ソードアート・オンライン 桜花の剣閃   作:石月

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実に一月半ぶりの投稿になります。どうも、石月です。
この度は長いことお待たせして本っっっっっ当に申し訳ありませんでしたm(_ _;)m
年度始めで皆さん忙しいと思いますが、今年度もどうぞよろしくお願い致します。
今回はアニメ第二話と第三話の間の短編を3つ入れております。
ではどうぞ!


閑話 小話詰め合わせ

 1、同調する剣技

 

 

 

 アインクラッド第十一層の迷宮区、キリトとサクラは、狭い通路でモンスターの群れに挟まれていた。

 

 下半身は蛇、上半身が人の槍を持ったモンスター。正式名称を「スピリットラミア・ランサー」通称ラミア。

 

 前後から2体ずつ、計4体。キリトは前の2体、サクラは後ろの2体を相手に応戦するが、2対1では流石の二人も分が悪い。

 

 押され気味になりながら、キリトはどうにか一体を倒す。ほぼ同時に、後ろでサクラも一体倒した気配があった。

 

 倒したラミアの爆散エフェクトに紛れて突き込まれる槍を剣で弾くが、わずかに押されて左足でたたらを踏む。

 

 同時に、槍を躱して一歩下がったサクラと背中合わせになった。

 

 互いに左足を一歩引いた姿勢。次の瞬間、半ば無意識に二人は叫んだ。

 

「「スイッチ‼」」

 

 全く同時の合図から、背中合わせのまま左に回ってお互いの位置を入れ替えた。振り返りざまに同時に放つ右水平斬りが、ラミアの腹を真一文字に切り裂く。

 

 サクラは《ホリゾンタル》の硬直が解けると同時に、振り下ろされる槍を躱して《スラント》で逆袈裟に斬り上げ、隙の少ない三連撃技《シャープネイル》でHPを一気にイエローゾーンまで削る。

 

 キリトは右水平斬りからそのまま手首を返して左切り払い、体を一回転させてもう一度左から、そして最後にフォアハンドでの右水平斬り。片手剣水平四連撃《ホリゾンタル・スクエア》。ラミアのHPバーが、こちらもイエローゾーンに入った。

 

 ラミアの反応が鈍い。急に相手の攻撃パターンが変わったためだ。

 

 その隙を逃さず、二人はさらなる追撃を仕掛ける。

 

 左脇に抱え込むように構えたサクラの剣が、ほぼ同時に二回打ち込まれる。左から一発、その直後に右からもう一発。二連撃技《スネークバイト》。

 

 キリトは剣を上に放り上げると、突進しながら突き込まれるラミアの槍を躱して顔面を殴りつけ、落ちてきた剣をキャッチ、上体を仰け反らせたラミアのがら空きの胸部に全力の上段斬りを叩き込む。片手剣·体術複合技《メテオ・フォール》。

 

 硬直が解けた二人は、ラミアの振り回す槍を躱して素早く距離をとり、再び背中合わせになった瞬間、今度は無言で同時に右に回る。

 

 それと同時に剣を左脇に構え、サクラは《レイジスパイク》、キリトは《スネークバイト》を放つ。

 

 キリトの攻撃を受けたラミアがポリゴンの欠片となって爆散する。だがサクラの《レイジスパイク》を受けたラミアは、まだHPバーを一割ほど残していた。

 

 キリトのように《スネークバイト》を使えれば良かったのだが、サクラはさっきそれを使ったばかりで、まだ冷却時間(クールタイム)が残っていた。

 

 だがサクラは焦ることなく、《レイジスパイク》の硬直に入る前に、左手を強く握って脇に構える。赤い閃光に包まれた左ジャブが、ラミアの顔面を強打した。エクストラスキル《体術》の基本技《閃打(センダ)》。ラミアの状態が大きくのけぞり、そのHPバーが残り数ドットのところまで減少する。

 

 打撃系ソードスキルは、総じて相手をノックバックさせる時間が長い。その時間は、キリトが《ソニックリープ》で飛び込むには十分だった。

 

 仰け反った隙だらけの胴を深く切り裂かれ、ラミアは無数のポリゴンの欠片をまき散らして爆散した。

 

 

 

「……さっきの連携、すごかったね」

 

「確かに、あんな動きができるなんて思わなかったな」

 

