鎌の勇者(仮)は殺人鬼【凍結】   作:聖奈

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遅れてすいません…。


九話 奴隷

二週間が経ち、手に入った金額は銀貨40枚だった。元康に投げつけた分と少しが集まった。なお、その時の事を一時の感情で何故そんなことをしてしまったのかとミーシャに数日前、おちょくられた模様。

 

尚文はミーシャと共に一度だけ森の方へ行った事があった。レッドバルーンという魔物を殴った時、缶を殴ったような衝撃を受けた。三十分近く殴っても一向に割れる気配が無く、ミーシャに任せて攻撃して貰い割れたということがあり、まだ早いと尚文は判断して森を去ったのだ。

 

尚文はまだ草原に居る程度の魔物しか戦うことが出来ない状態だった。二週間でレベルは5まで上がった。

 

「はぁ…」

 

腕に喰らい付いたままのレッドバルーンを殴るがダメージが通らずに溜め息を吐く。

 

攻撃力が足りない。足りないから魔物が倒せない。倒せないから経験値が稼げない。稼げないから攻撃力が足りない。このループに尚文は陥っている。それよりも、尚文が危惧している事が一つあった。

 

ミーシャの事だ。

 

現状、ミーシャは尚文に同行しているが彼女が飽きたり退屈した場合、同盟を切られる可能性がある。彼女は放浪癖があり、最終的には戻って来るが別行動が少なくなかった。利用価値が無いと判断されるのが一番危険な事なのだ。お互い利用しあっている状況を維持すること…それが尚文がしたい事だった。

 

酒場から草原に出るための裏路地を現在、二人で歩いていた。この日、二人にある少女との出会いが待っていた。

 

「お困りのようですな?」

 

「ん?」

 

「何かしら」

 

シルクハットに似た帽子、燕尾服を着た、妙な男が尚文とミーシャを裏路地で呼び止める。尚文からしたら、肥満体のサングラスを着けた変な紳士であり中世な世界観から逸脱しており、浮いた男なので無視することにした。

 

「人手が足りない」

 

その一言に尚文の足が止まる。

 

「魔物に勝てない」

 

「ぷっ…」

 

尚文は男の言葉にイラつき始め、ミーシャは男の言葉に笑いを堪える。

 

「そんなアナタにお話が」

 

「仲間の斡旋なら間に合ってるぞ?」

 

「面白そうね」

 

「おいコラ」

 

尚文は金にしか目が無い人間を養う余裕が無いので断ろうとし、ミーシャは食い付いた。

 

「仲間?いえいえ、私が提供するのはそんな不便な代物ではありませんよ」

 

「…じゃあ何だよ?」

 

「…♪」

 

ズイっとその男は尚文に擦り寄ると声を出す。

 

「お気になります?」

 

「ねっとりした声を出すな、息を吹き掛けるな、顔が近いんだよ、気色悪い」

 

「怪しいおじさん×尚文…♡良いわね…♡」

 

ミーシャは恍惚とした表情を浮かべた。

 

「おいやめろ」

 

「ふふふ、あなたは私が好きな目をしていますね。良いでしょう。お教えします!」

 

男はもったいぶり、ステッキを振り回しながら高らかにシャウトする。

 

「奴隷ですよ」

 

「奴隷?」

 

「ええ、奴隷です」

 

「へぇ…♪」

 

奴隷とは、人間でありながら所有の客体即ち所有物とされる者を言う。人間としての名誉、権利・自由を認められず、他人の所有物として扱われる人。所有者の全的支配に服し、労働を強制され、譲渡・売買の対象とされる者である。

 

「なんで俺が奴隷を欲していると?」

 

「裏切らない人材」

 

その一言に尚文は肩をピクリとさせた。

 

「奴隷には重度の呪いを施せるのですよ。主に逆らったら、それこそ命を代価にするような強力な呪いをね」

 

「ほう…」

 

「ほんと、狂ってるわね…良い感じに♡」

 

尚文にとっては図星だった。逆らえば死に、下手に人を利用しようと考えない人材はまさに尚文が欲しがっていた物だった。

 

尚文には攻撃力が欠けている。だから仲間が必要だ。しかし、仲間は裏切る為、金を掛ける訳にもいかない。ミーシャは現状、仲間だが金銭の発生する事は自分でやらせているが何時切られるか分かったものではない。

 

仲間はその為、増やせない。

 

しかし奴隷は裏切れない。裏切りは死を意味するからだ。

 

「どうです?」

 

