イカれたオタクで世界最強   作:ブライト・バーン

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『断罪する刺突剣』Ⅵ

「これで大分、集まったかしら」

 

 ハジメと光輝が風宮由佳の日記の記録集めをしている頃、ユエと雫もまた同じ行動を取っていた。

 ゲーム開始から40分が経過。

 日記はほぼ完成。

 途中、度々シルエットが攻撃を仕掛けてきたがそれはユエが全て木刀で撃退した。

 

「雫、どう? 解けた?」

 

 日記の記録を最初から最後までさくっと読んでみるが解けない。

 日記は中学一年生の4月頃から始まっており、その頃の風宮由佳は元気そうだ。だが記録が進む度に段々イジメが始まり、エスカレートし、精神を追い詰められ、12月の半ばで発狂し、それ以降の記録はない。

 

「風宮さんがこんなことを考えていたなんて、私も知らなかった。ユエさんはどう思う?」

「プレイヤー勝利条件の2『真実を解明し悔いよ』。この日記が真実なら、この中に、雫か……」

「どうしたのかしら? 急に黙って」

「名前、呼びたくない。あの人嫌い」

「光輝がごめんなさい。悪いんだけど我慢してくれる?」

「分かった。大丈夫。苗字に罪はない。雫か、天之河が”悔いる”べき、何かの罪が隠されてるはず」

 

 雫はそう聞いてもう一度日記を読み返す。

 

「イジメの原因が書いてない。イジメに加担した人は、クラスの内外を含め女子生徒。そんな人数に飛び火してて、私が知らないイジメなんて。何か原因が無かったらここまで広まらないはずよ」

「思い当たることはない?」

「風宮さんは普段、一人でいることが多かったわね。クラスメイトとの関係性も、単に一緒の教室にいるってだけで、他の人と話してることを見たことがあまり無かった。これだけ広まる原因なら、私が知ってるトラブルがあるはずだけど」

 

 雫は考えるが思い至らない。

 風宮由佳との関わり合いが薄過ぎて分からないのだ。真面目に関わっていれば違ったのかもしれないが、雫も諸事情により中学一年生の時は余裕がなかった。

 風宮由佳が学校に来なくなっても、あまり不審には思わず。

 

「ぼっちだったの? この子」

「ぼっちって、あまり良い言葉ではないわね。でも、私の記憶の中にあるのはそうよ。人とトラブルを起こす気配なんて全くなかった」

「解けた」

「え、解けたのッ?!」

 

 ユエはゲームの謎を解いた後、黒い羊皮紙を拾い上げ読む。

 開示条件は未達成のままだ。

 

「私じゃ条件は満たせない。ハジメとお父様も解いてるはずだけど、駄目」

「ユエさん、解けたのなら教えてくれないかしら? 私、まだ解けてないんだけど」

「それはハジメと合流してから」

「そういえば南雲くんとすぐ合流しないのは何で?」

「日記集め。ハジメが集められないかもしれないから」

「え、解けてるんでしょ?」

「たぶん、天之河と一緒。手間取ってると思う」

「そう」

 

 雫は何となく納得した。

 

「所でこの魔王『断罪する刺突剣』の正体は分かる? この時点でもまだノーヒントなの。ヒントだけでも欲しい所ね」

「分からない」

「分からない?」

「日記に一切登場してないから。ハジメなら分かってるはず。ハジメを探す」

「はいはい、南雲くんに聞くことにするわ」

 

 と、その時。

 

『ユエ、雫さん、聞こえるかな』

「南雲くん?」

「ハジメ?」

 

 ハジメの声が二人に聞こえてきた。

 

『”創作再現”で話しかけてる。ユエ、ゲームは解けた?』

「ん、解けた」

『こっちも準備は終わった。場所を指定するから、そこまで来てくれ』

「ん」

『雫さん、校舎全体の地理は雫さんの方が詳しいからユエの道案内よろしくね』

「分かったわ。場所は?」

『1-Dのプレートが下がった扉の中にある教室』

 

 廊下にて提示されてる教室のプレートは1-Dではなくそれぞれ別。

 ハジメがこう指定したということは、雫が一年生の時に使っていた教室そのものということだ。

 

「近くて助かったわ。行くわよ」

「ん」

 

 

 

 

 

 同時刻。

 ハジメと光輝もまた日記を大体完成させていた。

 内容はユエと雫が集めたモノとは多少の差異があるが、どうせ意味のない記述ばかりだ。

 