 迷宮区を少し進んだところにある安全地帯で、二人は先程の戦闘について話していた。

 

 背中合わせでのスイッチ。言うは易しだが、実際はとても難しい。

 

 スイッチというのは元々、正面の敵に対し、前後で隊列を入れ替えて攻撃する連携だ。主な目的としては、ソードスキル直後の隙をカバーしたり、パターンを変えて敵のAIに負荷を与えたりなどがある。

 

 重い大技でで大ダメージを与えるSTR型(パワータイプ)のキリトに対し、サクラは中、小の基本技を速く、的確に急所に当てて敵のHPを削るAGI型(スピードタイプ)だ。

 

 そのため、二人のスイッチの相性は悪くないと言える。だが、背中合わせでのスイッチはタイミングが取りづらく、互いの動きを阻害してしまうことのほうが多い。

 

 しかし、先程の戦闘では、背中合わせになった瞬間に同時に合図し、ほぼ完璧と言えるほどシンクロした動きで互いの位置を入れ替え、二回目は合図すらなかった。

 

 そして最後の攻撃の時、サクラは後ろからのキリトの追撃を半ば無意識に察していた。

 

 だから、HPを削りきれないと分かっていて、《閃打》による追撃でノックバック時間を稼いだのだ。

 

「ねえ、キリト」

 

「ん?」

 

「確か、前にも似たようなこと、あったよね?」

 

「似たようなこと?」

 

 首を傾げたキリトは、少し考えてから、「ああ…」と思い出したように顔を上げた。

 

「ホルンカの森で、ネペントの群れと戦った時の……」

 

 二人の意識が、何かで繋がったような感覚。互いの動きが、手に取るように感じ取れた。

 

 ほぼ無意識で戦っていたためよく覚えていないが、あの時も、二人は互いにアイコンタクトすら取らずに連携を取れていた気がする。

 

「一糸乱れぬ連携って、ああいうのを言うのかな…?」

 

「多分な。けど、もう一回やってもさっきみたいに上手くはできないと思うぞ」

 

「どうして?」

 

「うーん、なんて言えばいいか……さっきのは、二人ともほぼ無意識だったろ? 考えるより先に体が動くくらい集中してないと、さっきみたいなのはできない…と思う」

 

「そっか……」

 

 サクラは残念そうに肩を落とすが、すぐに気持ちを切り替えて顔を上げ、隣に座るキリトの顔を見つめた。

 

 一糸乱れぬ完璧な連携は、経験もそうだが、当人同士の相性が何よりも大事になってくる。

 

 この世界で出会ってから数ヶ月しか経っていないが、不思議とサクラは、キリトと一緒ならどこまでも行けそうな気がしていた。

 

 彼といれば大丈夫。ひどく人見知りなはずの彼女は、いつの間にかそう思うようになっていた。

 

 

 

 

 

 2、白夜の兆し

 

 

 

 索敵スキルの効果で、視界に遠くから接近する魔物を示すカーソルが見えた。その数、3つ。

 

 緑色の巨大なハチのような見た目を持つ虫型モンスター。固有名は《スタッグ・ワスプ》。

 

 レベル的には十二分にマージンを取れているため、表示されるカーソルの色は薄桃色だ。

 

 だが、3体もいればマージンなどあってないようなもの。特にソロの場合は僅かな油断も命取りになりやすい。

 

 ルキヤはここ最近愛用している両手槍《飛燕十文字槍》を背中から外して自然体で構えた。

 

《和風》をテーマにした第十層の鍛冶屋に作ってもらったからか、英語ではなく日本語、しかも漢字表記というある意味珍しい武器だ。

 

 スピード重視の軽い武器で、ルキヤの戦闘スタイルにはぴったりだった。

 

 本来はリーチを稼ぎ、攻撃に遠心力を乗せるため長く持つのが両手槍のセオリーだが、あえて少し短めに持ち、長い柄が邪魔にならないようにする。

 

 元々ルキヤは、家柄もあって幼い頃から古今東西の様々な武術に触れて育ってきたため、槍の扱いもすぐに覚えた。

 

 恐らく、純粋なプレイヤースキルはベータテスターを除けばトップクラスと言えるのではないだろうか。

 

 事実、攻略組と呼ばれるトッププレイヤー達の中でも、槍の扱いにおいてルキヤに敵う者は誰一人としていない。

 

