鎌の勇者(仮)は殺人鬼【凍結】   作:聖奈

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※注意: 今回、ミーシャが子供を殺すシーンがあります。苦手な方はご注意。


十三話 罰という名の虐殺

日が上がった頃、もうラフタリアは起きており尚文が起きるのをミーシャと共に待っていた。数分後、尚文が起きてからはすぐに出発となる。

 

「城下町に行くの?こほっ…」

 

「ああ」

 

「楽しみねぇ」

 

「…無理させて無いだろうな?」

 

「させてないわよ。ちゃんと、休憩もさせてたし」

 

ラフタリアの咳がまた出てるのでミーシャに怪訝な表情を向けて言いながら、ラフタリアに無言で常備薬を渡す。するとラフタリアは渋い顔をしながら薬を飲む。

 

しばらく、歩いて薬屋に着いたので買取を申請する。

 

「ふむ…品質は悪くありませんね。勇者様は薬学に精通しているので?」

 

尚文とミーシャは店主にとって馴染みの客になっており、尚文は作った薬を渡して見てもらう。

 

「いや、昨日初めて作った。直接薬草を売るのとどっちが儲かる?」

 

「難しい塩梅ですな。小回りが効く薬草の方が使いやすいですが、薬も薬で助かる場合も多い」

 

ラフタリアを見て顔をしかめる薬屋だが、下手に足元を見たり嘘を吐くと見抜かれ、ミーシャと尚文に何をされるか分かった物ではないので素直に話す。

 

「最近は予言の影響で薬の売れ行きが良いので、今のところですが薬の買取額の方が高いですよ」

 

「ふむ…」

 

失敗した時のリスクと買取額、道具を揃えるとなるとどれだけの金額がするか想像がつかない。

 

「なあ、もう使わない道具は無いか?」

 

「…二週間、薬草を売りに来ている辺りで、言うと思いましたよ」

 

薬屋は笑っているのか分からない顔で尚文の返答を理解していた。今回は授業料という条件で薬草はタダ、薬は買取、中古の機材を譲ってもらった。乳鉢の他にも色々と道具を貰う。薬研、計量計、フラスコ、蒸留器などだ。

 

「あくまで倉庫に入っていた中古品です。いつ壊れるか分かりませんよ」

 

「初心者には良い道具だろ」

 

尚文はこれで調合に挑戦できる事を喜ばしく思いながら、薬屋から出るとバルーン風船の処分をどうするか考えていた。

 

買取商人にバルーン風船を買い取って貰う途中、横を通り過ぎる子供が目に入る。割れたバルーン風船を縫い合わせて風船がボールのような形で売られている。子供がバルーンをボールのように跳ねさせながら遊んでいる。

 

それをラフタリアは羨ましそうに見ていた。

 

「なあ、あれって」

 

「はい?」

 

買取商人に子供が持っているボールを指差して尋ねた。

 

「ええ、バルーン風船の利用先ですが」

 

「そうか。買取額から差し引いて一個分作ってくれないか?」

 

「まあ、よろしいですが」

 

買取商人は売却した物を受け取り売買金額を尚文に渡し、バルーン風船で作ったボールを後から渡した。

 

「ほら」

 

受け取ったボールを尚文はラフタリアに投げ渡した。ラフタリアはボールと尚文の顔を何度も交互に見て、目を丸くさせる。

 

「なんだ?いらないのか?」

 

「う、ううん」

 

ラフタリアは首を何度も振って嬉しそうに笑った。

 

(初めて笑ったな)

 

「甘いわねぇ…♪」

 

「うるさいぞ」

 

ミーシャが尚文を下から覗き込むようにしながら面白そうにからかうが、尚文は相手にしなかった。

 

「今日の分の仕事が終わったら、遊んで良いからな」

 

「うん!」

 

「うふふ、嬉しそうね。今度遊んであげるわ」

 

「ありがとう!」

 

(何か元気になって来たようだな。良い傾向だ。ラフタリアが元気になって得をするのは俺だからな。てか、なんかあいつにも懐いてないか?俺が寝ている間に何があった…)

 

それから尚文達は昨日の森まで歩いていき、採取と魔物退治を繰り返した。尚文の防御力で行ける範囲を拡張する。森を進んだ先には村があるが、マインが勧めた道は尚文にとって腹が立つ為却下された。

 

幸先は良く、色々な物が見つかり、余裕があったので山の近くまで範囲を伸ばしていく。

 

