冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた二次小説   作:ルーニー

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なろうの方ではついに終わってしまいましたね……。満足できる終わり方の反面終わってほしくなかったという気持ちが混ざって複雑な気持ちです。作者様の苦にならない程度に後日談的なものが読めたらなぁと思います。

投稿遅くなって申し訳ありません。ポケモンとかポケモンとかポケモンとかで忙しかったのでつい遅くなってしまいました←


ベルグリフさんが

ベルグリフさんが村人に連れられて家から出ていったと同時に、ドアからずんぐりとした男性が家へと入ってきた。しっかりとした足取りで中に入ってきた男性は笑みを浮かべて俺に話しかけてきた。

 

「久しぶりだな。2年前にパーティを組んだっきりか」

 

「お久しぶり、になるんですかね、ダンカンのおっさん。なんでこんなところにいるんですか」

 

ダンカンのおっさんとは2年前に資金稼ぎのために短い間だけだがパーティを組んでいたことがある。前衛としては十分すぎるぐらいの実力があったので組んでいるときは助かっていた。その時以来1度も会っていなかったのだが、まさかこんなところで出会うとは思ってもいなかった。

 

「なに。ここにかの黒髪の戦乙女の師でもある赤鬼がいると聞いてな。手合わせでもしてもらえぬか尋ねに来たのだよ」

 

「相変わらずですねぇ」

 

腕のある人の話を聞けばそこまでいって手合わせをする。そうして自身の強さを実感することが好きなのか、それともただ単に戦うことが好きなだけなのか、おそらく後者のような気がするがまぁそんなバトルジャンキーのような考えを持っているダンガンのおっさんなのだが、まさかこんな田舎にまで来ていたとは驚きだ。

 

「……てか、いくらここが北の村だと言ってもエルフがこの村に来るなんてあるんです?」

 

7年という短い年月ではあるが、旅を続けていた俺でも1度も会うことのなかったエルフが、いくらこの村がエルフの住まう森に近いとはいえ、あの森から出ないことで有名なエルフが人里に降りることがあるのだろうか。この村にはエルフの気を惹く何か特殊なものでもあるのか、それとも誰かが友好を結んでいるのか。

 

「いや、某もここに来てから長いこと滞在しているわけではないからわからぬが、あの様子を見るに初めてのことなのだろう」

 

「……まぁ、確かにそうですよねぇ」

 

よく考えてみればここにエルフがよく来るというならば村人もあそこまで慌てることもなかっただろう。今回初めて来て対応の仕方がわからなかったからあそこまで慌てていたといえばしっくりくるほどだ。となれば、エルフがここに来たというのはエルフの住む森に何かが起きているということなのだろうか。

しばらくエルフがここに来た理由を考えていると、ゆっくりと扉が開いた。そこには家主であるベルグリフさんと、その後ろに銀色の髪に特徴的な長い耳をもった老いた男性、というにはとてつもない威厳があるのだが、がゆっくりと家の中へと入ってきた。

 

「はっはっは! ベル殿はいつも某を驚かせてくれますなあ!」

 

ダンカンのおっさんは豪快に笑っていたが、魔法をかじっている身として目の前にいる老いたエルフに目を瞠るしかなかった。凛とした佇まいにぶれることのない体幹、尋常ではない魔力を感知でき、あまつさえ仕草1つとっても全く隙のないその姿は、強者という言葉が陳腐に感じるほどだった。

 

「……申し訳ない。警戒させるつもりはなかったのだが」

 

知らず知らずに警戒の体制をとっていたのか、席に座ったエルフがこちらを見て申し訳なさそうにするのを見て、警戒で緊張していた体を解すように深く息を吐く。

 

「いえ、こちらこそ申し訳ありません。初めてお会いするというのにとんだ無礼を」

 

「いや、こちらではあまりエルフについて知られていないことは存じている。警戒する気持ちもわからないでもない」

 

その重厚な声からはこちらを配慮する意思が感じられた。同時に、これほど人を安心させるような声を出せるとは、長寿であるエルフの中でもとびっきりの経験を経ているのだろう。これほど荘厳という言葉が似合う存在もいないだろうと思わず息が漏れる。

確かにエルフのことは森の中で静かに過ごしている、ということと、魔力器官が発達しているため不老長寿であること、そして富や名誉といった俗物じみたものを好まず、精神性を重んじるということしか知らない。おそらくエルフの側も自身のことはあまり知られていない、というのはわかっているのだろう。偏見もあるのかもしれないが、高圧的だろうと思っていたエルフがここまで謙虚にいられるのは、人の生活を経験してきているということなのだろうか。

