ハリー・ポッターと賢者の石になったニコラス・フラメル   作:GGE48
<< 前の話

18 / 18
感想・評価・誤字脱字報告ありがとうございます!

まだエタってません(白目)
亀更新ならぬナマケモノ更新ですがこれにて一巻部分は終了です。



ホグワーツでの日常と始まる夏休み

 穏やかなホグワーツでの日々は瞬く間に過ぎ去った。

 

 

 イースター休暇は課題に潰されてしまったが、ニコラやハーマイオニーを始めたとした秀才たちが空き教室を借りて勉強会を開催してくれたおかげで、新入生たちは過去最高の出来栄えのレポートを提出できた。

 

 スネイプが苦虫を噛み潰したような顔でレポートを返したので、後程グリフィンドール生たちが評価を見せ合ったところ、誰一人落第していなかった。だから彼は、ペットの不死鳥に突っつかれて泣きながら走るダンブルドアを見るような目でレポートを配ったのかと誰もが納得した。

 

 ちなみにそのスネイプだが、彼は念願の『闇の魔術に対する防衛術』の教授に就任することになった。もちろん、今学期のみの臨時講師だ。二ヶ月、いや試験期間を考えればそれ以下という少ない期間だが、彼は悲願を達成できたわけだ。

 

 当初この話を聞いた多くの生徒が「闇の魔術を習わされるぞ」と恐れ慄いていたが、蓋を開けてみるとかつてないほど素晴らしい授業だった。

 

 ニコラの誘拐事件やハリーとヴォルデモートとの相対などを間近で見たスネイプは、ホグワーツ生全体の能力を高めることにした。そのため、彼の授業は座学よりも実技を重んじており、二年生から対人戦を行わせるなど、非常に本格的な防衛術を教えているので多くの生徒たちから高評価を得た。

 

 特に一年生は、ハーマイオニーがスネイプに直談判し、服従の呪文に抵抗するための特別講義が組まれたほどだ。ダンブルドアやマクゴナガルから強く反対されたものの、これを言い出したのが他ならない被害者のハーマイオニーだったことでスネイプは決行した。

 

 ニコラのことで強い責任と恐怖をハーマイオニーは感じていた。余程トラウマになったのだろう、自分が時々操られているのではないかという感覚に襲われるのだという。服従の呪文に抵抗できるようにならなければ、彼女は一生それを抱えて生きなければならなくなる。スネイプとしては個人授業を行おうと当初は言ったのだが、話を聞いた他のグリフィンドール生たちが加わったのだ。

 

 ハーマイオニーのために、彼女と同じ授業を受けたい。そうすれば彼女は孤独ではなくなるから。一人より、みんなで授業を受けた方が心強いだろうから、と。なにせハーマイオニーは、クィレルに一人会いに行った先で杖を向けられたのだ。個人授業でそのトラウマを穿り返すのは明白だった。

 

 この話を聞いたドラコがスリザリン生もやる、と言い出すと残りの二つの寮も話に乗ってきた。最終的にスネイプは学年、寮を問わず全ての生徒たちに特別講義として『服従の呪文に対する防衛術』を開催することになった。

 

 スネイプは忙しかった。とても忙しすぎてミセス・ノリスの手を借りたいほどに。いくら望んでいた科目の教鞭をとることになったとはいえ、元々教えていた『魔法薬学』も継続している。とにかく時間と人手が足りなかった。

 

 なお、途中から他の教員たちも手伝ってくれたので、スネイプの仕事はだいぶ楽になった。特にフリットウィックが嬉々として生徒たちに服従の呪文をかけていく光景には恐怖しか感じられなかったほどだ。相当、例の反乱を根に持っているようだ。スプラウトとデートに行けたくせに、と言ったフレッドとジョージは罰則をもらった。

 

 

 こうして、スネイプによる二ヶ月限りの『闇の魔術に対する防衛術』は大好評のまま終わりを迎えた。ホグワーツ生の実力が大幅に上昇したほか、特に五年生においてはフクロウ試験で高得点が見込めるほどだった。

