秘匿日誌 対象艦名:戦艦レ級   作:三河葵

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元は日曜日に二作品投稿という予定だったのですが、PCのファイル見て回ってたら二年前のネタを見付けたので投稿。なんとなく好きだったので勘弁して下さいorz
ちなみに、本作は艦これを割と知っている中級者向けに書いてしまったので、あんまり詳しくないという方は逃げて下さいお願いします!


これを期に提督に戻ってみるのもいいかも……


8月2日――1日目
流れ着いたのは…


 

 8月2日。波止場のカモメが一際に穏やかに声を上げ、鎮守府では冷房、ところによっては団扇が扇がれる程に暑い風が流れている。綿を重ねたような厚い雲が流れているもの、その数は川の中の石のように点々と揺られるだけで、眩しい陽射しを隠すにはまるで心許ないものだった。

 その空の下、外を出歩く艦娘は風を招くようにぱたぱたと服を扇ぎながら、不可抗力な力に対して愚痴を零す。口調こそ穏やかなもの、バレッタで髪を後ろに束ねた少女が白旗を振らんばかりの気弱な声調を発する。

 

「今日はとっても暑いのです」

「本当にねー。電、体調は大丈夫?」

「司令官から麦藁帽子を借りているから大丈夫です」

「そう? きつかったら私を頼っていいからね」

「早く帰ってかき氷をかっこみたいもんだ……あぢぃー」

 

 傍目から見た三人は巷で唱えられる少女とまるで変わりないが、その実はまるで違う。彼女たちは在りし日の艦の記憶と魂を持った娘――艦娘という存在だった。同系である故に似通った部分が多い少女の出で立ちをした駆逐艦の雷と電、二人に比べて年端を進ませた軽巡洋艦・天龍。左目を覆った眼帯が目に付くが、当人は別段気にする仕草を寸分とも見せることなく、雷と電を連れて泊地内の警邏を行っていた。

 猛暑といかずとも、昨日一昨日と比べれば電を心配する雷や、団扇を扇ぐ天龍の発言もご尤もなほどの日照りだった。特に、電と雷は棒状の氷菓子を口に含んで暑さを凌ぐも、結局は急場凌ぎ。名残を惜しむように、二人は冷えた棒を咥えたまま離そうとはしなかった。

 実のところ、今日の三人に予定は無い。強いて言えば、遠征していた艦隊の帰還日と、別の艦隊の演習が予定が入っているが、昨日の今日で戦闘から戻り、外されている三人にはそこまで関係の無い話だった。艤装も整備中、現状は(いとま)を過ごすことになっている彼女たちは、持て余した時間を見回りに当てることに費やしていた。万一の敵襲等に備えて艤装も装着しているが、この気温においてその行為は自滅行為だった。熱を持った鉄材を身に付けているのだ、否応に熱気を共にして歩くことを強要される。

 連日の快晴と気温の高さで士気が落ちないかと言われると、それは否定出来ない。しかし、一方で楽しんでいるのもあった。少なくとも、勝利よりも重要視しているものを持っている電と雷は、純粋に海を好んでいた。色、音、揺らぎ、その近くにいるだけで気持ちが穏やかになるほどだった。

 ……その海で戦闘を行うことに抵抗感があるもの、戦争という現実が彼女たちの思想を無視している。その悲しい現実と向き合いながらも、彼女たちはそうありたいと望んで生きている。しかし、守りたいものだってある。鎮守府にはそれが多く存在する。だからこそ、そういった正義感も込めて、二人は巡回を買って出たのだった。

 

「良かったんですか? 天龍さんまで来ることは」

「バーカ。ひょっとしたら起きるから万が一なんだ。敵が来ないとは限らないだろ?」

「それはそうですけど」

「それに、オレも暇だったんだからな。ほらよ」

 

 言いながらも、天龍は自身に扇いでいた団扇を二人に向ける。二人分ということもあってか、自分に振っていた以上の勢いで風をばさばさと与える。この暑さだ、少しばかり涼しさを受けてもすぐに身体中に熱を持つ。火照った熱量を顔に出すことなく、天龍はふふっと二人に笑いかける。