 先頭のワスプがルキヤの手前で一度ホバリングし、尻についた針で突き刺そうと突っ込もうとする。

 

 だが、攻撃モーションの開始と同時に、素早くルキヤの槍がその腹を貫き、ワスプは体制を崩す。

 

 その左右から突進してくるワスプの右の方は槍で斬りつけて牽制し、右からくるワスプの噛みつき攻撃を槍の柄でガードする。

 

 槍に噛み付いたまま離れないワスプに対し、ルキヤは一度槍を手放して素早く右足を振り上げる。モーションを検知してソードスキルが発動し、後方宙返りしながらの蹴り上げを繰り出す。《体術》スキルの基本技《弦月(ゲンゲツ)》。

 

 顎に挟んだ槍を離し、ワスプは後ろ向きに回転しながら大きく吹き飛ばされ、木に激突したダメージも加わってHPバーががくっと減少し、同時に一時的な気絶(スタン)状態になる。

 

《弦月》の硬直が解けると同時に、ルキヤは落ちてくる槍をキャッチして素早く左に薙ぎ払う。

 

 突進してくる2体のワスプの腹を水平に斬り裂くと、返す刃で左側のワスプの腹を逆袈裟に斬り上げる。クリティカルヒット特有の手応えとともに、HPバーがレッドゾ-ン手前まで減少する。

 

 気絶(スタン)状態の解けた右のワスプは切り上げた槍が放物線を描くような切り下ろしで地面に叩きつけると、左と中央の2体のワスプの攻撃を槍の柄を使って器用に捌き、右のワスプの開きかけの顎に鋭い突きを浴びせて倒す。

 

 爆散するポリゴンの欠片を振り払うように水平に槍を振って残りの二体を牽制し、引き戻した槍で中央のワスプの喉を貫いて倒す。

 

 左のワスプが針で突き刺そうと突進してくるのを危なげなく躱し、横から隙だらけの脳天めがけて大きく槍を振り下ろす。《両手槍》スキルの斬撃系基本技《フォール・エッジ》。

 

 攻撃の勢いで地面に叩きつけられたワスプがポリゴンの欠片となって爆散し、ルキヤは体を起こして小さく息を吐いた。

 

「ふう……もうMobの再涌出(リポップ)が始まってるのか。急いで戻ろう」

 

 そう呟くと、ルキヤは入り組んだ森の出口に向かって足早に歩き始めた。

 

 

 

 ルキヤは第一層の頃から、普段はソロで、たまに人数不足などで助っ人を募集しているパーティーに一時的に参加する、俗に言う『野良プレイヤー』というスタイルを貫いている。

 

 なぜかというと、これには複雑な事情があった。

 

 今のルキヤが持っているスキルは、《両手槍》《索敵》《隠蔽》《武器防御》《体術》などといった、完全にソロプレイを前提とした構成なのだ。

 

 故に今更パーティープレイをやろうと思っても、本来後衛のはずの両手槍使いが前衛にいるという実に変則的な編成をしなければならず、一時的な助っ人ならともかく、進んでパーティーを組もうという人はいないのである。

 

 それ以前に、《索敵》や《隠蔽》、更には《武器防御》のスキルを取ってしまった時点で、パーティープレイの安全性よりソロプレイの経験値効率を取ったという事実は隠しようもない。

 

 と、いうのがルキヤ本人がキリトたちに対して言ったことであるが、実際は単なる強がりである。

 

 ルキヤは、デスゲームが始まったその日に、目の前でパーティーメンバーのコペルを死なせている。

 

 コペルは、これがデスゲームだと知った上で、ベータテスターとして最前線で戦い続けることを選んだ。

 

 その末に、不幸な偶然が重なったあの森での戦いで、恐らく初めてモンスターとの戦いで命を落としたプレイヤーとなった。

 

 キリトたちには気丈に振る舞ってみせたが、内心は全く違った。せめて自分が後衛に徹することなく積極的に前で戦っていれば、コペルは死なずに済んだのではないか。ルキヤは何日もの間、そんな後悔に苛まれ続けた。

 

 だが、後悔すると同時に、その時の戦いで垣間見た剣技が忘れられずにいた自分に気がついた。

 

 キリトとサクラが見せた、剣と一体化したかのように美しく、それでいて鬼気迫るような剣技と、一糸乱れぬ連携。

 