「話を聞こうじゃないか」

 

「そうね」

 

奴隷商はニヤリと笑い、尚文に案内をするのであった。

 

 

 

 

 

裏路地を歩くことしばらく。この国の闇は二人が想像するよりも相当深かった。昼間だというのに日が当たらない道を進み、サーカスのテントのような小屋が路地の一角に現れる。

 

「こちらですよ勇者様方」

 

「へいへい」

 

奴隷商は不気味なステップで歩いていく。それから、奴隷商は尚文が予想した通りにサーカステントの中へ尚文とミーシャを案内した。

 

「さて、ここで一応尋ねておくが、もしも騙したら…」

 

「良くて港で有名なバルーン解放でドサクサに逃げる。悪くて港で有名な鎌で首狩りでしょう?」

 

奴隷商は笑顔を崩さずに言い放つ。

 

「勇者を奴隷として欲しいお客様はおりましたし、私も可能性の一つとして勇者様方にお近付きしましたが、考えを改めましたよ。はい」

 

「ん?」

 

「あなた方は良いお客になる素質をお持ちだ。良い意味でも悪い意味でも」

 

「ふーん…」

 

「どういう意味だ?」

 

「さてね。どういう意味でしょう」

 

会話をしているとサーカステントの中で厳重に区切られた扉が開く。

 

「ほう…」

 

「闇の匂いがプンプンするわね♡」

 

店内の照明は薄暗く、仄かに腐敗臭が立ち込めている。獣のような匂いも強く、あまり環境は良くないだろう。幾重にも檻が設置されていて、中には人型の影が蠢いている。

 

「さて、こちらが当店でオススメの奴隷です」

 

奴隷商が勧める檻に少しだけ近付いて中を確認する。

 

「グウウウ…ガアアァッ!!」

 

「人間じゃないぞ?」

 

(Lv.75…俺のLvよりも遥かに高いな)

 

「はぁ…はぁ…♡」

 

(100点ッ…♡嗚呼、駄目…お腹の奥が疼いて…♡)

 

檻の中には人間のような、皮膚に獣の毛皮を貼り付けて鋭い牙や爪を生やした様な生物、簡単に言えば狼男が唸り声を上げて暴れていた。尚文は、狼男のステータスを見て冷や汗をかき、ミーシャは恍惚とした表情を浮かべて息を荒げ身体を掻き抱いて興奮を鎮めようとする。

 

「獣人ですよ。一応、人の部類に入ります」

 

「んんっ…♡はぁ…ッ…うぅ…っ…ふうぅ…ッ…♡」

 

「獣人ね。つか、盛るな…落ち着け」

 

「っ、けほ…!お゛ぇ…ッ…!うぅ…!」

 

尚文は獣人と聞いてファンタジーではよく出てくる種類の人種を連想した。そして、背中に悪寒と本能的に危険を感じとりミーシャから少し距離を取る。少し離れた檻で殺気をもろに浴びた奴隷の少女が悪寒で体調を崩したのか、強く咳き込み檻の中で蹲って身体を掻き抱いた。

 

「俺は勇者で、この世界に疎いんでね。詳しく教えてくれないか?」

 

「私も知りたいわ」

 

他の勇者達のように尚文とミーシャは世界に詳しく無い。しかし、見覚えはあった。町を見ていると、時々、犬の耳をしている人種や猫の耳を生やした者を見かける事があった。

 

「メルロマルク王国は人間至上主義ですからな。亜人や獣人には住みづらい場所でしてね」

 

「ふーん…」

 

城下町で亜人、獣人を見かけるが確かに尚文やミーシャが見た限りでは旅の行商か冒険者崩れ程度しか見かけなかった。差別されており、まともな職には就けないという事だろう。

 

「で、その亜人と獣人とは何なんだ?」

 

「亜人とは人間に似た外見であるが、人とは異なる部位を持つ人種の総称。獣人とは亜人の獣度合いが強いものの呼び名です。はい」

 

「なるほど、カテゴリーでは同じという訳か」

 

「リアルであんなの見るの初めてだわ」

 

「ええ、そして亜人種は魔物に近いと思われている故にこの国では生活が困難、故に奴隷として扱われているのです」

 

何処の世界にも闇がある。話を聞いていてミーシャと尚文はそう思わざるを得なかった。

 

「そしてですね。奴隷には」

 

パチンと奴隷商が指を鳴らす。すると奴隷商の腕に魔方陣が浮かび上がり、檻の中に居る狼男の胸に刻まれている魔方陣が光り輝く。

 

