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戦いが終わった後、神樹による樹海化は解け、気付けば四人は瀬戸大橋付近の祠に転移されていた。
その後、大赦の人間達がやって来て四人をそれぞれの家に送り届けた。
最後に玄乃を送り届ける間、一緒に車に乗車していた彼の担任、
「えーっと、簡単に言うと大赦は勇者のサポートをしていて、んで俺がその勇者になった、と」
「ええ、本当は勇者は大赦の中でも格式のある家から、と決まりがあるのだけど、貴方の場合は例外として家はそのまま、というのが決定されたわ」
「へー、んじゃ俺は今まで通りでいいって事なんだ」
「いいえ、貴方はこれから鷲尾さん達と一緒に勇者として訓練もしてもらうわ。経験したからわかると思うけど、危険よ」
うえ、と嫌そうな顔をする玄乃。そんな彼を見て安芸は呆れたように息を吐く。
すると、話が切れた丁度に車が止まり、目の前には玄乃が生活する家があった。大きな日本家屋。それが玄乃の家だ。
「傷には気を付けてお風呂に入るのよ、真珠くん」
「はーい、わっかりましたー」
またあしたー、とひらひら手を振る玄乃を見て、安芸は本当にわかったのかと頭を抱えた。
その日、傷を忘れて風呂に入った玄乃の叫び声が家とその周辺に響き渡ったそうだ。
翌日。
学校に登校した四人は担任と共にお役目を果たすため、教室から突然いなくなる事もあるが慌てないように、という事をクラスに呼びかけた。
須美と園子、銀の三人は前々から知られていたが、まさか玄乃までお役目を任されていると聞かされていないクラスメイト達は動揺していた。玄乃も若干、昨日の今日で頭が追い付いていない。
放課後、全ての授業が終わったあと、銀と玄乃の周りにはクラスメイト達が群がっていた。
「ねーねー、お役目って大変なの? 痛いの?」
「いやー、話しちゃダメなんだよねぇ」
質問してくる女子児童に銀が困ったように笑う。
「なんでクロは最初に言ってくれなかったんだー?」
「いや、俺も突然だったからな」
「とか言って最初からわかってたんだろー! このこのー!」
「うわっ、ちょ、やめろよ仲野!」
仲野と呼ばれた少年が玄乃の首を軽く腕で締め上げる。周りにいる他の男子達も便乗し玄乃の頬を軽く引っ張ったりと騒ぎ立てる。
そんな中、すくっ、と須美が席から立ち上がり、一つ咳払いをした。
騒いでるクラスメイト達は静まり須美の方を見る。
「三ノ輪さん、乃木さん、真珠くん。……そ、その……こ、これから祝勝会でも、どうかしら……?」
照れたように頬を少し赤らめ、須美は眼を泳がせながら言う。
三人は笑顔を浮かべた。
「おおっ! いいね!」
「うん! 行こう行こう!」
「おう、いいな。行こうぜ!」
須美の提案を三人は快諾し、彼女はほっ、と安堵した。
あまり人付き合いがいいとは言えない須美は断れないか不安だったのだ。
その後、学校を出て四人は総合施設、イネスに足を運んだ。ここには公民館の他に野菜や肉類などの商品を多く取り扱っている。
その中でフードコートがあり、四人はそこで昨日のバーテックス撃退の祝勝会をしていた。
椅子から立ち、須美はまるで学校の校長が言いそうな堅い挨拶から始めた。それに三人は苦笑を浮かべる。
「硬っ苦しいのはいいんだよ。大人じゃあるまいし、かんぱーい!」
「そーそークロの言う通り! かんぱーい!」
「ありがとうね。私もスミスケを誘うぞ誘うぞって思ってたんだけどなかなか言えなくて……だから嬉しかったんだよ〜」
玄乃が堅い挨拶をする須美の言葉を遮り、無理矢理乾杯の音頭を取り、銀もそれにノる。
園子は勝手に乾杯し出す二人に困惑する須美を見つめてお礼を言った。お役目を任されてから、須美、園子、銀の三人はこうしてイネスに来て話す事など無かった。ましてやあまり積極的ではない須美が誘ってくるのが意外で、園子は嬉しそうに破顔している。こうして須美と話したくてうずうずしていたようだ。
銀と玄乃も同じようでうんうん、と頷く。須美も同じだったようで私も話したくて、と恥ずかしそうに言う。
「……私、多分三人の事あんまり信用してなかったと思う。それは三人の事が嫌いとかそういうのじゃなくて! ただ、私が人に頼るのが苦手というか、頼り方がわからなくて……」
必死に自分の思いを口にする須美の横顔を玄乃は見つめる。
普段優等生で通っている彼女がこうして自分を出すのが珍しく、興味が湧いたのだ。
「でも、それじゃダメなんだよね。一人じゃ、私一人じゃきっと、何も出来なかった。二人が居たから……真珠くんがあの時来てくれたから。……そ、その……こ、これから私と! 仲良くしてくれますかっ?」
不安そうに瞳を揺らし、園子、銀、玄乃を順に見る。三人は互いに顔を見合わせて笑った。
「何言ってんの、アタシ達はもう友達だろ? な、クロ? 園子?」