 これが《戦い》だと、直感的にそう思ったルキヤは、せめてその二人だけは守ろうとしたのか、迫りくるネペントの攻撃をかつてない集中力で防ぎ切り、最後には二人と力を合わせて残った3体を一掃した。

 

 その時の感覚が蘇り、ルキヤは無意識のうちに立ち上がり、宿を出ながら頭の中で素早くこれからすべきことを整理した。

 

 それから先は長いようで、過ぎてしまえばあっという間にも思えた。

 

 両手槍というスタイルは今更変えられない。ならばと、現実世界で培った経験や知識を活かし、両手槍のまま前衛で戦う術を身に着けた。

 

 パーティーメンバーはいらなかった。より多くの経験値を効率良く得るために、ルキヤは最も経験値効率の高いソロプレイを選択し、ひたすら自分を鍛え続けた。

 

 疲労のあまりダンジョンの奥深くで倒れそうになったことも何度かあった。だが、幸い周辺の敵を一掃したときばかりだったので、最寄りの安全地帯まで行って仮眠をとる余裕はあった。

 

 後になって思えば、その頃の自分はまるで、空を走る流星を追いかける少年だった。

 

 届くか届かないかなど考えもせず、ただひたすらその流星の向かう先が知りたくて、気がつけばとても遠い所まで来てしまっていた。

 

 そうして迎えた第一層のボス攻略。

 

 集まった数十人の中にキリトとサクラを見つけ、声を掛けてパーティーを組んだ。

 

 本当はその時にお礼を言おうと思っていたのだが、このタイミングでは遺言のようだと思いとどまり、ボス戦が終わったら言おうと決めた。

 

 二人とパーティーを組んで挑んだボス戦、ディアベルの死を乗り越えてどうにかボスを倒し、キリトはベータテスターたちへの逆恨みの感情を一人で背負うことを選んだ。

 

 ルキヤは、ベータテスターの端くれとして、キリトに全ての責任を押し付けてしまったことへの謝罪と、命を救い、新たな道を示してくれたことへの感謝を伝えた。

 

 以来、ルキヤは両手槍使いのソロプレイヤーとして頭角を現し、キリトたちと共にいくつものボスと戦い続けた。

 

 ゲームクリアを目指したわけではない。ただ、物心ついた頃から武術に触れて育ったからか、SAOにおける強さの限界を、そしてその先にあるものを見てみたいと思ったのだ。

 

 その意志はやがて、決して沈むことのない太陽のような光へと昇華していくことを、誰も知る由はなかった。

 

 

 

 

 

 3、桜花の巫女

 

 

 

 アインクラッド第十層フロアボス《カガチ・ザ・サムライロード》との死闘から二日後。

 

 第十一層の主街区《タフト》のはずれにある2階建ての宿屋。キリトとサクラは、その一室を借りていた。

 

 十分な広さのある2Lkの部屋にしては家賃もお手頃で、第十一層攻略の拠点をここにしている。

 

「キリト、サクラ、いるかい?」

 

 コンコンとドアをノックする音に続いて、聞き慣れた声が聞こえてきた。

 

 キリトがドアを開けると、そこには白い服に身を包んだ青年――ルキヤが立っていた。

 

「こんばんは、キリト」

 

「ああ、久しぶりだなルキヤ。十層のボス戦以来か? とにかく上がれよ」

 

「うん、お邪魔するよ。サクラも久しぶりだね」

 

「お久しぶりです、ルキヤさん」

 

 部屋のソファに座ったルキヤの前に、キリトがお茶の入ったコップを置く。

 

「ありがとう」

 

 ルキヤの正面のソファーに座ったキリトに、隣りにいるサクラがぴったりと体を寄せた。

 

 少し前まではこのスキンシップにドギマギしていたキリトも、今では慣れたものだ。

 

「早速だけど、今日はサクラに用があって来たんだ」

 

「え?」

 

 ルキヤが来たのはキリトに用があるからと思っていたサクラは、驚いた顔になった。

 

「サクラに?」

 

「うん。と言っても、そこまで重要でもないと思ってたから、今の今まで忘れてたんだけど…」

 

 ルキヤはそこまで言うと、メニューを操作してサクラの前にトレードウィンドウを出した。

 

「アルゴが十層で受けたクエストの報酬の中に珍しい物があったらしくて、僕からサクラに渡すよう頼まれていたんだ」

 