 天龍の真意の部分を言えば、二言目の方が強いにしても、一つ目も嘘ではなかった。比較的情勢が落ち着いている鎮守府にしても、敵に狙われない可能性が無いとは言い切れない。駆逐艦二人ではもしもを対処出来るか不安だった天龍も志願しての警邏だった。日焼けを嫌がって上着を羽織っていたもの、内から篭ってくる熱量の大きさもあって、天龍の額や頬を流れる雫は、一つや二つとも足りない量だった。だが、彼女は快活に笑みながら二人に団扇を扇ぐ。

 

「フフフ、涼しいか?」

「わっ、涼しい」

「ありがとうなのです」

「しっかし気になるんだが、木曾とか叢雲とかと話してる時っておっかなびっくりしてるくせに、なんでオレとは普通に話せるんだ?」

「だって、天龍さんってお姉さんみたいなので」

「なんだか気楽に話せるのよね」

「……それ、暁の前で言うなよ」

 

 雷たちの同型であり一番艦(ネームシップ)たる暁は淑女(レディ)を自称するもの、未だに旗の乗った食事に目を輝かせるほどの幼さを見せるほどだ。目の前で自分以外の誰かを姉扱いしたら頬も膨らますのは明白。天龍に限らずその予感は非常に容易に思えたのだろう、雷と電はぷっと吹き出す。

 天龍が口にした通り、雷と電は軽巡の木曾や武勲を持つ駆逐艦・叢雲ともそう距離も無く話せるし、二人が優しいことも知っている。にも関わらず、特定の艦娘相手となると、少し落ち着かない態度が見え隠れするのだ。曖無く言えば、天龍と叢雲では纏っている空気というものが違うのだ。戦士気質の強い木曾に、基本的には高飛車な叢雲。総じて言えば、怖い雰囲気の人が苦手なのだ。要は苦手意識が拭えない、というだけの問題。

 だが天龍は違う。話し始めた当初こそ彼女たちと同じ類と判別されていたが、いろんな艦どころか、提督、妹に当たる二番艦の龍田にすらからかわれているほどだった。そこから見えてきた人格に加えて、慕い易い姉気質も備えていた。尤も、天龍本人は「なんか馬鹿にされている感が否めない」と複雑な心境だが。ともあれ、慕われている節が目に見えていることもあってか、抵抗することも少なくなっている。とは言ったところで、どうあっても威厳は求めている天龍にとっては、やはり課題のひとつとして未だに残っているのが辛いところである。

 

「……ん?」

「どうしたの天龍さん?」

「浜辺に誰かが倒れてる」

「そ、それなら行かないと!」

「お、おい待てよ電!」

 

 誰と構わず助けたいと願う電は、一目散に浜辺へと降りる。体躯の差もあってか、天龍が小柄な電に追い付くのは簡単だった。電が目的の場所に着く前に、既に天龍も横に並んでいた。

 ……少なくとも、漂流してきたものを見つけた瞬間、天龍には嫌な予感があった。浜辺に流されていたのが人の形をしていたのは間違いない。しかし、その色合いは黒や灰を基調とされている。見ていて嫌な気分になってきたのだから、あれが味方とは思えない。

 となると、アレはまさか……気温が低くなったような錯覚を覚えながら、流されてきたものを注視する。少し遅れて到着した雷も、漂流した主の姿に言葉をつまらせるほどだった。

 

「冗談、だよな……?」

「………戦艦、レ級……?」

「なんでこんなところに漂流を……?」

 

 煤で目立った汚れと継ぎ接ぎのように穴だらけの衣服、火傷を負った全身の肌、明らかに攻撃を受けた跡が強い。艤装も大破して、艦載機の収納部か艤装の装着部分か、判別に及べない尾の部分も損傷がひどい。とても攻撃出来る状態じゃないにしても、相手は戦艦レ級。提督間において悪夢の敵艦として一際名高い相手に変わりは無い。

 少しややこしい事情を言えば、この鎮守府は戦艦レ級のいる海域を突破するほどの戦力を有していない。だが、支援艦隊として知り合いの提督の戦線に参加した経験がある。あくまで支援艦隊としての参加、という体があって戦艦レ級を知っているのだ。