「そんな、嘘だ。こんなことが、ずっと行われてたなんて」

「天之河くん、日記の中身は全部読めた?」

「っ、ああ」

「そろそろ君にもゲームが解けるはずだよ」

 

 ハジメの物言いに光輝は気が付いた。ハジメは最初からゲームを解いていたのだ、と。

 

「全部分かっていて、黙っていたのかッ?!」

「そ。実はこのゲーム、考察オタクには瞬殺出来るんだよね。道場でこれを一目見ただけで分かったよ。日記と記録の件は君から話を聞いてようやくだったけど、ゲーム展開は僕の思った通りに進んだ」

「っ」

「っていうか鈍いなぁ。僕は最初から第二条件クリアは無理って言ってたでしょ? 解けてなかったらあんな発言できる訳ない」

「南雲、お前ッ!」

 

 ハジメに掴みかかる光輝。

 ハジメは抵抗せず大人しく胸倉を掴みあげられた。

 

「俺を誘導していたのかッ?! 何のために」

「一つずつ話すよ。雫さんとユエさんも交えてね」

 

 その時、教室の扉が開き、ユエと雫が入ってくる。

 

「雫、ユエ、無事だったのか?」

「ハジメから手を離して。天之河」

「ユエ、これ必要経費だから」

 

 光輝は渋々、ハジメから手を離す。

 

「さて、じゃあまずはゲーム開催前の僕の動きから話そうか。魔王ゲーム開催の気配を感じて、僕はユエと一緒に道場に引き返した。降ってきた”契約書類”を見てゲームを瞬殺した後、僕は雫さんの下にユエを送り込んで、天之河くんの方に移動した」

「つまり、私がユエさんと一緒にいたのは偶然じゃないって訳ね?」

「うん。ある程度の距離にいれば分断されないって考えて。これは天之河くん、雫さん、それとついでにユエに、ゲームを解かせるため。僕も詳しい事情までは見えなかったし」

 

 ハジメは最初から、ハジメと光輝、ユエと雫のペアでゲームを解いていくつもりだった。

 

「他の門下生は父さんと虎一さんが何とかするだろうし、鳶三さんは心配はいらない。このゲームで一番不安だったのは、天之河くんと雫さんがゲームを解けないまま魔王との直接対決をすること。僕が魔王と戦ってる間に大事故起こされたらたまらないからね」

 

 光輝と雫に、ゲームを解かせるために。

 四人で集まってゲームを解くこの時を作り出すために、ハジメはややこしい真似をした。

 

「で、次は契約書類の読み方。ゲームルールの確認だね。天之河くん、分かる所まででいいからこのゲームのルールを説明してくれる?」

「っ、分かった」

 

 指名された光輝は渋々従う。ハジメが謎解きを放棄すればユエも放棄、雫も微妙に解けておらず、第二条件の達成が不可能なことを分かっての判断だろう。

 

「こっちが勝つには、魔王を倒すか”真実を解明し悔いる”か。魔王はこっちの皆殺しか、条件不明で勝利。魔王は一時間動けないし、ここの校舎の中で戦えない、それと、何かの順番を守ってこっちを殺す必要がある。こっちは戦闘不能になると魔王と戦えなくなって、最初はルールの一部が読めない。こんな所でいいか? 南雲から聞いたまんまだけど」

「分かってればいい。その通りだ」

「ユエさんが話したんだけど、ルール自体はこっちに大分有利よね? 校舎の中にいたらプレイヤー側は勝てもしないけど負けもしない。謎解きをする時間もわざわざルールで用意されてる」

「そうだね。ルール上はプレイヤー側が有利だ」

 

 光輝と雫がどれだけルールを把握しているか確認したハジメは、謎解きに移る。

 

「さて、謎解きだけど。香織さんが開催したゲームと明確に違う点が一つあるよね。雫さんは分かる?」

「色々と違うと思うけど、一つ? それなら、参加条件が指定されてることかしら」

「わあ一発当たりだすごーい、パチパチ。後でアメか何かあげよう」

「南雲くん、ふざけてるようだと殴るわよ」

「ごめんね。でもこれに気が付けるかどうかが重要なポイントだ」

 

 伏せられてるから重要、という訳ではない。

 

「開催すれば強制参加の魔王ゲームにおいて、プレイヤーの参加条件を指定するってのは異色だ。これは特定の参加条件を満たしたプレイヤーがいないと、成立しないゲームであることを意味する」