「ガアアァッ!!」

 

狼男は胸を押さえて苦しみだし悶絶して転げ回った。もう一度、奴隷商がパチンと鳴らすと狼男の胸に輝く魔方陣は輝きが弱まり消える。

 

「このように指示一つで罰を与えることが可能なのですよ」

 

「なるほど、これを使えば死ぬまで殺し合う事も…♡」

 

「可能でございます」

 

「中々便利な魔法のようだな」

 

仰向けに倒れる狼男を見て尚文とミーシャは呟く。

 

「俺達も使えるのか?」

 

「ええ、何も指を鳴らさなくても条件を色々と設定できますよ。ステータス魔法に組み込むことも可能です」

 

「ふむ…」

 

「まあ、便利」

 

尚文は黙り込み考えるような仕草をする。

 

「一応、奴隷に刻む紋様にお客様の生体情報を覚えさせる儀式が必要でございますがね」

 

「奴隷の飼い主同士の命令の混濁が無いために、か?」

 

「物分かりが良くて何よりです」

 

奴隷商は不気味に笑う。

 

「まあ、良いだろう。コイツは幾らだ?」

 

「尚文、私も出すわよ。私もコイツ欲しい」

 

「そうだな。出し合おう」

 

「何分、戦闘において有能な部類ですからね…」

 

尚文はミーシャに建前上では、そう言ったが金銭において自分達の噂は絶えない。その為、下手に吹っ掛けても買う気は無かった。

 

「金貨15枚でどうでしょう」

 

「相場が良く分からないが…相当オマケしているんだろうな?」

 

「ぼったくろうとしてるなら…♡」

 

金貨1枚は銀貨100枚相当に匹敵する。王がバラで渡したのには理由があった。金貨は単位の大きさゆえ、両替に困る特色を持っている。城下町で売っている装備品は基本的に銀貨で買ったほうが店の方も対処が楽だ。

 

「もちろんでございます」

 

ミーシャが鎌を構え、尚文が凝視しても奴隷商は笑顔で対応する。

 

「買えないのを分かっていて一番高いのを見せているな?」

 

「なーんだ。買えないのね…萎えちゃった」

 

「はい。アナタ方はいずれお得意様になる方々、目を養っていただかなければこちらも困ります。下手な奴隷商に粗悪品を売られかねません」

 

どのみち怪しい奴だと二人は疑う。

 

「コロシアムで戦っていた奴隷なのでしたがね。足と腕を悪くしてしまいまして、処分された者を拾い上げたのですよ」

 

「は?弱いじゃない」

 

「いえいえ、それでも強さは健在ですよ。しっかり、治療すれば尚更…」

 

「へぇ」

 

「ふむ…」

 

尚文はそれを聞き、Lvに見合わないと感じた。

 

「さて、一番の商品は見てもらいました。お客様はどのような奴隷がお好みで?」

 

「安い奴でまだ壊れていないのが良いな」

 

「となると戦闘向きや肉体労働向きではなくなりますが?噂では…」

 

「俺はやっていない!」

 

「うふふ♪夜はまだ終わってないぜ?うふふっ」

 

「……歯ァ食い縛れ。そぉい!」

 

「ふぎゃっ!?」

 

尚文はミーシャの腰に手を回すと持ち上げ、ジャーマンを決めた。

 

「痛いじゃない」

 

「ったく…」

 

ミーシャは頭にたんこぶが出来、若干涙目になりながら尚文を避難する。

 

「ふふふ、私としてはどちらでも良いのです、ではどのような奴隷がお好みです?」

 

「変に家庭的でも困る。性奴隷なんて持っての他だ」

 

「ふむ…噂とは異なる様子ですね。勇者様」

 

「…俺はやってない」

 

「等と、供述しふぎゃっ!?」

 

尚文にとって今、必要なのは自らの代わりに敵を倒すことが出来、なおかつ裏切らない奴隷だ。

 

「性別は?」

 

「出来れば男がいいが問わない」

 

「ふむ…」

 

奴隷商は頬を掻く。

 

「些か愛玩用にも劣りますがよろしいので?」

 

「見た目を気にしてどうする」

 

「Lvも低いですよ?」

 

「戦力が欲しいなら育てる」

 

「…面白い返答ですな。人を信じておりませんのに」

 

「奴隷は人じゃないんだろ?物を育てるなら盾と変わらない。裏切らないなら育てるさ。お前も手伝ってくれるか?」

 