「そうだな、今更だぜ?」
「嬉しい! 私ももっとスミスケと仲良くなりたかったんだ〜!」
私も友達作るの苦手だからさ〜、と園子がえへへと笑う。
「これからはもっとお話しようねスミスケ〜」
「乃木さん、その……スミスケって呼び方はちょっと……」
「あ、ごめん……えへへ、いつの間にかあだ名で呼んでた」
いつの間にかよ、と園子以外の三人は心の中で呟いた。
「じゃあ、ワッシーナは?」
「もっと嫌よ!」
「やけに食い付きが早いな……」
横文字が苦手な須美にとって、ワッシーナは不満なようだ。
うーん、と園子はどんなあだ名がいいか思案する。ふと、彼女は頭に浮かんだ文字を口に出した。
「それなら、わっしーはどうかな?」
「まぁ、それなら……」
須美のあだ名が決まったところで銀がじゃあさ、と声を出す。
「アタシの事は銀って呼んでよ。三ノ輪さんはよそよそしいなぁ」
「あ、そうだね〜私の事も名前で呼んで欲しいなぁ。あっ、これはもっちーにも言えるね〜」
「なんで俺まで飛び火した……」
「そりゃ、クロが苗字で呼んでるからでしょ」
須美は口ごもり、玄乃は銀の言葉に何も言えない。ぐぅの音も出ないとはまさにこの事である。
「……それはそうと、乃木」
「園子」
「もっちーってあだ名なんとかならないか」
「園子って呼んでくれたら考えてあげるよ〜」
こいつ、と口元をひくつかせる。よくわからないあだ名で呼ばれるのは納得出来ない玄乃にとって、この展開も彼としては納得出来ないものだった。
銀を名前で呼ぶ理由は小学一年生からずっと遊んでいたからだ。しかし園子や須美はある程度仲良くなったのはクラス替えを行った辺りからだ。年数が違う。
「どうしてもか」
「どうしても〜」
彼女の意思は固いらしい。
玄乃は深い溜息をつき、数秒黙って園子を見つめ、しぶしぶ彼女の名前を口にする。
「園子」
「わぁ〜! もっちーに呼ばれるの、すっごくわー! ってするね!」
「だからもっちーなんとかしろよ」
えへへ、と笑ってしょうがないな〜と言う。
「じゃあ〜、シンゲンはどうかな?」
「理由は?」
「
ふふん、と胸をはる園子を見て、玄乃はもうそれでいいと言わんばかりに手を振った。須美と銀はそんな二人の光景をずっと笑って見ていた。
この流れで銀は須美の事を名前で言うようになり、玄乃もしぶしぶ須美を名前で言うようになった。
そのあと、四人はイネスのフードコートにあるジェラートを売るテナントでそれぞれ別の味のジェラートを購入し、美味しい冷たいジェラートに舌鼓を打った。
須美は宇治金時。園子はほうじ茶とカルピーのミックス。銀はしょうゆ豆。玄乃はチョコレートとバニラのミックス。
「初めての共同作業だね」
「へっ、えぇ……!?」
園子と須美が食べさせ合い、園子がそんな事を言い出して須美が顔を真っ赤にした。何やってんだかと玄乃と銀は呆れたように笑い合う。
「シンゲンのは何ー?」
「俺のはチョコとバニラのミックス」
「あーん♪」
今度は俺か、と玄乃はその言葉が無意識に口に出た。
しかし、ここで園子の思い通りにさせるのは彼は許さなかった。ニィ、と口を三日月の形にして隣に座る須美を見る。
「須美」
「へ? 何真珠く──っ!?」
玄乃がしたのは、自分のジェラートをスプーンですくい、それを口を開ける園子にではなく、不意に名前を呼ばれた須美の口にスプーンを突き入れたのだ。
「あー! なんで私じゃなくてわっしーなの〜!?」
誰があげるか、と玄乃は年相応に舌を出して園子を煽る。当然園子は不機嫌になり、頬を膨らませてぷりぷりと怒る。
それを見て玄乃は高らかに笑う。
そんな彼に銀は小声で彼を呼ぶ。
「あ? どしたギン」
「須美の顔見てみ」
「須美の?」
言われた玄乃は須美に目をやる。すると、そこには先程よりも顔を真っ赤にしてぐるぐると目を回す須美の姿があった。
「須美!? ど、どうした!?」
「いや、あんたがやったんでしょ」
「うわぁ、わっしー大丈夫〜?」
「わ、私……し、真珠くんと……はうっ……」
「す、須美!? しっかりしろ!」
玄乃は慌てて須美の事をガクガクと肩を揺らした。
そのあと、しばらくの間、彼女は玄乃と話さず、園子と銀としか会話しなかった。
例え勇者であろうと、中身はまだ小学六年生の女の子である。
──これは、四人の勇者の物語。
神に選ばれた少年少女達の
いつだって、神に見初められるのは無垢なる少女達である。
いつだって、勇ましい少年は神に試される運命にある。
そして多くの場合、その結末は──。
ふぅ、アニメ一話やるだけで三話使うのはちょっと長いですね。本当は二話編成で終わらせたかったんですが。
思ったより長くなってしまったものなのでこうして二話と分割しました。
いろいろガバとかあると思いますが、暖かい目で見てください。勇者の設定はのちのちにわかると思うのでそこのツッコミは御遠慮ください。