「どういうことだ?」

「天之河くん、サッカーはやったことある?」

「そりゃあるよ。それが?」

「チームAは11人、チームBは5人。チームAとBでサッカー出来る? ちなみにチーム間の人数の変更はなしで」

「出来ない。チームBの人数が足りない」

「そ、両方のチームの人数が同じじゃないと始められないゲームって訳。これも同じ。このルールでゲームを開催するためには、条件を満たしたプレイヤーが必要なんだ」

 

 箱庭のゲームであるため難易度調整ではない。

 箱庭のゲームでは「不死を殺せ」「空を飛べ」といった、プレイヤー次第ではクリア不可能な難易度も許される。

 許されないのは「エリア内にある特定の銅像を見つけろ」と言っておきながらエリア内にその銅像が無い場合など、プレイヤーに落ち度がない場合に限られる。

 

「さっき雫さんは謎解きをする時間もルールで用意されてる、って言ったよね?」

「ええ」

「この二つを合わせて考えると、あるプレイヤーに校舎内をゆっくり探索して謎を解かせる、っていうゲームコンセプトがある事になる。魔王の名前に使われてる”断罪”と、真実を解明し悔いよという第二条件も合わせれば、ゲームコンセプトは”あるプレイヤーが知らない罪の懺悔”って所かな。謎解きは、プレイヤーの知らない罪を知ること」

「知らない、罪って。由佳の一件が、俺達の罪だっていうのかッ?!」

「そんな」

「待った待った。風宮由佳さんの一件についてはまた後で。今は契約書類の話をしてるから」

 

 ハジメは脱線しかけた話を元に戻す。

 

「それと、”断罪”と”定められた順番以外でプレイヤーを殺害できない”ことを考えれば、それに対する魔王側の念入りな復讐ってコンセプトもある。”罪人を裁く試練”と”復讐譚”の複合ゲームって訳さ」

「復讐……」

 

 計画にそって相手を殺害するゲーム。

 これをルール表現にすると”定められた順番以外で殺害できない”になる訳だ。

 

「ちなみに僕は瞬殺したって言ったけど、その理由はゲームタイトルが一つ。コンセプトが見抜ければタイトルが意味するものも分かるはずだよ」

 

 ”崩落した箱入りの宝物”。

 

「おかしな日本語だよね。崩落が箱と宝物のどちらにかかっていても意味不明だ。普通は使わない。これは言葉遊びなんだ」

「言葉遊び?」

「何かの言い換えってことさ。”箱入り”は箱に入ってること以外に、箱に入れるようにして大切にすることも示す」

「”崩落した大切な宝物”ってこと? え、でもこれでもおかしいわよ」

「それは大切な、と宝物の意味が重複してるからさ。宝物も個人にとって大切なモノを意味する。宝物は人それぞれだけど、崩落、つまり崩れ落ちるような宝物っていうのは、施設か人の心かのどちらかだ。とはいえ施設崩落の復讐対象は、工事会社か災害、その直接の原因となった存在に限られる。校舎の探索なんてさせるかな」

「ってことは、人の心。風宮由佳さんのこと、なのね」

「そういうこと。魔王にとっての大切な誰かが、精神崩壊したこと。それがタイトルなのさ。僕がこう判断した理由は他にもあるけど、こっちはオタクじゃないと分からないから後回しで」

 

 ゲームのルール、大方の謎は解かれた。

 これは魔王が復讐するゲーム、そして罪人を裁くためのゲーム。

 その復讐の理由は、風宮由佳という少女が崩壊したこと。

 

「じゃあいよいよ本題。君たちが知らない、風宮由佳という少女にまつわる”罪”について。このゲーム最大の謎解きだ」




 謎解き回その1。

~設定解説~


~登場人物~

『南雲ハジメ』
 謎解き誘導係。
 ゲーム開催前から謎解きのために全てを仕組んでいた。


『ユエ』
 ついでで謎解きさせられた人。ハジメの相棒なので必要なくても解く。
 魔王の正体以外は解けた。
 光輝にだけは親愛の情が一切ない蔑むような苗字の呼び捨てをするように。


『天之河光輝』
 渋々ハジメに従って謎解きする人。足手纏いを通り越して地雷。


『八重樫雫』
 積極的に謎解きする人。魔王ゲームの謎解きに関しては光輝より上。



~創作再現~

『界王様の声』
 出典:『ドラゴンボール』シリーズ
 宇宙の狙った相手に声を届けることが出来る。発動者に触れている他の人の声を届けることも出来る。
 本来テレパスではないが(うろ覚え)、ハジメは骨伝導音のみを使うことで疑似テレパスが可能。どんな使い方だよ。

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