東方全能録(リメイク版)   作:焼鰯

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十旅:夢

永琳に連れられ、月読命がいる部屋の前にいた。部屋に近付く度に心臓の鼓動が速くなり、部屋の前までいくと鼓動が高速に達していた。

落ち着け俺、三貴神の1柱の月読命だが他2柱よりは地味で知られていない。所詮月の神。俺はそう考えながら心を落ち着かせた。

 

 

「月読命様、会わせたい人がいるので参りましたあっ!」

 

 

永琳は扉を勢いよく開け、ズカズカと入っていった。助けた時から思ったが、こいつは博識だが常識というのを知らないな。身内だから好き勝手やっていい事とやってはいけないことはあるだろ。

 

 

「ヒエ……え、永琳さん!いつも入る時は静かにと口酸っぱくして言ってるじゃないですか!何度言えば!」

 

 

後ろから覗き込むと青白色の髪色をした女性がいた。彼女が月読命なのか、男神としても有名なので分からない。もしくは、女性のように見えて男性という男の娘なるものもあるので油断出来ない。にしても……永琳の上司とは大変そうだな……。

 

 

「大丈夫よ。今だけは忘れないわ」

「ダメじゃないですか!……と、お見苦しいところを見せてしまってすいません。ささ、どうぞおすわり下さい」

 

座るように勧められたので座る。どうやら彼女が月読命らしい。気が強い人だと思ってたが物腰が柔らかい人だ。これなら緊張せずに済みそうだ。

 

 

「話は伺っております。ワタシは月読命と申します。ここ都市で主に統治と管理に携わってます。今回永琳さんを助けて下さりありがとうございます」

「暁 佑全って言います。いえいえ、そこで倒れていたもんで見過ごすにも後味が悪いので」

「ところで、永琳さんのお客様ということで私のところまで来たそうですが何用で……」

「実は……」

 

 

永琳を助けたところからその後に起こった事の経緯を月読命に説明する。最初は真剣な顔でその話を聞いていた月読命だが話の最後が近付くにつれ、百面相のような喜怒哀楽と顔を変えながら聞いていた。説明し終わった後、月読命は深刻そうな顔でこちらを向く。

 

「暁さん……考え直してください……」

「……んんー?どうしてですか?」

「月読命様、何故ダメなのですか?」

「別にダメとかじゃなくてですね。その……弟子入りは良いとしてその師匠の方に問題があって……」

 

 

月読命はチラッと永琳の方を見た。師匠に問題があるとはそういう事か。その問題の師匠は少し首をかしげているが自覚してない辺り、天然なのか?

 

「まあ自分から弟子入りしたんで大丈夫ですよ。これから起きることに比べれば、ここに来る前までの修行の時より楽ですし」

「そう言ってくだされば心強いですが、ダメそうでしたら言ってくださいね?ワタシも協力しますので!」

 

 

月読命から弟子入りに関して承諾してもらったし、一安心だ。他にもあるらしいが月読命が承諾しても他の奴らがちょっかい出して来る可能性があるらしい。月読命が味方にいれば大丈夫だと思うが用心しておこう。

 

「てことで、月読命様に報告したし帰って早速試薬するわよ!」

「……暁さん、何かあったらいけません。相談してくださいね?」

「……はい。ではこれで」

「永琳さん、くれぐれも暁さんに迷惑かけないように……ですよ?」

「私をなんだと思っているの月読命様?大丈夫よ、仮死状態になるぐらいですから」

 

 

仮死状態になる薬って服用するものじゃない。仙人はある程度の毒耐性があるのか分からないが解毒剤とかないか、服用する前に永琳本人にあるか聞くか。いやまあ仮死状態になる前提で考えているが仮死状態にならない程度には作って欲しいと願うばかりだ。

 

「それが迷惑かけてるんです……」

 

 

部屋から出る際に月読命に何か寒気を感じる目で見られたが気がするが、緊張してたせいで緩んで気の所為のようなものを感じたんだろう。

 

(暁……佑全ですか……、彼について分からないことがありますが少し探りますか)

 

 

 

場所は変わり、永琳の弟子入りを月読命に報告した俺は永琳の和風な屋敷に連れてこられた。中は思ったより綺麗で物などが散らかっていなかった。乱雑してると思っていたが整理整頓出来る人なのか?各部屋を見て回るが綺麗というより物が無い。最低限の生活用具しかないのだ。

 

「先生。この家殺風景すぎませんか?」

「しょうがないでしょ。最近まで使ってなかったのよこの屋敷。最低限のものとここに仕舞っているものしかないわよ」

 

 

そう言うとどこからともなく見知らぬ道具や都市の資料なるものを出してきた。最近まで屋敷を使ってないとかさらっと言っているがツッコまないでおこう。

俺は永琳に案内された部屋に向かい、荷物を置いた。外側の戸を開き、中の空気を入れ替える。

外側の戸の向こう側には庭があるが何も無い。本当に何も無いんだなこの屋敷……。

 

「まあ一通り終わったし、仮眠でもするか……」

 

 