そんな尚文達の前に見慣れない卵のような生き物が現れた。生態的にバルーンの親戚のようだと尚文とミーシャは感じていた。

 

「初めて戦う魔物だ。俺とあいつで先行して様子を見る。大丈夫そうなら突くんだぞ」

 

「教えた事、忘れずにね」

 

「うん!」

 

尚文とミーシャは魔物に向かって走り、魔物も尚文とミーシャに気付いて牙を向く。

 

ミーシャはデスサイズを振り卵のような魔物を一気に三体割った。

 

「臭ッ!?」

 

ミーシャは中から飛び散った黄身の匂いに鼻を抑え悶えた。その頃、尚文は攻撃を受けたが痛くも痒くも無く羽交い締めにしてラフタリアが刺しやすいように構える。

 

「たあッ!」

 

昨日よりも勢いのある突きが魔物を貫いた。さらに、ラフタリアの横からもう一体飛び出して飛び掛かると後ろに飛んでかわし、横薙ぎにナイフを振り魔物を割った。

 

『エグッグ』

 

それが先程の敵の名だった。エグッグはミーシャの時と同じように砕け散り、中から黄身を飛び散らせる。

 

「っ!気持ち悪ッ!」

 

尚文は殻が売れるのかと思ったが詳細は分からない。匂いは腐っているので食べるのは無理だろう。

 

殻を盾と鎌を殻に吸わせる。

 

その直後、数匹現れたので手馴れたようにラフタリアが刺して倒していった。

 

エッグシールドの条件が解放された。装備ボーナスは調理1だった。

 

その後、色が違う魔物が次々と現れたので尚文達は狩り続けた。

 

ブルーエッグシールドとスカイエッグシールドが解放された。装備ボーナスは目利き1と初級料理レシピだ。

 

一度魔物を狩るのを止めて、見慣れぬ薬草とその他諸々を採取した。山に入りきるには少し日が暮れそうでラフタリアの装備にも不安が残っていたので引き返す事にした。

 

本日の収穫は……

 

尚文、LV.8

ラフタリア、LV.7

ミーシャ、LV.35

 

(くそ、何か追いつかれ始めた。倒してるのはラフタリアとあいつだから仕方がないが…)

 

「お腹空いた…」

 

「私も」

 

ラフタリアが困った顔で、ミーシャがそれをわざとらしく真似した顔で尚文に言う。

 

「そうだな、帰ったら飯にするか」

 

「え?ちょっと、私は無視?」

 

探索を切り上げて、尚文達は城下町へと引き返した。城下町に入ると調合で使えそうも無いエグッグの殻類を買い取って貰う。昼間に売った分と合わせると銀貨9枚となった。

 

(薬草と薬も良い感じに売れたし、今日は何を食うかな)

 

(尚文のヤツ、私の事無視なんかして…)

 

二人がそんな事を考えているとラフタリアが屋台を見て涎を垂らしていた。尚文に甘やかそうという気持ちはなかったが値段相応に働いている為、買う事にした。

 

「今日はそれにするか」

 

「え?良いの?」

 

「食べたいんだろ?」

 

「私も買うわ」

 

尚文の問いにラフタリアは頷く。

 

(素直になってきたな)

 

「げほっ…!」

 

ラフタリアは咳をしてしまった為、尚文から無言で常備薬を渡され飲んだ。その間に尚文は屋台で売っているマッシュポテトを固めて串に通したような食べ物を注文した。

 

「ほら、良く頑張ったな」

 

尚文が串を渡すと薬を飲み終えたラフタリアは嬉しそうに受け取り、頬張る。

 

「ありがとう!」

 

「お、おう…」

 

 

 

「私にもこれ頂戴」

 

「あいよ」

 

尚文達はもぐもぐと食べ歩きをしながら、安い宿を探して入った。

 

「今日はここに泊まるの?」

 

「ああ」

 

尚文達は宿の中に入る。店主は尚文とミーシャを見るなり、露骨に顔を歪ませるが、即座に営業スマイルで対応する。

 

「ちょっと連れが夜泣きするかもしれないが泊めてくれないか?」

 

半ば脅しと言わんばかりにマントの中に隠したバルーンを尚文はチラつかせ、ミーシャは鎌を突き付ける。

 

「そ、それは…」

 

「頼めるよな?出来る限り静かにさせる」

 

「は、はい」

 

この世界に来て、尚文はミーシャの影響もあるが脅迫は商売に必要な事だと学んだ。国民達は尚文を馬鹿にする対象にしているが、被害が出ても王に報告しきれないのだ(※ミーシャの殺人は除く)