 だが、天龍はその支援艦隊に参加していたから、分かる。否、不参加に限らず映像や情報を回してくれたことで、その顔は鎮守府に知れ渡っているのだが、特に戦闘に関わった天龍だから分かる。こいつは偽者でも空似でも無い。その特徴は紛れも無く、あのレ級だ、と。黒い雨合羽を覆っているもの、少し肌蹴させた黒い水着、季節外れに感じる首に巻かれた長布、人型を象った深海棲艦特有の温度を感じない白い肌。見間違えるはずがない。

 ……もう少し彼女を観察して見ると、頭部からの出血が酷いことに気付いた。にも関わらず、生きている。手の甲を通った蟹に対して、微かな反応を天龍は見逃さなかった。果たして二人が気付いたのかは定かでは無いが、これはどう考えようともろくなものじゃない。

 

「……二人とも先に戻ってろ。こいつは死んでる」

「天龍さんは?」

「なに、そこらの花でも拾って手向けてやるさ」

 

 嘘を言った。天龍は二人が見えないところで、レ級を沈めるつもりだった。放置すれば確実に脅威になるのだ。一瞬だけ、無意識に腰に差した剣に目を配ってから、天龍はしっしと二人を手で払う。

 

「嘘です! この人、生きています!」

 

 だけど、電は気付いていた。見落としていたのは雷だけで、その事実に気付くなり身体を一歩退かせてしまう。

 

「え、嘘っ!? 襲ってこない!?」

「そうなるかもってことだ! 離れろ電、そいつは」

「分かっているのです! だけど待ってください! この人は艤装も無いのです! 助けてあげたいのです!」

「なに言ってるんだ! そいつは敵だぞ!? 放っていたらこっちが危な」

 

 ……こと戦時中において電の口にした言葉は、希望的観測に過ぎない。時々彼女から発せられる「出来れば沈む船も助けてあげたい」という言葉は、聖人君子のような人物で無ければ到底言えないだろう。それが味方に向けられたものなら歓迎もされようが、敵艦にまで慈悲を向けられている。

 それが電の持つ優しさということは知っている。だけど、相手が悪すぎた。気さくな天龍であろうと、電のしようとする行為には反感せざるを得なかった。

 雷があたふたと二人を交互に見ながら、口論になり始めたその空気の中―――誰もが口を開いたまま凍らされた。

 

「い、生き返った……?」

「いや、起きただけだ」

 

 ゆらりと、木々のしなりを思わせるように身体を振らせながら、レ級は立ち上がった。立ち上がることすら億劫なのか、頭を抑えながら苦悶の表情を浮かべている。指の隙間から覗かせた獣のような眼光に、天龍は一瞬だけ、自分が殺された未来を幻視してしまった。 ……が、幸いにも彼女自身が見たものは、自身が砲撃により爆散したもの。今のレ級には使えるほどの艤装は無い。安堵によって軽く息を吐くが、一応に尾の部分に気を配りながら、天龍は剣を抜く。

 

「雷……電を連れて今すぐ逃げろ」

「でも天龍さん……!」

「なに、刺し違えてもお前らは守ってやるさ」

 

 無理矢理に口角を上げるが、天龍に算段は無かった。状態としては大破にしても、相手は戦艦レ級。加えて、覗かせた目の色から見るにエリート特有の赤い揺らぎが見えた。雷撃も艦載機も砲撃戦も対潜すらも手のもの以上を見せる怪物艦。その能力はどう考察しようと、その能力は戦艦が有するものじゃない。艦の常識を超えた存在として佇む非常識、それがこの戦艦レ級だ。単艦でこの状態であろうと、油断なんて捨てる他無い。天龍の頬をなぞる汗が増えたのは、気温の高さ以外の要因が勝っているからだった。

 

 ここからが、天龍を含めた三人の予想外の動きだった。

 

 

「ヨォ! 帰ッテ来タゾ、同胞!」

「…………は?」

 

 その瞬間、レ級は極めて活発的な笑顔で、意図の不明な陸軍式の敬礼をしてきたのだ。電と雷にすれば、それこそ天龍に似た笑顔で、挨拶を向けられたのだ。その声は艦娘のものとはまるで違う、声が重なったような、或いは反響したような、そも人とは違う響かせ方をしていた。

