すことなどなんとも思っていないのだ」
「……?」
「……」
きょと、とした顔をされて、セルは「少し脅してやるか……」という目論見が彼女に通用しないことに閉口した。……いまいちわかっていないようだ。あるいは、わかっていてそんな反応をしているのか。だとすればなかなかの女優だ。
恐れられない、理解されない。なんとも不愉快な気分だ。
「ふふっ、はい、わかってます!」
にっこり笑顔で言われても信用ならない。これは絶対にわかっていない顔だ。
正しい人間とやらと真面目に付き合うとこういう気分になるのか、と、セルはげんなりした。
……しかし、だ。灯とてテレビ中継されていたセルゲームを見ている。目の前の怪物がどれほど常識外れの力を秘めているかはなんとなくわかっているのだ。
今は大人しいセルがいつ豹変して襲い掛かってくるか……瞬きのうちに殺されてしまってもおかしくないし、張り紙で注意を促されていたように、尻尾の針で吸収されてしまうかもしれない。
それでも頭ごなしに否定しないのは生来の気質のせいだろう。見て感じて、実際に付き合ってみて判断するタチらしい。今のところ彼女の危機意識に訴えかけるまでは至っていない。
「ではまず……君は気、と呼ばれるエネルギーを知っているかな?」
「気、ですか?」
顎に指を当ててふむむとうなる彼女に、どうやら知らないようだと判断したセルは、まず気について教えることにした。より効率的に話を進めるならば、まずはここからだ。
「気とは、生きているものならば誰しも持つ力だ……私も、当然お前も持っているのだ」
翳した手に光球を生み出せば、照らされた灯はじっと見入った。
「これが……私にも?」
「使いこなせるかは別だがね。こいつは破壊にもなれば癒す力にもなる。まあ、私の見立てでは、すぐにできるようになるはずだ」
「そう、なのでしょうか……」
呟く声に含まれるのは懐疑心か。
気そのものを疑っているのではなく、自分の才能を疑っているといったところだろう。
「まず体の中を巡る力を自覚するといい……気の存在を知った今なら容易いはずだ」
「や、やってみます!」
それでも促されればすぐさま集中し始めるのだから、素直な少女だ。
目をつむり、「血管かな」「神経かな」と探りつつ自分の中の力を感じようとする灯を、セルは腕を組んで眺めていた。
「むむむ……」
ぎゅーっとつぶっていた目が、そのうちに八の字眉につられて力を無くしていく。
どうやら感覚が掴めないらしい。それはそうだろう。あるから感じろ、なんて言われてもわからないのが普通だ。
セルの予想に反して、10分経っても20分経っても、灯は気を放出するどころかその存在を知覚することができないらしい。
見込み違いだったのか……それともなんらかの障害があるのか。
次第に申し訳なさそうな顔をし始めた灯に苛立ったセルは、ショック療法で行く事にした。
未だ目をつぶる彼女の首の下へ手を押し当てて、気を打ち込むという暴挙に出た。
「きゃっ! えっ?」
当然デリケートゾーンに触れられた灯は飛び退いて胸を庇い、目を白黒とさせた。
直接胸に触れられた訳ではないが、その上……鎖骨に触れた手の感触は彼女には些か刺激が強かったようだ。
あまり他人に触れられるという経験がないゆえか長引くどきどきなどセルには関係ない。彼女の赤面など気にせずレクチャーを続ける。
「今のが気だ。感じられたか?」
「……あ、はい。暖かいものをぼんやりと……その、感じました」
体を突き抜ける針のような衝撃と、じんわりと広がる生命エネルギーに、セルの手が当てられていた場所へ手を押し当てた灯は、これがそうなんだ、と呟いた。……灯は、気というものを感じたのは初めてだが、存在は知っていた。よくライブで見る綺麗な光線や花火がこれなのだろう。これもまたアイドルに必須のスキル……習得せねば!!
「これを……体の外に……」
一度感覚さえ掴めば……。
……とはいかず、やはり灯は、気を体外に出すのに難航しているようだった。
それでようやくセルも気づいた。
「なるほど、お前は気の総量が少なすぎるのだな」
「え?」
そもそも土壌がなっていなかったのだ。ならばまずは戦闘力を上げるところから始めなければならない。
とはいえ、それはセルの仕事ではない。今はただ気の存在を伝えただけで、手取り足取り教えるつもりはないのだ。
「では、今度は私の番だ。あの技術について教えてもらおうか」
「え、あ、はい!」
むーっと体内で気を巡らせていた灯は、急な転換に慌てつつ、あれのことですよね、と確認をとった。
人を容易く投げる柔術。
セルはまず、それをいったいどこで覚えたのかを聞いた。
「それはですね、ネットです!」
「……」
がんばりポーズで自信満々に宣言した灯は、セルが何も言わないでいると、恥ずかしそうに身動ぎした。大きな動作は意識してやっているのか、まだ照れが見える。
羞恥を誤魔化すためか、灯はもう少し詳しい説明を加えた。
「うぇきで見たんです。かつて武泰斗様という人が編み出したものらしいんですが、それが本当かどうかわかるのは武の神様である武天老師様だけですね」
「ふん、武の神か……フッフッフ」
「?」
その程度の戦闘力で神を名乗るとは。失笑するセルを、灯は不思議そうに見上げている。
不思議なのは彼女の方だ。ネットの情報だけを頼りに技術を覚え、それを完全にものにしている。アイドルより武闘家を目指した方が大成しそうな才覚。実際、彼女の武の全ては独学であり誰にならったものでもない。そして本人は武という認識もなく、護身術よりの単なる運動の一つとして捉えている。
……ダイエットの方法を探している時に巡り合ったものだからだ。
「それでは、あの、僭越ながらレクチャーさせていただきますね! 人に教えた経験はないので不安ですが、精一杯頑張ります!」
「よろしくお願いするとしよう」
「まずは基本的な構えからですね。日常生活ではあまり取る機会がありませんけど……」
「ふむ」
手本の構えを見せ、真似たセルにそそっと寄って僅かな位置の乱れを直す灯。
こうしてセルと灯の訓練が始まり、初日は始終基礎的な事に努めるのであった。
TIPS
・技術
かつて武泰斗が編み出したとうぇきぺでぃあには記されている
そのためか、灯の動きにはどこか亀仙流を感じさせるものがあるようなないような
・吸い込まれそうな瞳
口説き文句
11歳には効果がないようだ……
・増加する体重
成長期。ダイエットの必要はない