ソードアート・オンライン 桜花の剣閃   作:石月
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というわけで第六話投稿いたしました。どうも、石月です。
先ほど言い忘れていましたが、誤字報告、ありがとうございます。間違えていた部分は訂正を適用させていただきました。他にも、「ここの言い回し違くない?」とか、「ここの漢字違くね?」とかいうのがありましたらどんどん訂正してください。定期的にサイトに入って見ていますので、気づき次第確認、訂正していきますので何卒よろしくお願いします。
何か言いたいこと、聞きたいことがありましたらコメント欄にどんどん送ってください。訂正と同様に気づき次第確認し、できる限り返信などもするつもりです。
では本編の方、行きましょうか!



第六話 ビーター

静寂に包まれたボス部屋。コボルド王が撒き散らしたポリゴンの欠片が完全に消滅した後も、誰一人として口を開く者はいなかった。

「お疲れ様」

剣を下ろし、呆然とするキリトに、ルキヤが声をかけた。

それが合図だったかのように、レイドメンバーたちの目の前に、獲得経験値とコル、ドロップアイテムを示すリザルトウィンドウが現れた。

一同はそれを見つめ、数秒後、同時に歓喜の声を上げた。

ハイタッチを交わす者、抱き合って喜ぶ者、嵐のような大騒ぎの中、エギルがゆっくりと立ち上がってキリトに歩み寄った。

「見事な剣技だった。Congratulations、この勝利はあんたのものだ」

途中の英単語を、それこそ見事な発音で言ったエギルに、キリトはどう答えたものかと迷った後、せめて拳だけでも合わせようと右手を持ち上げたその時、ひょうじs

「なんでだよ!」

突然、そんな声が響き渡った。

さっきまでの歓声が嘘のように静まり返り、静寂の中、同じ声が悲鳴のような声で続けた。

「なんで……ディアベルさんを見殺しにしたんだ!」

そう叫ぶのは、ディアベルのパーティーメンバーの一人だったシミター使いだ。

「見殺し……?」

「そうだろ! …だってアンタは、ボスの使う技を全部知ってたじゃないか! アンタが最初からその情報を伝えていれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」

その言葉に、他のレイドメンバーたちがざわめきだす。

コボルト王が使うのは、タルワールのスキルだと、攻略本には書いてあった。

それに、カタナスキルを使うモンスターは、アインクラッド第十層の迷宮区にしか登場しないはずなのだ。

彼らの間に、疑問の波が広がっていく。

その問いに答えたのは、E隊の一人のダガー使いだった。

彼は一団の前に出てくると、キリトに右手の人差し指を突きつけ、叫ぶ。

「オレ…オレ知ってる! こいつ、元ベータテスターだ! だからボスの使う技とか、うまい狩場とかクエとか、全部知ってるんだ! 知ってて隠してるんだ!!」

その言葉を聞いても、レイドメンバーたちの間に驚きはなかった。誰もが初見であるはずのカタナスキルを次々と見切っていた時点で、それは容易に予想できたことだ。

さらに何かを叫ぼうとしたシミター使いに、エギル率いるB隊の一人が手を挙げた。

「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはベータ時代の情報だって書いてあったろ? 彼が本当に元テスターなら、知識はむしろあの攻略本と同じだったんじゃないか?」

もっともな正論だが、シミター使いには通じなかった。それどころか、さらに憎悪あふれる声で断言する。

「あの攻略本が…ウソだったんだ。アルゴって情報屋がウソを売りつけたんだ。あいつだってベータテスターなんだから、ただで本当のことを教えるなんてありえなかったんだ。そうだ、ベータテスターが三百人死んだなんて情報も、きっと保身のためのウソだ!」

彼の憎悪が、他のレイドメンバーに少しずつ伝染していく。

(この流れはまずい……)