 特に天龍自身の戸惑いが強かった。支援艦隊として参加した自分が見たものは、自分以外を見下したような笑みと、その笑みに似つかわしい蹂躙の行為。残忍を形にした彼女が、心から人懐っこい笑顔を浮かべていたのだ。天龍が見た赤い揺らぎも、白昼の蜃気楼のように雲散している。

 なにより三人を動揺させたのは、少なからず敵と対峙している状態のはずなのに、彼女からは敵意がまるで無い。一切の疑問すらなく、好意的な眼差しを光らせている。例えでもなく、それは明らかに仲間を見ている視線だった。

 そんな軽い態度を取ってから一瞬、やはり怪我の影響は大きく、ふらついた身体が前のめりに倒れ、両膝を砂に埋める。

 

「済マナイ、入渠ドックニ連レテ行ッテクレ。身体ガ、キツイ……」

 

 この一連が虚勢であったことに、彼女たちは今気がついた。よく見ると息切れもひどく、今にも倒れそうな身体を支える腕すら、いつ力尽きてもおかしくないほどに震えていた。

 状況がまるで見えない。だが、ある予感はあった。天龍が尋ねる前に、雷は簡潔に、天龍の意図より遠いニュアンスで尋ねていた。

 

「…頭の傷、どうしたの?」

「コレハ…………ッ、……オカシイ、思イ出セナイ……」

「思い出せないって……」

「待ッテクレ、今思イ出シテミル………………」

 

 左手で支えながら、空いた手で頭を抱えながら逡巡させるが、レ級は唸る以上の答えを見せることなく、ただ視線を泳がせていた。探し物を必死で探すように、視線から焦りが見て取れていた。

 記憶を探る当人以外が感付いていた。深海棲艦同士での戦闘という可能性が無い以上、艦娘による砲撃が当たった影響で大破し―――どうやら記憶も無くしているようだと。不意を打つという選択が浮かばないほどか、彼女は急かされたように、独り言をぼやくばかりだった。

 その様子がしばらく続くが、その内レ級は

 

「駄目ダ、サッパリダ」

 

 途端に、声を上げて笑った。無理だと判断した割にその表情は明るく、あからさまなほどに割り切っている。だが、「クギャギャギャギャ!」とあげられた笑い声は、明らかに人の発するものとは違い、立ち会った天龍たちは不意に一つ後ずさってしまうほどの、薄気味の悪さを孕んでいた。やはりレ級は艦娘じゃないと改めて確信した瞬間だった。

 背筋を冷やしたその一方、三人は粗方に理解した。やはりどこか大雑把で分かり易い一方、判断や切り替えが早く、思い切りも良いほうのようだと。軽い調子で「参ったね」と同意を求めるように肩を竦ませるが、目の前の存在が敵か味方という問題において更に分からなくなり、三人は目を丸くして彼女を眺めるしか出来なかった。

 対して、呆然と見られているレ級は、自分が敵であることすらも忘れた状態であることすら知らず、ただ三人に対して首を傾げている。レ級にすれば自然にしているだけで目を開かれているのだから、向けられている怪訝に疑問を感じざるを得なかった。原因を気になりもしたが、自身の優先すべき事項を頭で整理してから、レ級は口を開いた。

 

「ソレハ今ハ良イトシテ、入渠ドックニ連レテ行ッテクレ。頼ム」

 

 この場で一番判断に困ったのは天龍だった。提督も今は離れているし、離れている時の提督代理も秘書艦たる叢雲に委ねられている。高飛車にしても割と意を汲んでくれる性格をしている叢雲だが、これは頭を抱える案件にしかならないだろう。だが、現場にいるのは三人。必然と練度の高い天龍に委ねられることになった。

 頭を掻きながら、天龍はどちらにも角が立たない方法を考えようとして―――我ながら驚くような速さで思い付いていた。

 

「……分かった。ドックに連れて行く。その前に空きを確認するから、ちょっと待ってろ」

「天龍さん? 今ドックは」

「叢雲に伝えてくれ。戦艦レ級の無力化及び鹵獲に成功、追って詳しい報告をするってな」

 