 

 この一年でホグワーツはだいぶ変わったと誰もが自覚している。一年生たちが空き教室で切磋琢磨し、それを見た上級生たちも自然と寮の違いに限らず集まるようになり。そして気づけば、セドリック・ディゴリーがホグワーツ生の殆どが加入している謎の団体『ホグワーツ防衛軍』の統括をしていたり。

 

 セドリックが率いる防衛軍はその名前に恥じない『演習』を毎週金曜日の放課後に行っている。講師は顧問として勝手に登録されたスネイプが断固拒否したため、面白がったダンブルドアが務めている。元々この防衛軍はニコラという美少女を見守るための団体であるため、ニコラ本人には打診されなかったという裏があったりするが、それを知らないダンブルドアは彼女より自分が信頼されていると思っていて上機嫌だった。

 

 なお、団体の存在は知っているものの実態を知らない彼女は丁度その時間帯にスネイプと研究している。そういうこともあって、ニコラが『ホグワーツ防衛軍』の実態を知る機会は殆どなかったりする。

 

 

 そうした愉快なホグワーツでの日常が終わり、期末試験が始まってしまうと空気は大分変わった。

 

 

 ついに始まってしまった試験には誰もが参った。いや、強いて言うならニコラだけは終始楽しそうだったがあれは例外である。ニコラが試験に提出した黄金の忘れ薬の評価にスネイプが非常に頭を悩ませていたことは半日で学校中に広まった。

 

 ちなみにその得体のしれない黄金の液体をダンブルドアに仕掛け、その効果をスネイプに見せることで彼女は試験をパスしたそうだ。だがハリーがいくら尋ねても、ニコラは決してその効果について口を割ることはなかった。渋い顔で「君にはまだ早いんだ」と首を横に振るので、そこまで危ない代物なのかとますます気になるばかりである。

 

 こっそり、閉心術における個人授業の講師であるスネイプに確認をとると彼もニコラと同じことを言った。納得できなかったハリーがどう思う、と双子たちに聞くと彼らは「俺らが聞いてくるよ」と談話室で読書をしていたニコラに突撃した。

 

 ロンとハリーがその様子を眺めていると、話を聞かされたらしい双子たちが何やら奇声を上げて頭を抱える。ニコラは悪戯っぽく笑って彼らを追い払うように手を振った。だがハリーたちと視線が合うとにっこりと邪気のない笑顔を見せてくれた。

 

 戻ってきた双子たちは真っ青な顔で「やばい」と口を揃えた。

 

 

「まだ早いって意味がわかったぜ」

「ダンブルドアはすげぇや」

 

 

 何があったんだ?と二人は顔を見合わせた。しかしながら彼らの様子を見る限り話してくれなさそうだったので、肩を竦めて詳細を尋ねることを諦めた。それよりも二人はシェーマスが『呪文学』の試験で緊張のあまり、試験に使うパイナップルを爆破させたことの話の続きが聞きたかったので、早々に談話室を後にしてルームメイトたちのいる部屋に戻った。

 

 ハリーもロンも事前の勉強が役立って試験についてはさほど心配していなかった。生徒たちのレベルが上がったことで教員たちも問題の出題レベルを上げていたのだが、ニコラが的確に山をかけてくれたので非常に助かった。ハーマイオニーが「思っていたよりも易しかったわ」と残念そうな顔で言っていたので、やはり秀才はとんでもないなと改めて彼らは思う。

 

 

 試験が終わると学年度末パーティが開催され、寮対抗杯はグリフィンドールが獲得した。一年前まではスリザリンが獲得するとグリフィンドール生たちが揃って苦い顔で喜ぶ彼らを睨んでいたが、今年は誰もが素直にゴブレットを掲げて祝った。

 

 先生方は彼らの変化を誰よりも喜び、にこやかに生徒たちに続いてゴブレットを掲げた。スネイプもこの時ばかりは苦笑して彼らに続いた。

 