「ええ、勿論♪」

 

「これはしてやられましたな」

 

尚文の事が面白かったのか奴隷商は何やら笑いを堪えている。

 

「ではこちらです」

 

そのまま、檻がずっと続く小屋の中を歩かされること数分。騒がしい区域を抜けると、次はうるさい声が聞こえてくる。尚文とミーシャが檻に視線を向けると小汚い子供や老人の亜人が檻で暗い顔をしている。

 

「ドーン♪ガシャーンっ♪」

 

「ひっ」

 

「ーーやめろ」

 

「はぁーい」

 

案内中にミーシャが口で擬音を出しながら、檻を蹴ると中に居た子供や老人の亜人はびくりと震え蹲る。それを見て尚文は流石に不快だったのかミーシャを制止した。

 

そしてしばらく歩くと奴隷商は足を止める。

 

「ここが勇者様に提供できる最低ラインの奴隷ですな」

 

奴隷商が指差したのは三つの檻だった。一つ目は片腕が変な方向に曲がったウサギのような耳を生やした男。見た通りの年齢だと20歳前後。

 

二つ目はかなり痩せ細り、怯えた目で震えながら咳をする、犬にしては丸みを帯びた耳を生やし、妙に太い尻尾を生やした10歳くらいの少女。

 

三つ目は妙に殺気を放つ、目の逝ったリザードマン。

 

「左から遺伝病のラビット種、パニックと病を患ったラクーン種、雑種のリザードマンです」

 

「どれも問題を抱えてる奴ばかりか…」

 

「ご指名のボーダーを満たせる範囲だとここが限界ですな。これより低くなると、正直…」

 

奴隷商が奥の方へと目を向けると尚文とミーシャも視線を向ける。遠目からでも分かる死の匂い。葬式等で僅かに匂うそれよりも、濃度が濃い。あの先に充満する匂いに尚文は口元を抑える。腐敗臭もしてきていた、あの場所を直視してしまえば心に傷を負う事になる。本能が尚文に直視するなと警告していた。ミーシャは奥を見ては口角を吊り上げ笑みを浮かべていた。

 

「ちなみに値段は?」

 

「左から銀貨25枚、30枚、40枚となっております」

 

「…Lvは?」

 

「5、1、8ですね」

 

尚文は考える。即戦力を見れば混血のリザードマン、値段を見れば遺伝病か。ラビット種と呼ばれた男は片腕が使えなくても他の部位は問題がなさそうだと。

 

「そういえば、ここの奴隷はみんな静かだな」

 

「騒いだら罰を与えます故」

 

「なるほど」

 

「ちょっとー、何か喋りなさいよ」

 

聞いてないのか、げしげしと檻を蹴りながらミーシャはリザードマン達に喋るように迫る。

 

「やめろ」

 

「分かったわよ」

 

「この真ん中の奴はなんで安いんだ?」

 

ガリガリに痩せており、怯えている少女を見て尚文は尋ねた。ラクーン種、直訳はアライグマかタヌキ。

 

「ラクーン種という見た目が些か悪い種族ゆえ、これがフォックス種なら問題ありでも高値で取引されるのですが…

 

「ほう…」

 

「顔も基準以下でしかも夜間にパニックを起こします故、手を焼いてるのです」

 

「在庫処分の中でまともなのがこれか?」

 

「いやはや、痛いところを突きますな」

 

他の奴隷に比べて労働向きでは無い。Lvも一番低いと来れば尚文はやはり悩んでしまう。

 

「……♪」

 

「……」

 

ミーシャと尚文の二人とラクーン種の少女は目が合う。

 

(そうだ。コイツは女、あのクソ女と同じ性別なんだよな。あの女を奴隷にしたと思うなら良いかも知れないなぁ…。死んだら死んだで憂さも少しは晴れるだろうし…)

 

尚文は怯えるその目を見て、なんとも支配欲を刺激され尚文自身が負の感情に思考が支配されていく。

 

「なら、真ん中の奴隷を買うとしよう」

 

「ッ…♡尚文、今の貴方…凄く良いわよ…♡殺したい、今すぐ殺したいわ♡ねぇ、殺してもいいかしら?♡」

 

「駄目だ」

 

「チッ…」

 

「なんとも邪悪な笑みに私も大満足でございますよ」

 

奴隷商は檻の鍵を取り出してラクーン種の少女を檻から出して首輪に繋ぐ。

 

「ヒィ!?」

 