仙人は睡眠を必要としないが、心身共に気分を一新することが出来るのでたまに寝たりする。食事と同じで仙人にとっての娯楽の一種だと自分は認識している。縁側に横たわり、瞼を閉じる。睡眠なんて要らない体になっているので非常に寝にくい。

 

「あなた……何寝てるの?」

「昨日の夜から荷造りしてたからな。急に言われて大変だったんだからな?」

「それはごめんなさい。少し休んでていいから起きたら色々やってもらうわよ」

 

 

言い終わると永琳が離れていく。永琳には悪いが寝かせてもらおう。瞼を閉じて意識が薄れていく。今思えば、寝るのは久しぶりだな……。

 

 

 

意識を落とした瞬間、脳が覚醒し目が覚めた。視界にある光景が広がる。辺りを見回す。何も無い無限に広がる真っ白な殺風景が続いていた。別に何も起きそうもないのでもう一回目を閉じ、意識を薄めていく。……眠れない、逆に気分が悪くなっていく。

 

(ここは一旦、この無限に広がる空間を探索してみるか。妖怪か何かの類かもしれないしな)

 

無限に広がる空間を探索する。天眼を使おうとするが真っ白な空間が広がっているだけで意味がなかった。視ただけでは分からないこともあるので探索を続ける。無限に広がる空間を歩き続ける。何も無い。空を飛んで探索をしようとするが飛べなかった。他にも能力を使うが、どうやら天眼以外は能力が使えないらしい。天眼だけが使えるのは疑問に思ったが何かの影響で使えないのだろうと自己完結した。

 

無限に広がる空間を歩き続けると目の前に小さな歪みがあった。

 

(なんだあれは?微かだが魔力を感じるぞ)

 

怪しい歪みにそう思ったがその瞬間、歪みから光が広がり、俺を飲み込んだ。

光が薄れて手をどかすと、次に目の前に広がったのはある光景だった。上空には黒い玉のような魔力の塊、その近くには人がいた。人の顔を天眼で視ようとするが、黒くぼやけて確認することが出来なかった。だが人が何か言ってることに気付き、耳を傾ける。

 

「そうか……俺は世界の***だったのか……いや無理やり入ったのが正しいのか。根源やらなんやら視てきたが、変なやつに付き纏われてたのもこのせい……そのための*か。……いいだろう、付き合ってやる。俺は世界の歴史を正しい方向に変えた調整者。あいつと一緒は嫌だが……その先の人の未来がある限り、この魔法で世界を見守るよ」

 

根源?調整者?世界の***とはなんなんだ?上手く聞き取れなかった。だがこれは何なのだろうか。何故か不思議とその人の事を悲しいと感じた。ここに来るまで何があったのか、知りたくなった。もっと聞きたい、そう足を進めると奥からまた光が広がり、俺を飲み込んだ。

 

 

 

あの夢から覚め、頭の中を整理する。あれは一体なんだったのか?夢なのか?だがそれにしてはリアル。そうとしか思えなかった。

 

(あれは何かしらの意味があるはず。この先のことについて、重要なんだ)

 

このことは忘れないようにしよう。

外を見るとまだ日が落ちていなかった。起きたので永琳の手伝いに向かった。

 

 

永琳の手伝いをするために屋敷の中を探し回るが永琳が見当たらない。

 

(外にでも出ているのか?外に出ているのなら屋敷で待っていた方がいいのだが……やることがないな。)

 

待ってる時間が勿体ないので何かしようと考えているとふと思い出した。

 

(そういえば、朝早く出たせいで日課の鍛錬を忘れていた。)

 

寝ていた部屋まで戻り、座禅を組み始める。意識を集中し瞑想に入り。邪念を消し、瞑想することで体の中を魔力が走らせる。魔力は霊力の混合しているため、流れる魔力は膨大な量だ。それを体に循環させて、体に馴染ませる。魔術回路の質はまあまあだが魔力の量のせいで焼かれるような痛みを最初の頃何度も味わっていた。だが日に日に経つにつれて、回路も慣れて痛みも無くなっていたのだ。その副産物として魔力の量も調整できるようにもなっていたのだ。

 

(霊力と混ざらなければこんなことしなくても済んだのにな……)

 

混ざらなければと先週の出来事を思い出しながら、気落ちする。自業自得なので後悔しか感じられなかった。

瞑想が終わったと同時に玄関から物音がする。ちょうど永琳が帰ってきたらしい。

 

「起きてたのね。もう少し寝てると思ったけど。」

「おかえり、流石に来てばっかでそんなに寝るか。こんなの仮眠にもならんわ。」

 

永琳は手にぶら下げてた物を二つ、足元に近くに置く。パンパンと膨れ上がった袋は上から中身を覗くと、薬草や食材が入っていた。

 

「買い物に行ってたのか。」

「薬草買うついでに食材を買ってきたのよ。今日から私の家であなたが作ってくれるからね。」

「まぁ、あっちよりは器具が揃ってるから美味しいのは作れるか。早いが今から作るか?」

「お願い。出来たら隣の研究所にいるから呼んでね。」

 

「あぁ」と返事をした後、永琳は薬草が入った袋を持って屋敷から出た。食材を台所に持ってて何を作るかを考え、作り始めた。

 

 

 


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