 

 パーティの翌朝には試験結果が発表された。各学年ごとに張り出された順位表には誰もが納得した。一年生においてはニコラが圧倒的なトップ、次点でハーマイオニー、そのあとにドラコ、アンソニーが続いていた。生徒たちが一丸となって勉強をしていたためか、学力に不安があるゴイルも無事進級できたのでスリザリン生は祝宴を開くそうだ。

 

 グリフィンドールにおいて少しばかり学力が低いネビルは薬草学の成績が非常に高く、スプラウトに褒めてもらったそうで嬉しそうだったが、その後にスネイプに皮肉を言われたので落ち込んだ。薬草は扱えるのにそれを加工できないとは、と鼻で嗤われたそうだ。

 

 ロンはマクゴナガルの試験において「嗅ぎたばこ入れ」でハグリッドの髭を生やさせてしまい大幅に減点をされたが、無事落第は逃れた。ハリーもどうにかネズミを「嗅ぎたばこ入れ」に変えることはできたのだが、とてもとても小さかったので減点された。小さいだけでデザインはロンほど酷くなかったので、結果は普通によかったので一安心である。

 

 ちなみにハリーがニコラに結果を聞いてみたところ『変身術』の点数が百点を超えていたそうだ。本人は「ダンブルドアほど上手いわけじゃない」と言っていたが、そもそも比較対象がダンブルドアな時点で実力は既に保証されている。黄金の箱を出されてはマクゴナガルも喜んで満点以上の点数をくれるだろうな、とハリーは納得した。

 

 

 そして気が付けば、ハリーたちはトランクに荷物を詰めてホグワーツを出る準備をしていた。ハグリッドに連れられてホグワーツ特急に乗り込み、懐かしいキングス・クロス駅まで揺られる。ハリーのコンパートメントには常に人が出入りしていて彼は人員整理のためとても忙しかった。誰もが夏休みの間、見られないからと今のうちにニコラに声をかけに駆け込んできたのだ。

 

 このとき彼は初めて、ホグワーツ防衛軍の総司令官という肩書を持つセドリック・ディゴリーと相対した。何故そんな物騒な名前のグループができているのか気になるがハリーは努めて意識しないようにした。

 

 セドリックは顔も性格も文句なしで、それでいて非常に優秀な男子生徒だった。彼はにこやかにニコラと挨拶という名の議論を交わした後、ハリーにも挨拶をした。

 

 

「初めまして、ハリー。僕はセドリック、一応防衛軍のトップを任されているよ。そうそう、君もうちに入らないか?戦歴もあるから歓迎するよ。ちなみに君以外のグリフィンドール所属の一年生は全員加入済みだ」

「ロン!!?君、入ってたの!?」

 

 

 ネビルたちは入っているだろうとは予測していたハリーだが、まさかあの場にいなかったロンまでいつの間にか入っていて彼はびっくりした。スキャバーズおじさんに話しかけていたロンにハリーが叫ぶと、ロンは「言ってなかったっけ?」と目を丸くさせた。

 

 

「僕、てっきり君も入ってると思っていたよ」

「話がきていなかったんだけど……えっと、僕で良ければ喜んで」

「大歓迎だよ。これからよろしく、ハリー。配属先は近衛師団で師団長を任せようかな。がんばってくれ」

「えぇ!?なにそれ!?」

 

 

 疑問しか湧かないことを言われてハリーが混乱している間にセドリックは颯爽とコンパートメントを去っていた。ハリーの頭上には疑問符が大量に浮かんでは消える。近衛師団ってなに、師団長ってなに??次々と浮かんでくる疑問をそのまま口に出したハリーへ、ロンが解説をした。

 

 

「僕たちは同学年、かつ同じ寮でしょ?だから近衛師団。ハリーはニコラに一番近いし」

「おめでとう、ハリー」

 

 

 同じコンパートメントに座っているドラコが嬉々とした表情で祝福する。そこまで嬉しくはないのだが、とりあえず受け入れたハリーであった。

 