 

尚文とミーシャは金を払い、一部屋借りて尚文達は荷物を降ろし、ラフタリアはボールを持って目を輝かせている。

 

「日が落ちきる前に帰って来いよ。後、なるべく宿の近くで遊べ」

 

「はーい!」

 

「私は少し散歩してくるわ」

 

「お前も日が落ちきる前に帰って来いよ」

 

「ええ」

 

(まったく、年相応の子供なんだな。亜人は軽蔑の対象らしいが、冒険者扱いなら其処まで問題も起こさないだろう)

 

窓から下でボール遊びをしているラフタリアを見つつ、尚文は調合の研究をする。

 

 

 

ーーー

ーー

 

(楽しそうね。本当に。一緒に遊びたいわ)

 

ミーシャはラフタリアがボール遊びをしているラフタリアを宿の屋根の上から見ていた。ミーシャが眺めから二十分が経つと、ラフタリアが子供に絡まれ始めた。

 

(さあ、どうするのかしら?)

 

ミーシャはラフタリアがどう対応するのか気になり静観する事にした。

 

ーーー

ーー

 

その頃、尚文も子供の大きな声を聞き取り外に目を向ける。

 

「亜人がなんで俺達の縄張りで遊んでんだ!」

 

子供達はラフタリアに向かって喧嘩腰で話しかけている。

 

(まったく、何処の世の中にもあんなガキは居るもんだな)

 

「コイツ、良い物持ってるぜ。よこせよ」

 

「え、あ、その……」

 

亜人の立場は低いというのをラフタリアは知っている。その為、変に逆らう気配は起きなかった。

 

「はぁ…」

 

尚文は部屋から出て、階段から降りた。

 

「寄越せって言ってるだろ!」

 

「い、いや…!」

 

(あ、あれ…?)

 

弱々しく拒否するラフタリアだが、子供達は暴力によって奪うつもりらしく集団で囲み、一人が奪おうと手を伸ばす。しかし、ラフタリアは違和感を覚えた。

 

「は?寄越せってんだよ!」

 

(遅い…。ミーシャさんと比べれば凄く遅い…)

 

無意識のうちにラフタリアは身体を横に逸らして手を避けていたのだ。しかし、ラフタリアが感じた違和感はそれではなかった。遅い、ただ遅く感じた。子供達の手の動きがとても遅かった。二方向、三方向と子供達は数人がかりでボールを奪おうと複数の方向から奪おうとするがラフタリアは素早く動き、最小限の動きで子供達の手を避ける。

 

「な、なんだ…こいつ…」

 

「くそっ、絶対奪うぞ…!」

 

子供達は数秒で何度も手をかわされて息を乱していた。

 

「ちょっと待て。クソガキ共」

 

「何だよ、おっさん」

 

(おっさんだと?まあいい、これでも二十歳何だが、この世界の成人年齢は知らない。おっさんかもしれんしな)

 

尚文はおっさんと言われた事に少し顔をしかめるが気にしても仕方ない事なのでスルーする。

 

「他人の物を寄越せとはどういう了見だ?」

 

「は?そのボールはアンタのじゃないだろ?」

 

「俺のだ。俺がこの子に貸し与えている。というか、俺のでないとしても人の物を取る事自体ダメだろ。ママから『泥棒はダメよ』って教わったろ?」

 

「何言ってんだおっさん」

 

子供達は頭に血が上って理性が働いていなかった。尚文は激怒(※言う程キレてません)した。必ず、かの人の物を奪おうとする邪智暴虐のクソガキ共に制裁を加えなければならぬと決意した。

 

「そうかそうか、じゃあとっておきのボールをあげよう。おじさんのきんのた…」

 

「逃げてッ…!」

 

尚文の態度にラフタリアがハッと相手の子供に逃げるように声を絞り出す。

 

しかし、子供達は尚文を舐めた目で見ていた。内心ほくそ笑みつつ腕に齧り付いているバルーンを取り出した。

 

「い、いでえっ!いでええぇッ…!あ゛あああぁぁ…ッ…!!」

 

子供達にバルーンを噛み付かせて即座に尚文は懐に収めた。

 

「さて、今のボールを本当に、君達にやろうか?」

 

「いてぇえええッ…!!」

 

「冗談じゃねえよっ!バーカ!!」

 

「死ねっ!アホッ!」

 

「知るか、クソガキッ!!」

 

逃げていく子供達に尚文は罵倒を吐いて宿に戻った。

 

「あ、あの…」

 