これほどの御方を連れてきた、ということは少なくとも村人の前では話すべきではないとベルグリフさんが判断したということだ。もしかすると部外者は聞かないほうがいい話をするのかもしれない。

 

「……私は席を外した方がよろしいでしょうか?」

 

「いや、あなた方お2人はこれまで旅をしてきたとお聞きした。よろしければお話を伺えればありがたい」

 

旅をしてきたことを知っている、ということはベルグリフさんが道すがら家に旅をしていた俺とダンカンのおっさんがいるということを話した、ということだろう。それを知ったうえで話を聞きたい、ということは何かを探しているということだろうか。

 

「粗茶ですが」

 

「かたじけない……」

 

ベルグリフさんが飲み物をエルフへと渡し、それを受け取ったエルフは静かに飲んだ。それを確認したベルグリフさんはエルフの向かい側に座った。ダンカンはその様子を見、そして壁に立てかけられた大剣を見て目を細めた。

 

「ふむう……その剣、中々の業物とお見受けいたす」

 

ダンカンのおっさんの言葉にエルフの目が細まった。

 

「ほう……お分かりか」

 

自分の剣を褒められたからかわずかに嬉しそうな声色を見せるエルフ。確かに立てかけられている剣は魔力を帯びており、普通ではない何かを感じる。こうやって目ざとく武具に目をやる辺り、ダンカンのおっさんもエルフを相手に変わらないなぁと思わず苦笑を浮かべそうになる。

 

「某はダンカンと申します。流浪の武辺者にて、現在はベルグリフ殿の元に寄食しております。よろしければ貴殿の御尊名もお伺いしたく……」

 

「む、失念していた。礼を失して申し訳ない。私はグラハムという」

 

 その名を聞き、俺もベルグリフさんもダンカンのおっさんも驚いた。

 

「……まさか、エルフの“パラディン”グラハム殿では……?」

 

「そう呼ばれる事もある」

 

“パラディン”グラハム。エルフという種族から来る高貴なイメージと、魔王殺しに始まる数々の英雄譚から”聖騎士”の二つ名を持つ、生ける伝説とすら呼ばれる冒険者。かつてスラムで生きてきた俺ですらその話を耳にするほどの知名度を誇る、まさに最強の名にふさわしい冒険者だ。

 

「……まさか、かの聖騎士殿とここでお会いできるとは。重ね重ね無礼をお詫び申し上げます」

 

「いや、先ほども申した通り、警戒をする理由はわからないでもない。私も気にしてはいないから頭をあげてほしい」

 

頭を下げるとグラハム殿は逆に申し訳なさそうに制止する。その言葉に従ってとりあえずは頭をあげ、その機を見てかベルグリフさんが口を開けた。

 

「それで、グラハム殿はどうしてトルネラに?」

 

「ふむ、実は人を探しているのだ」

 

人探し。俺もベルグリフさんを探して旅をしてきた身として特に気にならない理由だが、それがかの”聖騎士”グラハム殿の探し人となると普通ではない可能性が非常に高い。

 

「そのお方がこの辺りに来ている、と?」

 

「確かではないが、彼女の行くであろう場所を目指していたら、この辺りに行きついたのだよ。流石に年でね、くたびれたから山から見えたこちらの村に立ち寄らせてもらった」

 

グラハム殿はそう言ってお茶をすする。見た感じそこまで疲労しているとは思えないほどだが、不老長寿であるはずのエルフという種族であるにもかかわらず老いて見えるその姿では、本人にしかわからない老いというものがあるのだろう。

 

「彼女……探し人は女性ですか」

 

ベルグリフさんの言葉にグラハム殿は軽く頷き、手にしていたお茶を置いて少し渋い顔で嘆息した。

 

「お転婆で困った娘でな……自身の立場を理解しておらぬ」

 

「では高貴な身分の」

 

「ああ」

 

高貴な身分であり、お転婆。このワードだけでどうしてあの”聖騎士”がこうやって人探しをしているのか理解できた。

 

「エルフ領は西の森の王、オベロンの一人娘なのだ」

 

エルフの組織図というのはよくわからないが、王家の一人娘が家出しているとなれば人の世界のことを理解できている”聖騎士”が出てくることになってもおかしくはないことなのだろう。

これ、仮にここに来てて何かあったら責任云々とか言われるのだろうか。そんなことを思いながらグラハム殿の言葉を待った。

 




姫様までが遠い……

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