 ガタゴトと揺れる汽車は目的地に近づいている。家々がちらほら見え始める景色を眺めながら、ニコラは思い出したようにハリーは視線を移した。

 

 

「ハリー、マグルのお金は持っているかな」

「ううん。魔法界のお金はあるけど」

「それじゃあ、少し両替しておこうか。魔法界のお金ではマグルのものは何一つ買えないからね」

 

 

 ニコラの意図がわからなかったハリーは首を傾げた。夏休みの間、ダーズリーの家で過ごさなくてはならないハリーはその理由が母とダンブルドアの魔法によるものだとわかっている。しかしながら、魔法の存在を厭う夫妻はハリーの外出を禁ずると予測できた。つまり、お金はあっても使いどころがない。

 

 それらを話したハリーに、ドラコやロンがそれぞれ憤慨する。性格が矯正されたとはいえ根幹が純血主義でマグルを厭うドラコは怒り心頭だ。

 

 

「僕が杖で脅……話をつけてやろう。君は優しいからできなさそうだしな」

「みんなで杖を持って囲めばいけるいける」

「待って待って、そういうのやるとますます酷くなるからやめて。あと二人ともこれの存在を忘れてないよね?」

 

 

 杖を掲げて呪文を唱える練習を始める二人に、ハリーがポケットにねじ込んだ紙を突きつけた。汽車に乗り込む前に配られた「休暇中、魔法を使わないように」という注意書きは、多くの生徒たちを絶望に追い込んだ最強の羊皮紙だ。

 

 忌々しいと言わんばかりに舌打ちをした二人はどさりと荒々しく席に座りなおした。こういうところはよく似ているのだが、それを言うと喧嘩が勃発するので賢いハリーは代わりにニコラへ先程の提案の意図について尋ねることにした。

 

 

「マグルのお金は何に使うの?」

「色々だよ。手紙を書くためのあれそれとか。後はまぁ、夏休みの予定のためとかね」

 

 

 ニコラの言葉を聞いてハリーは一抹の希望を抱いた。夏休みに、ダーズリー家や近所のフィッグばあさんの猫屋敷ではないところに遊びに行くだと?それはとても、とても楽しいことだ!

 

 だがハリーの希望は直ぐに萎んだ。あの夫婦がハリーの外出を許可するとは思えなかった。もしハリーが何かやらかしたら責任は保護者に来るだろう。そんなリスクのある提案を、果たして二人は受け入れてくれるのだろうか。

 

 思い悩む様子を見せる彼に、ニコラは上着のポケットからマグルのお金を出しつつ安心させるように言葉を連ねた。

 

 

「ペレネレから君の保護者たちに話を通してくれないか頼んである。準備が必要だし費用もそれなりにかかるから、前もって言っておかないとね」

「それは、ももももしや旅行か!?」

「吃ってるよ、マルフォイ。でもいいなぁ、旅行なんて」

「ニコラと旅行……ゴクリ」

「まーたマルフォイが妄想してる。スキャバーズおじさん、僕はマルフォイがこんな奴だって知りたくなかったよ」

 

 

 唾を飲み込み、怪しい妄想をしてニヤついているマルフォイをロンは呆れたように見やる。話し相手のスキャバーズも全くだと言わんばかりに小さな首を縦に振った。

 

 結局ハリーは両替をすることにしたので、ニコラとお金の交換を行った。その間、ずっとドラコがニコラと旅行に行く設定についてブツブツ吐き出しているので、ロンとスキャバーズの目は死んだ。

 

 何やら閃いたらしいドラコは突然立ち上がった。お金を数えていたハリーがげんなりとした顔で「どうしたの?」と聞くと、彼は両手を上げて肩を竦める謎のポーズをして何故か得意げに笑った。

 

 

「ニコラと旅行するベストシチュエーションが浮かんだから少し同志と共有してくる。セオドールに絵を描いてもらうぞ、これでハロウィンの戦いは僕たちの勝利だ」

 