ラフタリアは尚文のマントを掴む。

 

「おい、そこにはバルーンが居るぞ」

 

ビクッと手を離して怯えるラフタリア。しかし、おずおずと顔を上げて笑う。

 

「ありがとう」

 

(何を言ってんだか。自分で避けてただろ)

 

「あ…」

 

尚文はくしゃくしゃとラフタリアの頭を撫でてから宿に戻った。

 

 

ーーー

ーー

 

 

 

「くそっ、あのおっさんふざけやがって!」

 

「亜人も、許さねえ…父ちゃんに言いつけてやる!」

 

路地裏に少年達は逃げ込んでおり、自分達が無理矢理ラフタリアからボールを奪おうとした事を棚に上げて恨み言を吐いていた。

 

「だな!亜人のクセに…あのおっさんも兵士に…。は?あ゛ああぁ…ッ…!がッ、ヒッ…ぁ…ッ…!」

 

兵隊に言いつけようと企んでいた少年の一人の首に鎖が巻き付き、鎖は路地裏の家の煙突にも巻き付いており、少年のは宙吊りにされる。少年の首の鎖は絞まっていき圧迫していく。

 

「な、なんだ!?」

 

「あ、ぁ…」

 

「あ゛あ、ッ…がぁ…ッ…!!ぉ……」

 

二人の残った少年達は慌て始め、降ろそうとするがどうすれば良いか分からず慌ててると少年の首からゴキッと音が鳴り少年の腕はぶらんと垂れ下がり、物言わぬ死体となった。

 

「んんッ…♡あぁ…♡最高ぉ…♡そんな苦しそうな顔するのねぇ♡」

 

少年に巻き付いていた鎖はほどけて、死体は落下した。すると死んだ少年の頬を恍惚とした表情で舐めるミーシャが少年達の視界に映る。

 

「な、なんだよ…お前…!」

 

「うわあああああああああぁぁッ!!」

 

二人の少年の内、一人は顔を真っ青にして逃げ出し一人は足がすくんで動くことが出来なかった。

 

「うふふ♡逃がさない…♡そーれっ♡」

 

ミーシャは鎌をデスサイズに変形させると鎌を投げた。高速回転する鎌はあっさりと、逃げ出した少年に追い付いた。

 

「あ゛ッ…!!」

 

少年の胴体は、高速回転する鎌に両断され上半身がその場に落下し、辺りに血が飛び散る。

 

「ん、ふぅ…ッ…♡はぁ、うぅ…んッ…♡」

 

子供の上半身と下半身が別れた死体を見てミーシャは興奮しミーシャの足を伝って液が地面に落ち、身体を掻き抱き、背筋を駆け巡る快楽に悶える。

 

「え、何だ…これ…!?いやだっ、死にたくない…うわあああああぁ…っ…!」

 

ミーシャはスキル、『ラウンドトリップ』を使用しており、高速回転する鎌に最後の一人の少年の身体は引き寄せられる。少年は必死にもがきながら走って逃げようとする。

 

「嫌だっ、嫌だッ…!あ゛あ゛あああああああぁぁ…ッ…!」

 

少年の必死の抵抗も虚しく、吸い寄せる力は強く、彼の身体は完全に引き寄せられ切り刻まれ血の雨を路地裏の壁に降らしシミを作った。

 

「んん、ふぅッ…うぅ…ッ…ふぅーっ…ふぅーっ…♡」

 

ミーシャは疼く腹部の奥を押さえ、絶頂を感じながら興奮を少しずつ沈めていく。

 

「ふぅ…気持ち良かったわ♡さて…」

 

ミーシャは彼等の死体から首だけを切り落とし、周囲の血や他の身体は鎌に吸収した。生首の髪を掴んで街まで運ぶ。もう、辺りは暗くなっており誰も居なかった。

 

「こう、かしらね…♪」

 

ミーシャは懐から紙を取り出すと、この世界の言葉で紙に鎌に付着した血で文字を描いた。

 

「そろそろ帰ろうかしら。ああ、気持ち良かった♡」

 

生首を寝かして地面の上に置く。そして、持っていた短剣を紙に突き刺しては、鎌に付着した血を吸収してその場を後にした。

 

 

生首の側に、短剣で地面に縫い付けられた紙にはこの世界の言語でこう書かれていたーー

 

 

 

「   罰   」と。

 

 




やっぱ、盾の勇者の二次でマルティの早期退場は無理ですよね(笑)彼女居ないとストーリー進まないし。

脚本: マルティ=メルロマルク説

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