キリトはひそかに息をつめた。

自分一人が糾弾を受けるならまだいいが、このままではベータテスター全員が敵意の対象になってしまう。

彼らの知識と経験は――たとえ絶対ではなくとも――、このデスゲームをクリアする上で必要不可欠なものだ。

『みんなの……ために……』

死ぬ直前のディアベルの声が脳裏に再生される。彼はこんな状況を望んではいなかった。

それどころか、ベータテスターとしての知識と経験を、自分のためではなくすべてのプレイヤーのために使おうとさえしたのだ。

俯いたキリトの視界に、表示されたままのウィンドウが映った。

そこに書かれているのは、獲得した経験値とコル、ドロップアイテム、そして……

「おい、君……」

「お前……」

我慢の限界が来たらしいルキヤとエギルが、シミター使いに詰め寄ろうとしたその時、

「ふふ…あははははははっ」

響き渡る嘲笑。その声の主は、キリトだった。

あっけにとられたシミター使いの前に進み出ながら、キリトは口元に冷笑を浮かべて言い放った。

「元ベータテスター、だって? オレをあんな()()()()()()()と一緒にしないでもらいたいな」

「な……なんだと……?」

「よく思い出せよ。SAOのベータテストは、とんでもない倍率の抽選だったんだぜ? 受かった千人のうち、ほとんどはレベリングのやり方も知らない初心者だったよ。今のあんたらのほうがまだマシさ」

侮蔑極まるキリトの言葉に、その場にいた全員が凍りついたように沈黙する。

「でも、俺はあんな奴らとは違う」

冷たい笑みを深くし、キリトはその先を口にした。

「俺はベータテスト期間中に、他の誰も到達できなかった層まで登った。ボスのカタナスキルを知っていたのは、そこでカタナを使うモンスターと散々戦ったからだ。他にもいろいろ知ってるぜ? 情報屋(アルゴ)なんか問題にならないくらいな」

「なんだよ…それ……」

シミター使いが、驚愕の表情で後ずさる。

「もうそんなの、ベータテスターどころじゃねぇじゃんか……もうチートだろ……チーターだろそんなの!」

周囲からもそれに賛同する声が上がる。「ベータ」と「チーター」が合わさり、「ビーター」という単語が聞こえてくる。

「……《ビーター》、いい呼び方だなそれ」

そう言って、メニューウィンドウを開く。

「そうだ、俺は《ビーター》だ。これからは元テスター如きと一緒にしないでくれ」

装備フィギュアを開き、LAボーナスで入手した「コート・オブ・ミッドナイト」を装備する。

今まで装備していたダークグレーの革コートの代わりに、名前の通り夜の闇を思わせる漆黒のロングコートがキリトの全身を覆う。

「二層の転移門は、俺が有効化(アクティベート)してきてやる。出口から主街区まで少しフィールドを歩くから、ついてくるなら初見のMobに殺される覚悟しとけよ」

黒革のロングコートをばさりと翻し、キリトはボス部屋の奥にある扉に向かって歩いて行く。

誰も動けない中、キリトは石の大扉を開け、迷宮区の出口へ向かって行った。

大扉が閉まった後、サクラは、わずかな逡巡の後、キリトの後を追いかけて走り出す。

「お…おい、正気か?」

声を掛けるプレイヤーが何人かいたが、サクラはそれを無視して大扉から出ていった。

続けてルキヤも後を追おうとしたその時、

「ちょい待ちや」

「待ってくれ」

キバオウとエギルが、後ろから彼を呼び止めた。

 

 