 

 疑問符しか浮かばない発言をした彼は、スリザリン生と合流してくると行って席を外した。慌ただしく消えた彼の後ろ姿を見送ったロンたちは顔を見合わせてため息をついた。

 

 お金を数え終えたハリーは布袋にそれらをねじ込みながら、ドラコの発言について疑問を投げかけた。

 

 

「ハロウィンの戦いって何?」

「スリザリン生を筆頭に盛り上がっているイベントのことだよ。今年のハロウィンから始めようって企画してる」

 

 

 ロンはそれを知ってはいるのだが、ニコラをチラリと見て具体的なことは伏せた。彼の意図を察したハリーは「なるほど」とそれ以上突っ込むことをやめた。ハロウィンの新しいイベントと聞いてニコラの目が光る。

 

 

「みんな楽しそうで何よりだ。やっぱり学校というものは楽しいものでないと」

 

 

 そう言ってとても嬉しそうに綺麗な笑顔を見せるものだから、ロンとハリーは照れ臭くなって視線を逸らした。入学当初の寮ごとの対立はもう見る影もない。気づけばみんなは団結していて、そして同時に切磋琢磨して寮杯を巡って争った。それはとても楽しいことなのだと、誰もが気づかされた。

 

 きっかけとなったのはニコラの存在だ。本人に自覚はないのだろうが、彼女はたった一年でホグワーツにおける軋轢を解消させた。彼女の言う「楽しい学校」は彼女がそう思って行動していたからこそ生まれた結果である。

 

 スリザリン生への嫌悪を感じなくなったロンは、この一年で大きく変わった自分を自覚しながら「そういえば」と思い出したような顔で言った。

 

 

「あれ、結局なんだったの?クィレルの狙いというか、ハリーの話に出てきた『石』の正体」

「ヴォルデモートがなんか言ってたなぁ」

「ああ、あれは『賢者の石』の話だね」

 

 

 さらっと重要な話を世間話のように口にするニコラ。ハリーがなんとなしに声に出した「ヴォルデモート」という名称にロンとスキャバーズおじさんが震え上がるも、ニコラの言った『賢者の石』という名前に彼らは首を捻った。

 

 

「なにそれ?」

「錬金術における至高の物質、最終目標かな?あらゆるものを金に変えるほか、不老不死を与えることもできる。ヴォルデモートが欲したのは不老不死の方だね」

「それってかなりマズい事態だったんじゃあ……」

「『みぞの鏡』の中に隠していたけど、ダンブルドアは性格が悪いから彼らには決して取り出せない方法だっただろうね。仮に『石』を手に入れたとしても、あれは偽物だから彼の望む復活は遂げなかっただろうし」

 

 

 まさかの偽物という発言を聞いてハリーとロンは「偽物!」と驚愕の声を上げた。ヴォルデモートが運よく『石』を奪っても彼は力を取り戻すことは叶わなかった。つまり最初から彼の敗北は決まっていたというわけらしい。

 

 とそこで、ハリーはヴォルデモートの発言を思い起こした。彼は確かニコラに対して「『石』を宿す」と言っていなかったか?

 

 

「もしかして本物の『石』は……」

「まあそこはご想像にお任せする、とだけ」

 

 

 恐る恐る口にしたハリーへ、ニコラは可愛らしいウィンクで言葉を濁した。何も知らないロンは「何の話?」と不思議がっていたが、その場にスキャバーズおじさんがいることもあって「なんでもない」と誤魔化したハリーであった。

 

 

 そしてついに、ホグワーツ特急はキングス・クロス駅に到着した。人波がぞろぞろと出口に流れて、そして順番よく消えていく中、ハリーたちも波に乗った。

 

 マグルたちを驚かせないようにグループごとに違うところから現れる、カートをのせた生徒たち。駅で家族と合流し、彼らはクリスマス以来の再会を喜びあった。

 