怯える少女を見て、尚文は満たされた気持ちになっていくのを感じていた。

 

マインがこのような顔をしている光景を想像すると何だか気持ちが良くなってくるのを尚文は感じる。

 

それから鎖で繋がれた少女を引きずって、元来た道を戻り、少し開けたサーカステント内の場所で奴隷商は人を呼び、インクの入った壺を持ってこさせた。

 

そして小皿にインクを移したと思うと尚文に向けて差し出した。

 

「さあ勇者様、少量の血をお分けください。そうすれば奴隷登録は終了し、この奴隷は勇者様の物です」

 

「なるほどね。主はどっちにする?」

 

「貴方で良いわ。尚文」

 

それを聞くと尚文は作業用のナイフを自らの指に軽く突き立てる。誰かに刃物を突きつけられると盾は反応するが自分の攻撃には意味が無い。そして戦闘での使用では無い場合、盾は反応しない。

 

血が滲むのを待ち、小皿にあるインクに数滴落とす。

 

奴隷商はインクを筆で吸い取り、少女が羽織っていた布を部下に引き剥がさせて、胸に刻まれている奴隷の文様に塗りたくる。

 

「っ、く…う゛ッ…あ゛あ゛ああああぁぁ…ッ…!!」

 

奴隷の文様は光り輝き、尚文のステータス魔法にアイコンが点灯する。

 

奴隷を獲得しました。

 

使役による条件指定を開示します。

 

色々と条件が載っている。

 

尚文は目を通し、寝込みに襲い掛かるや、主の命令を拒否するなどの違反をした場合、激痛で苦しむように設定する。ついでに同行者設定というアイコンが奴隷項目以外の所で目に入ったのでチェックを入れた。

 

「これでこの奴隷は勇者様の物です。では料金を」

 

「ああ」

 

尚文は奴隷商に銀貨31枚を渡す。

 

「1枚多いですよ」

 

「この手続きに対する手数料だ。搾り取るつもりだったんだろ?」

 

「なにそれせこい」

 

「…よくお分かりで」

 

先に払いましたという顔をすれば文句は言えまいと尚文は考えたのだ。

 

「まあ、良いでしょう。こちらも不良在庫の処分が出来ましたので」

 

「ちなみに、あの手続きはどれくらいなんだ?」

 

「ふふ、込みでの料金ですよ」

 

「どうだかな」

 

奴隷商が笑うので尚文は笑い返した。

 

「本当に食えないお方だ。ぞくぞくしてきましたよ」

 

「ではまたのご来店をお楽しみにしています」

 

「ああ」

 

尚文はよろよろと歩く奴隷に来るように命令してサーカステントを後にする。暗い面持ちで奴隷は尚文とミーシャの後を着いて来る。

 

「うふふ♪下衆の仲間入りおめでとう…♪」

 

「そりゃどうも。お前に言われる筋合いは無いけどな」

 

ミーシャが面白そうに笑いながら言うと尚文は相手にしても仕方ないといった感じに適当にあしらった。

 

「さて、お前の名前を聞いておこうか」

 

「……コホ…」

 

「なるほど、コホちゃんっていうのね」

 

「…!…」

 

顔を逸らして返答を拒否する。すると、ミーシャに言われた言葉を否定しようと首を横に振る。だが、その行動は不味かった。尚文の命令を拒否したので奴隷としての効果が発動する。

 

「う、ぐ…ッ…」

 

「ラ、ラフタリア…げほっ…コホ…!」

 

「そうか、ラフタリアか。行くぞ」

 

「えぐーい♡」

 

名前を言ったので楽になったラフタリアは呼吸を整える。そして、尚文はラフタリアの手を掴んで路地裏を進んだ。

 

「……」

 

ラフタリアは手を繋ぐ尚文を見上げながら歩いていく。




突然ですけど、盾の勇者の成り上がりで一本書きたい話の案が次々浮かんできて困ってます。

例えば…

その一、『砲の勇者』尚文のクラスメイトで幼馴染み(女)
その二、『刀の勇者』ダァーイとか有給ラッシュしちゃう尚文の双子の姉
その三、女王の座が欲しく手段を選ばないが世界や国の命運の為に前線で戦う鉈と太刀使いの非勇者、オルトクレイ家の長女。

とこんな感じのを書きたかったりします。この中なら、その三ですね。ただ、その三だけはオルトクレイ側の話なので原作をガッツリ読み込まないとキツそうなのが…。

でも、私は諦めませんぞ

とりあえず、いつか書きます。

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