 怪しまれない程度に小声で、雷に伝える。合点と承知したように、雷は首肯してから、提督執務室へと走る。

 正直に言えば、天龍はレ級を助けること自体に困惑したが、相手のあまりの毒の無さに感化され、向けようとしていた剣も戻す。勿論記憶喪失を装って鎮守府を探る諜報艦の可能性も疑ったが、レ級の装備や手持ちの薄さを考えるとそれも無い、そう判断してのことだった。多少の抜けた行動はしても、ドックの空き状態の把握や無闇に敵を信用出来るほど、天龍は呆けてもない。怪我人を連れてドックに連れて行く分には、問題も無いだろう。どの道艤装は全て外してから入渠するんだ、怪我を癒す程度には問題無いはず。それから捕虜として扱うのが妥当だろう、それが天龍の算段だった。

 残された天龍と雷は、邪気も敵意も無いレ級を肩で抱えながら、一緒に歩く。

 

「ドックは空いてるとよ。歩くのきついだろ? 肩貸してやるよ」

「オォ、アリガトウナ」

「良かったのです……! 助かって良かったのです……!」

「……ナンデ小サイノハ泣イテルンダ?」

「泣くなよ、生きてるんだからよ」

「出来ることなら、どんな人だって助けたいと思っていたので……」

「ドウイウ意味ナンダ?」

「……気にするな。色々抱えているんだよ」

 

 折角の穏やかな空気になったのに、なにをきっかけで思い出すのか分かったものじゃない。艤装が使えない状態なのが幸いにしても、この状態が保てるとは思えない。いつまでも、深海棲艦と仲間でいられるなんて、有り得るはずが無い。

 だけど、その夢のような瞬間を体験していることで、戦争に染まっている天龍も心地が良いと自覚はあった。なんであれ、いつか破れる状況にしてもそれは今じゃないようだと天龍も一息吐く。

 言ってしまえば、天龍は直前まで迷っていた。怪我が治ってからのレ級の扱い。或いは雷撃処分にしても構わないだろうとも考えていたが、それは電の流した涙を裏切ることになる。それに、これだけ密接している上に、自分たちを殺して艤装を奪うという行為すらしないんだ。

 ―――こいつは敵じゃない。根拠も証拠も無い、ただの直感でしか無いが、少なからず今の天龍はそう確信していた。

 

「なあ、見たところ記憶が無いようだが、傷治ったらどうするんだ?」

「治ッタラ……ソウダナ、腹ガ減ッタカラ、飯ガ食ベタイゾ」

「そうじゃなくて、鎮守府に戻るとか、元の場所に戻るとか、なんかあるだろ?」

「帰ル場所…………ソレダ、思イ出セナイノハ」

「……そう、なのですか?」

「じゃあ、なになら覚えているんだ?」

「名前、グライカ。戦艦レ級、ッテ言ワレテタクライシカ覚エテナイ。後ハ……ナニカト戦ッテイタトイウ覚エダケダナ」

「なにかって?」

「サア、分カラナイ。ダケド、戦ッテイタッテ覚エハアル」

「……聞いて悪かった。今は休んどけ」

 

 「オウ」そう返事してから、レ級は思い出したように眠気に委ねられた。すぴーと上げる寝息は暁や多摩を連想させ、天龍と電はぷっと笑った。

 あまりに砕けた態度のせいか、彼女がまるで深海棲艦であることを、数秒だけ忘れてしまっていた。浜辺ということもあり、抱えたレ級の体重分が足を砂に埋め、そして交差させる。この天気に加えて体力は奪われていく。必然、天龍と電の息はすぐに切らしせざるを得ない。

 

「天龍さん」

「どうした?」

「この人って、なにを食べるんですかね?」

「…………………知らね」

 

 間宮の食事を食べるレ級という絵が思い浮かべることが出来ず、天龍は短く返した。

 




最終的には100人程出そうな気がする……

でもこの話投稿時は僕もよく分からないし、出せてもグラーフ辺りまでになるかも…現役提督のみなさん本当すみませんです_| ̄|○

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