 ハリーはロンから母親を紹介された。ふくよかで、優しそうな顔のおばさんだった。フレッドとジョージを叱り飛ばす彼女の姿は、ダドリーを甘やかしてばっかりの叔母ペチュニアとは全く違っていて、個人差が激しいなという感想を抱く。

 

 ロンたちと別れたハリーは、遠目に見えるダーズリー夫妻と従兄弟のダドリーのもとへ向かった。その道中、すれ違う生徒たちに別れの挨拶を交わしながら。

 

 彼を出迎えたダーズリー夫妻の顔は苦い。嫌っている魔法使いたちがそこら中から出てきては、皆がハリーに挨拶をする。小学校とは全く違う彼の境遇にダドリーは大層驚いていた。

 

 そして極め付きが彼女だ。ハリーの最初の友人、ニコラは絶大な人気を誇っていた。挨拶をし損ねた生徒たちが口々に挨拶をしていく。人混みの中から見つけたニコラの美貌に、ダドリーは魔法使いか否か関係なしに見惚れた。

 

 口をあんぐりと開けて視線をただ一人に注ぐダドリーに気づいたペチュニアが彼の身体を揺らす。てぷんてぷんと揺れ動く彼の脂肪を指差してドラコが笑う。彼は両親の迎えが遅くなるということでハリーと一緒に行動していた。マグルに対して牽制をするためではない、多分。

 

 ドラコを宥めにかかっていたハリーのところに、一通り挨拶を交わしてきたニコラがやって来た。いつの間に合流していたのか、彼女の母を名乗るペレネレも一緒だ。彼女はこの場から逃げ出したいと言わんばかりのダーズリー夫妻に話しかけ始めた。

 

 彼らの会話を背に、ニコラは「いい夏休みを、ドラコ」と笑みを浮かべて言った。ドラコははにかみながら「君もね」と返す。

 

 

「君たちだけで旅行なんて羨ましい。来年こそ父上の許可をもぎ取ってくる」

「二人だけは少しばかり寂しいからね。今度は君もおいで」

「勿論だよ。どこがいいかな?父上に別荘を買ってもらうから好きな国を教えて」

「金持ちの発想が怖い」

 

 

 バーノンはマグルの会社の社長ではあるが、マルフォイ家ほど資産を持っているわけではない。それにハリーは恩恵に預かったことがない。ダドリーより贅沢できるという甘い誘惑に乗せられるよりも、彼への恐怖の方が上回っていた。

 

 ハリーたちが会話をしている間も、ダドリーの視線はニコラに固定されていた。きっとマグルの学校では彼女ほど可愛い女の子はいなかったのだろう。彼らが嫌う魔法使いの、それもかなりの実力者だというのに外見だけで惹かれていることに笑いを禁じ得ない。

 

 ドラコが懐から杖を出しつつ「脅すか」と笑みを浮かべた。忌々しいアレを見たダドリーは震え上がって叔母の背後へ逃げ出そうとしたが、にこやかに手招くニコラを視界にいれてしまったので大変なことになっている。可憐な妖精に近づきたい、だが隣に魔法使いがいる。最終的にダドリーは頭を抱え始めた。

 

 明らかに迷っているダドリーに対してドラコが思いきり爆笑する。一歩ニコラのもとへ足を踏み出して、すぐにドラコを見て後ずさる彼の奇行を面白がってのことだ。それから彼の両親が来るまでダドリーは弄られた。彼の姿が見えなくなると、ダドリーは心底安堵したように息を吐いていた。

 

 

「ドラコは苦手だったみたいだね。僕の友人なんだけど」

 

 

 この一年で精神的にタフになったハリーは、平然と自分を虐めてきたダドリーに声をかけた。魔法は使えないというルールをマグルの彼らは知る由もない。ハリーが自分を痛めつける魔法を覚えてきたと思ったのだろう、ダドリーはお尻を押さえながら後ずさる。

 

 そんな彼に近づいたニコラは、懐かしそうに目を細めて彼の体型を見た。突然間近に現れた美少女を前にダドリーは挙動不審だ。

 