 サクラの前のウィンドウを覗き込むと、アイテム名の欄には「カスミの巫女服」と書いてある。

 

「「巫女服?」」

 

 キリトとサクラが揃って疑問符を浮かべる。

 

「そう。圏外で非武装状態の時に隠密(ハイディング)に大幅なボーナスがあるんだけど、ご覧の通り巫女装束なんだ。アルゴは『こんなのオレっちには似合わないヨ。サッちゃんなら似合うんじゃないカ?』ってさ」

 

「なるほどな」

 

 キリトは得心したように頷いた。確かに、サクラは髪と目の色こそ黒ではないものの、顔立ちは日本人らしさが強く出ている。

 

「せっかくだし、試してみるか?」

 

 サクラは頷くと、トレードを受諾して一度彼女の寝室に入って行った。

 

 数秒後、

 

「ど…どうかな…?」

 

 出てきたサクラの姿に、キリトは思わず目を見開き、ルキヤは感嘆の溜息を漏らした。

 

 キリトもルキヤも、テレビや神社などで時折巫女の姿を目にすることはあったが、サクラの巫女服姿はその誰よりも様になっていた。

 

 基本的なデザインは一般的な巫女服と変わらないが、袖口や襟などに名前のモチーフであろう霞桜の花びらのうような模様がうっすらと入っていて、それが全体の雰囲気を華やかにしている。

 

 袖口も裾も、戦う上で動きを阻害してしまわない絶妙な寸法になっていて、剣士としての印象を少しも損なっていない。

 

 キリトは以前から和服が似合いそうな容姿だとは思っていたが、これは予想以上だった。

 

 桜色の髪と銀色の目が和服の印象を損なうかとも思ったが、むしろこのデザインにはそういった色合いのほうが映えている。

 

 桜をイメージした模様が彼女の髪色と相まって春を連想させ、日本人離れした銀色の目が、ファンタジー世界のようなイメージをもたせる。

 

 キリトは驚きのあまりボーッとサクラを見つめていたが、サクラが視線に耐えかねて顔を赤くしてモジモジし始めたので慌てて目をそらした。

 

「驚いたね。サクラのことだからきっと似合うと思ってたけど、まさかここまでとは」

 

 ルキヤがしみじみとそう言う。それはキリトも同じだった。

 

「同感だな。よく似合ってるよ、サクラ」

 

「本当?」

 

「ああ、本当だ」

 

 キリトが頷くと、サクラはぱあっと明るい表情になる。が、微笑ましそうに見ているルキヤの視線に気づき、羞恥で顔を真っ赤にして俯いた。

 

「それじゃあ、僕はこの辺でお暇させてもらうよ。お茶、ご馳走さま」

 

 ルキヤはどこか含みのある笑顔でお礼を言って立ち上がり、二人の部屋を後にした。

 

 部屋には、キリトと耳まで真っ赤になったサクラが残された。

 

「えっと……」

 

 何を言うべきか迷った挙げ句、

 

「そ…そんなに恥ずかしがらなくてもいいんじゃないか? その……本当に似合ってるし、か…可愛いと思うぞ?」

 

 人付き合いスキルの低いキリトに言えたのは、そんなぐだぐだでドストレートな励ましだけだった。

 

「っ!? ~~~~!!」

 

 だが、サクラは更に顔を真っ赤にし、犯罪防止コードが発生しないギリギリの勢いでキリトをぽかぽかと殴る。

 

「え、ちょっ、なんで?」

 

 両手でそれを防ぎながらキリトは控えめに抗議するが、結局サクラの気が済むまでそれは終わらなかった。

 

 

 

 その後も、サクラはその巫女服を大事に使い続け、ステータスが追いつかなくなってもプライベートの服装として愛用し続けたのだが、それはまた別の話。




2つ目の前半部分はルキヤの殺陣を書きたくて後付けで書いたやつです。話の流れ的に不自然だと思うんですが、そこはまぁ、ツッコんだら負けってことで。はい。
3つ目はお分かりの通り、ただのキリトとサクラのイチャイチャ回(?)ですね。書きたいから書いた。ただそれだけ。反省? 後悔? してないっ!
3つとも、今後の話につながるところはちゃーんとあります。次回は赤鼻のトナカイ編! お楽しみに…したくないのは私だけではないはず……多分

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