キリトは、迷宮区の外周、第二層を見渡せるテラスの端に座ってメニューウィンドウを開いた。

そのままパーティーメニューへと移り、パーティー解散ボタンを押そうと手を伸ばした。

「キリト」

そこへ、追いついてきたサクラが声を掛けた。

「……ついてくるなって、言ったのに」

「言ってないよ。キリトは、死ぬ覚悟があるなら来いって言ったんだよ」

「そうだったな」

キリトは苦笑した。

「……ここが、第二層なんだね」

キリトの隣に座ったサクラが感慨深げにサクラが呟いた。

「ああ」

そうして少しの間、二人はその景色に見入っていた。

やがて、後ろから誰かの足音が聞こえてきた。足音の主は二人の後ろで立ち止まると、眩しそうに目を細める。

「これは……壮観だね。一ヶ月かかってようやくたどり着いたことを思うと、感慨深いものがあるよ」

「お前も、初見のMobに殺される覚悟をしてきたのか、ルキヤ?」

キリトの後ろに立って景色を眺めていたルキヤは、首を横に振って、

「いや、僕は伝言を伝えに来たんだ」

「伝言?」

「まずはエギルさんから、『次のボス攻略も一緒にやろう』って。それとキバオウさんから」

そこでルキヤは一度咳払いをして、キバオウの関西弁を再現した。

「『今回は助けてもろたけど、ジブンのことはやっぱり認められん。わいは、わいのやり方でクリアを目指す』だ、そうだ」

「そうか……」

その言葉を脳内で反芻する。そこへ、ルキヤがさらに続けた。

「それと、これは僕から」

ルキヤは、サクラの反対側に腰かけてその先を言った。

「……本当にありがとう。ホルンカの森で助けてくれたことも、ベータテスターをかばってくれたことも」

「ルキヤ……」

「僕は、君の言う《素人のテスター》の一人だ。…と言っても、ベータテストに当選したわけじゃなくて、当選していた知り合いのソフトとナーヴギアを借りて、一日プレイしただけなんだけどね。その知り合いが、あの時死んだコペルだ」

誰かに対して言うのではなく、独り言のようにルキヤは続けた。

「凄かったよ。この世界では、現実世界とは全く違う自分になれるんだって思った。その喜びが忘れられなくて、SAOと、ナーヴギアを買った。はじまりの街を出たのも、クリアを目指すとか、強くなりたいとか、そんな理由じゃなくて、純粋にゲームを楽しみたいと思ったからなんだ。でも……」

そこで一旦、ルキヤは言葉を切った。風の音がやけに大きく響く中、ルキヤはまた口を開く。

「でも、コペルが死んだとき、それは幻想だったって実感させられた。コペルは、これがデスゲームなんだって理解した上で、それでも戦うことを選んだ。そんなコペルでさえ死ぬこの世界で、『楽しむ』だなんて言ってる自分は、生き残れないんじゃないかって。そう思いかけた時、君たちの剣戟が見えたんだ」

ルキヤは、キリトとサクラを見て微笑んだ。

「君たちは、全力で戦ってた。負ければ死ぬとわかっていても、楽しむことなんてできないはずのデスゲームの中で、全力で剣を振るってた。君たちの剣が、まるでいつ燃え尽きてもいいとでもいうように光り輝く流星に見えたんだ。君たちの強さがその輝きにあるのなら、僕は僕の輝きを見つけてみたいと思った。そのおかげで、僕はここまでこれたんだよ」

立ち上がると、ルキヤはキリトとサクラを交互に見つめた。

「ありがとう、キリト、サクラ。また一緒に戦おう」

そう言って、ルキヤは元来た道を戻っていった。ややあって、ルキヤがパーティーを脱退したことを知らせるメッセージウィンドウが現れ、視界右端の彼の名前とHPバーが音もなく消えた。

キリトも立ち上がり、サクラに声を掛けた。

「サクラも戻れよ。俺といたって迷惑がかかるだけだ」

「戻らない」

テラスの端に座ったまま、サクラはかぶりを振った。

「私、まだキリトに教えてほしいことがたくさんあるよ。それに…」

そこまで言うと、サクラはキリトを見上げてにっこりと笑った。

「私は、キリトの味方だから」

今まで怯えたような暗い表情しか見せてこなかったサクラの明るい笑顔に、キリトは一瞬、不覚にもドキッとしてしまった。

キリトは知らなかったが、それは人見知りのサクラが本当に親しい人にしか見せない笑顔だった。

「キリトが一人で行くって言っても、私はついていくよ」

笑顔のまま立ち上がったサクラに、それまでの内気そうな印象はなかった。キリトは、きっとこれが、サクラという少女の本当の姿なのだろうと思った。

「……わかったよ。これからもよろしくな、サクラ」

「うん!」

こうして、二人は第二層主街区《ウルバス》へと向かって歩き始めた。




というわけで、今回で第一層攻略編は終了となります。
この次は幕間的なショートストーリーを加えた後、赤鼻のトナカイ編となります。
読者の皆さん、サクラは内気な子だと思ってたでしょ?
全然違います。あの子は人見知りであがり症で群衆恐怖症なだけで、実際はとても明るくて優しい子なんですよ。
今回でようやく完全にキリトに心を開き、ようやく明るいサクラちゃんが書けると大喜びしている作者がここにおりますw
長くなりそうなのでここであとがきは終わります。
何度も言っている通り期末試験が近いのでしばらく投稿はお休みさせていただきます。
試験が終わり次第書こうかなとは思っていますが、遅くなると二月中には出ないかも……?
まあ気長にお待ちください。では!


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