 

「懐かしいなぁ、ふくよかなマグルを見ると彼を思い出す。パンは焼けるかい?」

「え、いいいや、いや焼けないけど」

「ああ、ごめんね。私はニコラ、ハリーの友人だよ」

 

 

 杖をこれ見よがしに見せつけたドラコとは打って変わって友好的に接するニコラ。ダドリーの中で彼女への好感度がますます上がるばかりだ。落としてから上げる、という悪い人たちの常套手段だがニコラはそこまで意識していない。そしてダドリーはニコラの美貌に魅入られているためそれどころではなかった。

 

 楽しそうに笑う彼女は、その笑顔をハリーに敵対的なダドリーにも向ける。懐柔されてほしいハリーは「もっとやれ」と思いつつダドリーの様子見を続ける。

 

 

「夏休みにそちらに遊びに来るから仲良くしてほしいな。マグル、非魔法族とは中々仲良くなる機会に恵まれなくてね」

「も、ももももちろん」

 

 

 クィレルより酷い訛りで応えるダドリーに笑いたくなったが、そこは耐えきったハリーである。ニコラと握手を交わしたダドリーは先程から彼女が触れた己の右手を見てにやついている。魔法使いだろうが美少女は美少女なんだな、とハリーは改めて思った。

 

 ニコラが一方的に話しかけてクィレル訛りで返すダドリーを見ているうちに、保護者間の話し合いは終わったようだ。疲れ切ったダーズリー夫妻がダドリーを回収するためにやって来た。彼らはとても友好的なニコラに慄きつつ、口早にハリーへ「行くぞ」と声を投げかけた。

 

 

「それでは近いうちに会おう、ハリー」

「ありがとう、ニコラ。またね」

 

 

 時間の都合上、ペレネレとは話せなかったハリーだが彼女は手を振ってくれたので振り返す。ニコラが手を振ると、驚いたことにダドリーが小さく振り返した。ハリーも負けずと手を振った。

 

 人の波の中に紛れたその一瞬で、ニコラとペレネレの姿は消えていた。彼女たちは移動キーで家に帰ったのだろうか、と疑問に思うもダーズリー夫妻が既に歩き始めていたので慌ててその後を追った。

 

 駐車場に停められた車に向かう道中で、ダドリーがこっそりハリーに囁いた。

 

 

「なあ、あの凄い可愛い子がアレを使うのか?」

「同じ学校に通っているからそりゃそうだよ。ついでに言うなら同じ寮だから三食共にしているし、深夜に学校探検もしたし、ハロウィンにはとても素晴らしいドレス姿を披露してくれたし、クリスマスも一緒に過ごしたよ」

「なにそれ羨ましい」

 

 

 ダドリーが羨ましがるのも当然のことだろう。ハリーは魔法要素を一切省いてニコラと過ごした楽しい日々をダドリーに自慢しながら、これで夏は乗り切れるなと確信に近い思いを抱いた。

 

 ホグワーツに入学してから初めて送る慌ただしく濃密な夏休みは、こうして始まりを迎えたのであった。




【悲報】次年度『闇の魔術に対する防衛術』のハードルが上がる

~ハロウィンのイベント企画~

名称:ハロウィンの戦い
(別名:ニコラオタクのコミケ)

各寮ごとにニコラに関するグッズを製作し売り上げを競う、学校的に問題しかないイベント。教員に知られないようにひっそりと準備が進められている。イベント発案者はドラコ・マルフォイ。イベントの内容としてはコミケ的な感じ。グリフィンドールはフレッドとジョージが写真集を作成しているため優勝候補。スリザリンはあらゆるシチュエーションに対応したイラスト。なおハッフルパフとレイブンクローは制作より購入する生徒が多い。一部のハッフルパフ生は日本のMANGAを参考に何やら描いているらしい。レイブンクロー生は知力を生かして小説を書いていたりするとかなんとか。


※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。